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本編
第19話
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「それで話を戻しますが、時間をもらったっていうのはどういう意味ですか?それに俺と話したいって」
こういうタイプに話題の主導権を握らせてはならない。経験則でそれは分かっていた。
「言葉の通りです。実は依然屋上のドアを開ける現場を目撃したので、二人の関係は知っていました。そこで先ほど夏陽ちゃんに今日だけ桐崎君をお借りする許可を頂きました。流石に彼女さんの許可無く彼氏さんを独占する訳にも行きませんしね。あぁ、夏陽ちゃんから連絡が無いのは私が止めさせました。黙っていたほうが面白いですからね」
闘矢は言葉をつまらせた。
と言うのも、澪の言葉の節々で疑問に思った事を、まるでそれを聞いたかのように澪がすぐさま答えをぶつけてきたからだった。心を読まれている、と感じる程だ。
話しやすいと言えばそうなるが、少し怖さも感じる。
「それで話の内容なんですが、桐崎さんは夏陽ちゃんの彼氏さんで宜しいのですよね?」
「えぇまぁ……そうです」
やや闘矢は恥ずかしさを感じた。自覚はしているものも、声に出すのはまだ慣れない。
「夏陽ちゃんが好きですか?」
「そりゃ……す、好き……ですよ」
なんなんだこの羞恥プレイは!
「そうですか。それは良かったです」
澪は自分の弁当を膝の上に広げて、蓋を開けた。色とりどりの野菜、ちゃんと栄養を考えているのが良く分かる献立だった。
それを一度手を合わせてから食べ始めた。
「えっと。それだけ……ですか」
目の前で昼食にありつく澪に対して、闘矢は驚きを隠せない。闘矢が夏陽の彼氏かどうか確認し、それから質問が飛んでくると思っていたからだ。
「他に何かありますか?」
左手を口に添えながら、澪は目を丸くして闘矢を見る。
「いや、無いなら良いですけど」
若干拍子抜けしてしまう。
「強いて言うならばそうですね。放課後の勝負に向けて意気込みでも聞いておきましょうか。ずばり勝算は?」
「そんなもの分かりませんよ。でも……負けるつもりはありません」
「ほう、その心は?」
聞き方が若干落語じみていたが、スルーすることにした。
「言葉の通りです。SFが何かをしてくることは分かっていました。それが遅いか早いかの違いしかありません。まぁマッハと言って良い早さでしたけど。でも逆に裏でこそこそやられるよりはこういった方が分かりやすくて返って良かったですね」
夏陽と付き合って以来、宗司に警告されていた事だ。実際にアプローチされた時は驚いたが、SFは避けては通れない存在であることは闘矢も理解していた。
だからこそ、意志を強く持てる。
「言い換えれば俺が勝てばSFは実質俺に手出しが出来なくなります。そうすればこうやってこそこそ会う事もなくなりますし」
闘矢の言葉に澪は頷く。
「どうやら本当にこのような事態を想定していたのですね。普通短時間でここまで頭が回ったりしませんよ。もしくは良いブレインが傍にいるか」
「最もそいつは賭けの元締めしてますがね」
今頃票の操作に全力を注いでいるであろう友人の顔を思い浮かべる。
当然勝った場合の闘矢の取り分も交渉済みだ。
「風間宗司……良い友人をお持ちのようですね。確かに今回の件であなたが勝てばSFは手を引きます。晴れて学校公認の仲という訳ですね。パチパチパチ」
澪は箸を片手に、小さく手を叩く。
「そうなれたら良いと思っています」
はっきりとした口調で返す。すると澪はそれに対して一旦軽く唇を尖らせ、目線だけ上に向けた後、小さく「うん」と言った。
「完全に私の対策も練られていたようですね」
悔しがるように、澪は首を傾げる。
「そりゃSFの会長ですからね。あなたが近づくんじゃないかとは思っていました。まぁこんな形でとは思いませんでしたけどね」
闘矢は肩をすくめる。それを見て澪は一度唸ってから顔を上げ、空を見上げる。
これまでは宗司の言った通りの展開になった。本当に場所こそは驚いたものの、澪が会話を申し込むのは昼休みに入る前に宗司に言われていた。
会話の内容も最初の無茶振りを除けば宗司の予想通りだ。
「困りましたね。対戦前にちょっと揺さぶろうと思ったのに逆に返り討ちに遭ってしまいました」
澪は首をかしげ、腕を組み、目を瞑った。いちいち仕草を取る人だ。しばらくの沈黙の後、澪は軽く息を吐く。
「桐崎さん。夏陽ちゃんは私の妹です。正直に言うと今回はSF会長というよりかは姉としてあなたに接しました」
夏陽と会長は陸上部のエース、話では姉妹と言って良いほど仲が良いと聞く。ちょっと特別な可愛い後輩といったところか。
「お分かりでしょうが今回のSF四天王の行動は私がたきつけたものです。これを利用してあなたの真意を探ろうと思っていました」
「真意?」
「あなたが夏陽ちゃんの事が本当に好きなのかと言う事です」
「なっ……どうして……?」
反射的に身体が動き、澪を凝視する。もしやばれていたのか。
宗司の話で澪が聡明なのは知っている。それと依然、自分と同等かそれ以上の情報網を持っていると、宗司自身が言っていた。
そして宗司にはこうも言われていた。
『天原澪が俺たちしか知らない罰ゲームを知っている可能性は否定できない』
盛大に矛盾を含んだ言葉。だが実際澪を前にして、闘矢はそれが偽りでないような気がした。
今のところ、宗司のシナリオに沿った展開になっている。それはつまり澪が何もかも見透かしたような口調であるという事だ。
こういうタイプに話題の主導権を握らせてはならない。経験則でそれは分かっていた。
「言葉の通りです。実は依然屋上のドアを開ける現場を目撃したので、二人の関係は知っていました。そこで先ほど夏陽ちゃんに今日だけ桐崎君をお借りする許可を頂きました。流石に彼女さんの許可無く彼氏さんを独占する訳にも行きませんしね。あぁ、夏陽ちゃんから連絡が無いのは私が止めさせました。黙っていたほうが面白いですからね」
闘矢は言葉をつまらせた。
と言うのも、澪の言葉の節々で疑問に思った事を、まるでそれを聞いたかのように澪がすぐさま答えをぶつけてきたからだった。心を読まれている、と感じる程だ。
話しやすいと言えばそうなるが、少し怖さも感じる。
「それで話の内容なんですが、桐崎さんは夏陽ちゃんの彼氏さんで宜しいのですよね?」
「えぇまぁ……そうです」
やや闘矢は恥ずかしさを感じた。自覚はしているものも、声に出すのはまだ慣れない。
「夏陽ちゃんが好きですか?」
「そりゃ……す、好き……ですよ」
なんなんだこの羞恥プレイは!
