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ミネルヴァの梟、仕掛ける
第80話
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「あの騒ぎが本物だったなら、何故こんな状況になった! そこから噂が偽りだと情報を重ねたとしても、五千人に及ぶ人間の意識をそう簡単に変えられるはずが無い!」
「残念だけど遼一。噂を流す仕掛け人は、僕が直接依頼したんだ。生徒会を含む、各部活の部長格。当然、そこにはあの柔道部もいるんだよ?」
「なっ……」
室長の言葉の意味を悟り、支倉が言葉を詰まらせる。
「そういうことだ。率先して俺を目の敵にしていたはずの柔道部は、実は俺の息がかかった協力者だった。そして集会の後、少しずつ情報を開示していき、噂が嘘であること知らせて言った。俺が声を大にして無実を叫ぶより、各々が信頼し、そもそも噂を流していた先輩方に諭される方が、何倍も信用できるだろ?」
「だとしても、お前が迫害を受けていたのは事実だ! そこには柔道部だけじゃなく、本物の迫害もあったはず。あれを見せられて噂が嘘だと納得できるものか!?」
「当然の反論だな。噂に対して無理矢理それが嘘だと教えられても、普通は信じられない。まだひっくり返すには弱い。だからここに一手間加える必要があった」
もしかしたら、西城たちのように正義感を発揮していじめをなくそうと奮起する輩がいるかもしれない。そういった真剣な生徒を挫くのは流石に心が痛む。
そこで俺は深く息をつく。疲れたからではなく、次の言葉が精神的に堪えるからだ。
「だからこそのドッキリ。二つ目の『あの噂やイジメは結崎流斗の仕掛けたドッキリで、お前ら皆結崎に騙されてるよ』って言葉で大多数が納得しやがったんだよ」
「なっ……」
再び言葉を詰まらせる支倉だが、その気持ちはよく分かる。何せ学園の奴らは俺を信じたというよりは、『また結崎のおふざけか』と呆れ気味に納得しやがったからだ。
俺としては本当にそんなことで状況をひっくり返せんのか? と思ったが、発案者の室長がやけに自信満々であり、蓋を開けてみれば大多数が流された始末だ。
生徒どもが俺をどう思っているかが分かり、大変遺憾です、ハイ。
「と、まぁその後から俺に報復するように、室長を中心に結崎流斗を騙す動きが始まった。実際、計画を立て終わった段階で俺がやったことなんて殆どないんだよ。俺はただ苛められているフリをしていれば良い。後は室長が俺を騙すために暗躍している、という状況を周囲に認識させることが出来れば、準備は整ったってわけだ。柔道部の行為すらただのドッキリであったと分かり、加えて俺を騙さなきゃならないんだから、皆苛めを見てみぬフリをするだろ? それが集会後に行われたいじめの実態ってわけだ」
俺は一方的なドッキリで十分だと考えていたが、この室長の案により計画が更に深みを増したことは事実だ。
最初から嘘だと流せば、どこで情報が漏れるか分からない。また、ただ噂を流しただけでは漠然としすぎていて、身近に犯罪者がいると信じるのは難しい。
そこで犯罪者――結崎流斗を敵視する勢力を自作することで、傍観していた層を一気に引き込んだ。五千人全てに手回しする必要は無い。要は、俺を犯罪者だと思っている人間がいると認識すれば、あとは芋づる式で雰囲気に流される。
そして雰囲気に流されただけだから、ドッキリと言われればあっさりと納得してしまう。
因みに、事情を知らず調子に乗って俺にちょっかいを出してしまった部外者は、柔道部に見込みがあるとして可愛がりを受けたらしい。可愛そうに。
「そうやって一週間かけてやっと噂の上書きが完了。『生徒を騙そうとしている俺』と『そんな俺を返り討ちにしようとする生徒』の構図が出来上がったわけだ。あとはお前も知ってる通り、俺や柔道部が実はドッキリでしたってオチつけて終了だ」
