99 / 105
番外31.眠り姫は王子様の魔法にかけられる おまけ
しおりを挟む
「瀬川主任!次はこれいきましょう!これ!」
「あ、ダメですよぅ!次はこっちっていったじゃないですかぁ!」
「いや、むしろ俺的にはこっちの方がいいんじゃねーかと、な?藤堂」
「なんでもいいから早くして下さい。瀬川さんが、ああ、ほら……」
くちゅん、と冬夜がくしゃみをすると、藤堂が手に持っていたきらびやかな衣装をほっぽりだして、長い腕で囲うように冬夜の体を包み込んだ。
「ちょっと藤堂くん!レンタル衣装なんだから、雑にあつかわないでよ!」
「うるさい。どうでもいいから早く決めろ!瀬川さんに風邪引かす気か?!」
冬夜は現在、藤堂の腕の中、薄いシャツ一枚とボクサーパンツ姿というなさけない姿で、会議室に閉じ込められている。
暖房が効いているとはいえ、長時間の薄着はさすがに辛い。
続けてくちゅん、くちゅん、とくしゃみを連発させると、藤堂が上着を脱いで、冬夜に着せかけてくれた。
大きい。そしてあったかい。
「あー、やっぱりこのアオザイが一番似合ってた気がする」
「何言ってんだ!ここはこれだろ!スリットの深い、男の憧れチャイナドレス!」
「えええ、民族衣装シリーズでいくなら、アラビアンナイト風のこれじゃないですかぁ?!」
なかなか意見のまとまらないらしい三人は、もうすっかりあきらめモードの冬夜と、その冬夜を抱き込んでうんざり顔を見せる藤堂を置き去りにして、熱い戦いを繰り広げている。
もうなんでもいいんじゃないか、と冬夜は思っているのだが、そんな事を口に出したが最後どうなるかは目に見えているので、大人しく口をつぐんでいた。
待つことに疲れたらしい藤堂が椅子をゴロゴロと引っ張ってきて座り、さらにおいでおいでと冬夜を呼び寄せて、膝の上に抱き上げてくれる。
裸足で立っているのも冷えて辛かったので、正直助かった。
膝に抱っこされていたって、どうせそれを見るのはいつものメンバーだけだ。
話がまとまるまで、ちょっと藤堂にもたれて昼寝をしていても、誰も文句は言わないだろう。
そう思い、横抱きにしてもらってぽすんと頭をもたれさせると、心得たように藤堂がしっかりと抱き支えてくれた。
ついでに、いつものようにこめかみにチュ、が落とされる。
「みなさーん。藤堂さんと瀬川主任がイチャイチャモードに突入しだしたので、いい加減に決めてくださーい」
一眼レフを構えたヤル気なさげな小沢の言葉に、鎌田、山口、伊藤の三人が一斉にこちらを向く。
ふぁ、とあくびをしながら藤堂にすり寄ると、鎌田と伊藤が無言でスマートフォンを取り出して構えた。
「撮るな!早く衣装決めろ!」
藤堂の唸りも意に介さず、数回の疑似シャッター音が会議室に響きわたる。
うんもう、好きにしていいよ。
どれだけ止めても、何故だか俺の寝顔の画像が社内で出回りまくってるし、と冬夜はまったり目を閉じる。
「だって、決められないわよ。何着せてもかわいいんだもの」
「でも絶対これで優勝!っていうのが、見つからないんですよねぇ」
「めざせ賞金10万円!だもんよ。気合はいるじゃねーかよ」
三人の言葉に、冬夜の頭上から藤堂の大きなため息が降って来た。
三人の目が血走っているのには、訳がある。
Kカンパニーの女性幹部会主催で毎年行われている大きなイベントが、来月頭に開催されることになっているのだが、お祭り好きな彼女たちが今年に開催するイベント、それは。
「男性社員の女装による、ミスコン」だ。
グループ参加でも、個人参加でも可。
というわけで、冬夜は山口や鎌田に拝み倒され、女装してミスコンにグループ参加することになった。
エントリーシートには、出場する男性社員の女装姿の写真を添付しなければならないため、現在冬夜たちは定時後の会議室を借りて、衣装合わせと撮影を行っている所だ。
優勝者(チーム)には賞金10万円が贈られる上に、グループ人数分の3カ月間食堂利用無料券もついてくるので、社内の女装に自信ありな男共は、我こそはと参加表明をしているらしい。
先日の一件により、冬夜は自分が「女装はそこそこイケる方」だという事を知ってしまった。
