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ネコミミ幼馴染ととある日曜日

7匹目 『折角の遊戯が良く動く幼馴染の所為で楽しめないのだがどうすれば良いだろう?』

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「…なあ、マ◯オをジャンプさせるのと同時に本体まで跳ねるのやめろ! やるなら足から降りてくれ、普通に痛い!」

「え、あ、ごめん、は、跳ねないように気をつけて…ああ落ちちゃった、にゃぁ!」

 ぴこぴこと眼前に広がる、身体に連動して揺れ動くネコミミに視界を遮られた俺は、そう叫ぶ。



 諦めから3時間、ちょこちょこ休憩を挟みつつ暫しゲームに勤しむ俺と猫宮なのだが……今の叫びから察していただける事だろう。

 こいつ、猫宮は所謂“身体も動くタイプ”だ。それだけなら良いのだが、この3時間、殆どを俺の胡座の中央に収まった状態で跳ねたり揺れたり曲がったりしている所為で、まともにプレイ出来ないわ中々立てないから足は痺れるわ跳ねられて痛いわで良い事が何一つとしてない。

 その上、猫宮自身は動きなからでないと上手くプレイ出来ず、俺の足からは降りないが動くのも癖や反射の様なもので辞めれないと言うクソ状況でのプレイを強いられている訳だ。

 ……いやほんと、ゲームって本来暇潰しとか楽しむ為の物じゃ無かったっけ? 痛いんだけど。楽しめてないんだけど!


「もう良いや、勉強するか! それなら身体が動く事もねえだろ!」

「や、やぁぁぁぁぁ! 折角テスト終わって、犬斗と遊べるのに…!」

「なら降りろ! それだけで済む話じゃねえか!」

「う、うう……それなら勉強を……」

「どんだけ降りたくないんだよ!! ……はぁ」


 故にこの状況から脱する為の策を嵩じようとするも、やはりと言うか何と言うか、猫宮は俺ですらやりたくは無い勉強の方を選ぶ。

 溜息を吐き、他の手段を探しーーそして、見つける。

 ……良し、時間もちょうど良いし昼飯を作ろう、と。


 やはりコントの様に感じるやり取りの間ポーズ画面で止まったままのモニターを横目に、俺は強引に猫宮を退かし、立ち上がる。


「ああぁぁぁぁ……犬斗ぉ…」

「…昼飯作るだけだ。時計見てみろ、もう12時前だ」

「そ、それなら分かった、にゃあ…… わたしは、毛布にくるま「それは止めろ」にゃぁぁ……」


 はぁ……全く、こいつとのやり取りは骨が折れる。

 と言うかだ。何故こいつは機械類駄目な癖に、ゲームの操作は出来るんだ? 決して上手いわけでは無いのだが。

 以前疑問に思って聞いたら『何となく』との返答が帰ってきたのだが、未だに合点がいかない。いやまあ、仮に納得出来たとしてだからなんだって話なのだが。

 予め考えていた昼食のメニューに必要な具材を冷蔵庫から取り出しつつ、キッチン越しに、止めろと言ったのに結局毛布に包まれた猫宮を眺めて考える。

 因みに、具材は当然人参人参&ニンジンだ。今日の昼食は人参サラダに人参炒め、人参ポタージュとデザートには人参カップケーキwith生クリームだ。
 飽きが来たら食べ切れなくなるし、多少味は差別化しつつまともに整えるがな。


「…はっ! け、犬斗の匂いの中に人参の臭いが……や、やっぱり、人参尽くしなの、にゃ……?」

「ん? 当然だろう、そうでなければお仕置きにはならないからな。行っておくがお前、今日口に入れたもの全て人参入ってたからな?」

「にゃ、にゃぁぁ……!? …あれ、でも味はあんまり……」


 お仕置きで思い出した内容を満面の笑みで伝えたのだが、何と言うか、余りダメージを受けていない……?

 そんな馬鹿な、と内心の中、用意した人参とその他の具材の調理を進めて行く。


「……やっぱり、犬斗優しい、にゃ!」

「……何でそうなるんだよ」


 やっぱり、こいつの思考はよく分からない。
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