俺の完璧な潜入作戦が、いつも謎の令嬢にめちゃくちゃにされる件について

YY

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第5話:魔物出現と戦闘

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校外演習の森に、突如として不自然な静寂が訪れた。鳥の声が途絶え、風の音が止む。俺は、この異常な気配を即座に察知し、剣の柄に手をかけた。次の瞬間、大地が揺れ、木々をなぎ倒しながら巨大な魔物がその姿を現す。

だが、あれはただの魔物ではない。全身から立ち上る魔力の反応は、明らかに人工的で、歪な術式によって編み上げられたものだった。間違いない、結社『ノクティス』が使う使役獣だ。奴ら、ついに実力行使に出てきたか。

「全隊、学生たちの避難を最優先!魔物には近づくな!」

俺は他の警護騎士たちに鋭く指示を飛ばすと、一人、部隊から離れて魔物へと向かった。学生たちを巻き込むわけにはいかない。そして、この使役獣は貴重な情報源だ。可能な限り速やかに、かつ静粛に仕留め、その残骸から術式の情報を引き出す必要がある。

俺は漆黒の剣を抜き放ち、魔物と対峙する。
「グルォォォ…!」
獣は、その濁った赤い目で俺を捉え、威嚇の咆哮を上げた。巨体に似合わぬ俊敏な動きで突進してくるのを、俺は冷静に見極め、紙一重でかわす。だが、反撃のために振るった俺の剣は、奴の体表に現れた半透明の障壁に阻まれ、甲高い音を立てて弾かれた。

(魔法的な防御障壁か…厄介だな)

単純な膂力だけでなく、魔術的な防御も備えている。想定以上に厄介な相手だ。俺は距離を取り、奴の動きの隙を窺いながら、慎重に斬り結んでいた。
その、張り詰めた攻防の最中。
背後から、信じられないほど場違いで、甲高い声が響き渡る。

「ゼノン様、お助けにまいりましたわ!」

振り返ると、目を疑う光景が広がっていた。
あの公爵令嬢、リリアーナ・フォン・エルドラドが、侍女や友人らしき令嬢を引き連れて、無謀にもこの戦場へと突入してくるところだったのだ。

馬鹿か、あの女は!

ここは、学生ごっこが通用する安全な場所ではない。本物の、命のやり取りが行われる戦場だぞ。
俺の内心の怒りなど知る由もなく、彼女は「護衛同盟、出陣ですわ!」などと意味不明なことを叫びながら、こちらへ向かってくる。

案の定、魔物は新たな獲物…か弱く、無防備な彼女たちに狙いを定めた。その巨大な腕が振り上げられ、リリアーナ嬢へと振り下ろされようとする。
まずい。俺は、彼女を庇うべく、無理な体勢から援護に入ろうとした。
その、瞬間だった。

「きゃっ!?」

令嬢が、何もない場所で派手に足をもつれさせ、前のめりに転倒した。そして、その拍子に彼女の胸元で輝いていた紫色のブローチがドレスから外れ、放物線を描いて近くの岩へと飛んでいく。
カチン、と硬い音がしたかと思うと、次の瞬間。

ドゴォォォォン!!!

軍用の閃光弾に匹敵するほどの強烈な爆発が、森全体を揺るがした。
凄まじい閃光と衝撃波。俺は咄嗟に腕で顔を庇った。爆心地の近くにいた魔物は、その閃光と衝撃波をもろに浴び、動きを完全に止め、完全に無防備な状態を晒している。

俺は、その千載一遇の好機を逃さなかった。
体勢を立て直し、閃光のように魔物の懐へと踏み込む。そして、がら空きになった胸の中心部、魔力の源である核(コア)を、俺の剣が一撃で貫いた。
断末魔の叫びと共に、使役獣は崩れ落ち、やがて光の粒子となって消滅する。

脅威は、去った。
だが、俺の頭の中には、より深刻な疑念が渦巻いていた。
俺は、煙の立ち上る爆心地と、何食わぬ顔で立ち上がろうとしているリリアーナ嬢を、交互に見比べる。

あのブローチ…あれは、ただの装飾品などではない。高度な魔術が付与され、強大な爆発を引き起こすように設計された、魔導兵器だ。なぜ、彼女がそんなものを所有している?
そして、なぜ、このタイミングでそれを使った?

結社の魔物を前に、結社の魔物に有効な兵器を、完璧なタイミングで起動させる……。
偶然か?
いや、偶然にしては、あまりにも出来すぎている。

リリアーナ・フォン・エルドラド。
お前は、結社の協力者か?

その疑いが、俺の中で、揺るぎない確信へと変わり始めていた。
俺は、剣先から滴る魔物の体液を振り払い、全ての元凶である彼女へと、冷たい視線を向けた。
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