「そうですか。それは良かったです」
澪は自分の弁当を膝の上に広げて、蓋を開けた。色とりどりの野菜、ちゃんと栄養を考えているのが良く分かる献立だった。
それを一度手を合わせてから食べ始めた。
「えっと。それだけ……ですか」
目の前で昼食にありつく澪に対して、闘矢は驚きを隠せない。闘矢が夏陽の彼氏かどうか確認し、それから質問が飛んでくると思っていたからだ。
「他に何かありますか?」
左手を口に添えながら、澪は目を丸くして闘矢を見る。
「いや、無いなら良いですけど」
若干拍子抜けしてしまう。
「強いて言うならばそうですね。放課後の勝負に向けて意気込みでも聞いておきましょうか。ずばり勝算は?」
「そんなもの分かりませんよ。でも……負けるつもりはありません」
「ほう、その心は?」
聞き方が若干落語じみていたが、スルーすることにした。
「言葉の通りです。SFが何かをしてくることは分かっていました。それが遅いか早いかの違いしかありません。まぁマッハと言って良い早さでしたけど。でも逆に裏でこそこそやられるよりはこういった方が分かりやすくて返って良かったですね」
夏陽と付き合って以来、宗司に警告されていた事だ。実際にアプローチされた時は驚いたが、SFは避けては通れない存在であることは闘矢も理解していた。
だからこそ、意志を強く持てる。
「言い換えれば俺が勝てばSFは実質俺に手出しが出来なくなります。そうすればこうやってこそこそ会う事もなくなりますし」
闘矢の言葉に澪は頷く。
「どうやら本当にこのような事態を想定していたのですね。普通短時間でここまで頭が回ったりしませんよ。もしくは良いブレインが傍にいるか」
「最もそいつは賭けの元締めしてますがね」
今頃票の操作に全力を注いでいるであろう友人の顔を思い浮かべる。
当然勝った場合の闘矢の取り分も交渉済みだ。
「風間宗司……良い友人をお持ちのようですね。確かに今回の件であなたが勝てばSFは手を引きます。晴れて学校公認の仲という訳ですね。パチパチパチ」
澪は箸を片手に、小さく手を叩く。
「そうなれたら良いと思っています」
はっきりとした口調で返す。すると澪はそれに対して一旦軽く唇を尖らせ、目線だけ上に向けた後、小さく「うん」と言った。
「完全に私の対策も練られていたようですね」
悔しがるように、澪は首を傾げる。
「そりゃSFの会長ですからね。あなたが近づくんじゃないかとは思っていました。まぁこんな形でとは思いませんでしたけどね」
闘矢は肩をすくめる。それを見て澪は一度唸ってから顔を上げ、空を見上げる。
これまでは宗司の言った通りの展開になった。本当に場所こそは驚いたものの、澪が会話を申し込むのは昼休みに入る前に宗司に言われていた。
会話の内容も最初の無茶振りを除けば宗司の予想通りだ。
「困りましたね。対戦前にちょっと揺さぶろうと思ったのに逆に返り討ちに遭ってしまいました」
澪は首をかしげ、腕を組み、目を瞑った。いちいち仕草を取る人だ。しばらくの沈黙の後、澪は軽く息を吐く。
「桐崎さん。夏陽ちゃんは私の妹です。正直に言うと今回はSF会長というよりかは姉としてあなたに接しました」
夏陽と会長は陸上部のエース、話では姉妹と言って良いほど仲が良いと聞く。ちょっと特別な可愛い後輩といったところか。
「お分かりでしょうが今回のSF四天王の行動は私がたきつけたものです。これを利用してあなたの真意を探ろうと思っていました」
「真意?」
「あなたが夏陽ちゃんの事が本当に好きなのかと言う事です」
「なっ……どうして……?」
反射的に身体が動き、澪を凝視する。もしやばれていたのか。
宗司の話で澪が聡明なのは知っている。それと依然、自分と同等かそれ以上の情報網を持っていると、宗司自身が言っていた。
そして宗司にはこうも言われていた。
『天原澪が俺たちしか知らない罰ゲームを知っている可能性は否定できない』
盛大に矛盾を含んだ言葉。だが実際澪を前にして、闘矢はそれが偽りでないような気がした。
今のところ、宗司のシナリオに沿った展開になっている。それはつまり澪が何もかも見透かしたような口調であるという事だ。
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