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暴言・壱 トゥンドゥの森の冒険記(能天気)
Part1 小人の少年(クソガキ)・トゥンドゥ
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「失礼を宣言します!」
「宣言は無くていいよ」
「失礼をします!」
「助詞もいらないかな」
「男女差別ですか?」
――――ホンペント=マッターク・カンケーナイン作「不採用」より
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
皆さんはトゥンドゥという名のクソガキを知っているだろうか。まあ知らないだろうね。ということで、今回はトゥンドゥが如何に迷惑極まりない奴であるか、一緒に見ていこう。
トゥンドゥは小人の少年である。「頭痛が痛い」のような同じ意味の重複に感じるかもしれないが、ここでいう小人とは種族名を指す。要するに、トゥンドゥはロトーツと呼ばれる小人族のガキンチョということである。
皆さんはロトーツという名の小人を……まあ知らないだろうね。説明しよう! ロトーツ族は、地中に住居となる巣穴を掘って暮らす、穏やかで大人しい生き物である! 元々は、木の洞や石で組んだ家に暮らす者も多かったが、捕食者から身を隠すために生活様式を変化させていったのだ!
柔軟な知性をふんだんに使った生存戦略。トゥンドゥはそんなロトーツの誇りに対してうんざりしていた。彼にとって密かに暮らす生き方など、くそくらえの極み、馬鹿馬鹿しさの権現であった。それもそのはず、トゥンドゥは落ち着きのある両親の性格をこれっぽちも遺伝していない、逆張り精神まっしぐらな猪突猛進わんぱくボーイだったのだ。
気になったことはやらずにいられない性格だったこの童子は、巣穴を拡張しようと壁を掘ったら「土砂が崩れるからダメ」と親に止められ、梯子のてっぺんに座ってご飯を食べていたら「落ちるから止めなさい」と言われ……そのうえで、如何に慎ましい生活が素晴らしいのか説かれたところで、トゥンドゥの耳に入るはずもない。その結果、此奴は言うこと聞かない悪童に成り果ててしまった。
どこの世界でも育児は一筋縄ではいかないのだろう。トゥンドゥがイタズラ小僧になるのも、仕方のないことかもしれない。
だからといって、この悪ガキの悪行を容認することはできない。「子供のやったことだろ?」と思うかもしれないが、君たちはトゥンドゥを知らないからそんなことが言えるのだ。
悪行その一! 備蓄しておいた木の実一晩で食い尽くし事件! しかも食料が少ない乾季に犯行!
悪行その二! 長老が眠っている間に長い顎髭を全て引っこ抜いて、お絵描き用のブラシを作成! さらに、髭の代わりにその辺の根っこを顎に貼り付けて、新品のブラシで顔面に落書き!
他にもあるぞ、トゥンドゥ貴様、お気に入りのナイフに唐辛子塗ったことまだ忘れていないからな。おかげで舌が未だにヒリヒリしているんだぞ!
とにかく、トゥンドゥは日々の生活からでは刺激を得られず、退屈な日常を過ごしていた。まずはその日常がどんなものなのか、ロトーツ族の生活についてもう少し詳しく紹介しよう。
トゥンドゥは二十三人のロトーツたちと群れで暮らしていた。彼らの家は、例に漏れず小人族伝統の地下コロニーとして作られていた。巣穴は細い通路と広い部屋から成っており、数箇所ある地上への出入口は落ち葉と石でカモフラージュされていた。蟻の巣みたいな感じである。
暗い穴の中で生活するロトーツ族は夜行性である。夜になると時々外へ出て、木の実や虫、動物の死骸を頂戴して暮らしているのだ。ロトーツ族の生活についての説明終わり! 話を戻そう。
好奇心旺盛なトゥンドゥは巣穴でじっとしているのが嫌いで、幼い頃から(言わずもがな今現在も途轍もなく幼いちびすけだが)外へ行ってみたくて仕方がなかった。そして遂に、青二才は三歳(人間換算六歳)の頃、親に頼んでみたことがある。
「穴に引きこもっててもつまんねー! なんで俺は外に行っちゃ駄目なんだよ!」
トゥンドゥの両親は頭を抱えた。もう気づいている方もいるだろうが、既にトゥンドゥは手のつけられない癇癪持ちのイタズラ暴走坊主に仕上がりやがっていたのだ。
トゥンドゥの母は、息子を諭すように言った。
