35 / 69
嫩葉の終宵
6
しおりを挟む
色々解決していない……というか、妥協した部分もあったものの、寒川別邸とホテルで過ごした夏休みは快適に終了した。
紅音の唐突な質問で赤面する羽目になったが、そのあと行った沢遊びは子供に戻ったかのように柄にもなくはしゃいだ。余りにも童心に還ったためか、苔生した岩で足を滑らせ紅龍の大きな体に抱きすくめられるというトラブルもあった。あれは今も思い出しても顔に熱が集まる。
それから冷えた体も紅龍が石を積んで作った簡易かまどでパーコレーターを使ってコーヒーを淹れてくれた。いったいどこから持ち出したのかと問えば、器機も粉も織田が用意してくれたそうだ。粉に至っては『La maison』御用達のコーヒー専門店の豆を紅龍が挽いて持ってきたとのこと。更には紅音にはミルクパンで温めたホットミルクに一滴だけ落としたカフェオレを作ってくれた。
もちろん紅音は自然の中で飲むというのが楽しかったらしく、ホテルに帰る時ずっと「またつれていって、ほーろんさん」と肩車をしている紅龍の頭をぽんぽん叩きながら約束を強要していた。紅龍も嬉しそうな顔で「次は海に釣りでも行くか?」と提案する始末。
やはり紅音には父親の存在が必要なのかと、これまでの自分を否定しまいそうになったが、そっと差し出された紅龍の手に繋がれているとまんざらではないと思ってしまう。
残りの日程は、あの時以来初めてのホテル暮らしを堪能した。正直、初めて紅龍と番った時は、慧斗はあまり記憶に残っていない。ただただ快感の渦に呑まれて、何度も紅龍の熱と体液の熱さを胎の中に感じていたくらい。あとは、契約の時に噛まれた燃え溶けそうなほどの熱さと絶頂感。
だから素面で高級ホテルの時間をゆっくりと過ごした。その間、紅龍は紅音を引き連れ、ホテルのアクティビティに参加をしたようだ。
たった五日でずいぶんと焼けた息子は、始終笑顔だった。
正直、世界的に有名な独身俳優である紅龍が、子持ちオメガと一緒ということで、周囲から騒がれるのではと心配した。だが、そういったことを見越していたのか、沢から戻る時に紅龍はパーコレーターやマグカップが入ったトートバッグから薄茶のカツラを取り出し、目には黒いコンタクトレンズで変装したのだ。慧斗的にはいくら見た目を変えても高位アルファ然が消えてないと言いたかったものの、意外とホテルの客層が上流階級メインだったからか、あまり追求されることなく周囲に受け入れられていた。
多分、周囲の配慮だと思うが……
ホテルには玲司の兄弟子シェフがいるとのことで、三人でそのレストランで食事もした。どこか玲司の味を彷彿させる料理は、どれも美味しく、いつもより胃の中に収めた気がする。体重計に乗るのが怖いと言ったら、紅龍はもっと太るべきだと返す。
桔梗も玲司がことあるごとに太らせようとすると悩み事を言っていたから、どこのアルファもそうなのだろうか。いつか桔梗に聞いてみたい。
「そういえば、慧斗。結構な量の土産を買っていたようだが……」
「あ、あぁ。玲司さんたちにお遣い頼まれたけど、それ以外も土産渡したかったから。他にも秋槻理事と、秘書の結城さんと白糸教授のところはお子さんたちの分も。あとは友人たちにもかな」
「友人? それはアルファとかじゃないよな」
紅龍がハンドルを握りながら、整った眉をピクリと震わせる。
「もちろんだよ。友人たちは俺と同じオメガのシングルさんだから。ひとりは会ってるはずだけど?」
「そうか?」
「紅音と同じ保育園に行ってる子。構内のカフェで働いてる人なんだけど、子供同士が誕生日も近くて、同じシングルでオメガだから仲良くしてるんだ」
