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第0話 互いの理想・運命
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初めての感覚だった。胸を締め付けるような苦しくて、でも高鳴るこの気持ち。俺は初めてのことに緊張、恐怖、そして快楽…様々な感情が俺に押し寄せた。
━━━━━━━━━━━━言わなくちゃ━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━今ここで━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━今じゃなきゃ━━━━━━━━━━━━
「好きです。ずっとずっと…好きでした」
この一言で、俺の中の何かが切れる音がし、今ならなんにでもなれる気がする。なんでも、できるような━━━━━━━━━━━━
「えっと…すいません。どちら様でしょうか?」
俺の中の何かが切れると同時に、俺の高校生活に暗く重い幕が閉じようとしていた。
「早く起きて準備しなよ~!!」
「ん、ん~わかったよ~」
早朝、今日も母親の声により少々目覚めの悪い朝を迎えた。
「今は…って、もう7時50分じゃん!!」
俺の名は無条 華崎南下高校の二年。ごくごく平凡な毎日を過ごしている。今日も何ら変わらず、いつものように遅刻ギリギリに起き雷鳴のごとく準備をこなしていく。
「母さん!! もう少し早く起こしてくれてもよかったんじゃない!?」
「ちゃんと起こしたよ。はいはいそんなこと言ってる暇があったら学校に早く向かいなさい」
母さんはやれやれと顔を左右に振りながら言った。
「じゃ、じゃあ行ってきます!!」
「行ってらっしゃ~い」
俺は母さんに一言言い、足早に学校へと向かった。
急げ急げ~!! 今日の一限って確か数学だよな…絶対遅れるわけにはいかない!!
なにも考えずとにかく学校へ向かって走ってると、横から声をかけられた。
「よっ! おはよう華崎!! お前も遅刻か!」
「おお、斗真!! よかったぜ、一人で走らなくて済む!」
横から声をかけたのは同じ学年であり小中高と同じ学校だった嶋崎 斗真だった。
「斗真、あんたが遅刻って珍しいな。昨日夜更かしでもしたんか?」
「いや~課題に追われてて寝るのが遅かったんだよ~」
斗真はため息をつきながら俺に事情を話した。
「課題って調理の振り返りのやつか」
「そうだね、そういう華崎はちゃんと終わったのか?」
「え? 何のことを言ってるのかね斗真君?」
俺はわざとらしく斗真に質問を投げかけた。
「お前ってヤツは…」
斗真は呆れた顔をしながら俺のほうへと顔を向けた。
俺らが他愛もない話をしながら走ってると、学校へと着いた。が━━━━━━━━━━━━
「お、おい待ってくれよ!! 斗真、あの先公門しめとるぞ!! まだ30秒あるってのに!!」
「いや、華崎! いつものようにあれでいくぞ!!」
「よしあれだな!!」
俺らは息を合わせて地面に足を力強く踏み込み、宙に舞い門を飛び越えた。普通の高校生がやるべきことではないが…
ふぅ…間に合ったぜ…
「お、おいお前ら!! 遅刻だぞ!!」
「え? いやいや、まだ2秒ありますよ」
俺たちが学校の敷地に足を踏み入れ振り向いたと同時に、登校の終わり、そして一日の始まりを告げるチャイムが鳴り響いた。
「…っ! ま、まぁ今回は良しとする。だが、門を飛び越えるの危険な行為だから次もやってるのを見たら指導票出すぞ」
「はいはい、わかりましたよ」
先公の忠告を軽く相槌で返し、自分たちのクラスへと向かった。
「いや~危なかったな斗真。あやうく遅刻するところだったぜ」
「そうだな、まぁでも次からは余裕をもって登校しような」
「そうだな」
今日の登校の振り返りをしながら教室へと入っていった。
「あ! 華崎くん斗真くんおはよ!! 今日は一段とギリギリだったね」
そう声をかけてきたのは、幼馴染の椿木 夜空だった。
「あぁそうだな。俺は勉強での寝坊だが華崎のやつはただの寝坊らしい」
「お、おい! 俺だって理由はあるぞ!!」
斗真の一言にそんなことはないと一声上げる。
「じゃあ今日の寝坊はどういった理由で? ゲームでの寝坊ってのは聞く気ないからな?」
「…ゲームです」
「モン〇ンだよな?」
「はい…」
斗真は俺の昨日の行動を見ているかのように的確に当ててきた。
だって仕方ないじゃん? ただの一般高校生だよ? そんなのバイトでもなく、部活なんてことよりゲームしていたいじゃん? 普通じゃない?