「外は危険なのよ。小さな生き物を食べたくてたまらない恐ろしい猛獣たちがたくさん蠢いているんだもの……ああ怖い。そもそも私たちのご先祖様が隠れて暮らすようになったのはね……」
もうこの時点でトゥンドゥは怒って喚いていた。
「外へ出せー! ここから出せーーー!!」
ひっくり返り大声で叫ぶ様は、まるでブタ箱にぶち込まれた囚人のようである。これを文字で読む分には滑稽だが、狭い巣穴の中で喚かれたら反響しまくってたまったものではない。
困り果てた両親を見かねて、顎がツルツルの長老が一つの提案を持ち掛けた。
「トゥンドゥ、お前さんの親の言う通り穴の外は危険なものでいっぱいじゃ。外へ出かけて食料を調達してくる部隊も、この群れで力自慢の者たちに任せてある。そこでどうじゃ。そやつらの中で、一人にでも力で勝つことができたら、外出部隊の仲間に入れてやろう。それで文句無かろう?」
それを聞いたトゥンドゥはパッと起き上がり、ご機嫌な顔で叫んだ。
「言ったな、じじい! 約束は守れよ!」
こうして、第一回ロトーツ外出部隊選抜試験と称した腕相撲大会が開催された。結果はもちろん、皆さんお察しの通りである。日頃の恨みを晴らすべく、外出部隊の大人三人はトゥンドゥをコテンパンのボコボコに負かした。
「ほっほっほ、これではお前さんを外に出す訳にはいかんのお」
長老も人が悪い。こうなることが分かっていてトゥンドゥをけしかけたのだろう。顎髭の仇を討つためにここまでやるとは、人の恨みつらみといった感情の方が、外にいる天敵なんかよりもよっぽど恐ろしい。
「まあ、まだトゥンドゥには早いってことだ」
「力の差がありすぎるもんね。諦めなさい」
「せいぜい頑張るんだな、ちびすけ」
外出部隊にワンパンされた挙句、滅茶苦茶煽り散らかされたトゥンドゥは、無言で立ち上がりスタスタと立ち去っていった。いつもなら癇癪を起こして暴れ回るのに。不思議なこともあるものだ。明日は赤い雪でも降るのかもしれない。
「長老もたまには良いこと思いつくな」
「そうね、これで少しは懲りたでしょ」
「だけど、やけにあっさりと引き下がるな」
外出部隊の三人は拍子抜けすると同時に、少し不気味に感じた。大人ロトーツたちはまだ知る由もなかった。トゥンドゥがここで終わるはずが無かったということに。トゥンドゥにも妬み嫉みといった恐ろしい負の感情が芽生えてしまったことに。
あんなに外へ出たがっていたトゥンドゥは、自分専用の小さな穴を掘って入口を板で塞ぎ、完全に引きこもってしまった。皆と顔を合わせるのは食事の時くらいで、滅多に自分の世界から出てこなくなってしまったのだ。
「どうしたんだろうなあいつ。話しかけても無視しやがるし」
「拗ねて泣き寝入りしているんじゃない? そのうち機嫌直すでしょ」
「まあでも、いくら日頃の鬱憤が溜まっていたとはいえ、子供相手に些か本気を出しすぎてしまったかもしれないな」
外出部隊の三人は申し訳ない気持ちになった。しかし、そんな感情を持ったのは一瞬だけだった。トゥンドゥのイタズラは、ダイヤが乱れることなく至って平常運転だったからである。むしろ負けた腹いせで、出血大サービス、いつもより本数を多くしております状態であった。
まずターゲットにされたのは、外出部隊の運び屋担当、若者キヤリであった。彼の愛車である木製の荷車は、何者かによってバラバラに分解されていた。しかも、変顔が落書きされた看板に強制転生させられ、穴のあちこちに建てられていた。
「グワーッ何だこれ! やりやがったなあの野郎!」
キヤリはめちゃめちゃに怒っていた。運び屋の彼にとって、荷車とは相棒であり家族なのだ。いっつも添い寝する仲なのである。昨日はメンテナンスでニスを塗って乾かしていたため、昼に一緒に寝れなかったのだ。その隙を狙われたのだろう。
すると今度は、上の方の通路から、キヤリの怒号を上書きするが如く悲鳴が上がった。外出部隊の調査担当、サチの迷彩服が一つの塊に縫われて、巨大なクッションと化していたのだ。もちろん変顔の落書き付きである。
「きゃああああ! あたしのお気に入りの服があああ!」
おしゃれ好きのサチにとっての服とは、キヤリにとっての荷車と同義である。添い寝しているかは知らないが。
ちなみに、サチは十歳(人間換算二十歳)の女の子だ。おそらく犯人、いや犯小人であるトゥンドゥにそーゆー気持ちは無いだろうが、これ犯小人がもし長老とかであったら、完全に事案である。下着ドロボーとかマジでシャレにならない。女性専用車両ならぬ女性専用巣穴を作る必要が出てきてしまう。
