天才怪盗の社会奉仕(エリート怪盗だった俺が問題だらけの学園で事件を解決します)

ハルサメ

文字の大きさ
110 / 115
アルテミスの弾丸

第9話

しおりを挟む
バックミラーにはオートバイが一台見え隠れしていた。そして少し離れたところ、ミラーなどでは確認できない位置に黒のセダンがいる。警視庁を出てからしばらくして、追跡が始まった。当然志織も気づいているからこそ、車を停めなかった。

「たまにね。仕事が仕事だから、色んなところに恨み買ってるとは思うから。ここ最近はなかったんだけど。実際自分で車の運転するのも久しぶりよ」

「なるほど。家に帰ってこない事情もそこだな」

「まぁね。あんたならまだしも、朱乃や志保になんかあったら嫌だから。ただどこの誰かまでは分からないな」

「これはオリュンポスだな。おそらくヘルメスかアポロン」

「オリュンポス!? 噓でしょ?」

「追跡の仕方で分かる」

「もしかしてあんたを狙ってる?」

「さぁな。俺なのかあんたなのか。情報部のヘルメスなら諜報目的の監視だろうが、アポロンなら仕事は暗殺。こっちの命を狙ってくる」

 俺の存在をどこかしらでキャッチしての行動かもしれない。もしくは俺を大々的に逮捕した志織が狙われる理由も十分ある。

 ちょうど信号が黄色になり、先頭で車が停止する。片側二車線だが、右折専用車線がある。信号が赤になったところで右折信号が点灯する。

 そこでオートバイが動いた。右折専用車線にズレて前進。すぐ横に付けてきた瞬間。

 志織の急発進と発砲音が重なり、ハッチバックが後続車に激突した。すれ違いざまの発砲、慌てて前進していたら逆にタイミングが合ってしまうため、ギアをバックに入れていた。後続車には申し訳ないが、無事に銃弾はボンネットを打ち抜いた。

 オートバイはそのままの流れで右折していく。志織はパトランプを点灯させ、急ハンドルを切り、右折する。

「追うわよ! あんたはセダン見てて!」

「その件についてなんだが」

 俺はバックミラーを見る。

「因みにあっちもチャカ持ってるぞ」

「まったく最悪ね! こちら結崎! パトロール中に発砲したオートバイを確認! 追跡中! 他にも拳銃を所持しているセダンが一台! 至急応援頼む!」

 怒鳴るように無線に叫ぶ。時速は八十キロメートル。高速道路の速度には及ばないもの、街中で出すには勇気がいる速度だ。

「左から来るぞ」

 後方からエンジンの唸り声が上がる。左車線から横に付けてきたセダンは、助手席に向けて拳銃を向けた。そこで志織が左に急ハンドル。体当たりをかまそうとするが、減速して回避される。

「前トラック!」

「このッ!?」

 前方の路肩には荷下ろしをしている引っ越し業者のトラック。慌ててハンドルを右に切る。慣性でドアにぶつかりそうになるのを何とか堪える。サイドミラーがぶつかるギリギリのタイミングに肝が冷える。それもつかの間、前方を走っていたオートバイがいつの間にか横についていた。手には拳銃。

「殺す気満々じゃない! 一旦引くわよ!」

 無理に付き合う必要は無いと判断し、志織は脇道に入ろうとする。だがそこで再び発砲音、逃げることを許さないように、銃弾が飛ぶ。

「おかしい」

「ええ頭おかしいわよ。何発撃った? こっちは一発撃つのにもいろいろと手続きが必要なのよ!」

 オートバイも背後に回る形になり、完全な鬼ごっこになった。赤信号の交差点で、クラクションが鳴り響く。無理なカーチェイスは逆に事故を誘発するものだが、こちらとて停まってしまっては銃弾にさらされる危険がある。

