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第6話:余計な令嬢に警告
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戦闘後、森には不気味な静寂が戻っていた。
俺は、討伐した使役獣が光の粒子となって消え去った跡を入念に検分する。地面に残された微かな魔力の残滓は、やはり結社『ノクティス』が用いる、禁忌の術式の特徴を色濃く残していた。奴らが、この演習に介入してきたことは間違いない。計画的な犯行だ。
そんな中、俺の視界の端に、今回の騒動の元凶である公爵令嬢の姿が映った。彼女は友人や侍女たちに囲まれ、何やら誇らしげに胸を張り、満足げな顔をしている。
あの女のせいで、俺の作戦は根底から覆された。静粛に進めるはずが、派手な爆発騒ぎになり、多くの学生たちの前で俺は剣を振るう羽目になった。正体が完全に露見したわけではないが、これ以上目立つのは避けたかった。
釘を刺しておく必要がある。これ以上、あの女を任務に関わらせるわけにはいかない。俺は、静かに彼女へと歩み寄った。
俺の接近に気づいた令嬢の取り巻きたちが、さっと道を空ける。彼女は俺の姿を認めると、ぱあっと顔を輝かせた。その、これから何か素晴らしいことが起こるとでも言いたげな表情に、俺は内心で舌打ちをした。
俺は彼女の前に立ち、可能な限り冷たく、感情を排した声で告げた。
「余計な真似をするな」
それは、俺が考えうる限り、最も効果的な警告のはずだった。
もし彼女が結社の協力者なら、「お前の動きは読んでいる」という明確な脅しになる。
もし彼女がただの分別がない馬鹿なら、俺の纏う冷たい威圧感と厳しい言葉が、恐怖心となって行動を抑制するだろう。
どちらに転んでも、これで少しは大人しくなるはずだ。俺は内心、これ以上面倒事に巻き込まれる前に、彼女と物理的にも精神的にも距離を置かねばならないと考えていた。
だが、俺の警告を聞いた令嬢の反応は、俺の想定のどちらとも全く違っていた。
彼女は一瞬、紫水晶のような大きな目を見開いた。驚いたのか、あるいは恐怖を感じたのか。そう思ったのも束の間、次の瞬間には、その白い頬をぽっと赤く染め、恍惚とした、うっとりするような表情を浮かべたのだ。
そして、なぜか隣に控える侍女や友人の方をちらりと見て、勝ち誇ったような、得意げな笑みを向けている。
……理解できない。
脅しが、なぜ喜びに繋がる?
俺の言葉の意味が、正しく伝わっていないのか?それとも、これも全て、俺を欺くための計算された演技なのか?
俺の脳裏で、警鐘が鳴り響く。目の前の女の思考回路は、俺がこれまで対峙してきたどんな敵とも、あまりにも異質すぎた。
あの女の、常軌を逸した反応に、俺は背筋が寒くなるのを感じた。これ以上、言葉を交わすだけ無駄だ。俺は無言で彼女に背を向け、その場を後にした。
騎士団の仮設詰所に戻り、今回の件を上官へと報告する。俺が提出した報告書には、もちろん、リリアーナ嬢の不可解な行動についても詳細に記しておいた。
報告を終えると、通信魔道具から新たな情報が入っていた。
魔物を放った結社の工作員は、まだこの演習区域、あるいは学園内に潜伏している可能性が高い、と。
脅威は、去っていない。
そして、その脅威の中心で、あの理解不能な令嬢が、なぜか嬉しそうに笑っている。
俺の頭痛は、ますます酷くなる一方だった。この任務、敵以上に厄介な存在を、俺は抱え込んでしまったのかもしれない。
俺は、討伐した使役獣が光の粒子となって消え去った跡を入念に検分する。地面に残された微かな魔力の残滓は、やはり結社『ノクティス』が用いる、禁忌の術式の特徴を色濃く残していた。奴らが、この演習に介入してきたことは間違いない。計画的な犯行だ。
そんな中、俺の視界の端に、今回の騒動の元凶である公爵令嬢の姿が映った。彼女は友人や侍女たちに囲まれ、何やら誇らしげに胸を張り、満足げな顔をしている。
あの女のせいで、俺の作戦は根底から覆された。静粛に進めるはずが、派手な爆発騒ぎになり、多くの学生たちの前で俺は剣を振るう羽目になった。正体が完全に露見したわけではないが、これ以上目立つのは避けたかった。
釘を刺しておく必要がある。これ以上、あの女を任務に関わらせるわけにはいかない。俺は、静かに彼女へと歩み寄った。
俺の接近に気づいた令嬢の取り巻きたちが、さっと道を空ける。彼女は俺の姿を認めると、ぱあっと顔を輝かせた。その、これから何か素晴らしいことが起こるとでも言いたげな表情に、俺は内心で舌打ちをした。
俺は彼女の前に立ち、可能な限り冷たく、感情を排した声で告げた。
「余計な真似をするな」
それは、俺が考えうる限り、最も効果的な警告のはずだった。
もし彼女が結社の協力者なら、「お前の動きは読んでいる」という明確な脅しになる。
もし彼女がただの分別がない馬鹿なら、俺の纏う冷たい威圧感と厳しい言葉が、恐怖心となって行動を抑制するだろう。
どちらに転んでも、これで少しは大人しくなるはずだ。俺は内心、これ以上面倒事に巻き込まれる前に、彼女と物理的にも精神的にも距離を置かねばならないと考えていた。
だが、俺の警告を聞いた令嬢の反応は、俺の想定のどちらとも全く違っていた。
彼女は一瞬、紫水晶のような大きな目を見開いた。驚いたのか、あるいは恐怖を感じたのか。そう思ったのも束の間、次の瞬間には、その白い頬をぽっと赤く染め、恍惚とした、うっとりするような表情を浮かべたのだ。
そして、なぜか隣に控える侍女や友人の方をちらりと見て、勝ち誇ったような、得意げな笑みを向けている。
……理解できない。
脅しが、なぜ喜びに繋がる?
俺の言葉の意味が、正しく伝わっていないのか?それとも、これも全て、俺を欺くための計算された演技なのか?
俺の脳裏で、警鐘が鳴り響く。目の前の女の思考回路は、俺がこれまで対峙してきたどんな敵とも、あまりにも異質すぎた。
あの女の、常軌を逸した反応に、俺は背筋が寒くなるのを感じた。これ以上、言葉を交わすだけ無駄だ。俺は無言で彼女に背を向け、その場を後にした。
騎士団の仮設詰所に戻り、今回の件を上官へと報告する。俺が提出した報告書には、もちろん、リリアーナ嬢の不可解な行動についても詳細に記しておいた。
報告を終えると、通信魔道具から新たな情報が入っていた。
魔物を放った結社の工作員は、まだこの演習区域、あるいは学園内に潜伏している可能性が高い、と。
脅威は、去っていない。
そして、その脅威の中心で、あの理解不能な令嬢が、なぜか嬉しそうに笑っている。
俺の頭痛は、ますます酷くなる一方だった。この任務、敵以上に厄介な存在を、俺は抱え込んでしまったのかもしれない。
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