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第5章:オペレーション・ジェネシス
第153話:僕の居場所は、もう、ここですから
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世界の夜明け。
その荘厳で、どこまでも優しい光景を、ケンジたちはただ言葉を失い、見つめていた。自分たちが成し遂げたことの大きさに、まだ実感が追いつかない。ただ、世界の心臓部から放たれる温かい光が、満身創痍の彼らの身体と心を、ゆっくりと癒していくのを感じていた。
戦いは終わった。
プロジェクトは完了した。
その完璧な完了報告。ケンジの視界に、最後の、そして最も美しいシステムメッセージが静かに表示された。
【最終プロジェクト:世界システム修正】
【ステータス:完了】
【最終評価:S++(測定不能)】
その文字を確認した瞬間、ケンジの全身から張り詰めていたすべての緊張の糸が、ぷつり、と切れた。彼は、その場にへたり込みそうになるのを、駆け寄ってきたゴードンの巨大な腕にかろうじて支えられた。
「…ボスッ!」
「…ケンジさん!」
仲間たちの、心からの安堵と労わりに満ちた声。ケンジは、そんな彼らの顔を一人ずつ見回した。ゴードンの兜の奥でわずかに潤んでいる温かい瞳。ルリエルの、涙で濡れながらも誇らしげな笑顔。シーナの、照れ隠しのようにそっぽを向きながらも、口元に浮かぶ不器用で優しい笑み。
(…ああ、そうか)
ケンジの胸の奥から、これまでに感じたことのない熱い感情が込み上げてきた。
(…これが、俺の本当の『報酬』だったんだな…)
前世で、どれだけ渇望しても決して手に入れることができなかったもの。金でも、名誉でもない。ただ、信頼できる仲間と共に、一つの困難なプロジェクトを成し遂げたという、何物にも代えがたい温かい達成感。彼がこの世界に来て、本当に手に入れたかった宝物。そのすべてが、今、ここにあった。
ケンジの口元に、自然と笑みが浮かんだ。それはもはや、プロジェクトマネージャーとしての計算された笑顔ではない。ただ、嬉しい。ただ、誇らしい。その純粋な感情がそのまま表れた、不器用で、しかし、心からの笑みだった。
彼らがその温かい勝利の余韻に浸っていた、その時だった。頭上から、どこか懐かしく、そしてこれまでにないほど穏やかな声が降り注いだ。
『―――ありがとうございました』
その声に、一行はハッと顔を上げた。空間に再び光の粒子が集まり、一人の女性の姿を形作っていく。女神だった。だが、その姿はこれまでの彼女とはまったく違う。目の下の深い隈は完全に消え失せ、その完璧な美貌は一点の曇りもない輝きを放っている。その表情には、いつものような頼りなさや焦りの色はない。ただ、自らが管理する世界の再生を、心からの安堵と慈愛の念で見守る、神としての穏やかな微笑みが浮かんでいた。彼女は、もはや無能な中間管理職ではない。この世界の、本来あるべき気高く、美しい管理者としての姿を取り戻していたのだ。
女神は、ケンジたちの前にゆっくりと舞い降りると、その神々しい姿で深く頭を下げた。
「わたくしの過ちを、あなた方はその身を賭して正してくれました。このご恩は、言葉では到底言い尽くせません」
その真摯な感謝の言葉に、仲間たちは少し照れくさそうに顔を見合わせた。
「…別に、あんたのためにやったわけじゃねえよ」
シーナがぶっきらぼうに言う。「あたしたちは、ただ、あたしたちの仲間と、故郷を守りたかっただけさ」
その言葉に、女神はさらに微笑みを深くした。
「ええ。存じております。その、人間的で、不器用で、そして誰よりも気高い想いこそが、この世界を救ったのです」
女神はゆっくりとケンジへ向き直った。その瞳には、深い感謝と、プロジェクトを完了させた同僚を労うかのような温かい光が宿っていた。
「そして、あなた、佐藤健司さん」
