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19話 変装の生徒会長
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部屋の前になんだか怪しい人が居る。
まず頭にキャップ、黒いマスクをして眼鏡、服装が場似合いなストリート……。
何なんだろう、怖い。
目を合わせないで一度通り過ぎようとした時、「どこに行くんだ」と、声がかかり「227、お前の部屋だろ?」
オレの部屋番号を当てた……ってじゃ俺を待っていたってこと?
けどこんな派手な生徒なんて知らないし、今日入学して来たばかりなので知り合いなんて子虎以外誰もいない。
恐れながらも対峙するように振り向くと、片手でメガネを少しづらし悪戯が成功したような目力の強い少し吊り上がった瞳に覚えがあった。
「ま、さか……か、会長?」
「ああ、良くわかったな……あんまり大声出すなよ、必死の変装なんだからな」
いえ、声だけではわからなかった。あなたの持つ強い瞳に既視感が……。
それでも何でだろうか、学校で見た素の姿と違っているだけで……同一人物なのに苦手要素が減っている。
もちろん妖しくて怖いストリートファッションは頂けないけど……パッと見で生徒会長なんて思えなかったと思う。
「あの、それで何か?」
「様子を見に来て悪いのか? 調子が悪い奴がフラフラ出歩いてどこに行っていた」
「すみません……自販機に…飲み物が欲しくて」
(今、様子を見に来たって……言った?)
「それで牛乳か、お子様だな……まず、コレを受け取れ」
お、お子サマって!? そうピクッと怪訝に感じたけど手渡されたのは透明の袋に入った四角い容器が二つ。
「学食のおばさんに弁当を作ってもらった。夕食はまだなんだろ?」
「え?……あ、はい」
唐突で会長の弁当に驚くとともに、もしかして気遣いされてる?
「それだけだ。喰いパクれるのもどうかと思ってたからな。じゃ、俺はもう行く」
そう言ってヒラヒラ片手を挙げて踵を返して行ってしまう。
「あっ、ま……あの!弁当、ありがとうございますっ」
返事もないまま、遠くになっていく変装会長の影。
何が起きたのか、呆然として手に持たされたまだ温かな弁当にちょっと心はほっこりした。
別に食べ物を貰ったからと言って起き始めた感情じゃないけど、初対面の人に対して苦手要素だって言って悪かったかな……。
意固地になっているのは傷心部分のオレのような気がして……もう少しくらい頭の神経細胞を柔らかくしても良いのにと、もう一人の未来を感じたい自分が言っているようだった。
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