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第三話 戻ってきた日常
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いつもより遅く起きた朝。
体は鉛のように重く、目覚めたというよりも、ただ意識が戻ったという感覚に近い。
朝食を食べる気になれず、俺は麦茶を飲みながら、ボーッとテレビを眺めて過ごした。
それでも太陽が真上に昇る頃になれば、腹も減ってくる。
(……こんな気分でも、空腹って感じるんだな)
生きている以上、食べることは必須だ。
俺はキッチンに赴き、冷蔵庫を覗いて使えそうな食材を取り出した。
今日の昼はナポリタンだ。
冷蔵庫の隅に転がっていた半端なピーマンと、使いかけのウィンナーを消費したかったから。
野菜を入れているカゴからタマネギ、乾物を入れている棚から乾麺も準備する。
スパゲティを茹でている間に、カットした野菜とウィンナーを炒め合わせる。
ウィンナー特有の旨い肉の匂いが、熱と一緒に立ち上がった。
ソースはケチャップがベースだ。そこに市販のデミグラスソースを足して、具材を炒めたフライパンでふつふつとするまでケチャップに火を通す。
味見をすると、火が通ったことで酸味が飛んでいたので、酢を少々加えて味を整えた。
最後に茹で上がったスパゲティをフライパンに入れ、茹で汁で濃さを調整しつつ軽く炒めれば完成だ。
皿に盛り、粉チーズを振りかけて、大口で頬張る。
(……うん。美味いじゃん)
流れるニュースを見るともなしに、皿を空けていく。
最後の一口を飲み込んで、麦茶のコップに手を伸ばしたところで、スマートフォンから軽快なメロディが流れた。
「電話?――あ、白石さんだ!」
通話ボタンをタップすると、明るい声が耳に響いた。
『藤宮くん、お疲れー!』
「こんにちは、白石さん。ボランティアはどう?」
白石さんは今日から三日間、介護施設の医療ボランティアに参加している。
「本格的な看護はできないからね。まあ雑用係と、お年寄りの話し相手要員みたいなものよ!」
昨日のランチ・パーティーで、笑いながら話してくれた。
彼女ならきっと、どんな現場でも役に立てるだろう。
『うん、こっちはなんとかやってるよ。今、昼休みなんだけど……昨日のこと、気になってて。師匠、あれからどうだった?』
「…………」
咄嗟に答えられずにいると、白石さんの声は心配そうに沈んだ。
『やっぱり、かなり落ち込んでるんだ……はぁ、師匠ってば拗らせてるもんね……』
「えっ?白石さん……亜嵐さんの事情、知ってたの?」
思いがけない言葉に、胸の奥がざわめく。
(俺が知らされなかったことを、白石さんは知っていた……?)
つきんと痛む胸を撫でつつ、声だけは平静を保つ。
『ううん、何にも知らないよ。ただ、なんていうか……そういう感じがしてた、っていうかね?』
――そうか。鈍感だったのは、俺だけだったのか。
思わず苦笑いがこぼれる。
「あれからね、亜嵐さんの従兄が来たんだ。仕事の話だったから、俺もそこで帰ってきたよ」
『師匠の従兄!?何それ、どんな人!?』
白石さんが素頓狂な声を上げたので、俺は感じたままを伝えた。
「イギリスで日本文化を伝える会社を経営してるんだって。切れ者って感じだったよ。粗がなくて朗らかそうで、頭の回転が速い人。あと、亜嵐さんとはあんまり似てないけど、びっくりするようなハンサムだった」
『……へーぇ』
「亜嵐さんの力を借りたいって訪ねてきたんだけど、俺がいても何の役にも立てないからさ。邪魔者は退散したんだ」
軽く言った――つもりだった。
けれど白石さんは、急転直下で憤慨した。
『藤宮くんが邪魔者!?何それ、その人がそう言ったの!?』
「いや、そうじゃないけど……」
『でも藤宮くんはそう感じたんでしょ?――ムカつく!』
「白石さん……」
そのとき、電話の向こうで人を呼ぶ声がした。