峯浦の件の前から、アルファとの付き合いなんて、仕事上か玲司たちくらいしかない。下手に峯浦のことを紅音に聞かせたくない慧斗は、視線だけで紅龍に言い聞かせた。
紅音には峯浦のことについては、お休みしてる間におうちの都合で辞めたとだけ伝えてある。峯浦に懐いていた紅音は寂しそうにしていたものの、数日も経てば楽しそうに過ごしていた。
「紅龍は、撮影スタッフたちに買わなかったのか?」
「あ? あぁ。一応茶菓子くらいは何種類かは買ってるが。個別はないな。面倒だし」
「面倒?」
「昔、とある撮影の時にバレンタインが重なってな、それでスタッフに個別でチョコレートや菓子を渡したんだ。そしたら、何を勘違いしたのか、ストーカー事件に発展してな。以降、差し入れはするが、個別対応はしなくなった」
慧斗は淡々と話す紅龍の話に、思わず唇の端がヒクリと引きつる。有名イケメンアルファ俳優は大変そうだ。物ひとつとってもトラブルに発展するのだから。
「なんというか、大変だったんだな」
「それよりも慧斗につきまとってる輩のほうが気になるけどな」
同情したのに、紅龍から逆に心配されてしまった。だが、紅龍の言葉にも一理ある。
ずいぶんロングショットになったものの、相変わらず慧斗を撮影した写真が送られてきている。
切手もなく、おそらく手で投函された白い封筒。秋槻学園内と『La maison』での姿は撮られてないものの、自宅の庭で洗濯を干したり庭の世話をしたり、商店街で買い物をしたりする姿が何枚も撮られていた。
まだ自分だけなら我慢できなくても沈黙していた。しかし、そこに最愛の紅音や慧斗が大切にしている人たちが入り込めば話は別だった。
ただ平和に、静かに暮らしたいだけなのに、どうしてオメガというだけで平穏を壊そうとするのだろう。
アルファが嫌いだ。なんでも自分の思いとおりにしようとするアルファが大嫌いだ。
だけど……
「どうかしたか? 疲れたなら、少し寝たほうがいい」
紅龍にそう言われて慧斗は目を閉じる。いつの間にか後部座席では紅音が悠々自適にくうくう寝息を立てて寝ている。静かだと思ったら。
車のモーター音と走行音が車内に流れていく中、慧斗は心の中で呟いていた。
(だけど、紅龍が嫌いになれないのはどうしてなんだろう)
眠りに落ちるまで、何度も否定と疑問を繰り返しながら、紅龍の甘く苦い香りに包まれていた。
今日はもうお互い夕飯を作る気力はないと諦め、車を返すついでにと三人で『La maison』に直接向かった。お遣い物とお土産を渡したかったからだ。
寒川家の自宅側にある駐車場に車を入れ、紅龍はまだうとうとしている紅音を片腕で縦抱きにし、反対の手で保冷バッグをキャリーバッグの持ち手に引っ掛けて引っ張っている。慧斗はその後ろを、せめて持たせてと言って手にしたお土産の入った紙バッグを持ってついていく。
楽をしたければ、自宅側から店の方に行けばでショートカットになる。しかし、そんなことをすれば、警備会社の警備員がすぐさま駆けてくると聞いて、遠回りして店の入口に向かう。
寒川家及び店舗には厳重なセキュリティが施してある。というのも、玲司の出自もあるが、桔梗を守るためもあるらしい。
アルファの囲い込みだ、と説明してくれたのは紅龍だった。番のいるアルファというのは、堅牢な巣にオメガを入れて閉じ込めたい性質のようだ。だから紅龍も何度も今の家のセキュリティ設備を設置したいと言っていたのか、と慧斗は納得した。
だが、あの家にそういったものを必要としてるかと問われれば、疑問がわく。
「でも、住んでる俺が言うのもアレだけど、あの家にセキュリティ機器とか置いても意味あるの?」