鎌田と伊藤のメイクと衣装選びの腕前がSFX並みにすごかったというのも、もちろんある。
そんなわけで、参加することに否やはない。
ただ、準備のあれこれが大変なんだろうな、と思うだけで。
「何着てもかわいいんだったら、何着ても優勝だろ?この際じゃんけんで決めたらどうだ?」
藤堂が、うとうとする冬夜を抱きかかえながら投げやりにそう言い放つ。
「何言ってんの!結構ライバル多いのよ?!エントリーしたチーム見たでしょ?」
そう言われてみると、エントリーメンバーには「男にしては綺麗」系が多い気がした。
同じ第一営業部からは新人の篠宮嵐も参加すると聞いているし、掛橋率いる第二営業部チームのからは、「白雪姫」とあだ名されている、色白のかわいい男性社員が参加予定だ。
「それでも間違いなく、瀬川さんが一番かわいいから問題ない」
あばたもえくぼとは良くいったものだ、と、半ば呆れながら、冬夜は夢うつつに、恋人を手放しでほめる藤堂をくすくすと笑う。
「ああほら、もう寝ちゃうぞ。ホント早く決めろよ?」
いつも冬夜を抱きかかえて寝かしつけている藤堂は、冬夜が落ちるタイミングを良く知っている。
さすがは藤堂!と、夢の世界まであと数歩というところを漂っている冬夜は、自分の恋人の洞察力に感心しながら、さらに眠りの世界に近づいていく。
「いやん、寝顔もかわいいですう。もういっそ、裸に背広に抱っこでねんね、みたいなこの姿で撮影はどうですか?」
「お、それいいんじゃねーか?白い太腿とふくらはぎが、キレイだしなー」
「バカ言わないで下さい。ダメに決まってるでしょう!いいから早く決めて下さいって!」
低く唸る藤堂の声を最後に、冬夜の意識はぷっつり途切れた。
目が覚める頃には、きっと決着がついているだろうと思う。
だから藤堂、もう少しだけこのままでお願い。
そして、男性社員によるミスコンで冬夜が着る衣装に決まったのは……
☆なんでしょう。皆様のご想像におまかせします。
「あ、ダメですよぅ!次はこっちっていったじゃないですかぁ!」
「いや、むしろ俺的にはこっちの方がいいんじゃねーかと、な?藤堂」
「なんでもいいから早くして下さい。瀬川さんが、ああ、ほら……」
くちゅん、と冬夜がくしゃみをすると、藤堂が手に持っていたきらびやかな衣装をほっぽりだして、長い腕で囲うように冬夜の体を包み込んだ。
「ちょっと藤堂くん!レンタル衣装なんだから、雑にあつかわないでよ!」
「うるさい。どうでもいいから早く決めろ!瀬川さんに風邪引かす気か?!」
冬夜は現在、藤堂の腕の中、薄いシャツ一枚とボクサーパンツ姿というなさけない姿で、会議室に閉じ込められている。
暖房が効いているとはいえ、長時間の薄着はさすがに辛い。
続けてくちゅん、くちゅん、とくしゃみを連発させると、藤堂が上着を脱いで、冬夜に着せかけてくれた。
大きい。そしてあったかい。
「あー、やっぱりこのアオザイが一番似合ってた気がする」
「何言ってんだ!ここはこれだろ!スリットの深い、男の憧れチャイナドレス!」
「えええ、民族衣装シリーズでいくなら、アラビアンナイト風のこれじゃないですかぁ?!」
なかなか意見のまとまらないらしい三人は、もうすっかりあきらめモードの冬夜と、その冬夜を抱き込んでうんざり顔を見せる藤堂を置き去りにして、熱い戦いを繰り広げている。
もうなんでもいいんじゃないか、と冬夜は思っているのだが、そんな事を口に出したが最後どうなるかは目に見えているので、大人しく口をつぐんでいた。
待つことに疲れたらしい藤堂が椅子をゴロゴロと引っ張ってきて座り、さらにおいでおいでと冬夜を呼び寄せて、膝の上に抱き上げてくれる。
裸足で立っているのも冷えて辛かったので、正直助かった。
膝に抱っこされていたって、どうせそれを見るのはいつものメンバーだけだ。
話がまとまるまで、ちょっと藤堂にもたれて昼寝をしていても、誰も文句は言わないだろう。
そう思い、横抱きにしてもらってぽすんと頭をもたれさせると、心得たように藤堂がしっかりと抱き支えてくれた。
ついでに、いつものようにこめかみにチュ、が落とされる。
