傭兵から商売を始めたら、いつの間にか領主になっていた件

篠の目

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第287章 粉砕される誇り

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両軍は、ほどなくして正面から激突した。
これまでと同じ流れだ。
まずは弓矢による応射。
距離を保ったまま、互いに牽制しつつ、ゆっくりと間合いを詰めていく。
そして――
ローセイ軍団から放たれた投槍が、この敵軍に「どうすれば大人しくなるか」を教え始めた。
鋭く唸りを上げる投槍が、次々と敵陣へ突き刺さる。
指揮を執るミノタウロスの首領も、この武器には明らかに困惑していた。
だが、彼は慌てなかった。
(……前の連中とは違う)
山頂から戦場を見下ろしながら、フィルードは即座にそう判断した。
このミノタウロス部隊は、先ほど殲滅した劫掠隊よりも明らかに攻撃性が高い。
統率も取れており、凶残さが際立っている。
(結局、兵は将で決まる)
将が変われば、部隊の空気も、耐久力も、まるで別物になる。
何波もの投槍を浴びせても、
敵の傲慢な気勢は、完全には削げていなかった。
フィルードは一瞬も迷わなかった。
「……チャチャ」
短く呼びかける。
チャチャは即座に応え、フィルードを掴んで上空へと舞い上がった。
(首を落とす)
それだけで、この部隊は崩れる。
一周旋回しただけで、目標はすぐに見つかった。
ミノタウロス軍団の中央。
隊列の要に立ち、傍らのジャッカルマンたちを怒鳴りつけている存在。
あれが――首領だ。
フィルードは一切躊躇せず、位置を微調整する。
次の瞬間、火薬罐を投げ下ろした。
ほぼ同時に、エレナとメイヴも反応し、同様に火薬罐を投下する。
「ドン!」
「ドン!」
「ドン!」
三度の爆音が連続して轟き、敵軍団は一瞬で大混乱に陥った。
今回、敵の移動速度は遅い。
そのため、火薬罐は予想以上の効果を発揮した。
エレナが投げた一発は、
ミノタウロス首領のすぐ傍で炸裂し、巨体を数メートル吹き飛ばす。
(……よし)
フィルードは、効果を即座に確認すると、続けざまにもう一発を投げ下ろした。
次の瞬間。
火薬罐は首領の胴体に直撃し――
肉片へと変えた。
フィルードは、思わず喉の奥で笑いそうになるのを堪えた。
(……爽快だな)
間もなく、携行していた五発の火薬罐はすべて投げ終えられた。
フィルードは魔弓へと持ち替え、チャチャに高度を下げさせる。
最小限の魔力だけを込め、
混乱の極みにあるミノタウロス戦士たちを、淡々と狙い撃ちにしていった。
首領が肉片にされた光景を目にし、
軍団内のミノタウロスたちは一瞬で主心骨を失った。
だが――
すぐに、威望の高い個体が一人、前へと出てくる。
彼は周囲で次々と倒れていく仲間を見て悟った。
(このままでは、全滅する)
こんな戦い方は、見たことがない。
続ければ、全員が折れる。
彼は全力で叫んだ。
「散開しろ! 密集するな!
この武器は、密集すればするほど威力が上がる!」
だが――
言葉が届く前に、天上から再び三つの瓦罐が連続して落下した。
爆音。
破片。
悲鳴。
大量のミノタウロスが、再び地に伏す。
恐怖に陥った者たちは、もはや誰の声も聞いていなかった。
恐怖に飲まれた時、理性ある者ほど群れようとする。
怒りに歪んだそのミノタウロスの鼻が、わずかに曲がる。
その直後――
一つの瓦罐が、彼のすぐ近く、直線距離わずか数メートルの地点に落ちた。
(……終わった)
そう思った刹那。
凄まじい爆発音とともに、
彼の身体は宙を舞い、数メートル先へ叩きつけられた。
地面に落ちた彼は、口から血を吐きながら、かすれた声を漏らす。
「……す、すごい……威力だ……」
ほどなく、フィルードたち三人は携行していた火薬罐をすべて使い切った。
下では、逃げ惑うミノタウロスたちが完全に狂乱状態に陥っている。
まだ立っていられる者は――百にも満たない。
フィルードは、この“玩具”の威力を直感的に理解した。
(十五個)
わずか十五個の瓦罐で、
数百の重歩兵を残廃にできる。
(……十分すぎる)
先天的に体格で優位を持つ種族は、決して多くない。
一体一体が十人を相手にできる存在で、
初級見習い超凡者に、わずかに劣る程度。
決して雑魚ではない。
獣人の生産力が遅れている理由も、ここにある。
彼らは、こうした強戦種族に依存しすぎている。
――そうでなければ、
人間にとっくに滅ぼされていた。
その時。
数十名規模の敵精鋭小隊が突進してきた。
一瞬の交戦。
数十本の魔力を帯びた矢が敵陣へ叩き込まれ、
即座に二十名以上のミノタウロスが射殺される。
先ほど吹き飛ばされた首領も、よろめきながら立ち上がった。
周囲から絶え間なく上がる悲鳴。
血と混乱。
彼の頭は、爆発しそうだった。
今、立っているミノタウロス兵士は――数十人だけ。
彼は必死に叫んだ。
「山へ登れ!
早く山へ登れ!!」
そう叫び、自身も山へ向かおうとする。
だが、脚は飛び散った鉄釘で貫かれており、
移動速度は致命的に遅かった。
フィルードは、瓦罐を投げ終えても、すぐには離脱しなかった。
背中から弓を取り出し、
チャチャに、さらに高度を下げさせる。
(……逃がさない)
タイミングを見極め、
フィルードは弓を強く引き絞った。
「――シュッ」
鋭い風切り音。
逃走中のミノタウロス首領は、背筋を凍らせるような危機感に襲われ、
思わず振り返る。
一本の矢が――
恐るべき速度で、こちらへ迫ってくるのが見えた。
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