天才怪盗の社会奉仕(エリート怪盗だった俺が問題だらけの学園で事件を解決します)

ハルサメ

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ミネルヴァの梟、仕掛ける

第79話

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「えっとそこのあんた、長い話になるからお茶頂戴。支倉には新しいカップを用意してやれよ」

 入り口で腰を抜かしている男子生徒は俺の言葉に二、三回まばたきをして、ハッとした様子で立ち上がり用意を始めた。

 それを見届けた後、俺はあーやの隣に腰を下ろした。

「ドッキリのネタ晴らし……だと?」

 呟いた支倉の声は震えていた。どうやら、やっと状況を理解し始めたらしい。

「いつからだ。お前ら、一体いつから仕込んでたんだ!?」

「もちろん最初から最後まで全て……と言いたいところだが、残念ながら始まりはただの偶然でしかなかった。あーやとの決別は、全くの想定外だったよ」

「馬鹿な、ならなぜお前への迫害が起こらない。流れていた噂も、お前がそれを認めたことも全て事実だ! 後手に回った状態で、ドッキリなどで上書きできるはずが無い!」

「まぁ普通に考えればそうだよな。あれだけの騒ぎだ、後であれは嘘だったんだって俺が訴えても、誰も聞く耳を持たなかっただろうよ。だけどな、既にその時点で間違いなんだよ。なんで俺たちが後手に回ったって考える? どうして『俺たちとあーやの決別』を、『噂の広まり』に関連付けるんだ?」

「なっ、まさか、噂を広めたのは君塚ではなく……」

「そう、俺たちだ。あんたらが女バスに対してやったことと同じ。偶然を発端として計画を立てれば、状況は複雑になる。あーやと決別した時点で、俺と室長は最悪のケースを考えた。つまり、『あーやが俺を陥れようとする』って状況をだ」

 あの時点ではあーやの行動は予測不可能だった。俺の正体を知り、ショックのあまり寝込んでしまう。自暴自棄になって暴れ出す。世間一般に俺の正体を暴露する、などあらゆる可能性を考えた。

「お前の言った通り、一度俺が犯罪者だって疑いが流れれば、それを払拭するのは一筋縄じゃいかない。じゃあどうするか。答えは簡単だ。下手なところから噂が流れる前に、『自分から犯罪者だとばらせばいい』」

 情報の出所が自分であれば、その後のコントロールもある程度融通を効かせる事が出来る。そしてこの場合、本当にあーやが噂を流そうとしても、「あぁそれ聞いたことあるよ」と目立ったインパクトが与えられない。

 疑われた時は素直にそれを認めてしまう。その白々しさが、返って疑いから目を遠ざける事もある。

 そしてこの騒ぎに乗じて俺を陥れようと、ギルドが動くのも予想済みだった。偶然という餌を使って、ギルドをおびき出したともいえるわけだ。

「なら学園の奴らは全員が、お前がでたらめで噂を流していたと知っていたのか? ふざけるな! 今までの学園の状況が、全て偽りのものだった言うのか!? 学生風情が、俺たちに気付かれずにそんな企みを遂行していたっていうのか!?」

「そう、そんなもの当然無理だ。お前らギルドの規模もそう小さくは無い。それに気付かれずに大勢の生徒に最初から偽らせるなんて、あまり現実的じゃない。だから、俺たちは情報の開示を二段階に分ける事にした」

「二段階?」

「一つ目は知っての通り、『結崎流斗が犯罪者だった』というものだ。だがこれにはさっき言った、『結崎流斗本人が広めた』という情報はあえて流さなかった。実は集会の時は、まだ大半が噂を本当だと信じていたんだよ。本当は仕掛け人の煽りに俺が乗せられるだけだったんだが、想定内の西城たちの行動が想定外の嬉しい誤算を生んでくれてな。あの集会の騒ぎはある意味で本物の暴動だった」

 裏も何もない西城たちの行動や感情は、より生徒を雰囲気に呑まれやすくした。その意味で、この計画の中で唯一の誤算と言えるだろう。
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