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ミネルヴァの梟、助ける
第44話
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「……では状況の整理は以上で大丈夫ですね?」
西城がおかわりすること五回、ようやくこれまでの経緯をまとめ終えた。傍から聞いていた限りだったが、西城の私物がなくなる事はかなり日常的に行われていたらしく、戻ってくる物もあれば、そのまま無くなってしまった物もあるようだ。そして戻ってきてもゴミ箱に捨てられていたりと、かなり凝った演出をされているようだ。
「そうですね、やはりまずはその彼女たちに話を聞くことが先でしょうね」
何で学生のイジメ問題を学生が解決するんだよ、大人はどこに行った。というのはこの学園ではもはや通じない。いや何もここだけではないか。そもそもどんな時でも大人が子供を守ってくれるなんてのは、ただの妄想でしかない。
「西城さん、これから時間はありますか?」
「えぇ、大丈夫よ。じゃあ今すぐにでも――」
「ちょっと待て」
意気揚々と席を立とうとする二人を制止させる。
「何か気になることがありましたか?」
「別に見送っても良かったんだが、二度手間は避けたいんでな」
「何のことよ?」
「なぁ西城。お前、何を焦ってるんだ? もっと言うと、お前は何を隠している?」
「……は? あたしが何かを隠してるって? 一体どこからそんなことが分かるのよ?」
「簡易的な目安だが、出された水に直ぐ口をつけるのは、何かをしていないと落ち着かない兆候だ。まぁそれも偶然かもしれなかったが、そもそもの依頼は私物を盗んだ相手を突き止めてくれ、だ。だけどお前の証言が本当なら、盗んだと思われる人物は既に割れている。なら普通はこう言うんじゃないのか? 『あいつらが私の私物を盗むから、それを取り押さえてくれ』ってな」
「そ、それは……」
「そうすると、何でお前が最初にあんな言葉を使ったのかって話になる。犯人の目星がついているならば、それを伝えれば良い。言葉の綾って言い訳は、もう今のお前の表情で通じなくなったぞ」
言われて西城はハッと目を見開いた。不安そうな表情をしていたことを自覚したのだ。
西城の挙動から何かを隠している、と考えた俺は、それを確かめるために、あえて確信をしているかのように言葉を発することで、西城の本心を揺さぶった。カマをかけたということになるが、どうせ間違っていても取り返しのつく代物だ。
「話を戻すとお前は最初、盗んだ人物を断定しなかった。だがその後の聴取で、誰が有力かという情報を話している。これによって始めは相手を庇ったとか、そういった可能性は一切消える。なら何故最初から断定しなかったのか。可能性としては、お前も知らない第三者がこの話題に関わっているんじゃないのか?」
「…………あんた何なの? エスパーなの?」
「多少、人を見る力を養ってるだけだ。当たって何よりだ」
身近に本物のエスパーがいると、どれだけ読みが冴えようが自分が小さく思えてしまう。必死に分析し、念入りに思考を重ねて判断を下しても、志保にかかれば一発なのだ。
「では本当に?」
「えぇ。あの子たちが盗った物は姿はどうであれ全部返ってきてる。問題なのは他にあたしの物を盗んで返さない輩がいるってこと。というか本当に良く気付いたわね」
「そうだな。一つ面白い話をしてやろう。あるところに一人の少年がいたんだ」
少年は少し特殊な経歴の持ち主で、本人は気にしていなかったが、同じ年頃の子供たちからは奇異の目で見られていた。
ある日、少年は唯一心を開いていた小鳥が鳥籠ごとなくなっていることに気付き、どこに行ったのかと、少年は必死に鳥籠を探した。
すると、庭の隅でいつも少年に突っかかってくるグループが、何やら集まっていた。嫌な予感がした少年がその集団の中に突っ込むと、そこには枯葉や新聞紙と一緒に、少年が探していた黄色い鳥籠が無残にも燃やされていた。
悲鳴に似た小鳥の金切り声。炎の中で、しかし外に出る事ができない小鳥は、鳥かごの中で激しく暴れていた。直ぐに少年が鳥籠を救出するが、もう小鳥の体は黒く焼け焦げ、動くことはなかった。
「そして周りには悲しみにくれる少年をあざ笑う、子供たちの姿があった。相手に絶望を与えるには奪うだけではなく、見せしめる方が効果的だって事だ」
「なんとも子供とは残酷なものですね。その少年もかわいそうに」
「確かに……あたしも似た状況かもしれないけど、その子はもっと悲惨ね」
「まぁその後全員フルボッコにして、全裸にひん剥いてから天井に吊るしてやったがな!」
「今すぐあたしの同情を返しなさいッ! というかあんたの実体験!?」
「父親に引き取られたと聞いていましたが、どんな子供時代を過ごしていたんですか?」
「やられたら十倍でやり返す修羅の国で育った」
仮面とかは被ってなかったし、名も無き修羅ってわけでもなかったが。