外出部隊の隊長にして解体・伐採担当の武器マニア、フェリンも被害に遭っていた。彼の部屋に飾ってあった槍や鎌も分解・再構築され、骨格標本のような見た目のよく分からない獣に組み立てられていた。これもやはり人を馬鹿にしたような変顔をしていた。
フェリンにとっての武器は……まあ、言わずもがなである。私もナイフ大好きだから、彼の趣向は理解できる。だが、斧とか剣とかと添い寝するのはどうかと思う。
「パパ、だいじょぶそ?」
「……息子よ、トゥンドゥに何か嫌なことをされたらすぐに言うんだぞ。パパの拳が火を噴くからな」
トゥンドゥの両親を含め、大人ロトーツは知らなかったのだ。トゥンドゥという小僧は、途轍もなく負けず嫌いだったのである。どうやら引きこもったトゥンドゥは、あの腹が立つ大人や、外の大きな生き物をぶちのめすために、独学でトレーニングをしていたらしい。土人形を作っては、突きや蹴りといった徒手空拳で壊す日々を繰り返していたようだ。この子供、この時点でまだ齢三歳(くどいようだが人間換算六歳)である。もう既に戦闘狂の片鱗が見え隠れしていたのだ。末恐ろしい。
しかもこの童、小賢しさもグレードアップしていた。今までは、正々堂々と悪さをしてしかられていたのだが、腕相撲大会以降で奴の犯行現場を見た者は誰もいなかった。トゥンドゥは隠密行動も上手くなり、人目を盗んで犯行に及んでいたらしい。まさか反抗期が進化して犯行期になるとは、一体誰が予想できただろうか。いや、予想できる訳がない(反語)。
ちなみに憶測の表現が多いのは、本当にそのような行動をとっていたか分からないからである。もっとも、他の十九人の小人がそんなことしていないのだから、トゥンドゥが犯小人で間違いないのだろうが……実際は別犯小人もいたことが明らかになる(もちろんトゥンドゥも犯小人である。当然である)。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
次回
フェリンの拳、火を噴きすぎて火事になる(大噓)
「宣言は無くていいよ」
「失礼をします!」
「助詞もいらないかな」
「男女差別ですか?」
――――ホンペント=マッターク・カンケーナイン作「不採用」より
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
皆さんはトゥンドゥという名のクソガキを知っているだろうか。まあ知らないだろうね。ということで、今回はトゥンドゥが如何に迷惑極まりない奴であるか、一緒に見ていこう。
トゥンドゥは小人の少年である。「頭痛が痛い」のような同じ意味の重複に感じるかもしれないが、ここでいう小人とは種族名を指す。要するに、トゥンドゥはロトーツと呼ばれる小人族のガキンチョということである。
皆さんはロトーツという名の小人を……まあ知らないだろうね。説明しよう! ロトーツ族は、地中に住居となる巣穴を掘って暮らす、穏やかで大人しい生き物である! 元々は、木の洞や石で組んだ家に暮らす者も多かったが、捕食者から身を隠すために生活様式を変化させていったのだ!
柔軟な知性をふんだんに使った生存戦略。トゥンドゥはそんなロトーツの誇りに対してうんざりしていた。彼にとって密かに暮らす生き方など、くそくらえの極み、馬鹿馬鹿しさの権現であった。それもそのはず、トゥンドゥは落ち着きのある両親の性格をこれっぽちも遺伝していない、逆張り精神まっしぐらな猪突猛進わんぱくボーイだったのだ。
気になったことはやらずにいられない性格だったこの童子は、巣穴を拡張しようと壁を掘ったら「土砂が崩れるからダメ」と親に止められ、梯子のてっぺんに座ってご飯を食べていたら「落ちるから止めなさい」と言われ……そのうえで、如何に慎ましい生活が素晴らしいのか説かれたところで、トゥンドゥの耳に入るはずもない。その結果、此奴は言うこと聞かない悪童に成り果ててしまった。
どこの世界でも育児は一筋縄ではいかないのだろう。トゥンドゥがイタズラ小僧になるのも、仕方のないことかもしれない。
だからといって、この悪ガキの悪行を容認することはできない。「子供のやったことだろ?」と思うかもしれないが、君たちはトゥンドゥを知らないからそんなことが言えるのだ。
悪行その一! 備蓄しておいた木の実一晩で食い尽くし事件! しかも食料が少ない乾季に犯行!
