傭兵から商売を始めたら、いつの間にか領主になっていた件

篠の目

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第194章 一撃必殺の戦場支配

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味方の超凡者たちは好機を逃さず、敵を次々と後退させていた。
ドン、と地響きのような音とともに、
フィルードはまた一人の超凡者を突き上げる。
相手は初級徒弟──魔力の光も弱い。
長槍はその胸を貫き、地面へ縫い付けた。
(次。止まる気はない。止まった瞬間、戦場が俺に追いつく)
フィルードは手綱を放ち、槍を捨てたまま大黒を旋回させる。
その一撃で仲間を殺されたボア・マン唯一の上位超凡者は、怒りで目を見開いた。
しかしエレナが一瞬の隙も与えない。
魔力を帯びた矢が絶え間なく頭領へと撃ち込まれていく。
フィルードは大きく迂回して別の騎士槍を拾い上げ、迷いなく突撃態勢へ移行した。
残る三名の徒弟級超凡者は、すでに彼の“恐怖”を知っている。
後退しながら怯えた視線を向け、距離を取ろうとする。
(当然だ。一撃必殺──それを何度も見せつけられれば、恐怖は理性を侵す)
再び突撃。
だが、そのうちの一人はフィルードが接触する直前、驚くほど軽やかに宙へ跳び上がり、体を回転させながら大黒の左側へ転がって回避した。
(……やるな。徒弟級にしては悪くない判断だ)
フィルードはそのまま通り過ぎるしかない──はずだった。
だが次の瞬間、大黒が突然、頭を深く下げた。
黒い光が、牛角から弾ける。
轟音。
跳躍していた超凡者は吹き飛ばされ、胸甲が巨大なへこみを作りながら地面に叩き落とされた。
着地後、口から大量の血を吐く。胸骨は完全に砕けている。
フィルードも思わず目を見張る。
(……こいつ、本気をまったく見せていなかったのか。
 魔獣の“本能の技”──俺はずっと乗り物として扱っていた。愚かだな)
大黒は頭を振り、再び走り出す。
残る二名の徒弟級超凡者を倒しきれば、味方の超凡者全員で上位超凡者の頭領を包囲できる。
フィルードは奪命破甲騎士槍を構え、再突撃。
二名は恐怖に駆られ、慌てて散開して逃げた。
彼らの相手はライドン。
だがライドンは怒りのあまり跳び上がり叫んだ。
「この畜生め! 俺と戦っているのによそ見とはどういう了見だ!」
大量の魔獣肉を摂取したライドンの境地はすでに中級徒弟に迫っている。
あと一押しで突破できる状態。
彼は巨斧を振り下ろし、後退するボア・マンへ叩きつけた。
逃げようとしていたボア・マンは避けきれず、そのまま直撃を受けて地面に伏した。
そのとき、フィルードの突撃が間近へ迫る。
だが、最後の敵は警戒を強めており、長槍を辛うじて回避した。
しかし──避けられたのは槍だけだった。
大黒の牛角が、突風のような勢いで再び敵を吹き飛ばす。
地面にうつ伏せて血を吐き、そのまま動かなくなった。
これで徒弟級の超凡者は全滅した。
エレナに魔力を削られ続けたボア・マンの首領も、ついにほとんど魔力を失いかけていた。
周囲の兵士たちも攻撃を試みる。
だが上位超凡者は別格。
その斬撃は重く、速く、そして鋭い。
フィルードは実際に見た。
味方の鉄甲兵が斬り潰されるのではなく──
鉄甲ごと真っ二つに切り裂かれた光景を。
(……鉄を切り裂く? あの骨斧、ただの武器じゃない。奇妙どころか“宝具級”だ)
フィルードは即座に判断し、周囲の徒弟級超凡者に叫んだ。
「魔獣皮の縄を使え! 絡ませて引き倒せ!
 絶対に正面へ立つな、あの骨斧は異常だ!」
数名の超凡者は強く頷き、特製の縄索を取り出した。
これはフィルードが “強敵封じ” 用に自分で準備させておいたもの。
多人数で協力すれば格上にも勝つための装備だ。
ボア・マンの首領はそれに気づき、振り上げた斧で二本の縄を切り落とした。
だが三本目は避けきれなかった。
縄が首に絡みつく。
「引け!」
数名の徒弟級超凡者が力を込め、頭領の巨体を後ろへと引き倒す。
よろめき、体勢が崩れる──
好機。
フィルードは大黒を加速させ、破甲槍を構えて突撃する。
ドン!
長槍は目標に命中した。
だが──
穂先はへし折れ、柄も同時に砕け散る。
大黒ですらよろめくほどの反動。
(……やはり、全身鎧も宝物級か。
 だが倒れた。武器は手から離れた)
武器を失った瞬間こそ、唯一の隙。
フィルードは飛び降りざま斧の柄を掴み、そのまま引きずり離す。
腕に重さがのしかかり、大黒の背に引き上げるまで全力を要した。
推定重量は60ポンド──約27kg。
人を斬る以前に、ぶつけるだけで骨を砕く凶器。
フィルードは斧を脇へ投げ捨て、すぐ戦場へ戻る。
その頃、数名の超凡者たちが頭領の四肢を押さえつけることに成功していた。
周囲のボア・マンたちは悲痛な叫びを上げたが、すでに疲労困憊で動くことすらままならない。
ライドンは頭領の巨大な兜を掴み、力で引き剥がす。
血まみれの口で噛みつこうとする頭領に対し、ライドンは大刀を振り下ろし──
入階ボア・マンの首領は完全に絶命した。
数名の超凡者はその場に倒れ込む。
フィルードも大黒の背で荒い息を吐いた。
(勝った……いや、まだ終わっていない)
顔を上げたフィルードは愕然とした。
フランク率いる部隊が、獣人軍に押し返されていたのだ。
特に豚頭族の正規軍は、フィルードの護衛兵以上の強さを見せている。
農奴兵はすでに逃げ散り、かろうじて2000の護衛兵だけが踏みとどまっていた。
(……まったく、使えない味方だ)
周囲を見渡すと、敵のボア・マンはまだ六、七百ほども残っている。
味方2000が彼らを囲んで戦っているが──
鉄甲を纏ったボア・マンを完全に討つのは容易ではない。
(まだ勝負は終わっていない。)
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