 背後からの銃口から狙いを予測し、志織に方向を指示する。

「いや、そうじゃない。こいつらの狙いが見えない」

「私たちの命を狙ってるんじゃないの?」

「すれ違いざまの一発にかけていたんだとすれば、今ここでしぶとく追い回すのは愚策だ。失敗した時の別プランがあるはず」

「それってつまり、誘われてる?」

 今走行しているのは駅から南方向に延びる片側三車線の直線五キロ道路。今は交通量も多くなく、自然と速度が上がる。メーターは一〇〇を超えている。

「この先に登り坂があるわ。舌を嚙まないように!」

「拳銃持ってるな?」

「えっあっ! そこ開けない!」

 ダッシュボードの中にある拳銃を取り出し、シートベルトを外す。窓を開け取っ手を左手で掴み、右手だけ窓の外に出した。

「最低限の弾数で仕留めればいいんだろ」

「一発でアウト!」

 一〇〇キロの風圧では体の固定は難しい。銃身を固定するなんて不可能。かつ真後ろにいる相手には照準は合わせられない。相手が左右にぶれて姿を見せた瞬間を狙うしかない。せめて一瞬でも動きを固定できれば……。

 動きを止める。坂道。

 その瞬間、俺の頭に電撃が駆け巡る。同時に車は坂を上りきる直前。

 車はその加速度により前輪が持ち上がる。

「ブレーキッ!」

 車が坂の頂上から発射される瞬間、車内に戻った俺は言葉とともに、志織の頭を力づくでハンドルに押し付けた。急ブレーキの慣性で体が打ち付けられる。同時に破砕音、そして爆発音。視界の隅で細かいガラスが宙を舞う。遅れて車が再び地面と接触する衝撃。脳を、体を大きく揺さぶる衝撃に、一瞬頭が真っ白になる。

 耳も眼もろくに使えない状況だが、なんとかハンドルを切り、射線上から離脱する。

「一体何が……」

 車を停止させ、体を起こした志織は目の前の状況を見て言葉を失った。一点を中心にフロントガラスに乱雑な蜘蛛の巣上の線が走っていた。そしてその一点は白い円としてくりぬかれている。予想される事態を察し、後ろを振り返る。リアガラスは粉々に粉砕されていた。

「狙撃だ」

 細かいガラスの破片に注意しながら体を起こす。

「そんな、だって正面からよ? 狙撃できる場所なんて、まさか四キロも離れた駅のどこかから狙い打ったっていうの?」

「今日は無風。気象的には好条件だ。おそらく車体が浮いた一瞬、射線と重なる瞬間を狙い打たれた」

 ブレーキをかけて減速したから、車体はあまり浮かずに済んだ。ほんのわずかなズレを生んだ。だが照準をフロントエンジンにしていたのか、直前で修正したのか、弾丸は志織の脳天を打ち抜くコースを通っている。頭を押さえつけなければ、血の海だった。

 そこで爆発音が響く。車から降りて大通りの様子を見に行くと、炎上するセダンがあった。ガソリンに引火したのか、火の勢いは増している。突き抜けた弾丸が、そのまま背後のセダンに直撃、そしてエンジンだかガソリンだかを粉砕した。

 本来なら俺たちがなっていたであろう惨状がそこにあった。あの火の中ではおそらく人が燃えている。こちらの命を狙っていた相手だが、おそらく口を開くことは二度とないだろう。気づけばオートバイも姿を消している。

「もしかして事務次官狙撃と同一犯?」

「ここまでの実行力、幹部クラスではあるだろう」

 駅前に誘い出し、車が浮く瞬間に長距離狙撃。しかも車を一発で粉砕するほどの代物。狙撃手の力量もそうだが、準備したブツも規格外だ。

 化け物と呼ばれる存在に睨まれたことは確かだった。


 調査の結果から、やはり四キロ離れた駅のホテルの一室から狙撃されたことが判明した。だがその部屋を借りていた人物は当然偽物。防犯カメラを見ると、部屋を借りた人物は鍵を開けただけで室内に入ることはなかった。

 そして別の人間が何食わぬ顔で入室していき、狙撃をしたとみられる。炎上したセダンも盗難車であり、明確な情報は辿ることができなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界では地味な俺が、なぜか神々に最愛されて無双してる件

fuwamofu
ファンタジー
平凡な高校生・桐生ユウは、女神の手違いで異世界に転生した。 チートもスキルも貰えず、冒険者登録すらままならない落ちこぼれ……のはずだった。 しかし周囲の異常な好感度、意味不明な強運、そして隠された神格スキルによって、ユウは「無自覚に全能」な存在へと覚醒していく。 気づけば女神も姫騎士も魔王娘も彼に夢中。誤解と崇拝が加速する中、ユウの“地味な日常”は世界を揺るがす伝説になっていく。 笑いあり、胸キュンあり、ざまぁありの最強(なのに本人だけ気づいてない)異世界ファンタジー開幕!

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...