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第5章:オペレーション・ジェネシス
第130話:システムの心臓部へ
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【創世の仕様書】に刻まれた衝撃の真実。
信じていた女神への拭いきれない疑念。
あの日以来王城の作戦司令室は墓場より深く冷たい沈黙に支配されていた。
仲間たちに言葉はない。
誰もが世界の脆く不誠実な土台を理解してしまった。女神とのテレパシーは途絶えている。かつて唯一の指針であったその繋がりが今最大の疑念となり心に巨大な穴を開けていた。
彼らは本当の意味で孤立無援となったのだ。
だが瞳に絶望の色はない。
シーナは黙々と短剣を研ぎゴードンは微動だにせずルリエルは静かに古代文献をめくる。心は裏切られた悲しみよりこの理不尽な世界を自らの手で正すという燃えるような怒りの炎に満ちていた。
静かな闘志の中心でケンジは一人思考の海に深く沈む。
この数日間彼はほとんど眠らず膠着した状況を打破する一手を探し続けた。
やがて彼は巨大な大陸地図の前へと静かに立ち上がった。
「皆さん」
ケンジの声が張り詰めた空気を断ち切る。
視線が一斉に彼へと集中した。
「敵のプロファイリングは完了しました。ですがそれはあくまで『人物像』を特定したに過ぎない。次なるタスクへ移行します」
彼は一人ひとりの顔をその目に焼き付けるように見つめた。そして最終決戦の始まりを告げる次なるプロジェクトを宣言した。
「―――『改竄者』の、本拠地を、特定します」
本拠地。その具体的な目標が仲間たちに再び闘志の火を灯した。
ケンジはテーブルに二つの巨大な水晶を置く。アイドスの『マナ・レギュレーター』とグリムフォージの『地熱コア』。世界の理を司る二つの鍵だ。
「僕のスキルで【創世の仕様書】に記された座標データを抽出します。そしてこれまで我々が観測したすべてのアノマリー発生地点のデータとこの二つのシステムのログを照合・分析する」
ケンジの声はどこまでも冷静だ。それはもはや冒険者の勘に頼る索敵ではない。膨大なデータを元に敵の潜伏する唯一の座標を割り出すあまりにも高度な情報戦だった。
「ルリエルさん。あなたには大陸全土の魔力流脈のデータ解析を。ゴードンさん。あなたは地殻変動や古代の地層に関するドワーフの知識を。シーナさん。あなたには古の伝承や禁忌の地にまつわる裏社会の情報を。それぞれ僕の分析をサポートしてください」
それは彼らの「新体制」が初めて真価を発揮する瞬間だった。ケンジの号令一下仲間たちは持ち場へと散る。CTOがリードエンジニアがCSOがそれぞれの専門知識を結集させ一つの巨大な謎に挑む。
ケンジは静かに目を閉じた。
(―――スキル起動、【プロジェクト管理】!)
彼の意識が再びあの情報の宇宙へとダイブしていく。だが目的はコードを読むことではない。そのコードがこの世界の「どこで」実行されたのか。ログデータだけを彼は膨大な情報の海の中から拾い上げていく。
『ミレット村、座標X-138, Y-452にて、リソース枯渇アノマリーを検知』
『風鳴りの山、座標N-88, E-210にて、魔力乱流を確認』
『グリムフォージ近辺、座標S-301, W-15にて、削除領域の発生を確認』
次々と浮かび上がる絶望的なインシデントの記録。一つひとつが仲間たちとの死闘を鮮明に蘇らせる。だがケンジの心は揺れない。彼はただそれらの座標データを巨大な地図の上に一つまた一つとプロットしていく。
それはまるで巨大なパズルのピースをはめるような地道で途方もない作業だった。
だが彼らが歩んできた絶望の軌跡が地図の上に赤い点となって記されるにつれて。
無秩序だったはずの点の配置の中に一つの恐るべき「法則」がゆっくりと姿を現し始めていた。
物語はまだ終わらない。
彼らの旅路そのものが世界の真実を暴くための最後の鍵となろうとしていた。
ケンジの号令一下作戦司令室は神の設計図に挑む解析ラボへとその姿を変えた。