俺は心の中で、斗真に訴えながら悲しい顔を見せた。
「そんな顔しても意味ないぞ? 第一俺は男だ。それをやっていいのは女だけだぞ? 男がやっても気持ち悪いだけだ」
「う、うるせー訴えてるだけだよ」
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて。華崎くんにもいろいろあるんだと思うよ」
「夜空…」
「夜空~なんていいやつなんだ!! 俺のことをよくわかってくれてるぜ…」
俺は夜空に泣きすがるように共感を求めにいった。
すると、ガラガラと扉が開く音がし、数学の教員が入ってきた。
「よ~しみんな席に着け~授業を始めるぞ~」
教師は気だるそうにみんなに声をかけて授業の準備をし始めた。
なにも起きることはなく、ただいつも通りの一日が過ぎ去ろうとしていた。
「…ん、んん…」
「よし、じゃあこの問題を…今日は24日だから、華崎…っておい誰かあいつを起こしてやってくれ」
周りの人間が俺の体をゆすったり、声をかけたりしている。
「…ん、んだよ人の睡眠を邪魔しやがって…」
「華崎、眠たいのは分かるが今は授業中だ、じゃ眠気覚ましにこの問題解いてみろ」
「えぇ…んっと~17」
「おう正解だ…よくこの問題を暗算でいけたな、お前は頭がいいから俺の授業はつまらないか?」
先公は少し驚いたようにそう言った。
「いや、別に先生の授業は楽しいっすよ。ただ、今日は本当に眠たいだけっす」
俺はあくびをし、再び寝ようとした。
「眠いなら仕方ない…と言いたいところだが、授業は受けてもらわないと困る。あとお前は今日はじゃなく今日もだ」
先公は後半呆れたように言った。
「この時間だけでも見逃して~」
俺は本当に眠いから最後の力を振り絞り何とかお願いをした。
「一応注意はしたからな、よし次に行くぞ~次の単元はな━━━━━━━━━━━━」
俺は深い夢の中へと落ちていった。そして、夢を見た。
…ん、なんだこの胸の高鳴りは? 苦しい、緊張しているのか…? 俺は目の前の女性に何か言わないといけない気がする。なんだ? 言葉が詰まる。言いたいことが言い出せない。なんなんだこの感じは…
「えっと…私はどうすればいいかな? こういう場合ってどうすればいいか分からないの…」
「え? えっと、あ、あの!!」
「は、はい?」
体温が急激に上昇する。鼓動が早くなる。鼓動が鼓膜を刺激する。
「あ、あの!! そ、その!!」
「はい?」
今ここで言わなければ━━━━━━━━━━━━
そうここで━━━━━━━━━━━━
あれ? 前にもこんなことがあったような━━━━━━━━━━━━
なんだっけ…思い出せないや━━━━━━━━━━━━
今はとにかく━━━━━━━━━━━━
「好きです。ずっとずっと…好きでした」
またこの感じだ。何もかもが吹っ切れた。なんとも言い表せれない俺にとってはひどく暗く、辛く、苦しい。長いようで短い時間が過ぎ去ろうとしていた。
「えっと…すいません。どちら様でしょうか?」
そして、すべてが儚く散る。なにも抱く感情はない。まるで、すべてが分かり切っていたかのように━━━━━━━━━━━━
ま、待って!! 行かないでほしい!! 〇〇さん!! 〇△さん…? あれ? 俺が今まで追い求めていたのって、誰だっけ?
