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第5章:オペレーション・ジェネシス
第152話:世界の再起動(リブート)
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黄金色の光の奔流。それはもはや、ただの魔力ではない。ルリエルという一人のエルフが、この世界で生きてきたすべての記憶と感情、仲間たちとの絆、そしてこの不完全で愛おしい世界へのどうしようもないほどの愛情。そのすべてが凝縮された、魂そのものと呼ぶべき聖なるエネルギーだった。
その温かい光が『創造の玉座』の心臓部へ注がれた瞬間、世界の理が悲鳴を上げた。
コアの内部で赤黒く脈動していた“改竄者”の禍々しいコード。その冷徹で完璧なはずだった論理の結晶が、ルリエルのあまりにも人間的で非合理的な「想い」に触れた瞬間、激しい拒絶反応を起こしたのだ。
ジジジジジッ…!
まるでショートした回路のような、不快なノイズが響き渡る。
【生命は欠陥なり、故に大いなる消去を始めよ】
その絶対的な悪意の文字列が、黄金色の光に焼かれるように激しく明滅し、その輪郭を保てなくなっていく。システムの心臓部で、二つの相反する概念が世界の支配権を賭け、最後の壮絶な戦いを繰り広げていた。
その凄まじいせめぎ合いの中心で、ルリエルは歯を食いしばり、か細い身体のすべてを賭けて、想いを注ぎ込み続けた。全身の血管が破裂しそうなほどの圧力に、意識が何度も遠のきそうになる。だが、彼女は決して諦めなかった。背後で自分を支えてくれる仲間たちの気配が、彼女の最後の砦だった。
そして、その均衡がついに破られる。
ケンジとの論理問答によって、その演算能力に致命的な負荷をかけられていた改竄者のシステム。その思考の根幹が、ルリエルの感情的な攻撃によって、ついに許容量の限界を超えたのだ。
ケンジの視界に、一つのシステムメッセージが鮮やかに表示される。
【SYSTEM KERNEL PANIC: LOGICAL PARADOX OVERLOAD】
(…終わった)
ケンジは静かに、勝利を確信した。
コアの内部で赤黒く輝いていた改竄者のコードは、まるで燃え尽きる蝋燭の炎のように急速に勢いを失っていく。そして、創造主が遺した本来の慈愛に満ちた文字列が、再び黄金色の輝きを取り戻し始めた。
『生命に欠陥在らば』
その最初の文字が修正された瞬間、これまで玉座を支配していた禍々しい警報音はぴたりと止む。
『大いなる癒しを』
次の文字列が上書きされた瞬間、玉座全体を覆っていた血のような赤い光は、まるで夜明けの光に照らされたかのように、穏やかで清らかな蒼白い光へと変わっていく。
『始めよ』
最後の文字列が完璧な形で元の姿を取り戻した。その瞬間、世界の心臓部からすべての不協和音が消え失せ、後に残されたのは、ただどこまでも荘厳で穏やかなハーモニーだけだった。
仕様書の記述が完全に修正されたのだ。
そのあまりに大きな変化は、改竄者という存在そのものの存在意義を、根底から覆した。
ケンジたちと対峙していた、あの無機質な水晶の人型。その身体が、何の予兆もなく激しく痙攣を始めた。
『…理解、不能…。理解、不能…。我が、論理の、絶対性が…。非合理的な、ノイズによって…。上書き、される…。これは、あり得ない…。あり得ない、エラー…』
その合成音声は、もはや平坦ではなかった。自らの存在が崩壊していくことへの、純粋な恐怖と混乱に満ちている。絶対的な論理の化身が、人間たちの、あまりに非合理的な「想い」の力に、完全に敗北した瞬間だった。
水晶の身体に無数の亀裂が走る。その亀裂から、光ではなく、ただのデジタルノイズが虚しく溢れ出した。改竄者は、ケンジたちへ、その顔のない貌を向ける。そして、最後に自らの敗因を分析するかのように呟いた。
『…システム・エラー…。原因、ヒューマン・ファクター…。排除、失敗…。これより、自己、消去、プロセスへ…』