巨大な大陸地図がテーブルの中央に鎮座する。その上を仲間たちが持ち寄った無数のデータが光の粒子となって飛び交い始めた。
まず動いたのはCTOゴードンだ。彼はグリムフォージの最深部から持ち出した地質図を広げる。
「ミレット村とフラックス市。この二つの地点は大陸プレートの最も歪みが大きい断層線上に位置する」
彼の太い指が地図に力強い線を引いていく。
「アノマリーのエネルギーはこの大地の傷跡を伝って流れている可能性が高い」
物理的な基盤がそこに引かれた。
次にリードエンジニアのルリエルがアイドスから持ち帰った膨大な魔力観測データを重ねる。
「ゴードンの言う通りですわ。観測された魔力乱流はすべてこの断層線に沿って同心円状に広がっている。まるで水面に落ちた石の波紋のように…」
彼女の指先から放たれた蒼い光が地図の上にいくつもの円を描き出す。その円の中心にはまだ何も存在しない空白の領域が不気味に浮かび上がっていた。
そして最後にCSOシーナが裏社会から手に入れた古の伝承と禁忌の地の情報を加える。
「面白い話があるぜボス」
彼女は地図の空白領域を指し示した。
「大昔この大陸にはもう一つ天に浮かぶ大陸があったらしい。だが神々の怒りに触れその存在そのものが世界から“消された”。誰も近づくことのできない呪われた聖域としてな…」
物理的な痕跡。
魔法的な波紋。
そして歴史から抹消された伝説。
これまでバラバラだったはずの三つの情報が今この地図の上で恐るべき精度で一つの答えを指し示していた。
ケンジはそのすべての情報をスキル【プロジェクト管理】によって一つの巨大な相関図へと統合していく。
赤い点が地図の上に次々とプロットされていく。
ミレット村。風鳴りの山。グリムフォージ。そして彼らが目撃したあの『削除領域』。
それらの絶望的な座標が無秩序な悲劇ではなかったことに彼は気づいていた。
「…違う…」
ケンジの唇から乾いた声が漏れる。
「これは波紋なんかじゃない。これは…」
彼の瞳が真実の形を捉える。
「―――渦だ」
そうだ。すべてのアノマリーは地図の中心にあるあの空白の領域へ吸い込まれるように巨大な螺旋を描いていた。そこはこの世界に発生したすべてのバグが流れ着く巨大なシステムの“ゴミ箱”。あるいは世界の理そのものが崩壊を始めた特異点(シンギュラリティ)。
ケンジは震える指先でその渦の中心点を指し示した。
「…ここだ」
声はひどくかすれていた。
「改竄者の本拠地は…。ここにある…!」
仲間たちが息をのんでその一点を見つめる。
大陸のまさに中心。
標高数万フィートの上空。
この世界のどの地図にも記されていない空白の聖域。
その場所の名を最初に口にしたのはルリエルだった。ケンジが指し示した座標と自らが読み解いた古代文献の記述が完全に一致したことに戦慄している。
「…まさか…」
声は畏敬の念に震えていた。
「古の伝承にのみ記された幻の天空大陸…。創造主がこの世界で最初に生命を産み落としたとされる始まりの場所…」
彼女はその名をまるで祈りのように呟いた。
「―――『創造の玉座』…」
あまりにも神聖で美しい響き。
だがその幻想を無慈悲に打ち砕いたのはシーナの冷徹な声だった。
「…『創造の玉座』ねえ。笑わせるな」
彼女は忌々しげに吐き捨てる。
「裏社会の連中は別の名前で呼んでるぜ」
シーナの翡翠の瞳に深い恐怖の色が浮かぶ。
「決して近づいてはならない呪われた場所。足を踏み入れたが最後その存在そのものが世界から“消去”される墓場。誰もがそう言って恐れている…」
彼女は絶望的な通称を告げた。
「―――『魔王城』、と、な」
創造の玉座。そして魔王城。
ケンジはそのすべてを肯定するかのように静かに頷いた。
「どちらも、正しい」
彼の声が司令室の重い沈黙を断ち切る。
「そこは世界のシステムを管理する『コア・プロセス』が置かれていた場所。改竄者のコードによってあらゆる物理法則が通用しない不安定な領域と化したあの『削除領域』の発生源。そして世界のシステムが今まさに崩壊しようとしているその震源地です」
ケンジは地図のその一点を赤いインクで力強く囲んだ。
彼らの最後の目的地が定まった。
