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第328章 反乱という名の消耗戦
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二十名を超えるミノタウロスが、腕を振り上げて咆哮した。
「すべてのジャッカルマンは、我々に従え!」
その場にいた百七十名余りのジャッカルマンたちは、もともとフィルード側が選別した、比較的温和で従順な者たちだった。
呼びかけを聞いた瞬間、頭の回転が速い者たちは即座に判断した。
――これは、巻き込まれるべき事態ではない。
およそ半数が、その場から一気に姿を消した。
一方、残った百名近いジャッカルマンたちは、明確な指導者を欠いていた。
人間の「旦那様」はもういない。ならば――
(元のミノタウロスに戻るのも、悪くない)
そう結論づけた者たちは、そのまま反乱側に組み込まれていった。
こうして反乱軍は形を成す。
二十名のミノタウロスを核に、装備を整え、近隣の村落へと雪崩れ込んだ。
目的は一つ。
青壮年の強制徴集だ。
最初に襲われた村の領主も、ミノタウロスだった。
目の前の光景を見た瞬間、彼は理解した。
(……完全に一線を越えている)
彼自身は、もともと部族内で突出した存在ではない。
父は首長だったが兄弟が多く、継承権は回ってこなかった。
見習い中級超凡者。
その程度の実力で、ようやく中規模部族の首長に収まった男だ。
だからこそ、分かっていた。
この反乱者たちと組めば、最後に待つのは破滅しかない。
彼は即座に配下を集め、鎮圧に動いた。
――これこそが、フィルードの設計した権力構造の狙いだった。
平時には守備団が領主の暴走や不忠を抑え、
非常時には逆に、領主が反乱勢力を牽制する。
そこに城塞中枢――税務と行政を担う第三勢力が加わり、三者が均衡する。
単純だが、崩れにくい。
二日前、領主は迅速に青壮年を招集した。
だが、反乱軍の動きはそれを上回った。
二つの村が連続して陥落。
反乱側は六百から七百名を強制徴集する。
一方、領主側は三百から四百名が限界だった。
しかも、その多くが恐怖から逃げ散っている。
(……正面では勝てない)
そう悟った瞬間、逃走も考えた。
だが、出発前に通訳から繰り返し聞かされていた規則が脳裏をよぎる。
――領地を離れた時点で、即座に放棄と見なされる。
――首長の地位は剥奪され、雑兵に落とされる。
理解できたのは、それだけだった。
だが、それで十分だった。
彼は腹を括り、数百の兵を率いて陣を張り、正面から迎撃した。
結果は、無残だった。
四百を超える兵力が、正面衝突で一気に瓦解した。
反乱軍の中には、フィルードが選別した百名以上の精鋭がいた。
彼らは最低限の訓練を受け、密集陣形で突撃してくる。
一方、領主側の青壮年は飢えで槍すら満足に握れなかった。
領主自身は超凡者だった。
七名のミノタウロスと十数名のジャッカルマンを斬り伏せたが、流れは変えられない。
彼は残存兵を率い、山へ退いた。
そこを死守する以外に道はなかった。
反乱軍は何度か包囲を試みたが、損耗が大きいと見るや、あっさり諦めて拡散した。
一日前。
反乱軍はさらに一つの町を陥落させた。
この頃には、反乱の噂は一帯に広がり、各首長と治安隊が動き出していた。
かき集めた兵力は、ようやく千名余り。
だが士気は、明らかに反乱側が上だった。
拡大しなければ、潰される――その危機感が彼らを動かしていた。
エレナの報告が届いた時点で、反乱軍はすでに二つの町を制圧。
二つ目の町では、なお抵抗が続いていた。
位置が悪い。
二大都市の境界、主城区から遠く、騎兵でも三日はかかる。
