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第8話
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「大変なことになったな」
パソコンの前に座り、俺は大きく息を吐く。
今日の昼間、竹原から言われた事は予想外のことだった。
『あたしの彼氏役で和泉と木元のデートに付き合って欲しい』
つまり、俺は竹原が二人を監視するための口実として扱われている訳だ。和泉を一人で行かせるとまた良く分からないことを口走るからだと言う理由を否定できないのが辛いところだった。
そしてそのデートで和泉が木元にちゃんと断りを入れることを。それが最終目標である。
まさか自分の好きな相手のためにこんなことに巻き込まれることになるとは思いもしなかった。神姫の言うとおり、流れに身を任せてなるようになってしまった。
つい先ほどその神姫に一連の流れをメールで送った。先日話したことはあくまで噂であり、その払拭の手伝いをさせられることになった。
事実を書いているはずなのに、俺でさえ信じられないという感覚に陥ってしまった。
しばらくして神姫からのメールが返ってきた。
「お、来たか」
『最早言う事は一つしかない。そのままお前が貰っちまえ!!』
「……その発想はなかった」
呆れればいいのか、感心すればいいのか分からなかった。
『貰うってどうするんだよ。そのドサクサに紛れて告白しろってのか?』
『その通りだ』
『ちょっと待てよ。相手はその時既に一人振ってるんだぞ。そんなところに俺が告白して大丈夫なのかよ。しかも俺別のやつの彼氏役だぞ!』
『んなもん知らん!逆にそいつも味方につければいい!』
『てか別れさせる手伝いしてるやつが告白するっておかしくないか?』
『手伝いして後日に実は好きでしたって告白するのも、中々勇気のいることだと思うぞ』
キーボードを打つ手が止まる。シュミレーションしてみるが、いいイメージができない。
『分かったら告白するんだ。いいな』
それを見透かしたように連続でメールが届く。
これは腹を括るしかないのか。
「お前ら二人が付き合っていたことを俺は今初めて知ったわ」
デート当日。俺、和泉、竹原、木元は11時に駅に集合していた。初めて見る木元は確かにイケメンと言われる部類ではあった。背丈もあり、顔もいい。着ている服もセンスがよく、自分の服装が陳腐に見えてしまう。
「あぁうん、まぁね」
というか俺も知ったのは昨日だし。
「そうね、誰にもばれないようにしているから。初めて知ったのならそれはそれで嬉しいわ」
いや、ばれるばれないの問題じゃなくてそんな事実がないから。なんでそんな息を吐くように嘘つけるんですか?
「何か?」
「いえまったく何も」
すごい睨みつけてきたよ。
「最初合流するって聞いた時は半信半疑だったけど、本当だったとはなぁ」
「ごめんなさいね、二人っきりの方がよかった?」
「いやいやそういう意味じゃないよ。むしろいてくれ。その方が和泉も安心するだろうし」
「…………」
和泉はさきほどからずっと俯いて黙っている。竹原曰く、「アガリ症で、する必要もない緊張をしているだけ」とのこと。確かにこれは誰かサポートできる人間がいた方がいい。
和泉はチェック柄の入った白のワンピースに、デニムのジャケットを羽織っていた。派手過ぎず、でも控えめにもならないセンスを感じさせる組み合わせで、いつもの和泉とはまた違った新鮮さを感じた。ファッションに疎い俺だが、月並みに言ってすごく良い。
そこで和泉と目が合い、慌てて目線をそらした。まずいまずい。
「それじゃあ早速映画館行こうぜ。あ、これ先にチケット買っておいたから」
木元は俺たちにチケットを手渡していく。
いつも映画を見るときはオンラインでチケットを購入していたため気が回らなかったが、当日買おうとすれば四つ並んだ席を確保するのは人気の映画なら難しい。
「金は後で払ってくれればいいから。んじゃ行こうぜ」
そう言って木元は意気揚々と映画館に向かっていく。
「この気遣い……あいつ高感度を上げに来ているな。只者じゃないぞ」
「竹原さん、これそういうゲームじゃないっす」
こいつはチケットを握り締めながら何を言ってやがる。
「高崎は原作読んだのか?」
男二人で売店に並んでいる最中、木元がふと尋ねてくる。
「三日前読み終わった」
「おおばっちりだな。俺も昨日読み終わったばっかりだ。図書館探してもないから思わず買っちまったよ。やっぱり予備知識は重要だよな。見終わった後にも話題を広げられるし」
「まぁそうだな」
「それに和泉も結構原作が好きらしいからやっぱり原作は読んでおかないと。映画だけだと格好つかないし」
「楽しみ方は人それぞれだ。良いと思った方法で楽しめば良いと思うぞ」
「ん?」
「あ、いやこの前和泉に言われた言葉だ。だから別に原作を読んでないからって和泉は気にしないと思うぞ」
「親友の彼氏さんが言うんだから信じてもいいんだろうな」
「はぁ?誰が彼氏だって?」
「あれ、だってお前と竹原って」
「あぁぁぁそうねそうそう。そうよそうよ」
何だそっちだったか。竹原ね。てっきり和泉のことかと思ったじゃねぇかあぶねぇあぶねぇ。そういう設定だったことを完全に忘れていた。これは気を引き締める必要があるな。
そこで助け舟のようにちょうど俺たちの番が来たので矢継ぎ早に注文をした。
映画の内容は殆ど原作再現になっており、改悪もない代わりに改良もなく、程ほどのできであった。