━━━━━━━━━━━━み━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━きみ━━━━━━━━ぶ━━━━━━━━━━━━
━━━━━と━━━━━━きみ━━━━━━━━━━━━だい━━━━ぶ━━━━
━━━━きみ、だいじょ━━━━
「ねぇってば!!」
「は!!」
「わ!! やっと起きた、ずっと泣くように寝てたけど大丈夫?」
俺の前には見知らぬ女性が声をかけてきた。
「あ、は、はい大丈夫です」
「よかった。でも君一日中寝てたよ? もう帰る時間だし」
え? なにを言ってるんだこの人は? だってまだ授業中だろ?
俺は反射で時計の方へと目線を向けた。
「えっと…15時30分…え、ホントだ」
「ずっと声をかけても起きてくれないんだもん」
「えっとすいません。どちら様でしょうか?」
俺の前の見知らぬ女性ははっとし、俺に自己紹介を始めた。
「あ、ごめんね? 私は奏月 百華。君の一個上の先輩かな?」
その女性の声は透き通っており耳になじみやすく、若干聞き覚えのある声だった。
「あ、あの。僕らって一度どこかでお会いしたことがありましたっけ? なにか聞きなじみのある声で…」
「…? 私の記憶だとないけど、どこかで会ってるのかな?」
知らないなといった表情でこちらを見つめる。
「そうでしたか。そういえば、なんで僕のことを知っていてわざわざ待ってくれていたのですか?」
「それはね、夜空ちゃんが予定があるから代わりに起こしておいてって先輩である私に託したの。それで全然起きないもんでどうしようか困ってたところ」
自慢気な表情でこちらを見つめる。
「そうでしたか、なんか申し訳ないですね…」
「大丈夫よ気にしないで!! 正直今日は時間があったし暇だったからね!! ところで、なんで泣いてたの?」
彼女は心配そうに尋ねる。
「正直なところ自分にもわかってないですね…なんか、暗く、苦しく、冷たい夢を見ていた気がするんです」
俺は寝起きの声でいま覚えている情報を伝達した。
「そうだったの、それじゃあ私は何の手助けもできないね…」
「い、いえ百華先輩が悪いわけではないので! これは自分の問題ですし、自分で解決していきます!!」
とっさに彼女のフォローをする。
「ありがと、でも何かできることがあれば相談してね!」
彼女は笑顔でそういうと自分のバッグをもって帰宅の準備を始めた。
「はい、ありがとうございます!」
俺もそう言うと帰りの準備を始めた。
「じゃまたね、華崎君」
「ありがとうございました。百華先輩」
「別に先輩じゃなくていいいよ! 呼び捨てでも」
「なら…いやでも僕は百華さんで呼ばせていただきます」
「わかったわ!」
そういうと百華さんは教室から出ていった。
百華先輩、百華さん、百華━━━━
どこかで聞いた事があるような━━━━━━━━━━━━
教室から出た俺は帰路へと向かい今日の出来事を振り返った。
百華さん…どこかで聞いたことあるし、なんか聞きなじみのある声だな…どこで聞いた事があるんだろう…
俺には思い当たる節がない。考えれば考えるほど、百華さんというデータが書き換えられていく。考えているうちにすでにもう家へと着いていた。
「ただいま~」
「お帰り華崎、さっき先生から電話があったけど体調でも悪いの? 今日一日中寝てたらしいじゃない。寝る子は育つっていうけど寝るタイミングは考えなさいよ?」
母は冗談を交えながら体調の心配をしてくれた。
「うん、大丈夫。寝てたらよくなったよ」
「ならいいけど。あと今日の授業内容を書いたノートを夜空ちゃんが持ってきてくれたから、また今度お礼言っときなよ。部屋に置いてあるから」
あいつ、気が利くじゃないか。ありがたく使わせてもらおう。
「わかったよ。母さんもありがとね」
俺は二階へと向かった。だが、引っかかる質問を母へと投げかけた。
「そいやあ母さん、百華っていう先輩知らない?」
「……」
「母さん?」
「…いや、知らないけどどうかしたの?」
表情が見えなかったが何か隠している事だけは分かった。
「ふ~んならいいけど」
その一言を言い俺は再び二階へと向かった。
