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第251章 軽視という名の致命傷
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明らかに、この獣人正規軍はこの流寇どもを眼中に置いていなかった。
山に籠もられていた時は厄介だったが、今こうして平原へ出てきた以上、ただの餌だ――彼らはそう判断したのだろう。
だがフィルードには分かっていた。
この瞬間、勝敗はすでに決している。
草叢の奥、大黒に跨ったまま戦場を見下ろし、彼は静かに首を振った。
(やはりな……)
(獣人の骨子に刻まれた好戦性は、そう簡単には抜けない)
これまで略奪と突撃に慣れきった連中だ。
守り、警戒し、隊形を保つ――そんな“戦争”を、今さら理解できるはずがない。
一方、ローセイも異変を察し、顔色を変えた。
彼は即座に最精鋭の豚頭族を前線へ押し出し、ガロたちに向かって怒鳴った。
「投石車だ! 急げ、装填しろ!」
ガロは相手が突っ込んでくるのを見た瞬間、迷いなく投石車を降ろさせ、周囲の獣人たちに石弾を運ばせた。
だが、彼らの動きは明らかに鈍い。
(遅い……)
(やはり“人間式”の工兵運用は、獣人には厳しいか)
専門訓練を受けた農奴兵とは、根本的に速度が違う。
敵が百メートル圏内に入った時点で、ようやく組み立てと装填が完了した。
使用する石弾は体積が小さい。
射程は短く、有効殺傷距離は五十~六十メートル。
転がりによる追加損害はあるが、真価を発揮するのはこの距離だ。
だが――
この獣人大軍は、完全にローセイたちを軽視していた。
寄せ集めの流寇、しかも普通獣人出身。
本気で警戒する理由など、彼らには一つもなかった。
ほどなく距離は七十メートルまで詰まり、正規獣人兵が羽箭を放ち始める。
ガロは前方を睨み、必死に距離を測っていた。
ローセイ側にも狩弓はある。
だが威力は低く、牽制以上の意味はない。
互いに数回、試すような射撃を交わすうち、距離は――五十メートル台。
その瞬間だった。
ガロが腹の底から叫んだ。
「――放てッ!!」
号令と同時に、固定縄が解かれる。
破空音とともに、五十余の石球が宙へ舞い上がった。
突撃中の獣人たちは、その“質量”を理解していなかった。
次の瞬間――
石球は容赦なく敵陣へ叩き込まれた。
後方にいたボア・マンがようやく異変に気づき、恐怖混じりの咆哮を上げたが、すでに遅い。
「バン、バン、バンッ!!」
獣人たちは次々と叩き倒され、転がる石球が隊列を引き裂く。
死傷は連鎖的に拡大していった。
この一斉射だけで、百名以上が倒れた。
それを見たガロは興奮し、思わず豚のような鳴き声を上げた。
だが彼はすぐ我に返り、再装填を命じる。
――しかし、間に合わない。
床弩とは違う。
投石車の再装填速度は圧倒的に遅く、敵が三十メートルまで迫ったところで、ようやく第二輪が整った。
躊躇はなかった。
再び縄が解かれ、破空音が響く。
獣人たちは慌てて――
(中略)
そして、その時だった。
――人間兵が、敵陣へ殺到した。
最前線を突き進むのは、二百余の床弩を担いだ農奴兵。
この半年、領地が血反吐を吐くようにして量産した兵器だ。
フィルードが弦を張り終えた瞬間、
獣人たちはようやく理解した。
目の前に現れたのは、
ただの流寇ではない。
正規装備の、人間軍団だ。
しかも、その数は多く、装備は異様なほど整っている。
――隊列は、瞬時に崩壊した。
(……俺の名、そんなに広まっていたか)
フィルード自身ですら、その反応速度に一瞬だけ眉を動かした。
逃走が始まる。
完全な瓦解だ。
彼は即座に命じ、部隊を抽調して捕縛を開始。
自らは親衛の超凡者と騎兵を率い、逃げるボア・マンを追撃した。
この時、配下の騎兵は六百。
長年の略奪と牧草地の確保が、ようやく形になった数字だ。
超凡者も十五名。
全員に高級見習い魔弓を持たせる計画は失敗したが、代わりに中級見習い装備を与えている。
魔獣皮毛から作られた防具には、無数の堅固符文。
通常攻撃はほぼ無効。
高級見習いの攻撃すら、大きく減衰させる。
(魔器師になった価値は、こういう時に出る)
全員が魔獣坐騎に跨る。
牛、灰狼――その光景は異様で、威圧的だった。
六百の騎兵は風のように疾走し、
三十分もかからず、逃げるボア・マンに追いつく。
鉄甲を着た彼らが、速く走れるはずもない。
接触の瞬間、
フィルードとエレナが同時に矢を放った。
狙いは入階超凡者。
結果は――瞬殺。
残る見習い級も、一人ずつ“点名”されて落ちていく。
普通の獣人兵は、六十メートルまで接近してようやく射箭を開始したが――遅すぎた。
わずか一合。
五十余名がその場で斬り伏せられる。
豚頭族たちは、ついに止まり、防衛陣形を取った。
――指揮官は、すでに死んでいる。
それでも崩れない。
それだけは、さすが“精鋭”だった。
フィルードは、その光景を冷静に見下ろしながら、心中で静かに結論づけた。