西城に絡んでいた女子はそこを熟知していた。学校という環境は知らないが、女子のイジメの陰湿さは前の組織でも、そして施設の時でも十分身に染みて理解している。
西城がおかわりすること五回、ようやくこれまでの経緯をまとめ終えた。傍から聞いていた限りだったが、西城の私物がなくなる事はかなり日常的に行われていたらしく、戻ってくる物もあれば、そのまま無くなってしまった物もあるようだ。そして戻ってきてもゴミ箱に捨てられていたりと、かなり凝った演出をされているようだ。
「そうですね、やはりまずはその彼女たちに話を聞くことが先でしょうね」
何で学生のイジメ問題を学生が解決するんだよ、大人はどこに行った。というのはこの学園ではもはや通じない。いや何もここだけではないか。そもそもどんな時でも大人が子供を守ってくれるなんてのは、ただの妄想でしかない。
「西城さん、これから時間はありますか?」
「えぇ、大丈夫よ。じゃあ今すぐにでも――」
「ちょっと待て」
意気揚々と席を立とうとする二人を制止させる。
「何か気になることがありましたか?」
「別に見送っても良かったんだが、二度手間は避けたいんでな」
「何のことよ?」
「なぁ西城。お前、何を焦ってるんだ? もっと言うと、お前は何を隠している?」
「……は? あたしが何かを隠してるって? 一体どこからそんなことが分かるのよ?」
「簡易的な目安だが、出された水に直ぐ口をつけるのは、何かをしていないと落ち着かない兆候だ。まぁそれも偶然かもしれなかったが、そもそもの依頼は私物を盗んだ相手を突き止めてくれ、だ。だけどお前の証言が本当なら、盗んだと思われる人物は既に割れている。なら普通はこう言うんじゃないのか? 『あいつらが私の私物を盗むから、それを取り押さえてくれ』ってな」
「そ、それは……」
「そうすると、何でお前が最初にあんな言葉を使ったのかって話になる。犯人の目星がついているならば、それを伝えれば良い。言葉の綾って言い訳は、もう今のお前の表情で通じなくなったぞ」
言われて西城はハッと目を見開いた。不安そうな表情をしていたことを自覚したのだ。
西城の挙動から何かを隠している、と考えた俺は、それを確かめるために、あえて確信をしているかのように言葉を発することで、西城の本心を揺さぶった。カマをかけたということになるが、どうせ間違っていても取り返しのつく代物だ。
「話を戻すとお前は最初、盗んだ人物を断定しなかった。だがその後の聴取で、誰が有力かという情報を話している。これによって始めは相手を庇ったとか、そういった可能性は一切消える。なら何故最初から断定しなかったのか。可能性としては、お前も知らない第三者がこの話題に関わっているんじゃないのか?」
「…………あんた何なの? エスパーなの?」
「多少、人を見る力を養ってるだけだ。当たって何よりだ」
身近に本物のエスパーがいると、どれだけ読みが冴えようが自分が小さく思えてしまう。必死に分析し、念入りに思考を重ねて判断を下しても、志保にかかれば一発なのだ。
「では本当に?」
「えぇ。あの子たちが盗った物は姿はどうであれ全部返ってきてる。問題なのは他にあたしの物を盗んで返さない輩がいるってこと。というか本当に良く気付いたわね」
「そうだな。一つ面白い話をしてやろう。あるところに一人の少年がいたんだ」
少年は少し特殊な経歴の持ち主で、本人は気にしていなかったが、同じ年頃の子供たちからは奇異の目で見られていた。
ある日、少年は唯一心を開いていた小鳥が鳥籠ごとなくなっていることに気付き、どこに行ったのかと、少年は必死に鳥籠を探した。
すると、庭の隅でいつも少年に突っかかってくるグループが、何やら集まっていた。嫌な予感がした少年がその集団の中に突っ込むと、そこには枯葉や新聞紙と一緒に、少年が探していた黄色い鳥籠が無残にも燃やされていた。
悲鳴に似た小鳥の金切り声。炎の中で、しかし外に出る事ができない小鳥は、鳥かごの中で激しく暴れていた。直ぐに少年が鳥籠を救出するが、もう小鳥の体は黒く焼け焦げ、動くことはなかった。
「そして周りには悲しみにくれる少年をあざ笑う、子供たちの姿があった。相手に絶望を与えるには奪うだけではなく、見せしめる方が効果的だって事だ」
「なんとも子供とは残酷なものですね。その少年もかわいそうに」
「確かに……あたしも似た状況かもしれないけど、その子はもっと悲惨ね」
「まぁその後全員フルボッコにして、全裸にひん剥いてから天井に吊るしてやったがな!」
「今すぐあたしの同情を返しなさいッ! というかあんたの実体験!?」
「父親に引き取られたと聞いていましたが、どんな子供時代を過ごしていたんですか?」
「やられたら十倍でやり返す修羅の国で育った」
仮面とかは被ってなかったし、名も無き修羅ってわけでもなかったが。
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