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第197章 古き仲間への戒めと忠告
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フランクはフィルードの言葉を聞いた途端、見る見るうちに肩を落とした。
その隣にいた上位超凡者――残った一本の前歯を晒して笑う老人が、呆れ半分の調子で口を開いた。
「まあまあ、みな身内なのだから、変に角を立てるな。
フランク、お前のやり方には大伯父である私も賛同しかねる。
我が家は恩知らずの家柄ではないはずだ。助けられた以上、尻込みするのは間違っている。」
老人は表情こそ穏やかだが、その声音には鋭い芯があった。
「たとえお前が応じたとしても――大伯父の私は承知しない。
フィルード団長が出るなら、私も出る。
その際は、お前の部下のあの娘と共に、敵の上位超凡者を討ち取ってみせよう。
まあ……かなり活躍できるだろうな。」
この老人がフランクより遥かに狡猾だということを、フィルードはよく知っていた。
だからこそ、余計な駆け引きをする気など初めからなかった。
「では、老先輩。ありがとうございます。」
そう一礼すると、フィルードは再びフランクへ視線を向けた。
「よく考えておけ。我々は一晩休み、明日にはカールトン子爵領へ向けて進発する。
行くか行かないか、はっきり返事をくれ。お前を困らせるつもりはない。
お前の部下の大半の超凡者と、今日戦闘に参加した衛兵を連れてきてくれればいい。
お前は二百の衛兵を残し、再編成した農奴兵を率いて城を守れ。
彼らは一戦経験している分、戦闘力は以前より上がっているはずだ。」
それだけ言い残し、弁解を受け付ける気もなく、軽く会釈して広間を後にした。
――と、そこで背後から怒号が響いた。
フィルードが去った途端、フランクは怒りに任せて物を投げつけ、テーブルを蹴り壊し始めたのだ。
「傲慢な奴め! 部下が強いからって私を侮辱しおって! 絶対に目に物見せてやる!」
怒りの激情がようやく収まった頃、老人はただ静かにその一部始終を眺めていた。
息を荒げ座り込んだフランクに、老人はようやく口を開いた。
「お前のようにすぐ怒る者は、どこへ行っても通用しない。
あの若者はお前を助けに来たのだ。それなりの代償も払ってな。
なのになぜ即座に拒否する? 少しでも誠意を見せれば済む話だ。
領地の超凡者を数人貸し出すだけで良かったのに。」
そこまで言い切ると、老人は静かにため息をついた。
「はっきり言うが……お前はまだ未熟すぎる。父親とは雲泥の差だ。
この老いぼれが死んだ後、お前はどうやって渡り合っていくつもりだ?
フィルードという若者、侮るな。
今日の戦い……破竹の勢いで獣人軍を殲滅したあの戦術、並大抵ではない。
王国直属軍を持ってしても、同じことはできまい。」
老人の目は鋭く細められる。
「それに、彼は若くして高級見習い超凡者。
連れている小娘も、二十歳そこそこで上位超凡者だ。
私はこれほどの天才を見たことがない。決して敵に回すな。
友誼を結べ。それが唯一の生存の道だ。」
そして老人は決断を告げた。
「明日、私が千人の衛兵を連れて彼に従う。
お前には二百を残す。農奴兵を率いれば数千になる。
この城は守り切れる。援軍もそのうち来る。」
フランクは歯を食いしばった。
「大伯父様の言うことは理解しています……だが、あの若者はあまりに傲慢すぎる。
人手が欲しい時は“子爵様”、不要になったら“フランク”。
あの手のひら返しは本をめくるより早い。
なぜ彼は私とちゃんと話し合おうとしない!?」
老人は水を一口飲み、呆れたように言った。
「豚のように愚かな時のお前には、強者の礼儀は理解できんだろう。
あれは体裁だ。本気にするな。
強者が弱者に示す礼など、所詮その程度のものだ。」
淡々と、しかし深く刺さる言葉が続いた。
「今日のお前は刺激で判断を誤っただけだ。責めはしない。
だが、二度と同じ過ちをするな。
フィルードは悪くない。
……お前が彼の立場だったら、救援に来ただろうか?」
返す言葉がなくなり、老人は結論を言い渡した。
「もう決まりだ。戻って寝ろ。」
──
フィルードは大営へ戻ったが、怒ってはいなかった。
こんな些事で感情を乱すほど、彼は未熟ではない。
戻るとすぐに千夫長たちが駆け寄ってきた。
ユリアンは腕を包帯で吊り、ブルースは足を引きずっている。
「どうした、怪我か? 重傷ではないな?」
「大丈夫です、軽傷です。数日で治ります!」
フィルードはうなずき、表情を引き締めた。
「お前たちはもう千夫長だ。
真っ先に突っ込むな。考えを変えろ。
今学ぶべきは“兵を率いて戦い、死傷者を最小に抑える技術”だ。
お前たち個人の武勇ではない。」
だが、2人は不満そうだ。
ブルースが頭を掻きながら言った。
「親方、俺を親衛隊に戻してくださいよ。
あの豚みたいに鈍い兵士ども、ぜんっぜん言うこと聞かないんです。」
ユリアンも激しくうなずく。
「そうだそうだ! 俺が突撃しても誰もついてこない! モグラかよ!」
その瞬間、フィルードは鋭く言い放った。
「ふざけるな、お前ら!
