仲良し家族、まとめて突然!異世界ライフ

ぷい16

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新しい生活

宮廷魔道士と夜の街

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「おい、何をもめている」

「ひゃいっ」

「い、いや、べ、別に何でもありやせんぜ」

「そ、そうそう」


 ここは中央通りから2本外れた裏通りに面する袋小路。酒場から近いので、最近酔っ払ってちょっとしたいざこざでけんかが絶えない場所。


「ここは袋小路だ。ここら辺に住んでいるのか?」

「い、いえ。こっちは行き止まりかー。ちょっと道を間違えたなー」

「あっちじゃねぇか?行こうぜ」

「お、おう」


 仲裁に入ったのは警備隊ではなく宮廷魔道士。警備隊にしろ、宮廷魔道士にしろ、あの酔っ払いにとっては相手にはしたくない相手。喧嘩になりそうだった2人は、いきなり現われた宮廷魔道士に毒気を抜かれ、しどろもどろになり、また、夜の街へ消えていった。


「ふぅ。あんなのばっかりかよ」

「まぁ、そう言うなって」


 ゲートを使い、宮廷魔道士部屋にっ戻った宮廷魔道士は、少し愚痴ぐちった。
 宮廷魔道士は備え付けのヤカンから、自分のコップにお茶をくみ、


「さて、また監視に戻りますか」


 そう言って、自席に戻り、目をつむるのであった。

 かおるが遠見の魔法を復活させて、宮廷魔道士に普及ふきゅうさせて、街の監視をさせるようになってから、街の治安は良くなっていた。

 しかし最近、森を切り開いて街道を作り、山を掘って街道を作って通り抜けできるようになると、森の向こうのタンザナティア王国からやって来る人間、山の向こうのジルベチア王国からやって来る人間で、ここ、ザガンガ王国の王都は前より人が増えていた。

 タンザナティア王国とジルベチア王国の人間は仲が悪い。会えばケンカになるケースが多い。一時期平和だったここ、ザガンガ王国の王都は遠見の魔法を使って監視をする前よりも治安が悪化しているのであった。


 かおるが遠見の魔法を復活させて、宮廷魔道士に街の監視をさせるようになった当初は、警備隊に通報し、警備隊に仲裁させていた。しかし、警備隊に出てもらわなくても宮廷魔道士が現われるだけでケンカめるケースもあり、宮廷魔道士にとって、そちらの方が手間が省けるケースも多かった。そこで、かおるが警備隊のトップのところへ乗り込んで、宮廷魔道士も街の警備に加わり、単独で仲裁することを認めさせた。

 そうして、宮廷魔道士が街の警備に当たるようになると、警備隊と宮廷魔道士の連携。元々、宮廷魔道士は軍の方に近く、騎士団に近衛騎士団と宮廷魔道士合同でする定例会議はあった。しかし、警備隊とは会議はなかったので、警備隊と宮廷魔道士による会議もするようになった。

 あと、問題になってくるのは宮廷魔道士の勤務時間。元々宮廷魔道士の勤務時間は朝の9時から夕方5時まで。しかし、街の治安が悪化するのは酒場が営業している時間+1時間の夜9時まで。そこで、かおると二郎は勤務時間を延ばすか、2交替にするか悩んだが、結局、勤務時間を延ばすことにした。

 そうすると困るのは夕食。王城には王族に料理を出すための調理場とは別に、王城勤めの人間が昼食をるための食堂があった。食堂は午後3時で閉まる。そこでかおるは宮廷魔道士が夕食を食べるため、夜の食堂を貸して欲しいと頼みに行くと、


「そんな、王城勤めの人に料理をさせらせません。私たち共が料理を提供させていただきますのでどうか私たち共にお任せ下さい」


 と、食堂の人間で料理を提供してもらえるようになったので、お言葉に甘えて料理を提供してもらうことになった。

 こうして、宮廷魔道士は午前11時に昼食タイム、午後5時に調理場で提供された食事をる夕食タイムになった。

 こうして、宮廷魔道士くらいしか食事に来ない時間ができると、食堂の人間と宮廷魔道士との間で会話が生まれた。そこで仲良くなって話していると、調理場でお茶を提供してもらえるようになった。登城して仕事前、食堂まで茶器とお茶の入ったやかんを取りに行き、3時頃、空のヤカンを調理場へ戻すとまたお茶を沸かしてくれて、4時頃またヤカンを取りに行く。そして、仕事終わりの9時に茶器とヤカンを返すと次の日には茶器が洗われ、またヤカンにお茶が沸かされる。そうして宮廷魔道士はお茶に困らなくなったのであった。


「またケンカかよ。勘弁してくれよ。じゃぁちょっとめてきます」

「はい。行ってらっしゃい」


 宮廷魔道士はまた遠見の魔法でケンカを見つける。それをめるため、ゲートで現場に駆けつける。


 街の人間は、こんな監視体制が敷かれているなんて知らない。誰も見ていないような状況にも関わらず、どこで聞きつけたのかケンカが始まると警備隊か宮廷魔道士が駆けつける。そんな状況で、王都では「鷹の目が見ているからケンカなんかするな。気をつけろ」と、王都の警備体制が固いことが広まり、徐々にではあるが、王都の治安は回復していくのであった。
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