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第221章失地回復戦線の始動
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それだけでは終わらなかった。
フィルードはこの期間、城壁に登って防衛に参加していた豚頭族(オーク)の奴隷たちを一人ひとり洗い直した。
――恐怖に耐え、命令を守り、最後まで持ち場を離れなかった者。
その中からさらに精鋭を選び抜き、最終的に千人規模の部隊を編成する。
(数ではない。重要なのは、命令が通るかどうかだ)
フィルードはこの千人を一箇所にまとめることはしなかった。
彼らを完全に分散させ、什伍単位で既存の人族部隊に編入する。
役割は半兵士、半輜重兵。
平時は輸送と労務を担い、緊急時にはそのまま戦列に立たせる。
徒党を組ませないため。
そして何より、獣人という存在を“外部戦力”ではなく、軍団の構成要素として溶かし込むためだった。
この再編によって、フィルード軍団に属する獣人の数はおよそ二千に達した。
前線で負傷していたベテラン兵の一部も復帰したが、中には後遺障害を抱えた者もいる。
そこでフィルードは農奴兵の一部を軍に組み込み、最終的な軍団規模を六千人まで拡張した。
そのうち三分の一が獣人。
主力は豚頭族とジャッカルマンである。
春の最初の雨が降り始めると同時に、峡谷領地は張り詰めた空気に包まれた。
春耕の開始だ。
度重なる開発の結果、耕地面積はすでに六万ムー――およそ四千ヘクタールに達している。
まだ荒削りではあるが、痩せ地に強いライ麦を植える分には十分だった。
領地全体が、まるで一つの生き物のように動き出す。
一方で、フィルードは五千の兵を率い、南征に踏み切った。
千人の精鋭のみを領地防衛として残し、彼らに農奴兵と少年兵を預ける。
子爵として義務付けられている動員数は二千。
残り三千については、「傭兵団」として参戦する算段だった。
(名目を変えるだけで、得られるものは大きく変わる)
王国から支払われる報酬は、正規兵とは比較にならない。
北域を離れ、王国の中枢領域へと入った途端、隊列に混じる大量の獣人が周囲に動揺をもたらした。
偵察が絶えず送られ、とある伯爵領では大軍によって進軍を止められる事態にまで発展する。
丁寧な説明を重ね、ようやく援軍だと理解されて通行が許された。
大黒に乗れば三、四日で着く距離だが、今回は歩兵を伴っている。
王都近郊に到達するまで、丸八日を要した。
それでもなお、通常の軍であればさらに四、五日はかかっただろうと、フィルードは冷静に見積もっていた。
王都城下に到着した時、ウェインは言葉を失った。
北境貴族の軍団として、最速で到着していたからだ。
待機期間中、フィルードは中級見習い魔薬の素材を大量に購入し、製薬に没頭した。
中級魔薬は初級と違い、一日に三回が限度。
成功率も半分以下に落ちる。
(だからこそ、価値がある)
中級魔薬の購入資金は、すべて初級薬を売却して捻出したものだった。
この動きにより、王都の低級魔薬市場は短期間で大きく揺れ動いた。
三日連続で失敗した後、ついに最初の一本が完成する。
一度成功すれば、あとは早かった。
十日後には成功率四割に到達し、フィルードは正式に中級見習い製薬師へと昇格する。
その日、北方貴族の軍団がすべて集結した。
カールトンとフランクが訪れ、連合軍の編成を申し出る。
フィルードは迷わず了承した。
彼らはすでに、指揮官としての力量を疑っていなかった。
傭兵団の報酬についても、話はついている。
表向きはウェインとの交渉だったが、実質的には国王との折衝だった。
最終的に決まった日給は、一人あたり銀貨十枚。
破格だ。
だが、これまでの戦績と装備水準を考えれば、むしろ当然だった。
やがて出陣命令が下る。
総兵力は六万。
(実際に戦えるのは、その半分だな)
フィルードは即座に見抜いた。
その中に、自軍の精鋭二、三千が含まれている。
進軍は混乱を極めた。
怒号が飛び交い、隊列は何度も乱れる。
だが、その中で一つだけ、異様なほど整った部隊があった。
フィルードの軍団である。
五千の兵が三つの歩兵方陣を組み、整然と進む。
千の精鋭が前方、左右に二千ずつ。
フランクとカールトンの衛兵が両翼を固める。
遠目にも、その軍勢からは鋭い覇気が立ち上っていた。
国王エドモンも思わず視線を向ける。
七日後、大軍は最初の奪還目標である子爵城へ到達した。
休息もそこそこに包囲が敷かれ、原木の伐採が命じられる。
夜、フィルードは工匠たちを指導し、投石機の製作に着手した。
翌朝までに完成したのは二台のみ。
だが、部品は揃っている。
(数を増やせば、城は持たない)
守備兵は一、二万。
射撃戦では消耗が大きすぎる。
絶望を与え、心を折ってから総攻撃――それが最善だった。
やがて二台の投石機が火を噴く。
轟音とともに石弾が城壁を叩き、城内に悲鳴が走った。
数日後。
