異世界マゼマゼ奮闘記

ぷい16

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第六章 神様を起こしに

基礎トレーニング

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 カーンカーンカーンと軽快な音が響く。

 ここは天界、天界の騎士であるハウニールが、汲広くみひろ稽古けいこを付けているのである。

 ハウニールが木剣ぼっけんで右けさぎり、左けさぎりと交互に打ち付けるのを、汲広くみひろもまた木剣ぼっけんで受け止める。


「ほらどうした?打ち返してこないのか?」

「…」


 手がジンジンする。

 ハウニールの剣は重く、受け止めるだけでも手が痛い。

 でも受けなければ頭をかち割られてしまう。

 返事をする間もない。

 言葉を返していると一瞬腕が止まってしまう。

 攻撃するひまを与えないハウニールの打撃に、汲広くみひろ木剣ぼっけんで受け流すしかなかったのである。


「今日はこの辺にしよう」

「ありがとうございました」


 次はランニングである。

 白一色の地面を、時間が来るまでただひたすら走るのである。


「手首、まだジンジンするな」


 そう言いながらただひたすら走る。



 汲広くみひろは中学も高校も部活をしていなかった。

 部活をするくらいなら帰って無線でダベっていたかった。

 アマチュア無線は汲広くみひろの生まれるずっと前にブームは過ぎ去っている。

 やっている人は少ない。

 ニーズがないのだから当然、中学でも高校でも無線部や、無線同好会はなかったのである。


 汲広くみひろは体育の時間以外運動らしい運動をしてこなかった。

 体力がない。

 なので1から体力作りにはげむのである。


 ランニングの次は、腕立て伏せ、腹筋、背筋である。

 しかし体力がない汲広くみひろはどれもていを成していない。

 しかし今しなければ、いつまでっても体力は付かないし、今後向かう戦いには勝てない。


 神獣との戦い。殺しも殺されもしなくて良いのだが、相手は守衛。

 普段はこれ以上近づくなと態度で示せば済むのであるが、主を守るためなら、侵入者を殺してしまってもいいのである。


「ファイアーボール!」


 虚空こくうに生み出されたソフトボールくらいの火の玉は、相手に一直線に向かっていく。


「シールド!」


 しかし、その火の玉は、相手に届く直前、魔法で生み出された盾に弾き飛ばされてしまうのである。


「次はこっちから。アイシクルアロー!」


 多数の氷の矢がステファニアめがけてけて飛んで来る。


「シールド! キャッ」


 ステファニアは盾で防ぎきれずに足下は氷漬けになった。


「そんなことでは相手に勝てませんよ」


 ステファニアの相手をしているのは天界で魔術師をしているアレリア。


「こちらも手加減しているというのに、それでも攻撃に当たるとはどういうことですか?」

「すみません」

「キャンセル!」


 そう唱えた瞬間、ステファニアの氷付けされた足下の氷は砕け散り、ステファニアの足は自由になった。


「受けるだけが防御ではありません。受けきれなければ逃げるなり避けるなりしなさい!」

「すみません」


 ステファニアもラメリアに教わり魔法の授業は受けてきた。

 しかしそれは一対一。

 相手から攻撃されたことはなかった。

 護身術。それも、最低限。

 ステファニアは騎士や護衛ではない。

 あくまでも守られる立場だ。

 護衛が到着するまで、または逃げるための時間稼ぎ。

 今のステファニアはそれすらできないのであった。


「さぁ、動けるようになったのならもう一度やりますよ!」

「はい。アイシクルボール!」

「シールド!」



「あなたは逃げるための体力も付けなければならないようですわね」

「はい」

「それでは走ってらっしゃい!」

「はい!」


 ステファニアのマナはきかけていた。

 次はランニングである。

 白一色の地面を、時間が来るまでただひたすら走るのである。



「はぁ、疲れた」

「私も、疲れましたわ」


 夕方、夕食前。互いの講師にしごかれ、体力作りとしょうしてランニングやらトレーニングをした後はやはり疲れるものなのである。

 大粒の汗をかき、息も荒い。床に大の字で寝転がり、呼吸が戻るのを待った。


 少し呼吸が落ち着いたところで食堂に向かう。

 食事は楽しみだ。

 人間界よりおいしいものが出るのである。


「天界の者にとっては食事は嗜好しこうですが、あなたたちには生きていくためには必要でしょう。ほら、食べなさい」


 そう言って出されたのは、白米に野菜スープに焼き魚にサラダであった。

 二人は夢中で食べた。

 体力を使った後なので、お腹が減っていたのである。

 ある程度マナーを守りながらガツガツ食べた。

 地球やニーヘロイ星ではここまで食べなかった。

 運動した後のメシはうまい。



 一服して風呂の前はティータイムになっていた。

 白い板には自分とそっくりな人間が映し出されている。

 何かの講義をしているようだ。

 ゆらゆらとらめく楕円だえんを行き来することによって、生徒が次々と消えたり現われたりしている。


「ステファニア、これは一体何だろうね?」

「魔法は、掃き出し窓の魔法みたいだけど、一体何をしているんだろうね?」


 そうしてゆったりとした時間を過ごしたあとは、風呂に入って寝るだけである。


「また明日もトレーニングか。こんな生活いつまで続くんだろう?」


 汲広くみひろはそんな、いつまで続くか分からないトレーニングに悪態あくたいをつきながら、ステファニアが横になっているベッドに体を滑り込ませた。

 汲広くみひろやステファニアが一人前になるまで続くトレーニング。

 先は長いのであった。
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