狂気の推し活令嬢リリアーナ様!

YY

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第16話:護衛部隊の拡張!

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あの誘拐事件の一件以来、学園内でわたくしを見る生徒たちの目が、明らかに変わりましたわ。
以前は「断罪された悪役令嬢」として、まるで汚物でも見るかのように遠巻きにされておりましたが、今ではすれ違う誰もが、畏怖と、そしてほんの少しの憧れが混じったような、熱のこもった視線をわたくしに送ってくるのです。

「あの方が、リリアーナ様…」
「悪の組織に一人で立ち向かったという、気高きお方…」
「わたくし、感動いたしましたわ! あの方のように、強くありたいと!」

ふふ、悪役令嬢時代を思い出しますわね。この、恐れられ、しかし同時に一目置かれている感じ。嫌いではありませんわ。むしろ、この影響力、このカリスマ性、ただ眠らせておくのはあまりにもったいない! これは神がわたくしに与えたもうた、推し活のための力に違いありませんわ!
そうですわ。ゼノン様という至宝を、この先待ち受けるであろう更なる脅威…例えば、彼に言い寄る不埒な令嬢や、彼の功績を妬む腹黒い貴族、果ては彼の進路を妨害する道端の小石に至るまで、その全てからお守りするには、わたくし一人、いえ、わたくしたち『ゼノン様護衛部隊』だけでは、まだ力が足りません! 人手が、圧倒的に足りておりませんのよ!
わたくしの護衛部隊を、さらに拡張する時が来たのです!

わたくしは、自分を慕ってくれる生徒たち…特に、わたくしの英雄譚(という名の勘違い)を信じて疑わない純粋な心を持つ方々を、中庭に集めました。その数、実に三十名以上。皆、わたくしの一言一句を聞き逃すまいと、目を輝かせております。
噴水を背に、まるで演説台に立つ革命家のように、わたくしは集まってくれた同志たちに熱弁をふるいました。

「皆さま! この学園に、ひいては、このエルドラド王国に、我々が命を懸けて守るべき宝があることをご存知ですわね!?」

わたくしの問いかけに、生徒たちは「おおーっ!」と地鳴りのような雄叫びを上げます。ええ、ええ、分かりますわ。皆、わたくしが誰のことを言っているのか、すぐに分かったのですね! その熱気、その期待、しかと受け止めましたわ!

「その方こそ、漆黒の鎧をその身に纏い、誰よりも気高く、誰よりも強く、そして誰よりも美しい、我らが近衛騎士、ゼノン様です! 近頃、そのゼノン様を狙う不埒な輩がいるという噂…! もはや、騎士団だけに任せてはおけません! 我々が、彼の盾となり、剣とならねばなりません! この学園の、ひいては王国の宝であるゼノン様を、我々の手で守護するのです!」

わたくしのカリスマに、いえ、推しへの揺るぎない愛の深さに感動したのでしょう。生徒たちは、目に涙を浮かべ、次々に賛同の声を上げてくれましたわ。
「リリアーナ様についていきます!」
「僕も、ゼノン様をお守りしたい! リリアーナ様のように、強く気高い人間になりたいんです!」
「そうです! 我々の手で、ゼノン様を悪の手からお守りしましょう!」

機は熟しました! この熱狂、この一体感! 今こそ、次のステージへ進む時ですわ!
わたくしは、集まってくれた皆の前で、扇を高く掲げ、高らかに宣言いたしました。

「本日をもって、我々はただの護衛部隊から、『ゼノン様護衛騎士団』へと昇格します!」

わあっと、先ほどとは比べ物にならない、割れんばかりの大歓声が上がります。
わたくしは、その熱狂に応えるように、創設メンバーであるわたくしの腹心たちを団長および副団長に任命いたしました。
「団長はこのわたくし、リリアーナ・フォン・エルドラド! 副団長には、わたくしの右腕たるアンナと、左腕たるマリアンヌ! そして、参謀役として、我が盟友、カサンドラ嬢を迎えます!」

わたくしが、嫌々な顔で遠巻きに見ていたカサンドラの名を呼んだ、その時です。
今まで黙って成り行きを見守っていた(というより、あまりの出来事に呆然としていた)カサンドラが、ついに叫びました。その声は、悲鳴に近いものでしたわ。

「これは犯罪です!」

カサンドラは、熱狂する人混みをかき分けてわたくしの元へ駆け寄ると、その両手でわたくしの肩を掴み、涙ながらに訴えます。
「リリアーナ! お願いだから正気に戻って! 王家の許可なく私設の騎士団なんて作ったら、それは明確な反逆行為! 国家反逆罪で、あなただけでなく、あなたの一族郎党、全員処刑されますわよ!」

まあ、なんてことでしょう。
わたくしたちの輝かしい船出に、感激のあまり、おかしなことを口走ってしまって。よほど興奮しているようですわね。彼女のその心配性なところも、愛おしいですけれど。
わたくしは、混乱している親友を安心させるように、その手を優しく取り、聖母のような笑みで諭しました。

「大丈夫よ、カサンドラ。これは、騎士団などという物騒なものではありませんわ。いわば、非公式のボランティア団体ですもの。愛と奉仕の精神で、ゼノン様を陰ながらお支えする、ただのファンクラブですわよ」

その言葉に、カサンドラは「ああ…もう、だめ…論点がずれてる…」と呟き、糸が切れた人形のように、その場に崩れ落ちてしまいました。
きっと、わたくしの完璧な説明に、安心して力が抜けてしまったのでしょう。

さあ、新生『ゼノン様護衛騎士団』の、輝かしい船出ですわ!
わたくしたちの愛の力で、ゼノン様を完璧にお守りしてみせます!
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