『――あ、はーい!……ごめんね、藤宮くん。私、もう行かないと』
「うん、いいよ。仕事、頑張ってね!」
『また改めて、話聞かせてね!じゃあ』
ぷつりと通話が途絶えたスマートフォンを、俺は見つめた。
(ははっ、俺の代わりに白石さんが怒ってくれた――)
白石さんの言葉がすとんと胸に落ちる。
初めは受け付けないと思った。
けれどオリヴァーさんの凄さを肌で感じて、俺はあの人を認めるしかなかった。
何より、彼は亜嵐さんの肉親だ。そんな人にマイナスの感情を抱くわけにはいかない。
結局のところ――。
(……なんだ、ただの嫉妬じゃないか)
亜嵐さんと親し気な話し方も、態度も。
オリヴァー・ウェストフィールドと言う男の何もかもに――俺はムカついたのだ。
「ははっ……案外つまんない人間だったんだな、俺って」
自覚して嗤う。
麦茶のグラスに浮かんだ水滴が、テーブルに小さな染みを作る。
けれど今日の俺は昨夜と違い――涙なんて、一粒も零れなかった。
***
それから三日間、俺の行動範囲は自宅周辺のみだった。
食材を仕入れに行ったスーパーマーケット、コンビニ。そして本屋――目当ては料理雑誌の最新号。
雑誌で見つけたレシピを試せば、頭も空っぽになるし腹も満たせる。まさに一石二鳥だった。
飲み物はずっと麦茶だ。
ローズメリーで買った茶葉は、棚の奥に押し込んだ。
「夏や冷たい麦茶だな、やっぱり」
誰に聞かせるでもなく、そう呟いた。
その晩、雑誌で見つけた『鶏ささみの簡単クリームソテー』を試作した俺は、食後の洗い物をしていた。
(本当に簡単に作れたし、味も上々だったな)
鼻歌交じりで皿を洗う。
残ったクリームをペーパーで拭き取り、泡立てたスポンジを擦り付ける。
水でざぁっと流すと、皿はつるんと光った。
(うん、いい感じだ!)
爽快な気分で食器を棚に戻したとき、テーブルに置いたスマートフォンが鳴った。
「はいはい、えーっと……」
画面に表示された名前に、俺の手はぎくりと止まった。
「……亜嵐さん……」
(……どうしよう、このまま出ないでおこうか?)
しかし八回もコールを無視しても、呼び出しは途切れない。
それが亜嵐さんの強い覚悟のように感じられて、俺は画面をタップした。
「……はい」
『――湊!……すまない、私だ。今は大丈夫だろうか?』
「大丈夫、です」
久し振りに聞く滑らかな声は、少しだけ焦りの色を含んでいた。
『先日は……みっともない姿を見せてしまった。申し訳ない』
「いえ、そんなことないです」
『ここ数日、姿を見せないから心配していた。今、どうしている?』
(……ああ、本当に心配してくれてる声だ)
気遣いと優しさがこもった声音は俺の心を凪ぎ、滑らかに口を動かした。
「料理の試作ばっかりしてました。今夜も、鶏のささみを白ワインで蒸し焼きにして、生クリームのソースを絡めて……」
『ほう、それは興味深い。何より美味そうだ』
「そうなんです!簡単だし美味しくて。だから今度――」
(ローズメリーで作りますよ)
けれどその一言は、喉に引っ掛かってしまった。
言葉を失うと、亜嵐さんはその沈黙を飲み込んで、言葉を継いでくれた。
『湊。明日は空いているだろうか?』
「え……明日?」
唐突な質問に、ぽかんとしてしまう。
『ああ。もし空いているなら、私に付き合ってほしい』
「えっと……」
『無理強いはしないが、アシスタントとして同行してもらいたい場所がある』
アシスタント――その単語に息を呑む。
「……俺なんかで、本当に役に立ちますか?」
出てきた言葉は、酷く自虐的だった。
情けなくて、笑うことすらできない。
するとスマートフォンから響いてきた声は、予想外に憤慨していた。
『湊!自らを蔑むようなことを言うんじゃない!私は君を役立たずなどと思ったことは、一度だってないぞ!』
一喝されて、俺は目を瞬かせた。
目の前の景色が、いっぺんに色を取り戻す。
(俺は……)
「俺は……亜嵐さんの隣にいて、いいんですか?」
『当たり前だろう!君は私にとって……!』