ここでも、「皆に気付かれていると俺が気づいていない体で、ドヤ顔でネタ晴らしをしてずっこける」という茶番をやらかせば、ドッキリにも更に箔がつく。
俺への歪な信頼を利用した、大きすぎる茶番。
それが今回の計画の全貌だった。
「残念だけど遼一。噂を流す仕掛け人は、僕が直接依頼したんだ。生徒会を含む、各部活の部長格。当然、そこにはあの柔道部もいるんだよ?」
「なっ……」
室長の言葉の意味を悟り、支倉が言葉を詰まらせる。
「そういうことだ。率先して俺を目の敵にしていたはずの柔道部は、実は俺の息がかかった協力者だった。そして集会の後、少しずつ情報を開示していき、噂が嘘であること知らせて言った。俺が声を大にして無実を叫ぶより、各々が信頼し、そもそも噂を流していた先輩方に諭される方が、何倍も信用できるだろ?」
「だとしても、お前が迫害を受けていたのは事実だ! そこには柔道部だけじゃなく、本物の迫害もあったはず。あれを見せられて噂が嘘だと納得できるものか!?」
「当然の反論だな。噂に対して無理矢理それが嘘だと教えられても、普通は信じられない。まだひっくり返すには弱い。だからここに一手間加える必要があった」
もしかしたら、西城たちのように正義感を発揮していじめをなくそうと奮起する輩がいるかもしれない。そういった真剣な生徒を挫くのは流石に心が痛む。
そこで俺は深く息をつく。疲れたからではなく、次の言葉が精神的に堪えるからだ。
「だからこそのドッキリ。二つ目の『あの噂やイジメは結崎流斗の仕掛けたドッキリで、お前ら皆結崎に騙されてるよ』って言葉で大多数が納得しやがったんだよ」
「なっ……」
再び言葉を詰まらせる支倉だが、その気持ちはよく分かる。何せ学園の奴らは俺を信じたというよりは、『また結崎のおふざけか』と呆れ気味に納得しやがったからだ。
俺としては本当にそんなことで状況をひっくり返せんのか? と思ったが、発案者の室長がやけに自信満々であり、蓋を開けてみれば大多数が流された始末だ。
生徒どもが俺をどう思っているかが分かり、大変遺憾です、ハイ。
「と、まぁその後から俺に報復するように、室長を中心に結崎流斗を騙す動きが始まった。実際、計画を立て終わった段階で俺がやったことなんて殆どないんだよ。俺はただ苛められているフリをしていれば良い。後は室長が俺を騙すために暗躍している、という状況を周囲に認識させることが出来れば、準備は整ったってわけだ。柔道部の行為すらただのドッキリであったと分かり、加えて俺を騙さなきゃならないんだから、皆苛めを見てみぬフリをするだろ? それが集会後に行われたいじめの実態ってわけだ」
俺は一方的なドッキリで十分だと考えていたが、この室長の案により計画が更に深みを増したことは事実だ。
最初から嘘だと流せば、どこで情報が漏れるか分からない。また、ただ噂を流しただけでは漠然としすぎていて、身近に犯罪者がいると信じるのは難しい。
そこで犯罪者――結崎流斗を敵視する勢力を自作することで、傍観していた層を一気に引き込んだ。五千人全てに手回しする必要は無い。要は、俺を犯罪者だと思っている人間がいると認識すれば、あとは芋づる式で雰囲気に流される。
そして雰囲気に流されただけだから、ドッキリと言われればあっさりと納得してしまう。
因みに、事情を知らず調子に乗って俺にちょっかいを出してしまった部外者は、柔道部に見込みがあるとして可愛がりを受けたらしい。可愛そうに。
「そうやって一週間かけてやっと噂の上書きが完了。『生徒を騙そうとしている俺』と『そんな俺を返り討ちにしようとする生徒』の構図が出来上がったわけだ。あとはお前も知ってる通り、俺や柔道部が実はドッキリでしたってオチつけて終了だ」
ここでも、「皆に気付かれていると俺が気づいていない体で、ドヤ顔でネタ晴らしをしてずっこける」という茶番をやらかせば、ドッキリにも更に箔がつく。
俺への歪な信頼を利用した、大きすぎる茶番。
それが今回の計画の全貌だった。
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