投石機の増設とともに、城壁はひび割れ、崩落寸前となる。
失地回復戦は、すでに始まっていた。
フィルードはこの期間、城壁に登って防衛に参加していた豚頭族(オーク)の奴隷たちを一人ひとり洗い直した。
――恐怖に耐え、命令を守り、最後まで持ち場を離れなかった者。
その中からさらに精鋭を選び抜き、最終的に千人規模の部隊を編成する。
(数ではない。重要なのは、命令が通るかどうかだ)
フィルードはこの千人を一箇所にまとめることはしなかった。
彼らを完全に分散させ、什伍単位で既存の人族部隊に編入する。
役割は半兵士、半輜重兵。
平時は輸送と労務を担い、緊急時にはそのまま戦列に立たせる。
徒党を組ませないため。
そして何より、獣人という存在を“外部戦力”ではなく、軍団の構成要素として溶かし込むためだった。
この再編によって、フィルード軍団に属する獣人の数はおよそ二千に達した。
前線で負傷していたベテラン兵の一部も復帰したが、中には後遺障害を抱えた者もいる。
そこでフィルードは農奴兵の一部を軍に組み込み、最終的な軍団規模を六千人まで拡張した。
そのうち三分の一が獣人。
主力は豚頭族とジャッカルマンである。
春の最初の雨が降り始めると同時に、峡谷領地は張り詰めた空気に包まれた。
春耕の開始だ。
度重なる開発の結果、耕地面積はすでに六万ムー――およそ四千ヘクタールに達している。
まだ荒削りではあるが、痩せ地に強いライ麦を植える分には十分だった。
領地全体が、まるで一つの生き物のように動き出す。
一方で、フィルードは五千の兵を率い、南征に踏み切った。
千人の精鋭のみを領地防衛として残し、彼らに農奴兵と少年兵を預ける。
子爵として義務付けられている動員数は二千。
残り三千については、「傭兵団」として参戦する算段だった。
(名目を変えるだけで、得られるものは大きく変わる)
王国から支払われる報酬は、正規兵とは比較にならない。
北域を離れ、王国の中枢領域へと入った途端、隊列に混じる大量の獣人が周囲に動揺をもたらした。
偵察が絶えず送られ、とある伯爵領では大軍によって進軍を止められる事態にまで発展する。
丁寧な説明を重ね、ようやく援軍だと理解されて通行が許された。
大黒に乗れば三、四日で着く距離だが、今回は歩兵を伴っている。
王都近郊に到達するまで、丸八日を要した。
それでもなお、通常の軍であればさらに四、五日はかかっただろうと、フィルードは冷静に見積もっていた。
王都城下に到着した時、ウェインは言葉を失った。
北境貴族の軍団として、最速で到着していたからだ。
待機期間中、フィルードは中級見習い魔薬の素材を大量に購入し、製薬に没頭した。
中級魔薬は初級と違い、一日に三回が限度。
成功率も半分以下に落ちる。
(だからこそ、価値がある)
中級魔薬の購入資金は、すべて初級薬を売却して捻出したものだった。
この動きにより、王都の低級魔薬市場は短期間で大きく揺れ動いた。
三日連続で失敗した後、ついに最初の一本が完成する。
一度成功すれば、あとは早かった。
十日後には成功率四割に到達し、フィルードは正式に中級見習い製薬師へと昇格する。
その日、北方貴族の軍団がすべて集結した。
カールトンとフランクが訪れ、連合軍の編成を申し出る。
フィルードは迷わず了承した。
彼らはすでに、指揮官としての力量を疑っていなかった。
傭兵団の報酬についても、話はついている。
表向きはウェインとの交渉だったが、実質的には国王との折衝だった。
最終的に決まった日給は、一人あたり銀貨十枚。
破格だ。
だが、これまでの戦績と装備水準を考えれば、むしろ当然だった。
やがて出陣命令が下る。
総兵力は六万。
(実際に戦えるのは、その半分だな)
フィルードは即座に見抜いた。
その中に、自軍の精鋭二、三千が含まれている。
進軍は混乱を極めた。
怒号が飛び交い、隊列は何度も乱れる。
だが、その中で一つだけ、異様なほど整った部隊があった。
フィルードの軍団である。
五千の兵が三つの歩兵方陣を組み、整然と進む。
千の精鋭が前方、左右に二千ずつ。
フランクとカールトンの衛兵が両翼を固める。
遠目にも、その軍勢からは鋭い覇気が立ち上っていた。
国王エドモンも思わず視線を向ける。
七日後、大軍は最初の奪還目標である子爵城へ到達した。
休息もそこそこに包囲が敷かれ、原木の伐採が命じられる。
夜、フィルードは工匠たちを指導し、投石機の製作に着手した。
翌朝までに完成したのは二台のみ。
だが、部品は揃っている。
(数を増やせば、城は持たない)
守備兵は一、二万。
射撃戦では消耗が大きすぎる。
絶望を与え、心を折ってから総攻撃――それが最善だった。
やがて二台の投石機が火を噴く。
轟音とともに石弾が城壁を叩き、城内に悲鳴が走った。
数日後。
投石機の増設とともに、城壁はひび割れ、崩落寸前となる。
失地回復戦は、すでに始まっていた。
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