そこで一旦言葉は途切れ、亜嵐さんは『コホン』と咳払いをした。
『私にとって、君はかけがえのない大切な友人だ。それに君がいなければ、私はホットケーキのひとつすら焼けないのだからな』
きっと今、亜嵐さんは、慈しむような表情をしている。
冗談めかしながら、不思議な色の瞳に慈愛が揺れるのを、俺は何度も見てきた。
(……ははっ。オリヴァーさんの存在がどうであれ、俺は俺の知ってる亜嵐さんが大好きだし、一緒にいたい。――それだけなんだ……)
あの夜から己の内に溜まっていた澱が、さぁっと音を立てて消えていく。
やっと前を向くことができると感じた。
「行きます!えっと、ローズメリーに行けばいいですか?」
『いや、それでは君に遠回りをさせてしまう。少し遠出をするから、新横浜駅で落ち合うのはどうだろう?』
亜嵐さんと遠出。
それだけで、ワクワクと胸が高鳴る。
「わかりました。何時にしますか?」
『十時だ。――ふふ、待っているよ』
「はい!俺も楽しみにしてますね!」
それから少し雑談をして、俺は終話ボタンを押した。
風呂に入り、歯を磨き、ベッドに入っても、俺の心は弾みっぱなしだった。
まるで遠足前夜の子どもみたいに。
(……おやつとか、持っていくほうがいいのかな?)
十時に待ち合わせなら、寝坊さえしなければ、簡単なものくらいは作れる。
(何にしようかな。やっぱり紅茶に合うものがいいかな……)
そんなことを考えているうちに、俺は眠りに落ちていた。
とても安らかで、全身がポカポカする心持ちのままで――。
体は鉛のように重く、目覚めたというよりも、ただ意識が戻ったという感覚に近い。
朝食を食べる気になれず、俺は麦茶を飲みながら、ボーッとテレビを眺めて過ごした。
それでも太陽が真上に昇る頃になれば、腹も減ってくる。
(……こんな気分でも、空腹って感じるんだな)
生きている以上、食べることは必須だ。
俺はキッチンに赴き、冷蔵庫を覗いて使えそうな食材を取り出した。
今日の昼はナポリタンだ。
冷蔵庫の隅に転がっていた半端なピーマンと、使いかけのウィンナーを消費したかったから。
野菜を入れているカゴからタマネギ、乾物を入れている棚から乾麺も準備する。
スパゲティを茹でている間に、カットした野菜とウィンナーを炒め合わせる。
ウィンナー特有の旨い肉の匂いが、熱と一緒に立ち上がった。
ソースはケチャップがベースだ。そこに市販のデミグラスソースを足して、具材を炒めたフライパンでふつふつとするまでケチャップに火を通す。
味見をすると、火が通ったことで酸味が飛んでいたので、酢を少々加えて味を整えた。
最後に茹で上がったスパゲティをフライパンに入れ、茹で汁で濃さを調整しつつ軽く炒めれば完成だ。
皿に盛り、粉チーズを振りかけて、大口で頬張る。
(……うん。美味いじゃん)
流れるニュースを見るともなしに、皿を空けていく。
最後の一口を飲み込んで、麦茶のコップに手を伸ばしたところで、スマートフォンから軽快なメロディが流れた。
「電話?――あ、白石さんだ!」
通話ボタンをタップすると、明るい声が耳に響いた。
『藤宮くん、お疲れー!』
「こんにちは、白石さん。ボランティアはどう?」
白石さんは今日から三日間、介護施設の医療ボランティアに参加している。
「本格的な看護はできないからね。まあ雑用係と、お年寄りの話し相手要員みたいなものよ!」
昨日のランチ・パーティーで、笑いながら話してくれた。
彼女ならきっと、どんな現場でも役に立てるだろう。
『うん、こっちはなんとかやってるよ。今、昼休みなんだけど……昨日のこと、気になってて。師匠、あれからどうだった?』
「…………」
咄嗟に答えられずにいると、白石さんの声は心配そうに沈んだ。
『やっぱり、かなり落ち込んでるんだ……はぁ、師匠ってば拗らせてるもんね……』
「えっ?白石さん……亜嵐さんの事情、知ってたの?」
思いがけない言葉に、胸の奥がざわめく。
(俺が知らされなかったことを、白石さんは知っていた……?)