(いい判断だ)
(だが……もう、遅い)
戦争は、
始まる前に終わっていることがある。
山に籠もられていた時は厄介だったが、今こうして平原へ出てきた以上、ただの餌だ――彼らはそう判断したのだろう。
だがフィルードには分かっていた。
この瞬間、勝敗はすでに決している。
草叢の奥、大黒に跨ったまま戦場を見下ろし、彼は静かに首を振った。
(やはりな……)
(獣人の骨子に刻まれた好戦性は、そう簡単には抜けない)
これまで略奪と突撃に慣れきった連中だ。
守り、警戒し、隊形を保つ――そんな“戦争”を、今さら理解できるはずがない。
一方、ローセイも異変を察し、顔色を変えた。
彼は即座に最精鋭の豚頭族を前線へ押し出し、ガロたちに向かって怒鳴った。
「投石車だ! 急げ、装填しろ!」
ガロは相手が突っ込んでくるのを見た瞬間、迷いなく投石車を降ろさせ、周囲の獣人たちに石弾を運ばせた。
だが、彼らの動きは明らかに鈍い。
(遅い……)
(やはり“人間式”の工兵運用は、獣人には厳しいか)
専門訓練を受けた農奴兵とは、根本的に速度が違う。
敵が百メートル圏内に入った時点で、ようやく組み立てと装填が完了した。
使用する石弾は体積が小さい。
射程は短く、有効殺傷距離は五十~六十メートル。
転がりによる追加損害はあるが、真価を発揮するのはこの距離だ。
だが――
この獣人大軍は、完全にローセイたちを軽視していた。
寄せ集めの流寇、しかも普通獣人出身。
本気で警戒する理由など、彼らには一つもなかった。
ほどなく距離は七十メートルまで詰まり、正規獣人兵が羽箭を放ち始める。
ガロは前方を睨み、必死に距離を測っていた。
ローセイ側にも狩弓はある。
だが威力は低く、牽制以上の意味はない。
互いに数回、試すような射撃を交わすうち、距離は――五十メートル台。
その瞬間だった。
ガロが腹の底から叫んだ。
「――放てッ!!」
号令と同時に、固定縄が解かれる。
破空音とともに、五十余の石球が宙へ舞い上がった。
突撃中の獣人たちは、その“質量”を理解していなかった。
次の瞬間――
石球は容赦なく敵陣へ叩き込まれた。
後方にいたボア・マンがようやく異変に気づき、恐怖混じりの咆哮を上げたが、すでに遅い。
「バン、バン、バンッ!!」
獣人たちは次々と叩き倒され、転がる石球が隊列を引き裂く。
死傷は連鎖的に拡大していった。
この一斉射だけで、百名以上が倒れた。
それを見たガロは興奮し、思わず豚のような鳴き声を上げた。
だが彼はすぐ我に返り、再装填を命じる。
――しかし、間に合わない。
床弩とは違う。
投石車の再装填速度は圧倒的に遅く、敵が三十メートルまで迫ったところで、ようやく第二輪が整った。
躊躇はなかった。
再び縄が解かれ、破空音が響く。
獣人たちは慌てて――
(中略)
そして、その時だった。
――人間兵が、敵陣へ殺到した。
最前線を突き進むのは、二百余の床弩を担いだ農奴兵。
この半年、領地が血反吐を吐くようにして量産した兵器だ。
フィルードが弦を張り終えた瞬間、
獣人たちはようやく理解した。
目の前に現れたのは、
ただの流寇ではない。
正規装備の、人間軍団だ。
しかも、その数は多く、装備は異様なほど整っている。
――隊列は、瞬時に崩壊した。
(……俺の名、そんなに広まっていたか)
フィルード自身ですら、その反応速度に一瞬だけ眉を動かした。
逃走が始まる。
完全な瓦解だ。
彼は即座に命じ、部隊を抽調して捕縛を開始。
自らは親衛の超凡者と騎兵を率い、逃げるボア・マンを追撃した。
この時、配下の騎兵は六百。
長年の略奪と牧草地の確保が、ようやく形になった数字だ。
超凡者も十五名。
全員に高級見習い魔弓を持たせる計画は失敗したが、代わりに中級見習い装備を与えている。
魔獣皮毛から作られた防具には、無数の堅固符文。
通常攻撃はほぼ無効。
高級見習いの攻撃すら、大きく減衰させる。
(魔器師になった価値は、こういう時に出る)
全員が魔獣坐騎に跨る。
牛、灰狼――その光景は異様で、威圧的だった。
六百の騎兵は風のように疾走し、
三十分もかからず、逃げるボア・マンに追いつく。
鉄甲を着た彼らが、速く走れるはずもない。
接触の瞬間、
フィルードとエレナが同時に矢を放った。
狙いは入階超凡者。
結果は――瞬殺。
残る見習い級も、一人ずつ“点名”されて落ちていく。
普通の獣人兵は、六十メートルまで接近してようやく射箭を開始したが――遅すぎた。
わずか一合。
五十余名がその場で斬り伏せられる。
豚頭族たちは、ついに止まり、防衛陣形を取った。
――指揮官は、すでに死んでいる。
それでも崩れない。
それだけは、さすが“精鋭”だった。
フィルードは、その光景を冷静に見下ろしながら、心中で静かに結論づけた。
(いい判断だ)
(だが……もう、遅い)
戦争は、
始まる前に終わっていることがある。
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