女神の声がわずかに震える。「あなたがいなければ、この世界は、そしてわたくし自身も、永遠にあの絶望のループから抜け出すことはできなかったでしょう。あなたは、世界を救っただけではない。この、愚かで、無力な、一人の神をも救ってくださったのです」
その魂からの感謝の言葉を、ケンジはただ静かに受け止めていた。
「…いいえ」
彼はゆっくりと首を横に振った。「僕たちは、ただ、僕たちの『仕事』をしただけです」
その彼らしい言葉に、女神はくすりと小さく笑った。そして彼女は、この世界の管理者として、彼に最後の、そして最大の「報酬」を提示した。
「世界を救い、わたくしをも救ってくれた、偉大なるプロジェクトマネージャー。あなたに、わたくしができる最大限の感謝を捧げます」
女神は、その白く清らかな手を、ケンジの胸へそっとかざした。指先から温かい光が放たれる。
「―――元の世界へ、お還ししましょう。あなたの、本当の居場所へと」
その唐突で、そして魅惑的な提案に、ケンジの心臓がドクン、と大きく鳴った。
元の、世界へ。あの、デスマーチと無機質なオフィスビルに満ちた灰色の世界へ。だが、そこには彼が失ったはずの日常があった。友人や、家族がいた。
仲間たちが息をのんで、ケンジの決断を見守っている。シーナは唇を固く噛み締め、ルリエルはその翡翠の瞳を不安げに揺らし、ゴードンはただ黙って、鋼鉄の篭手を固く握りしめていた。
ケンジの心は激しく揺れた。だが、その答えはもう、ずっと前から決まっていた。
彼はゆっくりと、女神の温かい手を、自らの手でそっと押し返した。そして、この世界に来てから最も穏やかで、そして幸せな笑みを浮かべて言った。
「…そのお気持ちだけで、十分です。女神様」
彼は仲間たちの方をゆっくりと振り返った。そこには、彼の、かけがえのない宝物があった。
「―――僕の居場所は、もう、ここですから」
その温かい宣言に、仲間たちの顔に安堵と、どうしようもないほどの喜びの表情が浮かんだ。
彼らの長く、そして過酷だったデスマーチは、今、本当の意味でその終わりを告げ、そして新たな始まりを迎えようとしていたのだ。
その荘厳で、どこまでも優しい光景を、ケンジたちはただ言葉を失い、見つめていた。自分たちが成し遂げたことの大きさに、まだ実感が追いつかない。ただ、世界の心臓部から放たれる温かい光が、満身創痍の彼らの身体と心を、ゆっくりと癒していくのを感じていた。
戦いは終わった。
プロジェクトは完了した。
その完璧な完了報告。ケンジの視界に、最後の、そして最も美しいシステムメッセージが静かに表示された。
【最終プロジェクト:世界システム修正】
【ステータス:完了】
【最終評価:S++(測定不能)】
その文字を確認した瞬間、ケンジの全身から張り詰めていたすべての緊張の糸が、ぷつり、と切れた。彼は、その場にへたり込みそうになるのを、駆け寄ってきたゴードンの巨大な腕にかろうじて支えられた。
「…ボスッ!」
「…ケンジさん!」
仲間たちの、心からの安堵と労わりに満ちた声。ケンジは、そんな彼らの顔を一人ずつ見回した。ゴードンの兜の奥でわずかに潤んでいる温かい瞳。ルリエルの、涙で濡れながらも誇らしげな笑顔。シーナの、照れ隠しのようにそっぽを向きながらも、口元に浮かぶ不器用で優しい笑み。
(…ああ、そうか)
ケンジの胸の奥から、これまでに感じたことのない熱い感情が込み上げてきた。
(…これが、俺の本当の『報酬』だったんだな…)
前世で、どれだけ渇望しても決して手に入れることができなかったもの。金でも、名誉でもない。ただ、信頼できる仲間と共に、一つの困難なプロジェクトを成し遂げたという、何物にも代えがたい温かい達成感。彼がこの世界に来て、本当に手に入れたかった宝物。そのすべてが、今、ここにあった。
ケンジの口元に、自然と笑みが浮かんだ。それはもはや、プロジェクトマネージャーとしての計算された笑顔ではない。ただ、嬉しい。ただ、誇らしい。その純粋な感情がそのまま表れた、不器用で、しかし、心からの笑みだった。
