あの日君に誓ったこと

ハルサメ

文字の大きさ
54 / 57
本編

第54話

しおりを挟む
 そこから宗司は事の発端から話を始めた。

 悠獅が夏陽との婚約に積極的でないことを聞いた宗司が、悠獅に婚約破棄移行計画を打診し、悠獅がそれに賛同した事が始まりだった。しかしいくら当人が拒否したとしても、御門家の存続をかけたしきたりを破棄することを当主である御門康成が許すわけが無い。だからこそ宗司は、一芝居うつことを立案した。その中で重要となるのが、闘矢の中に眠る閻陣の異能であった。

「閻陣はたった一家でありながら、戦が盛んでもっとも武力を保有してた時代の十二宮家と同等に渡りあった存在だ。今では十二宮家の中でも知っているものはごく一部だが、当主ともなれば全員がその名を知っているし、どれだけヤバイ存在かも理解している。元々閻陣が十二宮家を追われることになった発端は四之宮のしきたりに反対したって説もあって、お前は所謂閻陣の亡霊って形で恐れられてるんだよ。つまりそんなお前が四ノ宮を迎えに来て婚約者の御門悠獅を倒し、あまつさえ御門家当主である康成も圧倒したとなれば不吉な何かを感じてしまうわけさ。そもそもこのしきたりは性質上、四ノ宮ともう1つの家しか利益を生まないわけだから、異能の力を重んじる他の十二宮家からすれば無理に夏陽を婚約させる義理もなってわけだ」

「そんなんで本当にしきたりを無視できるのかよ?」

「十二宮家の中でありとあらゆる情報を握っている社家が騒ぎをでかくすれば、案外ころっと行くもんだぜ」

「つまり元凶はお前って事か社宗司」

「ご名答」

 宗司は特に驚くことは無かった。

 閻陣の記憶の中には情報を操る社家は十二宮家内でも機密保持のため、偽名を名乗り生活をしているとあった。宗司が十二宮家に対抗できる情報を持っていたのは、その十二宮家の情報を握っている家の人間であったことに他ならない。

「ともあれお前が閻陣の異能を思い出し、十二宮家は大混乱。それに乗じて婚約を解消。それがことの全貌だ」

 悠長に語る宗司に、闘矢は思うところが1つあった。

「そういやお前途中で回線切れなかったか?」

「あれはそこのお嬢様にクラッキングされたんだ」

 宗司に目線を向けられた雛紗は、サディスティック溢れる笑みを闘矢に向けた。お嬢様と言うよりは女王様といった風情だ。

「皇の介入は俺の予想外でな。まさかお前を被検体として狙ってるなんて知らなかったんだよ。まぁこのおかげで四ノ宮の隔世遺伝である藤代を倒したってことで十二宮家が一層危機感を感じてくれたから、結果オーライだな」

「待ちやがれ!俺はまだ翠桜使ってないんだ!本気じゃない!!」

「雑魚の言い訳ご苦労様。本当に使えない」

 傍にあった日本刀を構えようとした想だが、雛紗の言葉が予想以上に心に突き刺さったのか、意気消沈したように顔を伏せた。

「というわけでいくつかアクシデントはあったが、ひとまず目的である夏陽の婚約解消が実現したってわけだ」

 纏めるように宗司は語った。

「つまり俺は何にも知らされないまま、お前らの掌の上で踊らされてたって事か」
 状況を理解した結果、闘矢は想結論付ける。

「何で教えなかったかって質問は止せよな。囚われの姫様を助けに行く王子様に、これシナリオでこうなってますから、って伝えるのは無粋だろ?それに伝えたとしても、お前が変に立ち回ったら、それこそ台無しだ」

 見透かされたように宗司に言われる。確かに言いたいことは理解できるのだが、しかし納得のいかない所も多々ある。

「自分だけが損な役回りとは思わないことだな。シナリオ上とはいえ、閻陣という化け物に対峙させられた俺の方が不幸じゃないか?」

 ソファーにふんぞり返るように座る悠獅は、芝居がかった口調で語る。それに反応したのは、今まで落ち込んでいた想だった。

「お前、それ言ったら俺なんて絶望しか感じられない攻撃喰らってんだぜ?」

「何を言ってるのかしら?あんたは元々本気で閻陣と戦うつもりだったでしょ?そして負けたんでしょ?雑魚がうるさいわよ」

 再度雛紗の容赦ない言葉に傷を負ったのか、想はまるで燃え尽きたかのように動かなくなった。闘矢も思わず苦笑いを浮かべる。

「さて、それでは大体話は終わったようだな」

 言葉と共に悠獅はソファーから腰を上げる。

「では俺はここで退出させてもらう。まだ御門の中でも色々と問題の対処に追われている身なのでな。ではな、もう二度と会うことはないだろう」

「それじゃあ私も出ましょうか。もっとも、あんたの主治医はあたしだからまた後で顔を合わせるでしょうけど」

 済ました顔の悠獅は良いのだが、明らかに実験対象という興味本位の目線を向けてくる雛紗に、闘矢は背筋が寒くなった。

 海里が扉を開け、宗司を除く十二宮家の面々は退出していった。途中、雛紗に蹴り起こされる形で想が我に帰った姿を見て、不憫で仕方が無かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ざまぁにはざまぁでお返し致します ~ラスボス王子はヒロインたちと悪役令嬢にざまぁしたいと思います~

陸奥 霧風
ファンタジー
仕事に疲れたサラリーマンがバスの事故で大人気乙女ゲーム『プリンセス ストーリー』の世界へ転生してしまった。しかも攻略不可能と噂されるラスボス的存在『アレク・ガルラ・フラスター王子』だった。 アレク王子はヒロインたちの前に立ちはだかることが出来るのか?

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

名もなき民の戦国時代

のらしろ
ファンタジー
 徹夜で作った卒論を持って大学に向かう途中で、定番の異世界転生。  異世界特急便のトラックにはねられて戦国時代に飛ばされた。  しかも、よくある有名人の代わりや、戦国武将とは全く縁もゆかりもない庶民、しかも子供の姿で桑名傍の浜に打ち上げられる。  幸いなことに通りかかった修行僧の玄奘様に助けられて異世界生活が始まる。  でも、庶民、それも孤児の身分からの出発で、大学生までの生活で培った現代知識だけを持ってどこまで戦国の世でやっていけるか。  とにかく、主人公の孫空は生き残ることだけ考えて、周りを巻き込み無双していくお話です。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...