それは神が遺した始まりの場所であり悪意によって生み出された終わりの場所。
彼らは今そのあまりにも巨大で矛盾に満ちた最終決戦の舞台のその入り口に立っていた。
信じていた女神への拭いきれない疑念。
あの日以来王城の作戦司令室は墓場より深く冷たい沈黙に支配されていた。
仲間たちに言葉はない。
誰もが世界の脆く不誠実な土台を理解してしまった。女神とのテレパシーは途絶えている。かつて唯一の指針であったその繋がりが今最大の疑念となり心に巨大な穴を開けていた。
彼らは本当の意味で孤立無援となったのだ。
だが瞳に絶望の色はない。
シーナは黙々と短剣を研ぎゴードンは微動だにせずルリエルは静かに古代文献をめくる。心は裏切られた悲しみよりこの理不尽な世界を自らの手で正すという燃えるような怒りの炎に満ちていた。
静かな闘志の中心でケンジは一人思考の海に深く沈む。
この数日間彼はほとんど眠らず膠着した状況を打破する一手を探し続けた。
やがて彼は巨大な大陸地図の前へと静かに立ち上がった。
「皆さん」
ケンジの声が張り詰めた空気を断ち切る。
視線が一斉に彼へと集中した。
「敵のプロファイリングは完了しました。ですがそれはあくまで『人物像』を特定したに過ぎない。次なるタスクへ移行します」
彼は一人ひとりの顔をその目に焼き付けるように見つめた。そして最終決戦の始まりを告げる次なるプロジェクトを宣言した。
「―――『改竄者』の、本拠地を、特定します」
本拠地。その具体的な目標が仲間たちに再び闘志の火を灯した。
ケンジはテーブルに二つの巨大な水晶を置く。アイドスの『マナ・レギュレーター』とグリムフォージの『地熱コア』。世界の理を司る二つの鍵だ。
「僕のスキルで【創世の仕様書】に記された座標データを抽出します。そしてこれまで我々が観測したすべてのアノマリー発生地点のデータとこの二つのシステムのログを照合・分析する」
ケンジの声はどこまでも冷静だ。それはもはや冒険者の勘に頼る索敵ではない。膨大なデータを元に敵の潜伏する唯一の座標を割り出すあまりにも高度な情報戦だった。
「ルリエルさん。あなたには大陸全土の魔力流脈のデータ解析を。ゴードンさん。あなたは地殻変動や古代の地層に関するドワーフの知識を。シーナさん。あなたには古の伝承や禁忌の地にまつわる裏社会の情報を。それぞれ僕の分析をサポートしてください」
それは彼らの「新体制」が初めて真価を発揮する瞬間だった。ケンジの号令一下仲間たちは持ち場へと散る。CTOがリードエンジニアがCSOがそれぞれの専門知識を結集させ一つの巨大な謎に挑む。
ケンジは静かに目を閉じた。
(―――スキル起動、【プロジェクト管理】!)
彼の意識が再びあの情報の宇宙へとダイブしていく。だが目的はコードを読むことではない。そのコードがこの世界の「どこで」実行されたのか。ログデータだけを彼は膨大な情報の海の中から拾い上げていく。
『ミレット村、座標X-138, Y-452にて、リソース枯渇アノマリーを検知』
『風鳴りの山、座標N-88, E-210にて、魔力乱流を確認』
『グリムフォージ近辺、座標S-301, W-15にて、削除領域の発生を確認』
次々と浮かび上がる絶望的なインシデントの記録。一つひとつが仲間たちとの死闘を鮮明に蘇らせる。だがケンジの心は揺れない。彼はただそれらの座標データを巨大な地図の上に一つまた一つとプロットしていく。
それはまるで巨大なパズルのピースをはめるような地道で途方もない作業だった。
だが彼らが歩んできた絶望の軌跡が地図の上に赤い点となって記されるにつれて。
無秩序だったはずの点の配置の中に一つの恐るべき「法則」がゆっくりと姿を現し始めていた。
物語はまだ終わらない。
彼らの旅路そのものが世界の真実を暴くための最後の鍵となろうとしていた。
ケンジの号令一下作戦司令室は神の設計図に挑む解析ラボへとその姿を変えた。
巨大な大陸地図がテーブルの中央に鎮座する。その上を仲間たちが持ち寄った無数のデータが光の粒子となって飛び交い始めた。
まず動いたのはCTOゴードンだ。彼はグリムフォージの最深部から持ち出した地質図を広げる。