つきんと痛む胸を撫でつつ、声だけは平静を保つ。
『ううん、何にも知らないよ。ただ、なんていうか……そういう感じがしてた、っていうかね?』
――そうか。鈍感だったのは、俺だけだったのか。
思わず苦笑いがこぼれる。
「あれからね、亜嵐さんの従兄が来たんだ。仕事の話だったから、俺もそこで帰ってきたよ」
『師匠の従兄!?何それ、どんな人!?』
白石さんが素頓狂な声を上げたので、俺は感じたままを伝えた。
「イギリスで日本文化を伝える会社を経営してるんだって。切れ者って感じだったよ。粗がなくて朗らかそうで、頭の回転が速い人。あと、亜嵐さんとはあんまり似てないけど、びっくりするようなハンサムだった」
『……へーぇ』
「亜嵐さんの力を借りたいって訪ねてきたんだけど、俺がいても何の役にも立てないからさ。邪魔者は退散したんだ」
軽く言った――つもりだった。
けれど白石さんは、急転直下で憤慨した。
『藤宮くんが邪魔者!?何それ、その人がそう言ったの!?』
「いや、そうじゃないけど……」
『でも藤宮くんはそう感じたんでしょ?――ムカつく!』
「白石さん……」
そのとき、電話の向こうで人を呼ぶ声がした。
『――あ、はーい!……ごめんね、藤宮くん。私、もう行かないと』
「うん、いいよ。仕事、頑張ってね!」
『また改めて、話聞かせてね!じゃあ』
ぷつりと通話が途絶えたスマートフォンを、俺は見つめた。
(ははっ、俺の代わりに白石さんが怒ってくれた――)
白石さんの言葉がすとんと胸に落ちる。
初めは受け付けないと思った。
けれどオリヴァーさんの凄さを肌で感じて、俺はあの人を認めるしかなかった。
何より、彼は亜嵐さんの肉親だ。そんな人にマイナスの感情を抱くわけにはいかない。
結局のところ――。
(……なんだ、ただの嫉妬じゃないか)
亜嵐さんと親し気な話し方も、態度も。
オリヴァー・ウェストフィールドと言う男の何もかもに――俺はムカついたのだ。
「ははっ……案外つまんない人間だったんだな、俺って」
自覚して嗤う。
麦茶のグラスに浮かんだ水滴が、テーブルに小さな染みを作る。
けれど今日の俺は昨夜と違い――涙なんて、一粒も零れなかった。
***
それから三日間、俺の行動範囲は自宅周辺のみだった。
食材を仕入れに行ったスーパーマーケット、コンビニ。そして本屋――目当ては料理雑誌の最新号。
雑誌で見つけたレシピを試せば、頭も空っぽになるし腹も満たせる。まさに一石二鳥だった。
飲み物はずっと麦茶だ。
ローズメリーで買った茶葉は、棚の奥に押し込んだ。
「夏や冷たい麦茶だな、やっぱり」
誰に聞かせるでもなく、そう呟いた。
その晩、雑誌で見つけた『鶏ささみの簡単クリームソテー』を試作した俺は、食後の洗い物をしていた。
(本当に簡単に作れたし、味も上々だったな)
鼻歌交じりで皿を洗う。
残ったクリームをペーパーで拭き取り、泡立てたスポンジを擦り付ける。
水でざぁっと流すと、皿はつるんと光った。
(うん、いい感じだ!)