(……待てないな)
フィルードは即断した。
騎兵部隊の指揮を千夫長級の古参に委ね、最速行軍を命じる。
自分は超凡者小隊を率い、最短距離で急行した。
一日後、現地到着。
その時点で反乱軍は二千規模に膨れ上がっていた。
二つ目の町は陥落し、残兵は山に立て籠もっている。
家畜もすべて山上へ追い上げられていた。
反乱軍は何度も山を攻めたが、失敗を繰り返している。
地面には死体が散乱していた。
フィルードは到着と同時に動いた。
休息は不要。
超凡者たちは側面から展開し、弓を引き絞る。
狙いは一貫してミノタウロス。
反乱軍も連盟の介入を悟り、防御陣形を組む。
だが、遅い。
超凡者たちは距離を保ち、蜂の群れのように動き続けた。
一射一射が確実に損害を与える。
数の差はあっても、質が違う。
肉を薄く削ぐように、反乱軍の戦力は確実に減っていった。
首脳は理解した。
ここで留まれば、全滅する。
彼は残存兵を率い、別の町へ突進した。
フィルードは即座に伝令を走らせ、防衛準備を命じる。
自らは追撃を続け、消耗を強いた。
半日後、反乱軍は町に到達した。
だが、すでに防御は完成していた。
守備団と領主私兵は、開けた地形に陣を敷き、迎撃準備を終えている。
フィルードはその対応を高く評価した。
ただし――敵は倍。
(厳しいが、負け筋ではない)
距離が詰まる直前、彼は指示を出した。
「家畜をまとめ、高台へ退避。
財物は捨てるな。それだけ守れ」
地元側は、ようやく息をついた。
その頃、近隣の小城からの援軍も接近していた。
二日前に逃げた人間兵が、すでに到達していたのだ。
この小城には領主がいない。
一城一大部族――フィルードの制度では、それが標準だった。
大部族は三十余り。
獣人領域の半数以上の城には領主が存在しない。
それは、獣人超凡者の大半が見習い以下だからだ。
数も質も、まだ足りない。
(……だからこそ、今はこの形でいい)
フィルードは、静かに戦場を見据えていた。
「すべてのジャッカルマンは、我々に従え!」
その場にいた百七十名余りのジャッカルマンたちは、もともとフィルード側が選別した、比較的温和で従順な者たちだった。
呼びかけを聞いた瞬間、頭の回転が速い者たちは即座に判断した。
――これは、巻き込まれるべき事態ではない。
およそ半数が、その場から一気に姿を消した。
一方、残った百名近いジャッカルマンたちは、明確な指導者を欠いていた。
人間の「旦那様」はもういない。ならば――
(元のミノタウロスに戻るのも、悪くない)
そう結論づけた者たちは、そのまま反乱側に組み込まれていった。
こうして反乱軍は形を成す。
二十名のミノタウロスを核に、装備を整え、近隣の村落へと雪崩れ込んだ。
目的は一つ。
青壮年の強制徴集だ。
最初に襲われた村の領主も、ミノタウロスだった。
目の前の光景を見た瞬間、彼は理解した。
(……完全に一線を越えている)
彼自身は、もともと部族内で突出した存在ではない。
父は首長だったが兄弟が多く、継承権は回ってこなかった。
見習い中級超凡者。
その程度の実力で、ようやく中規模部族の首長に収まった男だ。
だからこそ、分かっていた。
この反乱者たちと組めば、最後に待つのは破滅しかない。
彼は即座に配下を集め、鎮圧に動いた。
――これこそが、フィルードの設計した権力構造の狙いだった。
平時には守備団が領主の暴走や不忠を抑え、
非常時には逆に、領主が反乱勢力を牽制する。
そこに城塞中枢――税務と行政を担う第三勢力が加わり、三者が均衡する。
単純だが、崩れにくい。
二日前、領主は迅速に青壮年を招集した。
だが、反乱軍の動きはそれを上回った。
二つの村が連続して陥落。
反乱側は六百から七百名を強制徴集する。