ただ一つ、最後の部分にだけ原作には無いキスシーンが挿入されていた。
パソコンの前に座り、俺は大きく息を吐く。
今日の昼間、竹原から言われた事は予想外のことだった。
『あたしの彼氏役で和泉と木元のデートに付き合って欲しい』
つまり、俺は竹原が二人を監視するための口実として扱われている訳だ。和泉を一人で行かせるとまた良く分からないことを口走るからだと言う理由を否定できないのが辛いところだった。
そしてそのデートで和泉が木元にちゃんと断りを入れることを。それが最終目標である。
まさか自分の好きな相手のためにこんなことに巻き込まれることになるとは思いもしなかった。神姫の言うとおり、流れに身を任せてなるようになってしまった。
つい先ほどその神姫に一連の流れをメールで送った。先日話したことはあくまで噂であり、その払拭の手伝いをさせられることになった。
事実を書いているはずなのに、俺でさえ信じられないという感覚に陥ってしまった。
しばらくして神姫からのメールが返ってきた。
「お、来たか」
『最早言う事は一つしかない。そのままお前が貰っちまえ!!』
「……その発想はなかった」
呆れればいいのか、感心すればいいのか分からなかった。
『貰うってどうするんだよ。そのドサクサに紛れて告白しろってのか?』
『その通りだ』
『ちょっと待てよ。相手はその時既に一人振ってるんだぞ。そんなところに俺が告白して大丈夫なのかよ。しかも俺別のやつの彼氏役だぞ!』
『んなもん知らん!逆にそいつも味方につければいい!』
『てか別れさせる手伝いしてるやつが告白するっておかしくないか?』
『手伝いして後日に実は好きでしたって告白するのも、中々勇気のいることだと思うぞ』
キーボードを打つ手が止まる。シュミレーションしてみるが、いいイメージができない。
『分かったら告白するんだ。いいな』
それを見透かしたように連続でメールが届く。
これは腹を括るしかないのか。
「お前ら二人が付き合っていたことを俺は今初めて知ったわ」
デート当日。俺、和泉、竹原、木元は11時に駅に集合していた。初めて見る木元は確かにイケメンと言われる部類ではあった。背丈もあり、顔もいい。着ている服もセンスがよく、自分の服装が陳腐に見えてしまう。
「あぁうん、まぁね」
というか俺も知ったのは昨日だし。
「そうね、誰にもばれないようにしているから。初めて知ったのならそれはそれで嬉しいわ」
いや、ばれるばれないの問題じゃなくてそんな事実がないから。なんでそんな息を吐くように嘘つけるんですか?
「何か?」
「いえまったく何も」
すごい睨みつけてきたよ。
「最初合流するって聞いた時は半信半疑だったけど、本当だったとはなぁ」
「ごめんなさいね、二人っきりの方がよかった?」
「いやいやそういう意味じゃないよ。むしろいてくれ。その方が和泉も安心するだろうし」
「…………」
和泉はさきほどからずっと俯いて黙っている。竹原曰く、「アガリ症で、する必要もない緊張をしているだけ」とのこと。確かにこれは誰かサポートできる人間がいた方がいい。
和泉はチェック柄の入った白のワンピースに、デニムのジャケットを羽織っていた。派手過ぎず、でも控えめにもならないセンスを感じさせる組み合わせで、いつもの和泉とはまた違った新鮮さを感じた。ファッションに疎い俺だが、月並みに言ってすごく良い。
そこで和泉と目が合い、慌てて目線をそらした。まずいまずい。
「それじゃあ早速映画館行こうぜ。あ、これ先にチケット買っておいたから」
木元は俺たちにチケットを手渡していく。
いつも映画を見るときはオンラインでチケットを購入していたため気が回らなかったが、当日買おうとすれば四つ並んだ席を確保するのは人気の映画なら難しい。
「金は後で払ってくれればいいから。んじゃ行こうぜ」
そう言って木元は意気揚々と映画館に向かっていく。
「この気遣い……あいつ高感度を上げに来ているな。只者じゃないぞ」
「竹原さん、これそういうゲームじゃないっす」
こいつはチケットを握り締めながら何を言ってやがる。
「高崎は原作読んだのか?」
男二人で売店に並んでいる最中、木元がふと尋ねてくる。
「三日前読み終わった」
「おおばっちりだな。俺も昨日読み終わったばっかりだ。図書館探してもないから思わず買っちまったよ。やっぱり予備知識は重要だよな。見終わった後にも話題を広げられるし」
「まぁそうだな」
「それに和泉も結構原作が好きらしいからやっぱり原作は読んでおかないと。映画だけだと格好つかないし」
「楽しみ方は人それぞれだ。良いと思った方法で楽しめば良いと思うぞ」
「ん?」
「あ、いやこの前和泉に言われた言葉だ。だから別に原作を読んでないからって和泉は気にしないと思うぞ」
「親友の彼氏さんが言うんだから信じてもいいんだろうな」
「はぁ?誰が彼氏だって?」
「あれ、だってお前と竹原って」
「あぁぁぁそうねそうそう。そうよそうよ」
何だそっちだったか。竹原ね。てっきり和泉のことかと思ったじゃねぇかあぶねぇあぶねぇ。そういう設定だったことを完全に忘れていた。これは気を引き締める必要があるな。
そこで助け舟のようにちょうど俺たちの番が来たので矢継ぎ早に注文をした。
映画の内容は殆ど原作再現になっており、改悪もない代わりに改良もなく、程ほどのできであった。
ただ一つ、最後の部分にだけ原作には無いキスシーンが挿入されていた。
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