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第155章 包囲の収束と、火照る夜明け
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話している最中、フィルードが彼女の腰をぐいと抱き寄せると、エレナはすぐに大きな鯉のように跳ね上がり、バタバタと暴れ始めた。
「私を下ろしなさい、離して! もしこれ以上変なことをするなら、侯爵様のところに訴えに行くわ!」
――相変わらずだ。
フィルードは心の中で肩をすくめる。
“この女は、力関係を認めたがらない。だが結局、俺の腕の中からは逃げられない。”
彼はそのまま彼女をベッドに引きずり込み、縄でしっかりと縛り付けた。
「訴えに行けばいいさ。どうせ侯爵様も俺たち二人が怪しい関係なのを知っている」
エレナは顔を真っ赤にし、頭にきて噛みついてきたが、フィルードは大きな掌で彼女の顎を押さえつけ、動きを封じた。
少し肌寒い夜だった。フィルードは横になり、抵抗するエレナを抱き寄せて布団に押し込む。
「動くな。これ以上動いたら、俺の手は大人しくなくなるぞ」
その言葉に、エレナはようやく硬直し、低く息をのんだ。
「……何を企んでいるの? 変なことはしない方がいいわ。これは犯罪よ!」
フィルードはニヤリと邪悪な笑みを浮かべる。
「他に何ができる? 俺はただ、かつての約束を果たしているだけだ。お前を捕まえて寝床を温めさせると言ったら、捕まえて寝床を温めさせるさ」
“過去の恩讐は水に流すつもりだった。だが、一日中殴ってくる相手に遠慮する必要はない。”
「安心して寝ろ。明日の朝一番で解いてやるから」
エレナは悔しさで歯ぎしりする。しかし、フィルードは気にも留めず、彼女の腰を抱いたまま深く眠りに落ちていく。
――そして。
エレナは眠らず、ずっとフィルードを見つめていた。
彼の重い呼吸が胸の奥で響き、熱が身体のどこかをゆっくりと支配していく。顔が突然赤くなる。
「……なんなのよ、この男……」
長い間、苦悩や戦場をくぐり抜けてきた肉体は、以前よりもはるかに逞しく、肌は健康的な小麦色。
眉は鋭く、戦士の気迫が眠っている間ですら滲み出ていた。
彼女は抵抗しなくなり、むしろ彼の腕の中で静かに身体をゆだねていく。
夜明け近く、フィルードが目を覚ます。
ほのかな香り、目の前でじっと自分を見ているエレナ――その瞬間、反射的にキスをした。
今回は、エレナがまったく抵抗しない。
むしろ……受け入れている。
“……これは、まずいな。”
フィルードの理性が危険信号を鳴らす。
酒のせいとはいえ、このままでは完全に踏み込んでしまうところだった。
結局、最後は理性が勝ち、二人は離れた。
フィルードは満面の笑みで挨拶する。
「おはよう、愛しい副団長様」
エレナは縄を解けと睨みつける。
今の彼女の目には、怒りだけではなく、奇妙な色が混じっていた。
フィルードはすぐ縄を切り、そっと謝った。
「昨夜は少し飲みすぎたんだ。それに、君に煽られて、我慢できなくてな」
エレナは鼻で笑う。
「やったことを認めないなんて、男らしくないわね」
――その瞬間、フィルードの罪悪感は吹き飛んだ。
彼は再び馬乗りになり、にやりと笑う。
「感謝もできない小娘め。なら――俺の鞭撻を受けろ」
二人は再び取っ組み合い、髪を掴み合い、互いに床へ転げ回る。
「放せ!」
「そっちが先に放せ!」
「せーので、一、二、三!」
フィルードは放したが、エレナは放さず、引き倒す。
「この人でなし、また約束破ったわね!」
しばらくしてようやく二人は動きを止めた。
外はすでに明るい。
「分かった、もうやめろ。兵士に見られたらまずい」
その言葉を聞き、エレナはようやく手を離し、髪を整え始めた。
フィルードはこそこそとテントを出て、左右を確認した瞬間――凍りつく。
マイク、ブルース、ユリアン、ライドン、そして大量の近衛兵……
全員がテントに耳を押し付けていた。
殴り合って場所を奪い合っている者までいる。
――終わった。
フィルードは真っ黒な顔で怒鳴った。
「お前たちは訓練しなくてもいいのか? 千人隊長が率先して上官を盗み聞きとは、どういう罪に当たる?」
兵たちは慌てて言い訳するが、フィルードは怒りを収めず、追い払う。
その後、エレナが何事もなかったように現れ、軍の配置について真面目に話し始めた。
……そして一ヶ月以上。
昼は城の防衛、夜はエレナとの攻防。
最終的には、エレナの方から寄ってくるようになった。
フィルードは思う。
“こいつの性格、本当に大丈夫なのか……?”
もはや常人の枠には収まらない。
一方、城外の攻城戦は二ヶ月以上続き、ついに限界が見えた。
獣人の補給は尽き、奪った食糧も底をついた。
ある朝、獣人大軍は野営地の撤収を開始した。
計六万の投入――三万の正規兵と三万の部族戦士。
そのうち部族戦士は七千~八千が城壁下で死に、さらに外で二~三千が死んだ。
正規兵も四~五千を失った。
ダービー城の損害も重い。
家屋はほぼ倒壊、農奴兵を中心に三~四千が負傷し、戦死者も千人近く出た。
戦いは、ようやく終わりに向かっていた。
PS:ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
第156章では、いよいよ両軍の腹の探り合いが終わり、
次章からは本格的な“決着”に向けて動き始めます。
フィルードの策略がどう形になるのか、
そしてウェイン侯爵がどこまで覚悟を固めているのか――
157章は大きな転換点になりますので、ぜひお楽しみに。
応援していただけると、続きの執筆の励みになります!
