あなたの顔が無理なんです!

ちゅっ太郎

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7話 使い用は十人十色

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ところ変わって、生徒会室。 

五人の役員たちが新入生補佐について雑談していた。

「今年の新入生は眉目秀麗びもくしゅうれいが揃いましたね、可愛らしい子も居たけど」

「うん、真っ赤な頬をして会計の諸星の方ばかり見てたの知ってた?」

「ん~?」

手で首元を掴みコキコキと骨を鳴らしているのは会計の諸星だが、熱い視線を向けられていたのは気づいていなかったようだ。

あれは小動物だわ、補佐では無く飾って置きたいなどと和む中、浮いた子が一人居たなと誰かが口にした。

「あ、アレは……」

反応したのは書記の綾野で新入生の選定を任された一人であった。

「席を立った子ですね? 始終蒼白顔でしたが、もしかして補佐に選ばれた事で混乱していたのじゃないですか」

ふふと、品良く微笑む副会長の飛鳥。

「綾野と櫻井が選定したんだろ?」

中央の席に座りテーブルに肘をつけ手を顎で組んでいる生徒会長の小椋が、二人の方に視線を向けた。

返事を返したのは庶務の櫻井で、口元を緩めて悪戯がバレたように笑う。

「ははは、向糸ムイトって可愛い名前だったからさ、オレの好みで選んじゃったんだけど、皆さんお好みではない?」

「櫻井さん、あなたは名前で選んだって事ですか?」

「あっ 僕はダメだって言ったんだよっ?」

書記の綾野は顔色が変わった副会長に言い訳を向ける。

「最終チェックを入れてたわたしが甘かったんですね」

はあ……と、副会長の声色にこの場の空気が淀もうとしたところ、生徒会長はタブレットに触れてその生徒のデータを取り出していた。


遠野向糸とおの むいとか。1年C組、受験成績判定C、公立中学卒業」

「Sじゃなく、C!? あ、えっと並だね~ やっぱやっちゃったのオレ?」

櫻井が軽卒にケラケラと笑うので、横に座る綾野がゴツっと脇にチョップしている。うっと呻き声がしたかと思うと、小椋会長が話を続ける。

「ん? 生年月日が間違えていないか、2001年生まれだと19歳になるよな」

「新入生でしょ、それじゃオレらより年上になっちゃうよね、おっちょこちょいなのかな~」

「その子は庶務が責任を持って補佐にしてくださいね、わたしは容姿の問題よりC判定は認めませんから」

「え~~~っ」

めちゃくちゃ不満声を出す櫻井。

新入生の補佐は副会長以下、適正などで役員に一名づつ個人補佐として付くことになる。

生徒会長は各生徒会役員が補佐のような仕組みになっているので基本は個人補佐を持たない。

ずっとタブレットを見ていた生徒会長はそれをパタンと閉じると、口を開いた。

「それなら、遠野向糸は俺の補佐にするよ」

「な、何故です? それよりも会長に補佐なんて……」

「まあ、使い用は十人十色だろ?」


涼しげな瞳をスッと細めて微笑んだ。

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