悪行その二! 長老が眠っている間に長い顎髭を全て引っこ抜いて、お絵描き用のブラシを作成! さらに、髭の代わりにその辺の根っこを顎に貼り付けて、新品のブラシで顔面に落書き!
他にもあるぞ、トゥンドゥ貴様、お気に入りのナイフに唐辛子塗ったことまだ忘れていないからな。おかげで舌が未だにヒリヒリしているんだぞ!
とにかく、トゥンドゥは日々の生活からでは刺激を得られず、退屈な日常を過ごしていた。まずはその日常がどんなものなのか、ロトーツ族の生活についてもう少し詳しく紹介しよう。
トゥンドゥは二十三人のロトーツたちと群れで暮らしていた。彼らの家は、例に漏れず小人族伝統の地下コロニーとして作られていた。巣穴は細い通路と広い部屋から成っており、数箇所ある地上への出入口は落ち葉と石でカモフラージュされていた。蟻の巣みたいな感じである。
暗い穴の中で生活するロトーツ族は夜行性である。夜になると時々外へ出て、木の実や虫、動物の死骸を頂戴して暮らしているのだ。ロトーツ族の生活についての説明終わり! 話を戻そう。
好奇心旺盛なトゥンドゥは巣穴でじっとしているのが嫌いで、幼い頃から(言わずもがな今現在も途轍もなく幼いちびすけだが)外へ行ってみたくて仕方がなかった。そして遂に、青二才は三歳(人間換算六歳)の頃、親に頼んでみたことがある。
「穴に引きこもっててもつまんねー! なんで俺は外に行っちゃ駄目なんだよ!」
トゥンドゥの両親は頭を抱えた。もう気づいている方もいるだろうが、既にトゥンドゥは手のつけられない癇癪持ちのイタズラ暴走坊主に仕上がりやがっていたのだ。
トゥンドゥの母は、息子を諭すように言った。
「外は危険なのよ。小さな生き物を食べたくてたまらない恐ろしい猛獣たちがたくさん蠢いているんだもの……ああ怖い。そもそも私たちのご先祖様が隠れて暮らすようになったのはね……」
もうこの時点でトゥンドゥは怒って喚いていた。
「外へ出せー! ここから出せーーー!!」
ひっくり返り大声で叫ぶ様は、まるでブタ箱にぶち込まれた囚人のようである。これを文字で読む分には滑稽だが、狭い巣穴の中で喚かれたら反響しまくってたまったものではない。
困り果てた両親を見かねて、顎がツルツルの長老が一つの提案を持ち掛けた。
「トゥンドゥ、お前さんの親の言う通り穴の外は危険なものでいっぱいじゃ。外へ出かけて食料を調達してくる部隊も、この群れで力自慢の者たちに任せてある。そこでどうじゃ。そやつらの中で、一人にでも力で勝つことができたら、外出部隊の仲間に入れてやろう。それで文句無かろう?」
それを聞いたトゥンドゥはパッと起き上がり、ご機嫌な顔で叫んだ。
「言ったな、じじい! 約束は守れよ!」
こうして、第一回ロトーツ外出部隊選抜試験と称した腕相撲大会が開催された。結果はもちろん、皆さんお察しの通りである。日頃の恨みを晴らすべく、外出部隊の大人三人はトゥンドゥをコテンパンのボコボコに負かした。
「ほっほっほ、これではお前さんを外に出す訳にはいかんのお」
長老も人が悪い。こうなることが分かっていてトゥンドゥをけしかけたのだろう。顎髭の仇を討つためにここまでやるとは、人の恨みつらみといった感情の方が、外にいる天敵なんかよりもよっぽど恐ろしい。
「まあ、まだトゥンドゥには早いってことだ」
「力の差がありすぎるもんね。諦めなさい」
「せいぜい頑張るんだな、ちびすけ」
外出部隊にワンパンされた挙句、滅茶苦茶煽り散らかされたトゥンドゥは、無言で立ち上がりスタスタと立ち去っていった。いつもなら癇癪を起こして暴れ回るのに。不思議なこともあるものだ。明日は赤い雪でも降るのかもしれない。
「長老もたまには良いこと思いつくな」
「そうね、これで少しは懲りたでしょ」
「だけど、やけにあっさりと引き下がるな」
外出部隊の三人は拍子抜けすると同時に、少し不気味に感じた。大人ロトーツたちはまだ知る由もなかった。トゥンドゥがここで終わるはずが無かったということに。トゥンドゥにも妬み嫉みといった恐ろしい負の感情が芽生えてしまったことに。
あんなに外へ出たがっていたトゥンドゥは、自分専用の小さな穴を掘って入口を板で塞ぎ、完全に引きこもってしまった。皆と顔を合わせるのは食事の時くらいで、滅多に自分の世界から出てこなくなってしまったのだ。