その理屈なら、この俺がお前たちを倒せるのだから、お前らも豚ということになるぞ!」
2人が黙る。
「いいか、傲慢になるな。
兵士たちは身体能力が違う。
お前らが二人斬る間に、彼らはまだ一人目と戦っているかもしれん。
どうやって同じ速度でついてこられる?」
フィルードは息を吐き、命じた。
「もういい。今後、突撃は禁止だ。後方で指揮を執れ。
前線に突っ込んだら給料を差し引く。
さらに一年間、禁酒だ。」
2人は同時に青ざめた。
隣でニヤニヤしていたマイクに、フィルードは鋭い視線を向けた。
「お前もだ。
またあのボロ馬で突っ込んだら……歩兵に降格させる。」
マイクの笑顔がようやく止まった。
古き仲間たちを見回しながら、フィルードは静かに思う。
――俺たちはもう“数十人の隊”ではない。
矢一本で死ぬ時代なのだ。
俺が止めなければ、彼らは無駄死にする。
「いいか、よく聞け。冗談ではない。
大兵団の戦は、昔とはまったく違う。
どこから飛んできた矢一本で……命が終わるぞ。」
その隣にいた上位超凡者――残った一本の前歯を晒して笑う老人が、呆れ半分の調子で口を開いた。
「まあまあ、みな身内なのだから、変に角を立てるな。
フランク、お前のやり方には大伯父である私も賛同しかねる。
我が家は恩知らずの家柄ではないはずだ。助けられた以上、尻込みするのは間違っている。」
老人は表情こそ穏やかだが、その声音には鋭い芯があった。
「たとえお前が応じたとしても――大伯父の私は承知しない。
フィルード団長が出るなら、私も出る。
その際は、お前の部下のあの娘と共に、敵の上位超凡者を討ち取ってみせよう。
まあ……かなり活躍できるだろうな。」
この老人がフランクより遥かに狡猾だということを、フィルードはよく知っていた。
だからこそ、余計な駆け引きをする気など初めからなかった。
「では、老先輩。ありがとうございます。」
そう一礼すると、フィルードは再びフランクへ視線を向けた。
「よく考えておけ。我々は一晩休み、明日にはカールトン子爵領へ向けて進発する。
行くか行かないか、はっきり返事をくれ。お前を困らせるつもりはない。
お前の部下の大半の超凡者と、今日戦闘に参加した衛兵を連れてきてくれればいい。
お前は二百の衛兵を残し、再編成した農奴兵を率いて城を守れ。
彼らは一戦経験している分、戦闘力は以前より上がっているはずだ。」
それだけ言い残し、弁解を受け付ける気もなく、軽く会釈して広間を後にした。
――と、そこで背後から怒号が響いた。
フィルードが去った途端、フランクは怒りに任せて物を投げつけ、テーブルを蹴り壊し始めたのだ。
「傲慢な奴め! 部下が強いからって私を侮辱しおって! 絶対に目に物見せてやる!」
怒りの激情がようやく収まった頃、老人はただ静かにその一部始終を眺めていた。
息を荒げ座り込んだフランクに、老人はようやく口を開いた。
「お前のようにすぐ怒る者は、どこへ行っても通用しない。
あの若者はお前を助けに来たのだ。それなりの代償も払ってな。
なのになぜ即座に拒否する? 少しでも誠意を見せれば済む話だ。
領地の超凡者を数人貸し出すだけで良かったのに。」
そこまで言い切ると、老人は静かにため息をついた。
「はっきり言うが……お前はまだ未熟すぎる。父親とは雲泥の差だ。
この老いぼれが死んだ後、お前はどうやって渡り合っていくつもりだ?