百華先輩…何かが引っかかる…何があるのだろうか、いや過去に何があったのだろうか…
過去の歯車が再び動き出そうとしている━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━言わなくちゃ━━━━━━━━━━━━
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この一言で、俺の中の何かが切れる音がし、今ならなんにでもなれる気がする。なんでも、できるような━━━━━━━━━━━━
「えっと…すいません。どちら様でしょうか?」
俺の中の何かが切れると同時に、俺の高校生活に暗く重い幕が閉じようとしていた。
「早く起きて準備しなよ~!!」
「ん、ん~わかったよ~」
早朝、今日も母親の声により少々目覚めの悪い朝を迎えた。
「今は…って、もう7時50分じゃん!!」
俺の名は無条 華崎南下高校の二年。ごくごく平凡な毎日を過ごしている。今日も何ら変わらず、いつものように遅刻ギリギリに起き雷鳴のごとく準備をこなしていく。
「母さん!! もう少し早く起こしてくれてもよかったんじゃない!?」
「ちゃんと起こしたよ。はいはいそんなこと言ってる暇があったら学校に早く向かいなさい」
母さんはやれやれと顔を左右に振りながら言った。
「じゃ、じゃあ行ってきます!!」
「行ってらっしゃ~い」
俺は母さんに一言言い、足早に学校へと向かった。
急げ急げ~!! 今日の一限って確か数学だよな…絶対遅れるわけにはいかない!!
なにも考えずとにかく学校へ向かって走ってると、横から声をかけられた。
「よっ! おはよう華崎!! お前も遅刻か!」
「おお、斗真!! よかったぜ、一人で走らなくて済む!」
横から声をかけたのは同じ学年であり小中高と同じ学校だった嶋崎 斗真だった。
「斗真、あんたが遅刻って珍しいな。昨日夜更かしでもしたんか?」
「いや~課題に追われてて寝るのが遅かったんだよ~」
斗真はため息をつきながら俺に事情を話した。
「課題って調理の振り返りのやつか」
「そうだね、そういう華崎はちゃんと終わったのか?」
「え? 何のことを言ってるのかね斗真君?」
俺はわざとらしく斗真に質問を投げかけた。
「お前ってヤツは…」
斗真は呆れた顔をしながら俺のほうへと顔を向けた。
俺らが他愛もない話をしながら走ってると、学校へと着いた。が━━━━━━━━━━━━
「お、おい待ってくれよ!! 斗真、あの先公門しめとるぞ!! まだ30秒あるってのに!!」
「いや、華崎! いつものようにあれでいくぞ!!」
「よしあれだな!!」
俺らは息を合わせて地面に足を力強く踏み込み、宙に舞い門を飛び越えた。普通の高校生がやるべきことではないが…
ふぅ…間に合ったぜ…
「お、おいお前ら!! 遅刻だぞ!!」
「え? いやいや、まだ2秒ありますよ」
俺たちが学校の敷地に足を踏み入れ振り向いたと同時に、登校の終わり、そして一日の始まりを告げるチャイムが鳴り響いた。
「…っ! ま、まぁ今回は良しとする。だが、門を飛び越えるの危険な行為だから次もやってるのを見たら指導票出すぞ」
「はいはい、わかりましたよ」
先公の忠告を軽く相槌で返し、自分たちのクラスへと向かった。
「いや~危なかったな斗真。あやうく遅刻するところだったぜ」
「そうだな、まぁでも次からは余裕をもって登校しような」
「そうだな」
今日の登校の振り返りをしながら教室へと入っていった。
「あ! 華崎くん斗真くんおはよ!! 今日は一段とギリギリだったね」
そう声をかけてきたのは、幼馴染の椿木 夜空だった。
「あぁそうだな。俺は勉強での寝坊だが華崎のやつはただの寝坊らしい」
「お、おい! 俺だって理由はあるぞ!!」
斗真の一言にそんなことはないと一声上げる。
「じゃあ今日の寝坊はどういった理由で? ゲームでの寝坊ってのは聞く気ないからな?」
「…ゲームです」
「モン〇ンだよな?」
「はい…」
斗真は俺の昨日の行動を見ているかのように的確に当ててきた。
だって仕方ないじゃん? ただの一般高校生だよ? そんなのバイトでもなく、部活なんてことよりゲームしていたいじゃん? 普通じゃない?
