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本編
第11話
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数種類のジェットコースターに乗り継ぎ、午前中は終了した。
「いやはや、何かと楽しいですな」
宗司と勇魚は遊園地内に設けられた屋外のテーブルに腰掛けていた。宗司はサングラスをかけいつもと違い髪を下ろし、優雅に紙コップに入れられたコーヒーをゆったりと飲む宗司の正面には対照的に完全にテーブルに突っ伏している勇魚がいる。
勇魚もいつものポニーテールではなく、こちらも髪を下ろしていた。どうやら絶叫系があまり得意でないらしい。
「苦手って分かってるなら乗らなければ良いのに」
「あの二人が選んだんだから行かざるを得ないでしょうが。うげぇ~酔い止め飲んだのに」
「普通の乗り物と絶叫系を一緒にするな。二人って言うか恐らく四之宮チョイスだろ。闘矢も進んで行く人間ではないし」
宗司は目線を横に動かした。昼時で宗司たちと同じように晴れた屋外で昼食を取ろうとする人は多い。
その中で、闘矢と夏陽を見つける。楽しそうに話しながら食事を楽しんでいる。絶叫系のフルコースを味わってか闘矢に若干の疲れが見えているが、対照的に夏陽のテンションは異常に高い。
どこからどう見ても普通のカップル。そうとしか見えない。
様子を遠くから観察をしていても、まだぎこちなさはあるものの、宗司なりに良い付き合いをしているとは思う。それについて勇魚に意見を聞こうにも、当の本人が潰れていてはどうしようもない。
「おいおい、大丈夫か?ちょっと横になるか?」
「どこでよ?」
「直ぐそこにホテルが」
「ぶっ殺すわよ」
「冗談だ。だから机を蹴るな。休憩所があったからそこで休むと良い」
状態は悪くても殺気はたっぷりだ。
「そんなことしたら観察できないじゃない」
「それでお前が倒れでもしたら観察どころじゃないだろ。騒ぎになったらどうする。せっかく髪を下ろして可愛く変装したのに」
「……」
勇魚から返事は無い。ここでまた机でも蹴られると思ったが、どうやらそういうわけではないらしい。表情が見えないから分からないが、まさか今ので恥ずかしくなったわけでもあるまい。
「あんたってよくそんな言葉が直ぐ吐けるのね。それで何人の女を落としてるのよ?」
「別に、可愛いものを可愛いと言って悪いわけじゃないだろ。それに落としたわけじゃなくて勝手に落ちて来るんだよ」
「その発言が余計にむかつく。この女ったらしが」
「侵害だな。自慢じゃないが、俺は一度も自分から告白したことが無いんだ。全て向こうからの愛を俺が受け止めているに過ぎない」
「夜道で刺されて死ね」
「怖いね。因みにこれも自慢じゃないが、俺振った事も無いんだ」
「はぁ!?何それ?」
勇魚がそこで顔を上げた。机と接していた額が僅かに赤くなっている。
「だから俺が女性と付き合うのは全部、あっちから告白してあっちが勝手に振るんだよ。別に俺が飽きたとかじゃなくてね」
宗司は特に悪びれもせずコーヒーに口をつける。
「それは単にあんたの性格が悪いからじゃなくて?あんたが軽いから女からしたらむかつくのよ」
「どうだろうね。俺としては付き合っている時はその人一筋なんだが。その人の事なら全部知りたいくらいに。当然生まれた日と好きなものはおさえる」
「優等生の彼氏発言のつもり?」
あざけ笑うかのような目線を宗司に送る。
「知りたいんだよ。女の子の事なら絶対に忘れない自信あるしね。あと他に知りたいのは家族の情報かな。これも生年月日と好きなもの付き。大体1日目には全部知っている。それぐらい愛しているのに何でだろうね。大体の人は直ぐ逃げ出しちゃうんだ。全く困ったもんだよ」
「いやそりゃあんた気持ち悪いよ」
勇魚の反応は怒りなのか戸惑いなのか宗司に判断は出来ない。少なくとも分かっているのは宗司に不信感を持ったというところだろう。
ドン引きしているのは確かだ。だからこそ、宗司は場を落ち着かせようとする。
「別に何かに悪用しようって訳じゃないんだ。ただの個人的な趣味だ。おっと、二人が動き出したぞ」
視線の先で二人がテーブルから立ち上がった。午前中が絶叫系だったのだ、午後は落ち着いた方向でお願いしたいのが心情であるところだった。
「ん?」
立ち上がろうとした宗司は動きを止める。席を立った二人だが、夏陽は再び席に座り、闘矢はそのままそこから離れていった。おそらくトイレか何かだろう。
「来たわね絶好のチャーンス!!」
すると勇魚は突然ガバッと起き上がり、何か企んでいるような不敵な笑みを浮かべ、携帯でどこかに電話をかけ始めた。
「見てるでしょ? そう。今がチャンスよ。そう、多少手荒でも構わないわ。責任は私が持つ。やって頂戴」
そして満足げに電話を切った。
「おいおい今のなんなんだ?」
このタイミングで勇魚が仕掛けるもの。少なからず闘矢にとって良いものではないと推測は出来る。
「良いから見てなさい。桐崎闘矢が本当にあの子に相応しいかどうか見極めてあげるわ」
面白そうに勇魚はほくそ笑む。
二人が別々になった状態での実行。そして相応しいと言う発言から、宗司には半ば内容が予測は出来た。面白い考えだとは思う。だが、その計画には恐らく欠点がある。
それこそ、闘矢が唯一普通とは違ったと言えるものである。それが上手く働けば、この計画は恐らく破綻する。
