天才怪盗の社会奉仕(エリート怪盗だった俺が問題だらけの学園で事件を解決します)

ハルサメ

文字の大きさ
7 / 115
ミネルヴァの梟、探る

第7話

しおりを挟む
「あやや、久しぶりだな」

「お久しぶりです神北先生。ですからそのあややは止めてください」

「私は可愛いと思うんだが?」

「せめて絢音でお願いします。おや、依頼人の方でしょうか?」

 あやや改め絢音という少女は、その整った眉を潜めながら朱乃に浅い礼をし、後ろにいる俺に目を向けた。ただ目を向けられただけなのに、何やら心臓がつままれた感覚が襲ってきた。こりゃ完全にトラウマになっているな。

「私の甥の結崎流斗だ。今日からここに入ることになった」

「おい、俺はまだ入るとは言って無いぞ」

「と、彼は言ってますが?」

「なに、惰性的に日常を過ごしているだけの、ただのチキン野郎だ。どうせ父親と同じで頼まれたら断れない性質なんだ。存分にしごいてくれ」

「はぁ……」

 少女は分かったような、分からないような生返事をする。まぁ当事者である俺すら分かっていないのだから仕方ないだろう。というかそこでも親父と対比するのを止めろ。それとチキン野郎も。こっちは訴訟も辞さないぞ。

「じゃあ今度こそ私は去らせてもらう。ではな」

 ヒラヒラと手を振り、今度こそ朱乃は去って行った。おそらく部屋を出て距離を取った後、盛大に声を上げて笑っているのだろうと思うと、胸糞悪くて笑いが込み上げてくる。

 ハハハ……クソ喰らえ。

「それで、これはどういうことですか? 影宮室長」

 自分の席なのか、絢音という少女は事務デスクの椅子の一つに腰掛ける。

「僕らに関してはいつもと同じだよ。彼をこの一週間で、使える人材かどうか見極める。それだけだ」

「なるほど、分かりました」

 室長の言葉に少女は淡々とした答えを返す。いやだから勝手に納得するなよ。

「おい、またそっちで勝手に話を進めないでくれよ。こっちはまだ説明の無いままだぞ」

「おっとそうだね。ごめんごめん」

 室長は申し訳なさそうに眉を下げた。その表情にはもう苦笑いが張り付いている。

「えっと、まずは自己紹介からしようか。僕はこの学芸特殊分室の二十一代目室長をしている三年の影宮識也。そしてそっちにいるのが、ここの一員で二年の君塚絢音君だ」

 紹介され、君塚先輩が浅く頭を下げる。大人びている印象があったが年上だったのか。

「一年の結崎流斗です。今更ですが敬語の方がいいでしょうか?」

「いや楽な方で構わないよ」

 思ったとおりだ、この影宮と言う男子生徒はそういう意味で器が大きい。

「室長、私の方は業務に入ってもいいでしょうか? 先日の件でまだ資料の整理が終わっていないので」

「おおそうか。では僕たちは隣の部屋に移ろう。じゃ、少し経ったらよろしくね」

「了解しました」

 不穏な言葉を聞いた気がしたが、それを確認するより室長が俺を隣の部屋へと追いやった。そこはテーブルを挟んでソファーが二つ対面に置かれているだけの質素な部屋だった。

「こっちは応接室として使ってる部屋だよ。他にもあんまり聞かれちゃマズイ話する時も、基本的にこっちを使ってるんだ」

 聞かれちゃマズイってそんなグレーな話題をいきなり出さないで貰いたいものだ。

 俺と室長はそれぞれ向かい合う形でソファーに座った。

「さて、それじゃあ君が一体どんな状況にドナドナされているのか話していこうか」

 確かに今の俺は、まさに荷馬車に揺られる子牛気分だよこの野郎。

「学芸特殊分室、長いから分室って言うけど、ここが何をするところか知っている?」

「まぁ学内での噂程度だ。依頼したら大体のことを引き受けてくれるって事くらいだな」

 本人たちの前で学園のパシリ、と揶揄するわけにはいかないだろう。

「概ねその認識であってるよ。ネットや目安箱から出された依頼は様々だから、一概にこういう仕事ですって言う事も出来ないんだよ。こちらも予測できる訳ではないからね」

「予測できる人間がいたらぜひ見てみたいものだ」

 人間が生活している以上問題は千差万別だ。大変重大な問題もあれば、世の中には玉転がしで負けただけで警察に連絡する輩もいるし、救急車をタクシーの様に呼び出すなど、どんな馬鹿げたことですら問題としてあげてしまう者もいるのだ。

 なるほど、ここで朱乃の問答の意味が分かった。この学園では、多すぎる生徒により生じる問題を、この分室が専門的に扱っているのだ。つまりこの分室こそ、栄凌学園の学生の統率を取るために作られた、力を持つ組織。

 だが、そうすると新たな疑問が湧いてくる。

「何で学校側がそんな問題処理係を生徒にやらせているんだ?」

「うん、その通り。分室が作られたのにはのっぴきならない訳がある。この学園は学生の数が多い。だから多種多様な問題が発生する。はっきり言うと、その処理を学園側が放棄したんだ」

「……は?」

「いやだから学園側、つまり教師たちが多すぎる学生の問題が面倒臭くなって、それの処理を学生に丸投げしたんだよ」

 またも苦笑いを浮かべる室長に、思わず失笑してしまう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界では地味な俺が、なぜか神々に最愛されて無双してる件

fuwamofu
ファンタジー
平凡な高校生・桐生ユウは、女神の手違いで異世界に転生した。 チートもスキルも貰えず、冒険者登録すらままならない落ちこぼれ……のはずだった。 しかし周囲の異常な好感度、意味不明な強運、そして隠された神格スキルによって、ユウは「無自覚に全能」な存在へと覚醒していく。 気づけば女神も姫騎士も魔王娘も彼に夢中。誤解と崇拝が加速する中、ユウの“地味な日常”は世界を揺るがす伝説になっていく。 笑いあり、胸キュンあり、ざまぁありの最強(なのに本人だけ気づいてない)異世界ファンタジー開幕!

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...