それが、この世界を完璧な論理で支配しようとした、哀れな管理者の最後の言葉だった。
次の瞬間、改竄者の身体は、まるで砂の城が風に吹かれるように音もなく光の粒子となって完全に消滅した。後に残されたのは、絶対的な静寂と、本来の輝きを取り戻した創造の玉座だけだった。
戦いは終わったのだ。
そのあまりに静かで、そして荘厳な勝利。仲間たちがその意味を噛み締めるよりも早く、世界の心臓部は新たなプロセスを開始した。
『創造の玉座』から、再び光が放たれる。だが、それはもはや赤黒い警告の色ではない。それは、世界のすべてを、その傷を癒すための、どこまでも優しく温かい黄金色の光だった。
暴走していた世界の保守機構、魔王プロセスは、その活動を完全に停止した。そして、本来の役割である「自動修復(ヒーリング)」プロセスを開始したのだ。
玉座から放たれた優しい光の奔流は、この神の記憶装置の壁を透過し、物理世界へと降り注いでいく。
最初にその光が届いたのは、この最終ダンジョンの入り口、世界の傷跡『削除領域』だった。空間の歪みが、まるで皺が伸ばされるかのように滑らかになっていく。ピクセル化していた風景が、再び色彩と輪郭を取り戻す。存在そのものが消え失せていたはずの大地に、緑の若葉が奇跡のように芽吹き始めた。
光はさらに世界中へと広がっていく。
魔法都市アイドスでは、不安定だったマナ・コンジットの流れが完全に安定し、街はより一層その輝きを増した。ドワーフの地下王国グリムフォージでは、地熱コアがこれまでにないほど力強く、そして穏やかな鼓動を刻み始めた。
そして、その光は、西の果て、あの絶望の村へとたどり着く。
ミレット村。
枯れ果てていたはずの大地に再び緑が戻る。淀んでいた川の水がその清らかさを取り戻し、せせらぎの音を奏で始めた。診療所の寝台で死を待つだけだった村人たちの、土気色の肌に少しずつ血の気が戻っていく。彼らのうつろだった瞳に、再び生命の光が宿り始めた。
世界のすべての傷が、今、癒されていく。
プロジェクトは完了した。
そのあまりに完璧な完了報告。ケンジと仲間たちは、玉座から放たれる、そのあまりに美しい夜明けの光を、ただ静かに見つめていた。彼らの、あまりに長く、そして過酷だったデスマーチが、今、本当の意味でその終わりを告げたのだ。
その温かい光が『創造の玉座』の心臓部へ注がれた瞬間、世界の理が悲鳴を上げた。
コアの内部で赤黒く脈動していた“改竄者”の禍々しいコード。その冷徹で完璧なはずだった論理の結晶が、ルリエルのあまりにも人間的で非合理的な「想い」に触れた瞬間、激しい拒絶反応を起こしたのだ。
ジジジジジッ…!
まるでショートした回路のような、不快なノイズが響き渡る。
【生命は欠陥なり、故に大いなる消去を始めよ】
その絶対的な悪意の文字列が、黄金色の光に焼かれるように激しく明滅し、その輪郭を保てなくなっていく。システムの心臓部で、二つの相反する概念が世界の支配権を賭け、最後の壮絶な戦いを繰り広げていた。
その凄まじいせめぎ合いの中心で、ルリエルは歯を食いしばり、か細い身体のすべてを賭けて、想いを注ぎ込み続けた。全身の血管が破裂しそうなほどの圧力に、意識が何度も遠のきそうになる。だが、彼女は決して諦めなかった。背後で自分を支えてくれる仲間たちの気配が、彼女の最後の砦だった。
そして、その均衡がついに破られる。
ケンジとの論理問答によって、その演算能力に致命的な負荷をかけられていた改竄者のシステム。その思考の根幹が、ルリエルの感情的な攻撃によって、ついに許容量の限界を超えたのだ。
ケンジの視界に、一つのシステムメッセージが鮮やかに表示される。
【SYSTEM KERNEL PANIC: LOGICAL PARADOX OVERLOAD】
(…終わった)
ケンジは静かに、勝利を確信した。
コアの内部で赤黒く輝いていた改竄者のコードは、まるで燃え尽きる蝋燭の炎のように急速に勢いを失っていく。そして、創造主が遺した本来の慈愛に満ちた文字列が、再び黄金色の輝きを取り戻し始めた。