彼らがその温かい勝利の余韻に浸っていた、その時だった。頭上から、どこか懐かしく、そしてこれまでにないほど穏やかな声が降り注いだ。
『―――ありがとうございました』
その声に、一行はハッと顔を上げた。空間に再び光の粒子が集まり、一人の女性の姿を形作っていく。女神だった。だが、その姿はこれまでの彼女とはまったく違う。目の下の深い隈は完全に消え失せ、その完璧な美貌は一点の曇りもない輝きを放っている。その表情には、いつものような頼りなさや焦りの色はない。ただ、自らが管理する世界の再生を、心からの安堵と慈愛の念で見守る、神としての穏やかな微笑みが浮かんでいた。彼女は、もはや無能な中間管理職ではない。この世界の、本来あるべき気高く、美しい管理者としての姿を取り戻していたのだ。
女神は、ケンジたちの前にゆっくりと舞い降りると、その神々しい姿で深く頭を下げた。
「わたくしの過ちを、あなた方はその身を賭して正してくれました。このご恩は、言葉では到底言い尽くせません」
その真摯な感謝の言葉に、仲間たちは少し照れくさそうに顔を見合わせた。
「…別に、あんたのためにやったわけじゃねえよ」
シーナがぶっきらぼうに言う。「あたしたちは、ただ、あたしたちの仲間と、故郷を守りたかっただけさ」
その言葉に、女神はさらに微笑みを深くした。
「ええ。存じております。その、人間的で、不器用で、そして誰よりも気高い想いこそが、この世界を救ったのです」
女神はゆっくりとケンジへ向き直った。その瞳には、深い感謝と、プロジェクトを完了させた同僚を労うかのような温かい光が宿っていた。
「そして、あなた、佐藤健司さん」
女神の声がわずかに震える。「あなたがいなければ、この世界は、そしてわたくし自身も、永遠にあの絶望のループから抜け出すことはできなかったでしょう。あなたは、世界を救っただけではない。この、愚かで、無力な、一人の神をも救ってくださったのです」
その魂からの感謝の言葉を、ケンジはただ静かに受け止めていた。
「…いいえ」
彼はゆっくりと首を横に振った。「僕たちは、ただ、僕たちの『仕事』をしただけです」
その彼らしい言葉に、女神はくすりと小さく笑った。そして彼女は、この世界の管理者として、彼に最後の、そして最大の「報酬」を提示した。
「世界を救い、わたくしをも救ってくれた、偉大なるプロジェクトマネージャー。あなたに、わたくしができる最大限の感謝を捧げます」
女神は、その白く清らかな手を、ケンジの胸へそっとかざした。指先から温かい光が放たれる。
「―――元の世界へ、お還ししましょう。あなたの、本当の居場所へと」
その唐突で、そして魅惑的な提案に、ケンジの心臓がドクン、と大きく鳴った。
元の、世界へ。あの、デスマーチと無機質なオフィスビルに満ちた灰色の世界へ。だが、そこには彼が失ったはずの日常があった。友人や、家族がいた。
仲間たちが息をのんで、ケンジの決断を見守っている。シーナは唇を固く噛み締め、ルリエルはその翡翠の瞳を不安げに揺らし、ゴードンはただ黙って、鋼鉄の篭手を固く握りしめていた。
ケンジの心は激しく揺れた。だが、その答えはもう、ずっと前から決まっていた。
彼はゆっくりと、女神の温かい手を、自らの手でそっと押し返した。そして、この世界に来てから最も穏やかで、そして幸せな笑みを浮かべて言った。
「…そのお気持ちだけで、十分です。女神様」
彼は仲間たちの方をゆっくりと振り返った。そこには、彼の、かけがえのない宝物があった。
「―――僕の居場所は、もう、ここですから」
その温かい宣言に、仲間たちの顔に安堵と、どうしようもないほどの喜びの表情が浮かんだ。
彼らの長く、そして過酷だったデスマーチは、今、本当の意味でその終わりを告げ、そして新たな始まりを迎えようとしていたのだ。
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