俺は心の中で、斗真に訴えながら悲しい顔を見せた。
「そんな顔しても意味ないぞ? 第一俺は男だ。それをやっていいのは女だけだぞ? 男がやっても気持ち悪いだけだ」
「う、うるせー訴えてるだけだよ」
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて。華崎くんにもいろいろあるんだと思うよ」
「夜空…」
「夜空~なんていいやつなんだ!! 俺のことをよくわかってくれてるぜ…」
俺は夜空に泣きすがるように共感を求めにいった。
すると、ガラガラと扉が開く音がし、数学の教員が入ってきた。
「よ~しみんな席に着け~授業を始めるぞ~」
教師は気だるそうにみんなに声をかけて授業の準備をし始めた。
なにも起きることはなく、ただいつも通りの一日が過ぎ去ろうとしていた。
「…ん、んん…」
「よし、じゃあこの問題を…今日は24日だから、華崎…っておい誰かあいつを起こしてやってくれ」
周りの人間が俺の体をゆすったり、声をかけたりしている。
「…ん、んだよ人の睡眠を邪魔しやがって…」
「華崎、眠たいのは分かるが今は授業中だ、じゃ眠気覚ましにこの問題解いてみろ」
「えぇ…んっと~17」
「おう正解だ…よくこの問題を暗算でいけたな、お前は頭がいいから俺の授業はつまらないか?」
先公は少し驚いたようにそう言った。
「いや、別に先生の授業は楽しいっすよ。ただ、今日は本当に眠たいだけっす」
俺はあくびをし、再び寝ようとした。
「眠いなら仕方ない…と言いたいところだが、授業は受けてもらわないと困る。あとお前は今日はじゃなく今日もだ」
先公は後半呆れたように言った。
「この時間だけでも見逃して~」
俺は本当に眠いから最後の力を振り絞り何とかお願いをした。
「一応注意はしたからな、よし次に行くぞ~次の単元はな━━━━━━━━━━━━」
俺は深い夢の中へと落ちていった。そして、夢を見た。
…ん、なんだこの胸の高鳴りは? 苦しい、緊張しているのか…? 俺は目の前の女性に何か言わないといけない気がする。なんだ? 言葉が詰まる。言いたいことが言い出せない。なんなんだこの感じは…
「えっと…私はどうすればいいかな? こういう場合ってどうすればいいか分からないの…」
「え? えっと、あ、あの!!」
「は、はい?」
体温が急激に上昇する。鼓動が早くなる。鼓動が鼓膜を刺激する。
「あ、あの!! そ、その!!」
「はい?」
今ここで言わなければ━━━━━━━━━━━━
そうここで━━━━━━━━━━━━
あれ? 前にもこんなことがあったような━━━━━━━━━━━━
なんだっけ…思い出せないや━━━━━━━━━━━━
今はとにかく━━━━━━━━━━━━
「好きです。ずっとずっと…好きでした」
またこの感じだ。何もかもが吹っ切れた。なんとも言い表せれない俺にとってはひどく暗く、辛く、苦しい。長いようで短い時間が過ぎ去ろうとしていた。
「えっと…すいません。どちら様でしょうか?」
そして、すべてが儚く散る。なにも抱く感情はない。まるで、すべてが分かり切っていたかのように━━━━━━━━━━━━
ま、待って!! 行かないでほしい!! 〇〇さん!! 〇△さん…? あれ? 俺が今まで追い求めていたのって、誰だっけ?
━━━━━━━━━━━━み━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━きみ━━━━━━━━ぶ━━━━━━━━━━━━
━━━━━と━━━━━━きみ━━━━━━━━━━━━だい━━━━ぶ━━━━
━━━━きみ、だいじょ━━━━
「ねぇってば!!」
「は!!」
「わ!! やっと起きた、ずっと泣くように寝てたけど大丈夫?」
俺の前には見知らぬ女性が声をかけてきた。
「あ、は、はい大丈夫です」
「よかった。でも君一日中寝てたよ? もう帰る時間だし」
え? なにを言ってるんだこの人は? だってまだ授業中だろ?
