上 下
3 / 3

第三話

しおりを挟む
「貴族家の優遇政策、ですか。」

 情報収集を終え宿に戻ったした私は早速ヘルメスと情報を共有する。

「言ってしまってはなんですが随分と普通ですね。」
「ええ。でも優遇、という言葉で片付けるには少し事態は深刻みたい。特に商売が制限された下町に反乱分子が集合して内乱寸前、ということらしいわ。」
「他国との戦争中に内戦は起こしたくない。そこから交渉に繋げるおつもりですか。」
「察しがいいわね。情報収集にあまり時間もかけていられないし、早速行動しましょう。」
「もう少し慎重に行動したいところではありますが、いつ状況が急変するかもわかりませんからね。」

 私たちの目的は家族の奪還。戦争の終結はそのための一つの手段でしかないが、現状家族が危険である以上、早急にことを進める必要がある。

「ところで、具体的な交渉策はおありなのですか?」
「まあないわね。反乱分子の詳しい情報がない以上、懐柔するにしても作戦の立てようがないわ。」
「つまり今回は上層部への脅し、がメインということですね。」
「取り敢えず一時的にでも戦争を止めたいわね。その後に協力関係を作れれば御の字
、というところね。」
「しかし脅迫してきた相手と協力関係を結ぼうとするでしょうか?」

 問題点はそこだ。だが最終的に相手の望む結果をもたらせるのであれば交渉は可能なはず。
 目的のためには必ず戦争を永続的に停止する必要がある。協力関係とは言わずとも互いに利のある関係を作りたい。

「そうなるように仕向けるしかないわ。相手に話が通じる人がいるかは賭けだけどね。」
「そこは願うしかありませんね。作戦の詳細を決める前に私の情報を共有させていただいてもよろしいですか?」

 ヘルメスが情報を集めていたのは軍部。危険だと思ったが自信があったようなので任せることにしたのだった。
 今回の行動で早くも上層部の会議の情報を得ることができた。時間は3日後の夜。逃す理由もなく早速襲撃の準備に取り掛かる。警備の配置や会議に参加する人員、必要な情報は多い。あわただしく時間は過ぎ去り、当日を迎える。



ーーー今頃あの人はどうしているだろう。
 安堵しているだろうか、後悔しているだろうか。
 感情を出さない人だから、一人で苦しんでいるかもしれない。
 あの子はどうだろう。
 難しい性格だ。新しい居場所に戸惑って思うように動けていないかもしれない。
 まあそれくらいの方があの子の教育にはいいかもしれない、なんて思ったりもして。


 ああ、早く会いたい。
 私の大切な、たった2人に。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...