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第31話:大規模掃討作戦開始
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計画の時は来た。王都各所に潜伏していた結社『ノクティス』の構成員たちが、まるで示し合わせたかのように、一斉に動きを活発化させた。俺が市中の情報屋や協力者を通じて張り巡らせた情報網が、奴らの不穏な魔力の流れを市内の複数箇所で同時に感知したのだ。それは、まるで嵐の前に、大気が不気味な静けさと共に重く張り詰めるのに似ていた。もはやこれ以上の潜伏は無意味と判断したか、あるいは我々の包囲網の動きを察知したか。いずれにせよ、好都合だ。闇に潜む鼠を、一匹残らず炙り出す。これより、王都全域を舞台とした、大規模掃討作戦を開始する。今宵、この華やかな王都は、血と鉄の匂いが立ち込める戦場となる。
俺は、この作戦の要となる第一討伐部隊の指揮官に任命された。俺の部隊に与えられた任務は、最も危険とされる港湾地区の敵拠点を強襲し、指導者クラスを捕縛すること。失敗すれば、作戦全体が瓦解しかねない、重要な役目だ。港湾地区は潮の香りと魚の腐臭、そして無法の匂いが混じり合う、王都の影が最も濃い場所。迷路のように入り組んだ路地、海運ギルドの黙認のもとで行われる密輸、そして衛兵すら見て見ぬふりをする無法者たちの巣窟。まさに、俺たち暗部の騎士の真価が問われる戦場だった。
王城の練兵場には、月明かりの下、俺が選抜した屈強な騎士たちが、静かに整列している。彼らは皆、これまでの戦いを俺と共に潜り抜けてきた、信頼できる部下たちだ。その顔には、これから始まるであろう死闘を前に、緊張と、そして確かな闘志が浮かんでいた。彼らの命を預かる重圧を感じながらも、俺の心は不思議と、氷のように冷静だった。この日のために、我々は血の滲むような準備を重ねてきたのだ。負けるはずがない。俺は、部下たちの顔を一人一人見渡し、静かに頷いた。言葉は不要だった。俺たちの間には、それだけの信頼関係が築かれている。
出撃前の最終ブリーフィング。作戦室に集まった各部隊の隊長たちを前に、上層部の将軍から、最後の念押しがあった。壁に広げられた地図には、無数の駒が置かれ、複雑な進軍ルートが赤い線で示されている。その赤い線は、まるで王都の血管を切り裂く刃のようだ。
「ゼノン隊長、作戦は計画通りに進めてもらいたい。貴官の部隊が、この作戦の成否を分ける。港湾地区は敵の戦力が最も集中していると予測される。くれぐれも、抜かるな」
「はっ」
俺が短く応えると、将軍は、ふと何かを思い出したように、俺に鋭い視線を向けた。その目には、同情とも、あるいは厄介事を押し付ける前の躊躇とも取れる、複雑な色が浮かんでいた。
「…それから、例の公爵令嬢の件だが」
その名が出た瞬間、俺の胃がきりりと、慣れ親しんだ痛みを発した。またか。この期に及んで、まだあの女が俺の任務に影を落とすのか。作戦の成否よりも、あの女の奇行の方が、よほど予測不能で危険だというのに。だが、将軍が続けた言葉は、俺の予想を裏切るものだった。
「リリアーナ嬢は、決してこの作戦に関わらせるな。貴官からの報告を受け、我々も彼女を最重要警戒対象と認定した。彼女の予測不能な行動は、我々の緻密な作戦を根底から覆しかねん。公爵閣下にも話は通してある。屋敷の警備を騎士団の一部隊で固め、作戦が終了するまで、一歩も外には出すな、と厳命してある」
……ようやく、上層部もことの重大さを、そしてあの女の規格外の危険性を、完全に理解したか。あの女が、この緻密に計算され尽くした作戦における、最大のノイズであり、予測不能な破壊要因であることを。彼女の善意が、我々の作戦を根底から覆しかねないということを。そうだ、彼女は敵ではない。だが、それ以上に厄介なのだ。これで、後顧の憂いなく、目の前の戦いに集中できる。結社のことだけを考え、剣を振るうことができる。
俺は、これまでの数週間にわたる心労が、嘘のようにすっと晴れていくのを感じた。まるで、肩にのしかかっていた重い鎧を、一枚脱いだかのような解放感。晴れやかな気持ちで、俺は練兵場に待つ部下たちの前に向き直った。彼らの顔にも、安堵の色が浮かんでいるのが見て取れた。彼らもまた、あの令嬢の存在に、多かれ少なかれ振り回されていたのだろう。俺の部下の一人は、彼女が設立したという『ゼノン護衛騎士団』に弟が入団してしまい、実家が大変な騒ぎになっていると、先日頭を抱えていた。
