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序章「翳る太陽」
1話
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街の喧騒から切り離された深い森林。夜になり静寂が辺りを包み、生き物たちが寝静まっている。彼はそこに身を潜めていた。薄汚れた大きめの布を被り身を隠す。
息も荒くなる程に歩き、辿り着いたその奥地に小屋があった。雨風をやっとしのげる程度の古い小屋だったが、家主である彼はそれで十分満足していた。中に入ると蝋燭に火を灯す。小屋の中は多くの人形たちが目を瞑り沈黙していた。人形たちはどれも端正な顔立ちをしていたが、蝋燭の灯火に照らされて不気味さを増す。
被っていた布を軽く畳んで椅子に掛けやり。背負っていた麻布の鞄を手に持つと、彼は作業机に向かった。踏まれた床が悲鳴を上げる。鞄を置き、机の上に視線を移す。
そこには乱雑に置かれた古びた本や散らばったメモ、そして20センチぐらいの人形が転がっていた。その人形の顔は幼げで年端の行かない少年の姿をしている。整った顔立ちをしていて、瞳は閉じられている。彼は人形を持ち上げて、暗い紺の髪を慈しむように撫でた。
片手で鞄から小さな革の袋を取り出す。逆さまにした袋の中には、透き通った桜色の石が嵌った銀細工のリングが1つ。そして、少し大きい同じ石のルースが転がった。ルースを手に取った彼は人形の腰の辺りにある窪みへとルースを嵌め込む。
途端、石が眩い輝きを放つと、小屋の中を明るく照らし出す。飾られた人形たちや彼自身を照らすその光が消え、その人形がゆっくりと目を覚ました。その瞳は嵌め込まれた石のように透き通った桜色をしている。彼は人形の小さな手を優しく握ると微笑んだ。
「……この世界へようこそ、我が息子よ」
息も荒くなる程に歩き、辿り着いたその奥地に小屋があった。雨風をやっとしのげる程度の古い小屋だったが、家主である彼はそれで十分満足していた。中に入ると蝋燭に火を灯す。小屋の中は多くの人形たちが目を瞑り沈黙していた。人形たちはどれも端正な顔立ちをしていたが、蝋燭の灯火に照らされて不気味さを増す。
被っていた布を軽く畳んで椅子に掛けやり。背負っていた麻布の鞄を手に持つと、彼は作業机に向かった。踏まれた床が悲鳴を上げる。鞄を置き、机の上に視線を移す。
そこには乱雑に置かれた古びた本や散らばったメモ、そして20センチぐらいの人形が転がっていた。その人形の顔は幼げで年端の行かない少年の姿をしている。整った顔立ちをしていて、瞳は閉じられている。彼は人形を持ち上げて、暗い紺の髪を慈しむように撫でた。
片手で鞄から小さな革の袋を取り出す。逆さまにした袋の中には、透き通った桜色の石が嵌った銀細工のリングが1つ。そして、少し大きい同じ石のルースが転がった。ルースを手に取った彼は人形の腰の辺りにある窪みへとルースを嵌め込む。
途端、石が眩い輝きを放つと、小屋の中を明るく照らし出す。飾られた人形たちや彼自身を照らすその光が消え、その人形がゆっくりと目を覚ました。その瞳は嵌め込まれた石のように透き通った桜色をしている。彼は人形の小さな手を優しく握ると微笑んだ。
「……この世界へようこそ、我が息子よ」
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