フィルードという若者、侮るな。
今日の戦い……破竹の勢いで獣人軍を殲滅したあの戦術、並大抵ではない。
王国直属軍を持ってしても、同じことはできまい。」
老人の目は鋭く細められる。
「それに、彼は若くして高級見習い超凡者。
連れている小娘も、二十歳そこそこで上位超凡者だ。
私はこれほどの天才を見たことがない。決して敵に回すな。
友誼を結べ。それが唯一の生存の道だ。」
そして老人は決断を告げた。
「明日、私が千人の衛兵を連れて彼に従う。
お前には二百を残す。農奴兵を率いれば数千になる。
この城は守り切れる。援軍もそのうち来る。」
フランクは歯を食いしばった。
「大伯父様の言うことは理解しています……だが、あの若者はあまりに傲慢すぎる。
人手が欲しい時は“子爵様”、不要になったら“フランク”。
あの手のひら返しは本をめくるより早い。
なぜ彼は私とちゃんと話し合おうとしない!?」
老人は水を一口飲み、呆れたように言った。
「豚のように愚かな時のお前には、強者の礼儀は理解できんだろう。
あれは体裁だ。本気にするな。
強者が弱者に示す礼など、所詮その程度のものだ。」
淡々と、しかし深く刺さる言葉が続いた。
「今日のお前は刺激で判断を誤っただけだ。責めはしない。
だが、二度と同じ過ちをするな。
フィルードは悪くない。
……お前が彼の立場だったら、救援に来ただろうか?」
返す言葉がなくなり、老人は結論を言い渡した。
「もう決まりだ。戻って寝ろ。」
──
フィルードは大営へ戻ったが、怒ってはいなかった。
こんな些事で感情を乱すほど、彼は未熟ではない。
戻るとすぐに千夫長たちが駆け寄ってきた。
ユリアンは腕を包帯で吊り、ブルースは足を引きずっている。
「どうした、怪我か? 重傷ではないな?」
「大丈夫です、軽傷です。数日で治ります!」
フィルードはうなずき、表情を引き締めた。
「お前たちはもう千夫長だ。
真っ先に突っ込むな。考えを変えろ。
今学ぶべきは“兵を率いて戦い、死傷者を最小に抑える技術”だ。
お前たち個人の武勇ではない。」
だが、2人は不満そうだ。
ブルースが頭を掻きながら言った。
「親方、俺を親衛隊に戻してくださいよ。
あの豚みたいに鈍い兵士ども、ぜんっぜん言うこと聞かないんです。」
ユリアンも激しくうなずく。
「そうだそうだ! 俺が突撃しても誰もついてこない! モグラかよ!」
その瞬間、フィルードは鋭く言い放った。
「ふざけるな、お前ら!
その理屈なら、この俺がお前たちを倒せるのだから、お前らも豚ということになるぞ!」
2人が黙る。
「いいか、傲慢になるな。
兵士たちは身体能力が違う。
お前らが二人斬る間に、彼らはまだ一人目と戦っているかもしれん。
どうやって同じ速度でついてこられる?」
フィルードは息を吐き、命じた。
「もういい。今後、突撃は禁止だ。後方で指揮を執れ。
前線に突っ込んだら給料を差し引く。
さらに一年間、禁酒だ。」
2人は同時に青ざめた。
隣でニヤニヤしていたマイクに、フィルードは鋭い視線を向けた。
「お前もだ。
またあのボロ馬で突っ込んだら……歩兵に降格させる。」
マイクの笑顔がようやく止まった。
古き仲間たちを見回しながら、フィルードは静かに思う。
――俺たちはもう“数十人の隊”ではない。
矢一本で死ぬ時代なのだ。
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