氷の侯爵令嬢は、温室の騎士に融かされる

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第4章:温かい日差しの中で

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第4章:温かい日差しの中で

新種の薬草は瞬く間に国の主要産業となりアルジェント侯爵家は未曾有の繁栄を遂げた。私の功績は王都でも広く知られるようになり「氷の侯爵令嬢」という蔑称は、いつしか「聡明な侯爵令嬢」という敬称に変わっていた。そしてレオンは、第一王子の推薦により正式に治癒魔法士として王城に迎えられ、その能力を惜しみなく発揮していった。彼の魔法は病を癒し人々に希望をもたらし、その名声は国中に響き渡った。

一方、第二王子エドワード殿下は自身の失態とレオンの真の力の露呈により国民からの信頼を完全に失い王位継承権を剥奪された。彼の代わりに王位に就いたのは、穏健で公正な第一王子だった。イリス・フローラは自身が「聖女」として人々を癒すことはできず、その能力も曖昧であったことが露見し、権威を失墜した。人々からの期待は嘲笑へと変わり彼女は王都を追われるように去っていった。彼らは自分たちの傲慢さと真実を見抜く目のなさによって全てを失ったのだ。そして私が彼らに抱いていた感情は、もはや憎しみでも悲しみでもなかった。ただ何の関心も抱いていなかった。彼らは私の人生から完全に消え去った。まるで最初から存在しなかったかのように。

別荘の庭は、今ではアルジェント侯爵家の広大な薬草園として多くの人々が働く場所となっていた。そこにはレオンが設計した特別に大きな温室も作られていた。陽光が降り注ぐガラス張りのその場所は、まさに彼のもう一つの世界だ。私はそこでレオンと共に新しい薬草の研究に没頭する日々を送っていた。私たちの研究は国の医療発展に大きく貢献し多くの人々の命を救った。時には夜遅くまで議論を交わし新しい発見をするたびに子供のように喜び合った。その一つ一つの瞬間が私にとって何よりもかけがえのない宝物だった。

ある晴れた午後、私たちは庭のベンチに座り咲き誇る花々を眺めていた。私の手にはレオンが淹れてくれた温かいハーブティーが握られている。その香りは以前の私には決して理解できなかった、安らぎと幸福の匂いがした。心地よい風が吹き抜け花々の甘い香りが私たちを包む。

「セレフィア様、最近はよく笑われるようになりましたね」
レオンが私の顔を見て優しく微笑んだ。その瞳には、私を見守る深い愛情が宿っている。

私は彼の言葉に、はっとした。確かにいつの間にか私は感情を素直に表現できるようになっていた。悲しい時には涙を流し嬉しい時には心から笑う。それはレオンが私に与えてくれた本当の自由だった。父も私が笑う姿を見て、以前のような厳しい視線を向けることはなくなった。「お前が幸せなら、それでいい」と初めて本心からの言葉をかけてくれたのだ。家族との関係もレオンのおかげで少しずつ変わっていった。

「ええ。あなたのおかげです、レオン」
私は彼の目を見て心からの感謝を伝えた。彼の瞳は、私を温かく包み込む。
「僕も、セレフィア様のおかげで、自分の居場所を見つけることができました。騎士としては不向きな僕でも、セレフィア様の隣でなら、役に立てると知りました。セレフィア様の側にいることが、僕にとって一番の喜びです」
レオンはそう言って、私の手をそっと握った。彼の指は以前よりも少しだけごつごつとしていた。それは彼がどれほど真剣に薬草や人々と向き合ってきたかの証拠だった。彼の掌から伝わる温かさが私の心を深く満たした。

私の心はもう氷ではない。温かい水のように彼に寄り添うことができる。彼の存在が私を完全に溶かし私自身を解き放ってくれたのだ。
「レオン……」
私が彼の名を呼ぶと、彼は私を見つめ少し照れたように微笑んだ。
「セレフィア様、僕は……セレフィア様を、ずっとお守りしたい」
彼の言葉は騎士としての誓いであると同時に私への深い愛情を物語っていた。そして、その愛は私を縛るものではなく私を解き放ち羽ばたかせるものだった。

私は彼の言葉にただ頷いた。もう完璧であろうと繕う必要はない。感情を押し殺す必要もない。私はありのままの私として温かい日差しの下で愛するレオンの隣で生きていける。

レオンは私の指先に口づけ、そして私を抱きしめた。彼の腕の中で私はこの上ない安心感と幸福に包まれた。彼の胸の鼓動が私の心臓に響く。それは紛れもない愛の音だった。
温室の中では、私たちが育てたマーガレットの花が風に揺れて白い花びらをそよがせる。それは私が初めてレオンと心を通わせた日のように清らかで、そして希望に満ちていた。これからも、この温かい場所で彼と共に多くの花を咲かせ多くの愛を育んでいくだろう。
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