異世界マゼマゼ奮闘記

ぷい16

文字の大きさ
158 / 167
第六章 神様を起こしに

神の城―サザンタダンとの戦い―後編と、汲広とステファニアの特殊事情

しおりを挟む
 ステファニアの切り付けで、サザンタダンの尻尾は3分の2くらいまで切り込みが入った。


「ギャース」

「コンアーク!」


 今度は汲広くみひろが穴あきブロックを足場に駆け上がり、右頭の首根っこ、中央頭の首根っこ、左頭の首根っこと、順番に切りつける。傷口は浅いが、痛みはあるだろう。


 そうこうしているうちに、ステファニアはもう一度尻尾の切り目を切りつける。

 5分の4くらいまで切り込みを入れることができた。


「ギャーグ、アンギャー」


 サザンタダンはあまりの傷口の痛さに回避しようと、高速に90度体を反転させようとした瞬間、切り込みを入れた尻尾により一層切り込みが入り、尻尾は勢いに任せて吹っ飛んだ。


「ギャーウウゥッッッ」


 サザンタダンは巨体を横転させて、前足と後ろ足を近づけ、3つの頭を床に付け、そのまま大人しくなった。


「やったか?」

「大人しくなりましたね」


 テンペギウスに間と違い、荷物は土のう袋の魔法の中だ。

 荷物を取りに向かう手間がなくなったので、奥の部屋に向かうことにする。


 汲広くみひろがドアの取っ手に手をかけた瞬間、


「シャームンドム、フィリフレネシア、何をもたもたしておる。早うせい」


 そんな言葉が聞こえた。


 汲広くみひろはドアの取っ手に手をかけたまま、


(城の警護に神獣が3匹も居るから通るのに時間がかかるんですよ。これでも急いでいるのです)


  と、届くかどうかは分からないが、取っ手に念話を送るイメージで話しかけた。


「そうか。そなたらに記憶の断絶があるのだな。仕方ない。しばし待つ。しかし早う会いたいのぉ」


 そう言う返事が返ってきた。

 記憶の断絶?

 何のことか分からないが、とにかく、先に進むのが賢明であろう。

 あちらさんには会ってからのお楽しみである。


「ふんぬぅー」


 汲広くみひろは人が通れるだけ、扉を開けると、やはり、小部屋があった。

 汲広くみひろが入ると明かりがともった。

 体力、集中力、魔力を消耗している。

 せかされているとは言え、休憩を入れたい。

 ステファニアが小部屋に入ってきて、サザンタダンに間の明かりが消えてから、汲広くみひろは扉を閉めるのであった。

 汲広くみひろはお湯を沸かし始めると、


(実に見事であった。こちらから助言をするいとまかった)


 日本の汲広くみひろからの念話である。


(強いて言うなら、魔法に頼りすぎだ。能力をもっと使えるようになった方がいいが、習いたてで、慣れていないからそれを指摘するのはこくかも知れないが)


 こくなら言わないで欲しいと汲広くみひろは思った。


(本物の神に早く会いたいのであろう?昨日アカツキ伯爵に習った回復系能力を使って早く回復しなさい)


 そういえば、昨日の詰め込み教育で、そんなのを習った記憶がある。

 しかし、肝心かんじんの、その方法を思い出せない。


(その、回復系能力が思い出せないのです。あまりにも多い情報量で、全部を試せなかったので、記憶に残りにくかったもと思います)

(やれやれ、昨日の詰め込みはあまり功を奏していないようだな。今から教えるからその通りにしなさい。まずは体力の回復からだ。呪文は「リカバシェームネン」。くれぐれも能力を使うのだぞ)


「リカバシェームネン」


 呪文を唱えた瞬間、汲広くみひろは黄色に輝き、疲れが吹き飛んだ。

 城の門前に来たときぐらいには回復している。


(ステファニアもやってみなさい)


 ステファニアも体の傷を癒やし、疲労感も吹っ飛び、元気になった。


(次はマナの補充だ)


 汲広くみひろとステファニアは教えられた呪文を唱えた。

 体に魔力が溢れるような感覚になった。


(次は精神的な疲労を取る能力だ)


 今度はぐっすり眠って全ての疲れが取れた精神状態になった。

 ここまでかけてもらえれば、万全を期して、次の神獣に挑める。


 そうこうしているうちにお湯が沸いた。

 汲広くみひろはティーセットを出し、お茶の抽出を待つ。

 ステファニアは簡易食料を出し、二人で食べながら、一時の休息を取る。

 お茶を飲み干すと、片付けを終わらせ、奥の扉へ向かった。


 汲広くみひろが扉の取っ手を握った途端、頭に流れてくるものがあった。


”そなたの名はシャームンドム。神の資格を持つ者”


 汲広くみひろは取っ手から手を離し、ステファニアに取っ手を握るように指示する。


”そなたの名はフィリフレネシア。神の資格を持つ者”


 流れ込んだ知識を解釈すると、前世、ずっと昔、汲広くみひろとステファニアは、時期が違えど、神に君臨していた時期があるらしい。

 神にも体の寿命がある。

 心が清らかで、魂の構造が複雑で、神の知識を全て吸収できる能力、神として世界を統治とうちする能力がある者が、神になれる素質を持つ者とされているそうだ。

 しかし、スキカから与えられた魂はそれに対応できない、オリジナルの魂ほど良質な魂ではないそうだ。

 しかし、現在の神であれば、何とかしてくれるらしい。


「僕たちは神に匹敵するほど、潜在能力があり、重要人物なのか?」

「衝撃の事実に恐れ多く感じます」

(あぁー。とんでもない事実を知ってしまった)


 ここに汲広くみひろもステファニアも、日本の汲広くみひろとアントネラも、頭を抱えるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。 元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。 バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。 だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。 アイドル時代のファンかも知れない。 突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。 主人公の時田香澄は殺されてしまう。 気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。 自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。 ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。 魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈
ファンタジー
味噌蔵の跡継ぎで修行中の相葉壱。 息抜きに動物園に行った時、仔カピバラに噛まれ、気付けば見知らぬ場所にいた。 壱を連れて来た仔カピバラに付いて行くと、着いた先は食堂で、そこには10年前に行方不明になった祖父、茂造がいた。 茂造は言う。「ここはいわゆる異世界なのじゃ」と。 そして、「この食堂を継いで欲しいんじゃ」と。 明かされる村の成り立ち。そして村人たちの公然の秘め事。 しかし壱は徐々にそれに慣れ親しんで行く。 仔カピバラのサユリのチート魔法に助けられながら、味噌などの和食などを作る壱。 そして一癖も二癖もある食堂の従業員やコンシャリド村の人たちが繰り広げる、騒がしくもスローな日々のお話です。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...