婚約破棄されたからスイーツ店を開きます!

柏木

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物件選び2

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「ミラーさん……そろそろ、ちゃんとしたのないの?」

「お、お嬢様、まだございますとも! むしろ、これからが本番でございます!」

 四軒目は、なんとまだ改修中で、土埃と工具の散乱する空間だった。床は剥がれ、壁紙ははがれかけ、厨房など影も形もなかった。

「……これ、いつ完成するの?」

「三か月後には……たぶん……」

 即、却下である。

◆◆◆

 その後も、奇妙な物件ばかりが続いた。

 やけに天井が低い。
 家賃が異常に高い。
 窓がない。
 隣が毎日大声で歌う劇団。
 配管が剥き出しで厨房が水浸し。

「エマ……物件探しって、こんなに難しいものなのね」

「はい……私も正直、想像以上です」

 午後の日差しが傾きはじめ、私たちは少しずつ疲労の色を濃くしていた。

「お嬢様、休憩なさいますか? 甘いものでも……」

「甘いものを作る場所が欲しいのよ、私は……!」

 つい声を荒げてしまい、エマがぴくりと肩をすくめた。

「あっ、ごめん……」

「いえ。お嬢様の覚悟は、伝わっております」

 エマはそう言って、そっと私にハンカチを差し出した。汗と埃にまみれた頬を拭きながら、私は深呼吸する。

「まだよ。きっと、私にぴったりな場所が、どこかにあるはずなんだから」

◆◆◆

「お嬢様。もう一軒、ございます」

 日も暮れかけたころ、ミラー氏が口にしたその言葉に、私は少しだけ体を起こした。

「王都南区にある古い物件ですが、条件は悪くないかと。前は帽子屋だった店舗です」

「帽子屋……いいじゃない。で、そこは香草の香りはしない? 天井は落ちてこない? 幽霊の気配はない?」

「ありませんとも! ……たぶん!」

 「たぶん」の部分には目をつぶって、私は立ち上がった。

「最後にもう一軒。これでダメなら、今日は諦める」

「承知いたしました!」

 馬車に乗り込み、私たちは最後の希望を乗せて走り出した。
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