「みなさーん。藤堂さんと瀬川主任がイチャイチャモードに突入しだしたので、いい加減に決めてくださーい」
一眼レフを構えたヤル気なさげな小沢の言葉に、鎌田、山口、伊藤の三人が一斉にこちらを向く。
ふぁ、とあくびをしながら藤堂にすり寄ると、鎌田と伊藤が無言でスマートフォンを取り出して構えた。
「撮るな!早く衣装決めろ!」
藤堂の唸りも意に介さず、数回の疑似シャッター音が会議室に響きわたる。
うんもう、好きにしていいよ。
どれだけ止めても、何故だか俺の寝顔の画像が社内で出回りまくってるし、と冬夜はまったり目を閉じる。
「だって、決められないわよ。何着せてもかわいいんだもの」
「でも絶対これで優勝!っていうのが、見つからないんですよねぇ」
「めざせ賞金10万円!だもんよ。気合はいるじゃねーかよ」
三人の言葉に、冬夜の頭上から藤堂の大きなため息が降って来た。
三人の目が血走っているのには、訳がある。
Kカンパニーの女性幹部会主催で毎年行われている大きなイベントが、来月頭に開催されることになっているのだが、お祭り好きな彼女たちが今年に開催するイベント、それは。
「男性社員の女装による、ミスコン」だ。
グループ参加でも、個人参加でも可。
というわけで、冬夜は山口や鎌田に拝み倒され、女装してミスコンにグループ参加することになった。
エントリーシートには、出場する男性社員の女装姿の写真を添付しなければならないため、現在冬夜たちは定時後の会議室を借りて、衣装合わせと撮影を行っている所だ。
優勝者(チーム)には賞金10万円が贈られる上に、グループ人数分の3カ月間食堂利用無料券もついてくるので、社内の女装に自信ありな男共は、我こそはと参加表明をしているらしい。
先日の一件により、冬夜は自分が「女装はそこそこイケる方」だという事を知ってしまった。
鎌田と伊藤のメイクと衣装選びの腕前がSFX並みにすごかったというのも、もちろんある。
そんなわけで、参加することに否やはない。
ただ、準備のあれこれが大変なんだろうな、と思うだけで。
「何着てもかわいいんだったら、何着ても優勝だろ?この際じゃんけんで決めたらどうだ?」
藤堂が、うとうとする冬夜を抱きかかえながら投げやりにそう言い放つ。
「何言ってんの!結構ライバル多いのよ?!エントリーしたチーム見たでしょ?」
そう言われてみると、エントリーメンバーには「男にしては綺麗」系が多い気がした。
同じ第一営業部からは新人の篠宮嵐も参加すると聞いているし、掛橋率いる第二営業部チームのからは、「白雪姫」とあだ名されている、色白のかわいい男性社員が参加予定だ。
「それでも間違いなく、瀬川さんが一番かわいいから問題ない」
あばたもえくぼとは良くいったものだ、と、半ば呆れながら、冬夜は夢うつつに、恋人を手放しでほめる藤堂をくすくすと笑う。
「ああほら、もう寝ちゃうぞ。ホント早く決めろよ?」
いつも冬夜を抱きかかえて寝かしつけている藤堂は、冬夜が落ちるタイミングを良く知っている。
さすがは藤堂!と、夢の世界まであと数歩というところを漂っている冬夜は、自分の恋人の洞察力に感心しながら、さらに眠りの世界に近づいていく。
「いやん、寝顔もかわいいですう。もういっそ、裸に背広に抱っこでねんね、みたいなこの姿で撮影はどうですか?」
「お、それいいんじゃねーか?白い太腿とふくらはぎが、キレイだしなー」
「バカ言わないで下さい。ダメに決まってるでしょう!いいから早く決めて下さいって!」
低く唸る藤堂の声を最後に、冬夜の意識はぷっつり途切れた。
目が覚める頃には、きっと決着がついているだろうと思う。
だから藤堂、もう少しだけこのままでお願い。
そして、男性社員によるミスコンで冬夜が着る衣装に決まったのは……
☆なんでしょう。皆様のご想像におまかせします。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
3,144
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる