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第347章 冷徹なる捕縛――ウェリアム失墜と北方崩落の序曲
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マイクは、敵将ウェリアムが馬上から叩き落とされる瞬間を、冷静な目で見届けていた。
——勝負ありだ。
彼は即座に手を振り上げる。合図は短く、明確に。数十名の騎兵が一斉に馬を止め、滑るように下馬した。
弓弩に弦が張り直され、銃口が一直線にウェリアムへ向く。
逃げ場はない。
マイクは馬上から声を張った。
「今すぐ投降しろ。そうすればエドモンに身代金を払わせて帰れる可能性が残る。抵抗すれば――今ここで蜂の巣だ」
脅しではない。事実の提示だ。
ウェリアムは豪胆を装う男だが、内実は小心で愚かだと、マイクは事前に把握していた。
案の定、ウェリアムは蒼白になり、両手を挙げた。
——上位超凡者が、このざまか。
誇りも矜持もあったものではない。
数名の兵が駆け寄り、即座に縛り上げる。さらに口をこじ開け、封魔薬剤を一本流し込んだ。
上級見習い向けの薬だが、調合はフィルード直々。上位に対して効果は限定的だが、動揺し、魔力が乱れた状態なら話は別だ。
——これで十分。
今のウェリアムは、せいぜい見習い級。牙を抜かれた獅子にすぎない。
その後、マイクは周囲の戦馬回収を命じた。
ほどなくして、集まった馬は三千頭。
彼は思わず口角を上げる。
——歩兵三千の補充と同義だ。損失を埋め、なお余る。
そこへ、一万の敵歩兵がようやく追いついてきた。だが足取りは重く、息も絶え絶え。
マイクは腹の底から笑った。
「全弓弩手、下馬だ。軽甲兵どもに“贈り物”をくれてやる」
四千の弓弩騎兵が、一瞬で歩兵に変わる。
彼らの本質は騎馬歩兵。機動と火力の融合こそ真骨頂だ。
三列に整列。各列およそ千三百。
敵歩兵は疲労困憊しながらも、こちらが下馬したのを見て歓声を上げ、突進してきた。
——読み通りだ。
人間は、希望を見た瞬間に判断を誤る。
マイクは静かに距離を測る。
五十メートル。
手を振り下ろした。
「射て」
第一列が引き金を引く。
鋭い破空音。
五十メートル以内の弩は、もはや虐殺の道具だ。
先頭が一掃される。
エドモン直属の精鋭衛隊。百里に一人の体力を誇る選抜兵だが、軽装ゆえに盾を持たない。
速度を取った代償。
千を超える弩矢が突き刺さり、貫通し、後列まで薙ぐ。
第二波、第三波、第四波、第五波。
——計算通り。
半数以上が倒れ、残兵は悲鳴を上げて崩壊した。
戦意は砕け、統率は消える。
マイクは内心で冷静に総括する。
——敵騎兵は壊滅。精鋭歩兵は半壊。ここで追撃すれば、心理的致命傷になる。
彼は笑い、側近に言った。
「最高だ。軍に入って以来、一番爽快だな」
側近も笑う。
「長官、これで騎兵将軍の名は確実です。歴史に残る戦功でしょう」
マイクは言葉を返さない。
——名声など副産物だ。重要なのは戦略効果。
彼は手を振った。
「弦を張り直せ。騎乗。敗残兵を殲滅する」
五千の弓弩手が、足で弩を踏み、弦を引き、矢を装填。流れるように騎乗し、逃げる敵へ突撃する。
狂奔する歩兵を狩るのは、雑草を刈るより容易い。
突き上げられ、斬られ、倒れる。
中には膝をつき命乞いする者もいた。
——戦意喪失者は脅威ではない。
無駄な虐殺はしない。
だが多くは恐慌に陥り、ただ逃げるのみ。
追撃の末、数千がようやく大陣営へ逃げ込んだ。
敵本隊が数里先まで迫るのを確認し、マイクは追撃を止める。
——深入りは愚策。今日は十分だ。
彼は高らかに笑い、軍を引いた。
この戦いで、フィルード配下の騎兵の名は一気に広がることになる。
視点はユリアンへ。
ユリアンは五千騎を率い、アモン王国後方で略奪を開始していた。
——戦場は前線だけではない。
騎士領は地獄と化す。
貴族の倉庫を空にし、食糧を農奴と自由民へ分配。
もちろん、その一部は自身の戦費として確保する。
——理想だけでは軍は動かない。
十数万を支える運糧隊は、彼の最優先標的だった。
襲われた隊は、例外なく壊滅。
奪った食糧は分散させ、民に運ばせる。
「貴族が戻れば必ず奪い返す。隠せ」
さらに焼失偽装まで徹底する。
——焦土と分散。補給線を断てば、大軍は飢える。
これは略奪ではない。兵站戦だ。
その頃、エドモンのもとへ、さらなる悪夢が届く。
血まみれの伝令が這いつくばる。
「陛下……ダービー城が陥落しました……守備官は戦死……すでに五、六日経過……フィルード賊の勢いは止まりません……!」
エドモンは凍りついた。
ウェリアム捕縛。
騎兵壊滅。
精鋭衛隊半壊。
そして――ダービー城陥落。
「何だと……? ダービー城が?」
北方の要塞。巨大な条石で築かれ、正攻法で落とされたことはない。
かつて獣人に奪われた時も、内部裏切りだった。
「嘘なら舌を切り落とす。正直に言え」
震える声。
だが兵は明らかに守備側の生き残り。
目には、虚偽を語る余裕などない。
——戦局は、すでに盤面を越えた。
エドモンがまだ事態を整理できずにいる間にも、フィルードの布石は次々と実を結んでいく。
北方は崩れ、騎兵は潰れ、補給は断たれた。
王は、まだそれを理解していない。
だが盤上では、すでに詰みが近づいていた。
——勝負ありだ。
彼は即座に手を振り上げる。合図は短く、明確に。数十名の騎兵が一斉に馬を止め、滑るように下馬した。
弓弩に弦が張り直され、銃口が一直線にウェリアムへ向く。
逃げ場はない。
マイクは馬上から声を張った。
「今すぐ投降しろ。そうすればエドモンに身代金を払わせて帰れる可能性が残る。抵抗すれば――今ここで蜂の巣だ」
脅しではない。事実の提示だ。
ウェリアムは豪胆を装う男だが、内実は小心で愚かだと、マイクは事前に把握していた。
案の定、ウェリアムは蒼白になり、両手を挙げた。
——上位超凡者が、このざまか。
誇りも矜持もあったものではない。
数名の兵が駆け寄り、即座に縛り上げる。さらに口をこじ開け、封魔薬剤を一本流し込んだ。
上級見習い向けの薬だが、調合はフィルード直々。上位に対して効果は限定的だが、動揺し、魔力が乱れた状態なら話は別だ。
——これで十分。
今のウェリアムは、せいぜい見習い級。牙を抜かれた獅子にすぎない。
その後、マイクは周囲の戦馬回収を命じた。
ほどなくして、集まった馬は三千頭。
彼は思わず口角を上げる。
——歩兵三千の補充と同義だ。損失を埋め、なお余る。
そこへ、一万の敵歩兵がようやく追いついてきた。だが足取りは重く、息も絶え絶え。
マイクは腹の底から笑った。
「全弓弩手、下馬だ。軽甲兵どもに“贈り物”をくれてやる」
四千の弓弩騎兵が、一瞬で歩兵に変わる。
彼らの本質は騎馬歩兵。機動と火力の融合こそ真骨頂だ。
三列に整列。各列およそ千三百。
敵歩兵は疲労困憊しながらも、こちらが下馬したのを見て歓声を上げ、突進してきた。
——読み通りだ。
人間は、希望を見た瞬間に判断を誤る。
マイクは静かに距離を測る。
五十メートル。
手を振り下ろした。
「射て」
第一列が引き金を引く。
鋭い破空音。
五十メートル以内の弩は、もはや虐殺の道具だ。
先頭が一掃される。
エドモン直属の精鋭衛隊。百里に一人の体力を誇る選抜兵だが、軽装ゆえに盾を持たない。
速度を取った代償。
千を超える弩矢が突き刺さり、貫通し、後列まで薙ぐ。
第二波、第三波、第四波、第五波。
——計算通り。
半数以上が倒れ、残兵は悲鳴を上げて崩壊した。
戦意は砕け、統率は消える。
マイクは内心で冷静に総括する。
——敵騎兵は壊滅。精鋭歩兵は半壊。ここで追撃すれば、心理的致命傷になる。
彼は笑い、側近に言った。
「最高だ。軍に入って以来、一番爽快だな」
側近も笑う。
「長官、これで騎兵将軍の名は確実です。歴史に残る戦功でしょう」
マイクは言葉を返さない。
——名声など副産物だ。重要なのは戦略効果。
彼は手を振った。
「弦を張り直せ。騎乗。敗残兵を殲滅する」
五千の弓弩手が、足で弩を踏み、弦を引き、矢を装填。流れるように騎乗し、逃げる敵へ突撃する。
狂奔する歩兵を狩るのは、雑草を刈るより容易い。
突き上げられ、斬られ、倒れる。
中には膝をつき命乞いする者もいた。
——戦意喪失者は脅威ではない。
無駄な虐殺はしない。
だが多くは恐慌に陥り、ただ逃げるのみ。
追撃の末、数千がようやく大陣営へ逃げ込んだ。
敵本隊が数里先まで迫るのを確認し、マイクは追撃を止める。
——深入りは愚策。今日は十分だ。
彼は高らかに笑い、軍を引いた。
この戦いで、フィルード配下の騎兵の名は一気に広がることになる。
視点はユリアンへ。
ユリアンは五千騎を率い、アモン王国後方で略奪を開始していた。
——戦場は前線だけではない。
騎士領は地獄と化す。
貴族の倉庫を空にし、食糧を農奴と自由民へ分配。
もちろん、その一部は自身の戦費として確保する。
——理想だけでは軍は動かない。
十数万を支える運糧隊は、彼の最優先標的だった。
襲われた隊は、例外なく壊滅。
奪った食糧は分散させ、民に運ばせる。
「貴族が戻れば必ず奪い返す。隠せ」
さらに焼失偽装まで徹底する。
——焦土と分散。補給線を断てば、大軍は飢える。
これは略奪ではない。兵站戦だ。
その頃、エドモンのもとへ、さらなる悪夢が届く。
血まみれの伝令が這いつくばる。
「陛下……ダービー城が陥落しました……守備官は戦死……すでに五、六日経過……フィルード賊の勢いは止まりません……!」
エドモンは凍りついた。
ウェリアム捕縛。
騎兵壊滅。
精鋭衛隊半壊。
そして――ダービー城陥落。
「何だと……? ダービー城が?」
北方の要塞。巨大な条石で築かれ、正攻法で落とされたことはない。
かつて獣人に奪われた時も、内部裏切りだった。
「嘘なら舌を切り落とす。正直に言え」
震える声。
だが兵は明らかに守備側の生き残り。
目には、虚偽を語る余裕などない。
——戦局は、すでに盤面を越えた。
エドモンがまだ事態を整理できずにいる間にも、フィルードの布石は次々と実を結んでいく。
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王は、まだそれを理解していない。
だが盤上では、すでに詰みが近づいていた。
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