「ないよりはマシって程度だな。本当はふたりをあの場所から連れ出したいんだ。だけど、あの家は慧斗にとって大切な姥姥の家なんだろう? 思い出もたくさんあるだろうし、突然割って入った俺が手を入れるべきじゃない。……とは詭弁だがな。本音はあの家を取り壊して新しく家を建てて、玲司の家並のセキュリティをすぐにでも取り入れたい」
「ぶっちゃけすぎるよ」
思わず慧斗はぷっ、と吹き出す。自分でも紅龍がいてくれるから、ずっと張っていた肩の力を抜くことを覚えた。
紅龍の言葉は本心の言葉だろう。慧斗ですら、あの家は限界間近だと理解している。
補修しても基礎がゆがんでいるのか、すき間風が常に入ってくるし、地震が来ると不安に襲われる。台風の時なんかは雨漏りも至る場所で発生する。
たまにメンテナンスをお願いしている、祖母の頃からの知り合いの工務店の店主からは「そろそろ建て替えを検討したほうがいいかもしれないな」と、慧斗に進言してくれた。
それでも固執しているのは、家族にも捨てられた自分を温かく受け入れて守ってくれた祖母の家だからだ。
壊してしまえば、家のあちこちに染み付いた思い出も失くなってしまう。だが紅龍の言葉も拒否できない。
少しずつ紅龍の存在を近隣の人に知られつつある。この町の人たちは吹聴するようなことはしないものの、いずれどこからか漏れる可能性だってある。実際、以前にも玲司の店にマスコミが来たこともあるのだ。
玲司が寒川系列の警備員を呼んだのか、すぐに来なくなったけども。
(紅龍の写真をネットにあげられたら言い訳もできない)
ずっと続いている写真だけを詰めた封筒の投函。あの中にどこから撮ったのか、紅龍と紅音が庭で遊んでいる光景を写したものがあった。それは何も知らない他人が見たら、仲の良い親子に感じるだろう。実際、慧斗の目に映る紅音を抱く紅龍の姿は、息子を抱く父親にしか見えないのだから。
「あのさ、紅音重いだろう? 俺が抱くから」
なし崩し的に始まった同居生活だが、だからといって紅龍を自分の問題に巻き込みたくなかった。慧斗は紅龍に声をかけて紅音を受け取ろうとした。しかし、紅龍はやんわりと慧斗の言葉に首を左右に振って断ってくる。
「大丈夫だ。たまには俺にも親らしいことをさせてくれないか? それに、慧斗はこれまでたくさん頑張ってきたんだ。今まで何もできなかった分、俺も手伝わせて欲しい」
「あ……うん。ありがとう」
別に紅音を抱っこして荷物を持つなんて、今までしてきたことなので慣れている。だが、こうしてさりげなく慧斗の努力を認めた上で肩代わりしてくれることに戸惑いが生まれる。
それでも、いや、だからこそ紅龍にこれ以上迷惑をかけるわけにはいかないのだ。
「そうだ、慧斗。先に大きな荷物だけでも家に置いてから、玲司の店に行かないか?」
「そうだね。玲司さんたちに渡す物だけでも結構な量があるから……」
事前に頼まれていた牧場で購入した加工品やバターだけでなく、織田がこれも一緒にと、慧斗たちの家の分と玲司たちの分の収穫した野菜を渡されたのだ。薄給ではないものの、紅音のために貯蓄していた慧斗にとっては高騰しつつある野菜を沢山いただいたことは嬉しい。が、量が量なだけにため息がこぼれる。
だったら、車を戻す前に自分と紅音だけでも自宅前で降ろしてくれればよかったのに、と告げれば。
「さっき玲司に連絡したら、今来客中で忙しいと言われて切られたんだ」
確かに車を置いて、紅龍や慧斗の匂いを消すために消臭スプレーを撒きながら、紅龍は誰かに電話をしていた。
「そ、そう」
思い出したのか、紅龍の整った眉が逆立つ姿に、慧斗は苦笑して同意するしかなかった。
玲司の家から慧斗の家までは徒歩数分といった距離だ。玲司の店とは駐車場を挟み、車が一台通るだけでいっぱいいっぱいな道を渡った先にある。このあたりは住宅街で、基本一方通行のため車を運転する人には面倒な場所だった。おかげで閑静ではあるが、逆に待ち伏せをするとかなり目立つ。