「どうしたんだろうなあいつ。話しかけても無視しやがるし」
「拗ねて泣き寝入りしているんじゃない? そのうち機嫌直すでしょ」
「まあでも、いくら日頃の鬱憤が溜まっていたとはいえ、子供相手に些か本気を出しすぎてしまったかもしれないな」
外出部隊の三人は申し訳ない気持ちになった。しかし、そんな感情を持ったのは一瞬だけだった。トゥンドゥのイタズラは、ダイヤが乱れることなく至って平常運転だったからである。むしろ負けた腹いせで、出血大サービス、いつもより本数を多くしております状態であった。
まずターゲットにされたのは、外出部隊の運び屋担当、若者キヤリであった。彼の愛車である木製の荷車は、何者かによってバラバラに分解されていた。しかも、変顔が落書きされた看板に強制転生させられ、穴のあちこちに建てられていた。
「グワーッ何だこれ! やりやがったなあの野郎!」
キヤリはめちゃめちゃに怒っていた。運び屋の彼にとって、荷車とは相棒であり家族なのだ。いっつも添い寝する仲なのである。昨日はメンテナンスでニスを塗って乾かしていたため、昼に一緒に寝れなかったのだ。その隙を狙われたのだろう。
すると今度は、上の方の通路から、キヤリの怒号を上書きするが如く悲鳴が上がった。外出部隊の調査担当、サチの迷彩服が一つの塊に縫われて、巨大なクッションと化していたのだ。もちろん変顔の落書き付きである。
「きゃああああ! あたしのお気に入りの服があああ!」
おしゃれ好きのサチにとっての服とは、キヤリにとっての荷車と同義である。添い寝しているかは知らないが。
ちなみに、サチは十歳(人間換算二十歳)の女の子だ。おそらく犯人、いや犯小人であるトゥンドゥにそーゆー気持ちは無いだろうが、これ犯小人がもし長老とかであったら、完全に事案である。下着ドロボーとかマジでシャレにならない。女性専用車両ならぬ女性専用巣穴を作る必要が出てきてしまう。
外出部隊の隊長にして解体・伐採担当の武器マニア、フェリンも被害に遭っていた。彼の部屋に飾ってあった槍や鎌も分解・再構築され、骨格標本のような見た目のよく分からない獣に組み立てられていた。これもやはり人を馬鹿にしたような変顔をしていた。
フェリンにとっての武器は……まあ、言わずもがなである。私もナイフ大好きだから、彼の趣向は理解できる。だが、斧とか剣とかと添い寝するのはどうかと思う。
「パパ、だいじょぶそ?」
「……息子よ、トゥンドゥに何か嫌なことをされたらすぐに言うんだぞ。パパの拳が火を噴くからな」
トゥンドゥの両親を含め、大人ロトーツは知らなかったのだ。トゥンドゥという小僧は、途轍もなく負けず嫌いだったのである。どうやら引きこもったトゥンドゥは、あの腹が立つ大人や、外の大きな生き物をぶちのめすために、独学でトレーニングをしていたらしい。土人形を作っては、突きや蹴りといった徒手空拳で壊す日々を繰り返していたようだ。この子供、この時点でまだ齢三歳(くどいようだが人間換算六歳)である。もう既に戦闘狂の片鱗が見え隠れしていたのだ。末恐ろしい。
しかもこの童、小賢しさもグレードアップしていた。今までは、正々堂々と悪さをしてしかられていたのだが、腕相撲大会以降で奴の犯行現場を見た者は誰もいなかった。トゥンドゥは隠密行動も上手くなり、人目を盗んで犯行に及んでいたらしい。まさか反抗期が進化して犯行期になるとは、一体誰が予想できただろうか。いや、予想できる訳がない(反語)。
ちなみに憶測の表現が多いのは、本当にそのような行動をとっていたか分からないからである。もっとも、他の十九人の小人がそんなことしていないのだから、トゥンドゥが犯小人で間違いないのだろうが……実際は別犯小人もいたことが明らかになる(もちろんトゥンドゥも犯小人である。当然である)。
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次回
フェリンの拳、火を噴きすぎて火事になる(大噓)
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