「ミレット村とフラックス市。この二つの地点は大陸プレートの最も歪みが大きい断層線上に位置する」
彼の太い指が地図に力強い線を引いていく。
「アノマリーのエネルギーはこの大地の傷跡を伝って流れている可能性が高い」
物理的な基盤がそこに引かれた。
次にリードエンジニアのルリエルがアイドスから持ち帰った膨大な魔力観測データを重ねる。
「ゴードンの言う通りですわ。観測された魔力乱流はすべてこの断層線に沿って同心円状に広がっている。まるで水面に落ちた石の波紋のように…」
彼女の指先から放たれた蒼い光が地図の上にいくつもの円を描き出す。その円の中心にはまだ何も存在しない空白の領域が不気味に浮かび上がっていた。
そして最後にCSOシーナが裏社会から手に入れた古の伝承と禁忌の地の情報を加える。
「面白い話があるぜボス」
彼女は地図の空白領域を指し示した。
「大昔この大陸にはもう一つ天に浮かぶ大陸があったらしい。だが神々の怒りに触れその存在そのものが世界から“消された”。誰も近づくことのできない呪われた聖域としてな…」
物理的な痕跡。
魔法的な波紋。
そして歴史から抹消された伝説。
これまでバラバラだったはずの三つの情報が今この地図の上で恐るべき精度で一つの答えを指し示していた。
ケンジはそのすべての情報をスキル【プロジェクト管理】によって一つの巨大な相関図へと統合していく。
赤い点が地図の上に次々とプロットされていく。
ミレット村。風鳴りの山。グリムフォージ。そして彼らが目撃したあの『削除領域』。
それらの絶望的な座標が無秩序な悲劇ではなかったことに彼は気づいていた。
「…違う…」
ケンジの唇から乾いた声が漏れる。
「これは波紋なんかじゃない。これは…」
彼の瞳が真実の形を捉える。
「―――渦だ」
そうだ。すべてのアノマリーは地図の中心にあるあの空白の領域へ吸い込まれるように巨大な螺旋を描いていた。そこはこの世界に発生したすべてのバグが流れ着く巨大なシステムの“ゴミ箱”。あるいは世界の理そのものが崩壊を始めた特異点(シンギュラリティ)。
ケンジは震える指先でその渦の中心点を指し示した。
「…ここだ」
声はひどくかすれていた。
「改竄者の本拠地は…。ここにある…!」
仲間たちが息をのんでその一点を見つめる。
大陸のまさに中心。
標高数万フィートの上空。
この世界のどの地図にも記されていない空白の聖域。
その場所の名を最初に口にしたのはルリエルだった。ケンジが指し示した座標と自らが読み解いた古代文献の記述が完全に一致したことに戦慄している。
「…まさか…」
声は畏敬の念に震えていた。
「古の伝承にのみ記された幻の天空大陸…。創造主がこの世界で最初に生命を産み落としたとされる始まりの場所…」
彼女はその名をまるで祈りのように呟いた。
「―――『創造の玉座』…」
あまりにも神聖で美しい響き。
だがその幻想を無慈悲に打ち砕いたのはシーナの冷徹な声だった。
「…『創造の玉座』ねえ。笑わせるな」
彼女は忌々しげに吐き捨てる。
「裏社会の連中は別の名前で呼んでるぜ」
シーナの翡翠の瞳に深い恐怖の色が浮かぶ。
「決して近づいてはならない呪われた場所。足を踏み入れたが最後その存在そのものが世界から“消去”される墓場。誰もがそう言って恐れている…」
彼女は絶望的な通称を告げた。
「―――『魔王城』、と、な」
創造の玉座。そして魔王城。
ケンジはそのすべてを肯定するかのように静かに頷いた。
「どちらも、正しい」
彼の声が司令室の重い沈黙を断ち切る。
「そこは世界のシステムを管理する『コア・プロセス』が置かれていた場所。改竄者のコードによってあらゆる物理法則が通用しない不安定な領域と化したあの『削除領域』の発生源。そして世界のシステムが今まさに崩壊しようとしているその震源地です」
ケンジは地図のその一点を赤いインクで力強く囲んだ。
彼らの最後の目的地が定まった。
それは神が遺した始まりの場所であり悪意によって生み出された終わりの場所。
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