「私を下ろしなさい、離して! もしこれ以上変なことをするなら、侯爵様のところに訴えに行くわ!」
――相変わらずだ。
フィルードは心の中で肩をすくめる。
“この女は、力関係を認めたがらない。だが結局、俺の腕の中からは逃げられない。”
彼はそのまま彼女をベッドに引きずり込み、縄でしっかりと縛り付けた。
「訴えに行けばいいさ。どうせ侯爵様も俺たち二人が怪しい関係なのを知っている」
エレナは顔を真っ赤にし、頭にきて噛みついてきたが、フィルードは大きな掌で彼女の顎を押さえつけ、動きを封じた。
少し肌寒い夜だった。フィルードは横になり、抵抗するエレナを抱き寄せて布団に押し込む。
「動くな。これ以上動いたら、俺の手は大人しくなくなるぞ」
その言葉に、エレナはようやく硬直し、低く息をのんだ。
「……何を企んでいるの? 変なことはしない方がいいわ。これは犯罪よ!」
フィルードはニヤリと邪悪な笑みを浮かべる。
「他に何ができる? 俺はただ、かつての約束を果たしているだけだ。お前を捕まえて寝床を温めさせると言ったら、捕まえて寝床を温めさせるさ」
“過去の恩讐は水に流すつもりだった。だが、一日中殴ってくる相手に遠慮する必要はない。”
「安心して寝ろ。明日の朝一番で解いてやるから」
エレナは悔しさで歯ぎしりする。しかし、フィルードは気にも留めず、彼女の腰を抱いたまま深く眠りに落ちていく。
――そして。
エレナは眠らず、ずっとフィルードを見つめていた。
彼の重い呼吸が胸の奥で響き、熱が身体のどこかをゆっくりと支配していく。顔が突然赤くなる。
「……なんなのよ、この男……」
長い間、苦悩や戦場をくぐり抜けてきた肉体は、以前よりもはるかに逞しく、肌は健康的な小麦色。
眉は鋭く、戦士の気迫が眠っている間ですら滲み出ていた。
彼女は抵抗しなくなり、むしろ彼の腕の中で静かに身体をゆだねていく。
夜明け近く、フィルードが目を覚ます。
ほのかな香り、目の前でじっと自分を見ているエレナ――その瞬間、反射的にキスをした。
今回は、エレナがまったく抵抗しない。
むしろ……受け入れている。
“……これは、まずいな。”
フィルードの理性が危険信号を鳴らす。
酒のせいとはいえ、このままでは完全に踏み込んでしまうところだった。
結局、最後は理性が勝ち、二人は離れた。
フィルードは満面の笑みで挨拶する。
「おはよう、愛しい副団長様」
エレナは縄を解けと睨みつける。
今の彼女の目には、怒りだけではなく、奇妙な色が混じっていた。
フィルードはすぐ縄を切り、そっと謝った。
「昨夜は少し飲みすぎたんだ。それに、君に煽られて、我慢できなくてな」
エレナは鼻で笑う。
「やったことを認めないなんて、男らしくないわね」
――その瞬間、フィルードの罪悪感は吹き飛んだ。
彼は再び馬乗りになり、にやりと笑う。
「感謝もできない小娘め。なら――俺の鞭撻を受けろ」
二人は再び取っ組み合い、髪を掴み合い、互いに床へ転げ回る。
「放せ!」
「そっちが先に放せ!」
「せーので、一、二、三!」
フィルードは放したが、エレナは放さず、引き倒す。
「この人でなし、また約束破ったわね!」
しばらくしてようやく二人は動きを止めた。
外はすでに明るい。
「分かった、もうやめろ。兵士に見られたらまずい」
その言葉を聞き、エレナはようやく手を離し、髪を整え始めた。
フィルードはこそこそとテントを出て、左右を確認した瞬間――凍りつく。
マイク、ブルース、ユリアン、ライドン、そして大量の近衛兵……
全員がテントに耳を押し付けていた。
殴り合って場所を奪い合っている者までいる。
――終わった。
フィルードは真っ黒な顔で怒鳴った。
「お前たちは訓練しなくてもいいのか? 千人隊長が率先して上官を盗み聞きとは、どういう罪に当たる?」
兵たちは慌てて言い訳するが、フィルードは怒りを収めず、追い払う。
その後、エレナが何事もなかったように現れ、軍の配置について真面目に話し始めた。
……そして一ヶ月以上。
昼は城の防衛、夜はエレナとの攻防。
最終的には、エレナの方から寄ってくるようになった。
フィルードは思う。
“こいつの性格、本当に大丈夫なのか……?”
もはや常人の枠には収まらない。
一方、城外の攻城戦は二ヶ月以上続き、ついに限界が見えた。
獣人の補給は尽き、奪った食糧も底をついた。
ある朝、獣人大軍は野営地の撤収を開始した。
計六万の投入――三万の正規兵と三万の部族戦士。
そのうち部族戦士は七千~八千が城壁下で死に、さらに外で二~三千が死んだ。
正規兵も四~五千を失った。
ダービー城の損害も重い。
家屋はほぼ倒壊、農奴兵を中心に三~四千が負傷し、戦死者も千人近く出た。
戦いは、ようやく終わりに向かっていた。
PS:ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
第156章では、いよいよ両軍の腹の探り合いが終わり、
次章からは本格的な“決着”に向けて動き始めます。
フィルードの策略がどう形になるのか、
そしてウェイン侯爵がどこまで覚悟を固めているのか――
157章は大きな転換点になりますので、ぜひお楽しみに。
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