俺は反射で時計の方へと目線を向けた。
「えっと…15時30分…え、ホントだ」
「ずっと声をかけても起きてくれないんだもん」
「えっとすいません。どちら様でしょうか?」
俺の前の見知らぬ女性ははっとし、俺に自己紹介を始めた。
「あ、ごめんね? 私は奏月 百華。君の一個上の先輩かな?」
その女性の声は透き通っており耳になじみやすく、若干聞き覚えのある声だった。
「あ、あの。僕らって一度どこかでお会いしたことがありましたっけ? なにか聞きなじみのある声で…」
「…? 私の記憶だとないけど、どこかで会ってるのかな?」
知らないなといった表情でこちらを見つめる。
「そうでしたか。そういえば、なんで僕のことを知っていてわざわざ待ってくれていたのですか?」
「それはね、夜空ちゃんが予定があるから代わりに起こしておいてって先輩である私に託したの。それで全然起きないもんでどうしようか困ってたところ」
自慢気な表情でこちらを見つめる。
「そうでしたか、なんか申し訳ないですね…」
「大丈夫よ気にしないで!! 正直今日は時間があったし暇だったからね!! ところで、なんで泣いてたの?」
彼女は心配そうに尋ねる。
「正直なところ自分にもわかってないですね…なんか、暗く、苦しく、冷たい夢を見ていた気がするんです」
俺は寝起きの声でいま覚えている情報を伝達した。
「そうだったの、それじゃあ私は何の手助けもできないね…」
「い、いえ百華先輩が悪いわけではないので! これは自分の問題ですし、自分で解決していきます!!」
とっさに彼女のフォローをする。
「ありがと、でも何かできることがあれば相談してね!」
彼女は笑顔でそういうと自分のバッグをもって帰宅の準備を始めた。
「はい、ありがとうございます!」
俺もそう言うと帰りの準備を始めた。
「じゃまたね、華崎君」
「ありがとうございました。百華先輩」
「別に先輩じゃなくていいいよ! 呼び捨てでも」
「なら…いやでも僕は百華さんで呼ばせていただきます」
「わかったわ!」
そういうと百華さんは教室から出ていった。
百華先輩、百華さん、百華━━━━
どこかで聞いた事があるような━━━━━━━━━━━━
教室から出た俺は帰路へと向かい今日の出来事を振り返った。
百華さん…どこかで聞いたことあるし、なんか聞きなじみのある声だな…どこで聞いた事があるんだろう…
俺には思い当たる節がない。考えれば考えるほど、百華さんというデータが書き換えられていく。考えているうちにすでにもう家へと着いていた。
「ただいま~」
「お帰り華崎、さっき先生から電話があったけど体調でも悪いの? 今日一日中寝てたらしいじゃない。寝る子は育つっていうけど寝るタイミングは考えなさいよ?」
母は冗談を交えながら体調の心配をしてくれた。
「うん、大丈夫。寝てたらよくなったよ」
「ならいいけど。あと今日の授業内容を書いたノートを夜空ちゃんが持ってきてくれたから、また今度お礼言っときなよ。部屋に置いてあるから」
あいつ、気が利くじゃないか。ありがたく使わせてもらおう。
「わかったよ。母さんもありがとね」
俺は二階へと向かった。だが、引っかかる質問を母へと投げかけた。
「そいやあ母さん、百華っていう先輩知らない?」
「……」
「母さん?」
「…いや、知らないけどどうかしたの?」
表情が見えなかったが何か隠している事だけは分かった。
「ふ~んならいいけど」
その一言を言い俺は再び二階へと向かった。
百華先輩…何かが引っかかる…何があるのだろうか、いや過去に何があったのだろうか…
過去の歯車が再び動き出そうとしている━━━━━━━━━━━━
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