爽快な気分で食器を棚に戻したとき、テーブルに置いたスマートフォンが鳴った。
「はいはい、えーっと……」
画面に表示された名前に、俺の手はぎくりと止まった。
「……亜嵐さん……」
(……どうしよう、このまま出ないでおこうか?)
しかし八回もコールを無視しても、呼び出しは途切れない。
それが亜嵐さんの強い覚悟のように感じられて、俺は画面をタップした。
「……はい」
『――湊!……すまない、私だ。今は大丈夫だろうか?』
「大丈夫、です」
久し振りに聞く滑らかな声は、少しだけ焦りの色を含んでいた。
『先日は……みっともない姿を見せてしまった。申し訳ない』
「いえ、そんなことないです」
『ここ数日、姿を見せないから心配していた。今、どうしている?』
(……ああ、本当に心配してくれてる声だ)
気遣いと優しさがこもった声音は俺の心を凪ぎ、滑らかに口を動かした。
「料理の試作ばっかりしてました。今夜も、鶏のささみを白ワインで蒸し焼きにして、生クリームのソースを絡めて……」
『ほう、それは興味深い。何より美味そうだ』
「そうなんです!簡単だし美味しくて。だから今度――」
(ローズメリーで作りますよ)
けれどその一言は、喉に引っ掛かってしまった。
言葉を失うと、亜嵐さんはその沈黙を飲み込んで、言葉を継いでくれた。
『湊。明日は空いているだろうか?』
「え……明日?」
唐突な質問に、ぽかんとしてしまう。
『ああ。もし空いているなら、私に付き合ってほしい』
「えっと……」
『無理強いはしないが、アシスタントとして同行してもらいたい場所がある』
アシスタント――その単語に息を呑む。
「……俺なんかで、本当に役に立ちますか?」
出てきた言葉は、酷く自虐的だった。
情けなくて、笑うことすらできない。
するとスマートフォンから響いてきた声は、予想外に憤慨していた。
『湊!自らを蔑むようなことを言うんじゃない!私は君を役立たずなどと思ったことは、一度だってないぞ!』
一喝されて、俺は目を瞬かせた。
目の前の景色が、いっぺんに色を取り戻す。
(俺は……)
「俺は……亜嵐さんの隣にいて、いいんですか?」
『当たり前だろう!君は私にとって……!』
そこで一旦言葉は途切れ、亜嵐さんは『コホン』と咳払いをした。
『私にとって、君はかけがえのない大切な友人だ。それに君がいなければ、私はホットケーキのひとつすら焼けないのだからな』
きっと今、亜嵐さんは、慈しむような表情をしている。
冗談めかしながら、不思議な色の瞳に慈愛が揺れるのを、俺は何度も見てきた。
(……ははっ。オリヴァーさんの存在がどうであれ、俺は俺の知ってる亜嵐さんが大好きだし、一緒にいたい。――それだけなんだ……)
あの夜から己の内に溜まっていた澱が、さぁっと音を立てて消えていく。
やっと前を向くことができると感じた。
「行きます!えっと、ローズメリーに行けばいいですか?」
『いや、それでは君に遠回りをさせてしまう。少し遠出をするから、新横浜駅で落ち合うのはどうだろう?』
亜嵐さんと遠出。
それだけで、ワクワクと胸が高鳴る。
「わかりました。何時にしますか?」
『十時だ。――ふふ、待っているよ』
「はい!俺も楽しみにしてますね!」
それから少し雑談をして、俺は終話ボタンを押した。
風呂に入り、歯を磨き、ベッドに入っても、俺の心は弾みっぱなしだった。
まるで遠足前夜の子どもみたいに。
(……おやつとか、持っていくほうがいいのかな?)
十時に待ち合わせなら、寝坊さえしなければ、簡単なものくらいは作れる。
(何にしようかな。やっぱり紅茶に合うものがいいかな……)
そんなことを考えているうちに、俺は眠りに落ちていた。
とても安らかで、全身がポカポカする心持ちのままで――。
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