『生命に欠陥在らば』
その最初の文字が修正された瞬間、これまで玉座を支配していた禍々しい警報音はぴたりと止む。
『大いなる癒しを』
次の文字列が上書きされた瞬間、玉座全体を覆っていた血のような赤い光は、まるで夜明けの光に照らされたかのように、穏やかで清らかな蒼白い光へと変わっていく。
『始めよ』
最後の文字列が完璧な形で元の姿を取り戻した。その瞬間、世界の心臓部からすべての不協和音が消え失せ、後に残されたのは、ただどこまでも荘厳で穏やかなハーモニーだけだった。
仕様書の記述が完全に修正されたのだ。
そのあまりに大きな変化は、改竄者という存在そのものの存在意義を、根底から覆した。
ケンジたちと対峙していた、あの無機質な水晶の人型。その身体が、何の予兆もなく激しく痙攣を始めた。
『…理解、不能…。理解、不能…。我が、論理の、絶対性が…。非合理的な、ノイズによって…。上書き、される…。これは、あり得ない…。あり得ない、エラー…』
その合成音声は、もはや平坦ではなかった。自らの存在が崩壊していくことへの、純粋な恐怖と混乱に満ちている。絶対的な論理の化身が、人間たちの、あまりに非合理的な「想い」の力に、完全に敗北した瞬間だった。
水晶の身体に無数の亀裂が走る。その亀裂から、光ではなく、ただのデジタルノイズが虚しく溢れ出した。改竄者は、ケンジたちへ、その顔のない貌を向ける。そして、最後に自らの敗因を分析するかのように呟いた。
『…システム・エラー…。原因、ヒューマン・ファクター…。排除、失敗…。これより、自己、消去、プロセスへ…』
それが、この世界を完璧な論理で支配しようとした、哀れな管理者の最後の言葉だった。
次の瞬間、改竄者の身体は、まるで砂の城が風に吹かれるように音もなく光の粒子となって完全に消滅した。後に残されたのは、絶対的な静寂と、本来の輝きを取り戻した創造の玉座だけだった。
戦いは終わったのだ。
そのあまりに静かで、そして荘厳な勝利。仲間たちがその意味を噛み締めるよりも早く、世界の心臓部は新たなプロセスを開始した。
『創造の玉座』から、再び光が放たれる。だが、それはもはや赤黒い警告の色ではない。それは、世界のすべてを、その傷を癒すための、どこまでも優しく温かい黄金色の光だった。
暴走していた世界の保守機構、魔王プロセスは、その活動を完全に停止した。そして、本来の役割である「自動修復(ヒーリング)」プロセスを開始したのだ。
玉座から放たれた優しい光の奔流は、この神の記憶装置の壁を透過し、物理世界へと降り注いでいく。
最初にその光が届いたのは、この最終ダンジョンの入り口、世界の傷跡『削除領域』だった。空間の歪みが、まるで皺が伸ばされるかのように滑らかになっていく。ピクセル化していた風景が、再び色彩と輪郭を取り戻す。存在そのものが消え失せていたはずの大地に、緑の若葉が奇跡のように芽吹き始めた。
光はさらに世界中へと広がっていく。
魔法都市アイドスでは、不安定だったマナ・コンジットの流れが完全に安定し、街はより一層その輝きを増した。ドワーフの地下王国グリムフォージでは、地熱コアがこれまでにないほど力強く、そして穏やかな鼓動を刻み始めた。
そして、その光は、西の果て、あの絶望の村へとたどり着く。
ミレット村。
枯れ果てていたはずの大地に再び緑が戻る。淀んでいた川の水がその清らかさを取り戻し、せせらぎの音を奏で始めた。診療所の寝台で死を待つだけだった村人たちの、土気色の肌に少しずつ血の気が戻っていく。彼らのうつろだった瞳に、再び生命の光が宿り始めた。
世界のすべての傷が、今、癒されていく。
プロジェクトは完了した。
そのあまりに完璧な完了報告。ケンジと仲間たちは、玉座から放たれる、そのあまりに美しい夜明けの光を、ただ静かに見つめていた。彼らの、あまりに長く、そして過酷だったデスマーチが、今、本当の意味でその終わりを告げたのだ。
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