「第一部隊、出撃する!」
俺の号令一下、精鋭たちは一斉に動き出す。鋼のブーツが石畳を鳴らす音が、夜の静寂に響き渡る。その統率の取れた音だけが、俺たちの覚悟を物語っていた。我々は、王都の闇を払うべく、夜の街へと駆け出していった。俺の心は、ただ、敵を討つことだけに集中していた。この、束の間の平穏が、嵐の前の静けさに過ぎないとも知らずに。
俺は、この作戦の要となる第一討伐部隊の指揮官に任命された。俺の部隊に与えられた任務は、最も危険とされる港湾地区の敵拠点を強襲し、指導者クラスを捕縛すること。失敗すれば、作戦全体が瓦解しかねない、重要な役目だ。港湾地区は潮の香りと魚の腐臭、そして無法の匂いが混じり合う、王都の影が最も濃い場所。迷路のように入り組んだ路地、海運ギルドの黙認のもとで行われる密輸、そして衛兵すら見て見ぬふりをする無法者たちの巣窟。まさに、俺たち暗部の騎士の真価が問われる戦場だった。
王城の練兵場には、月明かりの下、俺が選抜した屈強な騎士たちが、静かに整列している。彼らは皆、これまでの戦いを俺と共に潜り抜けてきた、信頼できる部下たちだ。その顔には、これから始まるであろう死闘を前に、緊張と、そして確かな闘志が浮かんでいた。彼らの命を預かる重圧を感じながらも、俺の心は不思議と、氷のように冷静だった。この日のために、我々は血の滲むような準備を重ねてきたのだ。負けるはずがない。俺は、部下たちの顔を一人一人見渡し、静かに頷いた。言葉は不要だった。俺たちの間には、それだけの信頼関係が築かれている。
出撃前の最終ブリーフィング。作戦室に集まった各部隊の隊長たちを前に、上層部の将軍から、最後の念押しがあった。壁に広げられた地図には、無数の駒が置かれ、複雑な進軍ルートが赤い線で示されている。その赤い線は、まるで王都の血管を切り裂く刃のようだ。
「ゼノン隊長、作戦は計画通りに進めてもらいたい。貴官の部隊が、この作戦の成否を分ける。港湾地区は敵の戦力が最も集中していると予測される。くれぐれも、抜かるな」
「はっ」
俺が短く応えると、将軍は、ふと何かを思い出したように、俺に鋭い視線を向けた。その目には、同情とも、あるいは厄介事を押し付ける前の躊躇とも取れる、複雑な色が浮かんでいた。
「…それから、例の公爵令嬢の件だが」
その名が出た瞬間、俺の胃がきりりと、慣れ親しんだ痛みを発した。またか。この期に及んで、まだあの女が俺の任務に影を落とすのか。作戦の成否よりも、あの女の奇行の方が、よほど予測不能で危険だというのに。だが、将軍が続けた言葉は、俺の予想を裏切るものだった。
「リリアーナ嬢は、決してこの作戦に関わらせるな。貴官からの報告を受け、我々も彼女を最重要警戒対象と認定した。彼女の予測不能な行動は、我々の緻密な作戦を根底から覆しかねん。公爵閣下にも話は通してある。屋敷の警備を騎士団の一部隊で固め、作戦が終了するまで、一歩も外には出すな、と厳命してある」
……ようやく、上層部もことの重大さを、そしてあの女の規格外の危険性を、完全に理解したか。あの女が、この緻密に計算され尽くした作戦における、最大のノイズであり、予測不能な破壊要因であることを。彼女の善意が、我々の作戦を根底から覆しかねないということを。そうだ、彼女は敵ではない。だが、それ以上に厄介なのだ。これで、後顧の憂いなく、目の前の戦いに集中できる。結社のことだけを考え、剣を振るうことができる。
俺は、これまでの数週間にわたる心労が、嘘のようにすっと晴れていくのを感じた。まるで、肩にのしかかっていた重い鎧を、一枚脱いだかのような解放感。晴れやかな気持ちで、俺は練兵場に待つ部下たちの前に向き直った。彼らの顔にも、安堵の色が浮かんでいるのが見て取れた。彼らもまた、あの令嬢の存在に、多かれ少なかれ振り回されていたのだろう。俺の部下の一人は、彼女が設立したという『ゼノン護衛騎士団』に弟が入団してしまい、実家が大変な騒ぎになっていると、先日頭を抱えていた。
「第一部隊、出撃する!」
俺の号令一下、精鋭たちは一斉に動き出す。鋼のブーツが石畳を鳴らす音が、夜の静寂に響き渡る。その統率の取れた音だけが、俺たちの覚悟を物語っていた。我々は、王都の闇を払うべく、夜の街へと駆け出していった。俺の心は、ただ、敵を討つことだけに集中していた。この、束の間の平穏が、嵐の前の静けさに過ぎないとも知らずに。
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