だが一歩間違えれば……。
こればかりは宗司が手を貸すことはできない。
闘矢が自身の身に宿す別の意志を上手く制御できるか、それにかかっている。
「いやはや、何かと楽しいですな」
宗司と勇魚は遊園地内に設けられた屋外のテーブルに腰掛けていた。宗司はサングラスをかけいつもと違い髪を下ろし、優雅に紙コップに入れられたコーヒーをゆったりと飲む宗司の正面には対照的に完全にテーブルに突っ伏している勇魚がいる。
勇魚もいつものポニーテールではなく、こちらも髪を下ろしていた。どうやら絶叫系があまり得意でないらしい。
「苦手って分かってるなら乗らなければ良いのに」
「あの二人が選んだんだから行かざるを得ないでしょうが。うげぇ~酔い止め飲んだのに」
「普通の乗り物と絶叫系を一緒にするな。二人って言うか恐らく四之宮チョイスだろ。闘矢も進んで行く人間ではないし」
宗司は目線を横に動かした。昼時で宗司たちと同じように晴れた屋外で昼食を取ろうとする人は多い。
その中で、闘矢と夏陽を見つける。楽しそうに話しながら食事を楽しんでいる。絶叫系のフルコースを味わってか闘矢に若干の疲れが見えているが、対照的に夏陽のテンションは異常に高い。
どこからどう見ても普通のカップル。そうとしか見えない。
様子を遠くから観察をしていても、まだぎこちなさはあるものの、宗司なりに良い付き合いをしているとは思う。それについて勇魚に意見を聞こうにも、当の本人が潰れていてはどうしようもない。
「おいおい、大丈夫か?ちょっと横になるか?」
「どこでよ?」
「直ぐそこにホテルが」
「ぶっ殺すわよ」
「冗談だ。だから机を蹴るな。休憩所があったからそこで休むと良い」
状態は悪くても殺気はたっぷりだ。
「そんなことしたら観察できないじゃない」
「それでお前が倒れでもしたら観察どころじゃないだろ。騒ぎになったらどうする。せっかく髪を下ろして可愛く変装したのに」
「……」
勇魚から返事は無い。ここでまた机でも蹴られると思ったが、どうやらそういうわけではないらしい。表情が見えないから分からないが、まさか今ので恥ずかしくなったわけでもあるまい。
「あんたってよくそんな言葉が直ぐ吐けるのね。それで何人の女を落としてるのよ?」
「別に、可愛いものを可愛いと言って悪いわけじゃないだろ。それに落としたわけじゃなくて勝手に落ちて来るんだよ」
「その発言が余計にむかつく。この女ったらしが」
「侵害だな。自慢じゃないが、俺は一度も自分から告白したことが無いんだ。全て向こうからの愛を俺が受け止めているに過ぎない」
「夜道で刺されて死ね」
「怖いね。因みにこれも自慢じゃないが、俺振った事も無いんだ」
「はぁ!?何それ?」
勇魚がそこで顔を上げた。机と接していた額が僅かに赤くなっている。
「だから俺が女性と付き合うのは全部、あっちから告白してあっちが勝手に振るんだよ。別に俺が飽きたとかじゃなくてね」
宗司は特に悪びれもせずコーヒーに口をつける。
「それは単にあんたの性格が悪いからじゃなくて?あんたが軽いから女からしたらむかつくのよ」
「どうだろうね。俺としては付き合っている時はその人一筋なんだが。その人の事なら全部知りたいくらいに。当然生まれた日と好きなものはおさえる」
「優等生の彼氏発言のつもり?」
あざけ笑うかのような目線を宗司に送る。
「知りたいんだよ。女の子の事なら絶対に忘れない自信あるしね。あと他に知りたいのは家族の情報かな。これも生年月日と好きなもの付き。大体1日目には全部知っている。それぐらい愛しているのに何でだろうね。大体の人は直ぐ逃げ出しちゃうんだ。全く困ったもんだよ」
「いやそりゃあんた気持ち悪いよ」
勇魚の反応は怒りなのか戸惑いなのか宗司に判断は出来ない。少なくとも分かっているのは宗司に不信感を持ったというところだろう。
ドン引きしているのは確かだ。だからこそ、宗司は場を落ち着かせようとする。
「別に何かに悪用しようって訳じゃないんだ。ただの個人的な趣味だ。おっと、二人が動き出したぞ」
視線の先で二人がテーブルから立ち上がった。午前中が絶叫系だったのだ、午後は落ち着いた方向でお願いしたいのが心情であるところだった。
「ん?」
立ち上がろうとした宗司は動きを止める。席を立った二人だが、夏陽は再び席に座り、闘矢はそのままそこから離れていった。おそらくトイレか何かだろう。
「来たわね絶好のチャーンス!!」
すると勇魚は突然ガバッと起き上がり、何か企んでいるような不敵な笑みを浮かべ、携帯でどこかに電話をかけ始めた。
「見てるでしょ? そう。今がチャンスよ。そう、多少手荒でも構わないわ。責任は私が持つ。やって頂戴」
そして満足げに電話を切った。
「おいおい今のなんなんだ?」
このタイミングで勇魚が仕掛けるもの。少なからず闘矢にとって良いものではないと推測は出来る。
「良いから見てなさい。桐崎闘矢が本当にあの子に相応しいかどうか見極めてあげるわ」
面白そうに勇魚はほくそ笑む。
二人が別々になった状態での実行。そして相応しいと言う発言から、宗司には半ば内容が予測は出来た。面白い考えだとは思う。だが、その計画には恐らく欠点がある。
それこそ、闘矢が唯一普通とは違ったと言えるものである。それが上手く働けば、この計画は恐らく破綻する。
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