一方、領主側は三百から四百名が限界だった。
しかも、その多くが恐怖から逃げ散っている。
(……正面では勝てない)
そう悟った瞬間、逃走も考えた。
だが、出発前に通訳から繰り返し聞かされていた規則が脳裏をよぎる。
――領地を離れた時点で、即座に放棄と見なされる。
――首長の地位は剥奪され、雑兵に落とされる。
理解できたのは、それだけだった。
だが、それで十分だった。
彼は腹を括り、数百の兵を率いて陣を張り、正面から迎撃した。
結果は、無残だった。
四百を超える兵力が、正面衝突で一気に瓦解した。
反乱軍の中には、フィルードが選別した百名以上の精鋭がいた。
彼らは最低限の訓練を受け、密集陣形で突撃してくる。
一方、領主側の青壮年は飢えで槍すら満足に握れなかった。
領主自身は超凡者だった。
七名のミノタウロスと十数名のジャッカルマンを斬り伏せたが、流れは変えられない。
彼は残存兵を率い、山へ退いた。
そこを死守する以外に道はなかった。
反乱軍は何度か包囲を試みたが、損耗が大きいと見るや、あっさり諦めて拡散した。
一日前。
反乱軍はさらに一つの町を陥落させた。
この頃には、反乱の噂は一帯に広がり、各首長と治安隊が動き出していた。
かき集めた兵力は、ようやく千名余り。
だが士気は、明らかに反乱側が上だった。
拡大しなければ、潰される――その危機感が彼らを動かしていた。
エレナの報告が届いた時点で、反乱軍はすでに二つの町を制圧。
二つ目の町では、なお抵抗が続いていた。
位置が悪い。
二大都市の境界、主城区から遠く、騎兵でも三日はかかる。
(……待てないな)
フィルードは即断した。
騎兵部隊の指揮を千夫長級の古参に委ね、最速行軍を命じる。
自分は超凡者小隊を率い、最短距離で急行した。
一日後、現地到着。
その時点で反乱軍は二千規模に膨れ上がっていた。
二つ目の町は陥落し、残兵は山に立て籠もっている。
家畜もすべて山上へ追い上げられていた。
反乱軍は何度も山を攻めたが、失敗を繰り返している。
地面には死体が散乱していた。
フィルードは到着と同時に動いた。
休息は不要。
超凡者たちは側面から展開し、弓を引き絞る。
狙いは一貫してミノタウロス。
反乱軍も連盟の介入を悟り、防御陣形を組む。
だが、遅い。
超凡者たちは距離を保ち、蜂の群れのように動き続けた。
一射一射が確実に損害を与える。
数の差はあっても、質が違う。
肉を薄く削ぐように、反乱軍の戦力は確実に減っていった。
首脳は理解した。
ここで留まれば、全滅する。
彼は残存兵を率い、別の町へ突進した。
フィルードは即座に伝令を走らせ、防衛準備を命じる。
自らは追撃を続け、消耗を強いた。
半日後、反乱軍は町に到達した。
だが、すでに防御は完成していた。
守備団と領主私兵は、開けた地形に陣を敷き、迎撃準備を終えている。
フィルードはその対応を高く評価した。
ただし――敵は倍。
(厳しいが、負け筋ではない)
距離が詰まる直前、彼は指示を出した。
「家畜をまとめ、高台へ退避。
財物は捨てるな。それだけ守れ」
地元側は、ようやく息をついた。
その頃、近隣の小城からの援軍も接近していた。
二日前に逃げた人間兵が、すでに到達していたのだ。
この小城には領主がいない。
一城一大部族――フィルードの制度では、それが標準だった。
大部族は三十余り。
獣人領域の半数以上の城には領主が存在しない。
それは、獣人超凡者の大半が見習い以下だからだ。
数も質も、まだ足りない。
(……だからこそ、今はこの形でいい)
フィルードは、静かに戦場を見据えていた。
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