投函事件も、何度か同じ人物が慧斗の家の前をうろうろしていたと情報が集まっている。
統合すると、やはり峯浦が一連の犯人のようだ。巧妙な位置にいるらしく、目撃はされるも、近隣の監視カメラなどに写っておらず、峯浦の家のこともあって正式な被害届が出せずにいた。
だけど、いくつかの話で、峯浦らしき人物と一緒に別の男性の目撃証言もあった。
黒のスーツをまとった、身なりの良い紅龍と同年代らしき人物。隣の家の主婦が、何度か男性ふたりが慧斗の家でなにか話しているのを見かけ、どうかしたのかと声をかけたそうだ。
彼らは「いえ」と言って、そそくさと駅の方に向かったそうだが、それから数回彼らの姿を見たと教えてくれた。
峯浦だけでも怖いというのに、新たな人物の登場にひたりひたりと慧斗を不安に飲み込もうと這い寄ってくる。
「慧斗、どうした。ぼんやりして」
「あ、ごめん。なんでもない」
きっと紅龍には慧斗が強がっているのに気づいているのだろう。ひとこと「無理はするなよ」と言った。
道を渡れば自宅というところで、慧斗だけでなく紅龍も異変に気づいた。家の前に車が一台停まっており、紺色の制服を着た警察官数名、それから隣人の女性が何やら話しているようだった。
「あのっ、どうかしたんですか?」
「あ、慧斗君! この子がこの家のかたですよ」
ベータの中年女性が、前半を慧斗に向けて、後半を警察官に向けて言っている。
警察官は女性の言葉に頷き、駆け寄ってきた慧斗に「こちらに」と促し、慧斗は目の前に広がる光景に茫然自失となった。
「な……に、これ……」
石塀の中は日常とはかけ離れた姿が晒されていた。
紅音と一緒に手入れした花壇は踏み荒らされ、木造の平屋の壁には赤色のペンキがぶちまけられている。まるで火のようにも血のようにも見え、慧斗は自立できず膝から崩れていった。しかも破壊の跡もあちこちにあった。
だからこそ、地面に散らばる真新しい写真が目に飛び込んだ。
「ッ!」
悲鳴を飲み込んだのはプライドではない。写った紙片のどれもが、午前中にチェックアウトしたばかりのホテルの風景の中、楽しげに笑い合う三人の姿や紅龍に抱きしめられている慧斗の姿などが歪んであった。
「慧斗っ」
「ほ……紅龍……どうしよ……」
駆け寄ってきた紅龍の腕を強く掴み、慧斗は涙目で縋る。
「これは……」
紅龍の目にも写真が入ったのだろう。赤い目を驚きで見開いている。
慧斗は悪意に満ちた光景に、紅龍にしがみついたまま、カタカタと震えるしかできなかった。
紅音の唐突な質問で赤面する羽目になったが、そのあと行った沢遊びは子供に戻ったかのように柄にもなくはしゃいだ。余りにも童心に還ったためか、苔生した岩で足を滑らせ紅龍の大きな体に抱きすくめられるというトラブルもあった。あれは今も思い出しても顔に熱が集まる。
それから冷えた体も紅龍が石を積んで作った簡易かまどでパーコレーターを使ってコーヒーを淹れてくれた。いったいどこから持ち出したのかと問えば、器機も粉も織田が用意してくれたそうだ。粉に至っては『La maison』御用達のコーヒー専門店の豆を紅龍が挽いて持ってきたとのこと。更には紅音にはミルクパンで温めたホットミルクに一滴だけ落としたカフェオレを作ってくれた。
もちろん紅音は自然の中で飲むというのが楽しかったらしく、ホテルに帰る時ずっと「またつれていって、ほーろんさん」と肩車をしている紅龍の頭をぽんぽん叩きながら約束を強要していた。紅龍も嬉しそうな顔で「次は海に釣りでも行くか?」と提案する始末。
やはり紅音には父親の存在が必要なのかと、これまでの自分を否定しまいそうになったが、そっと差し出された紅龍の手に繋がれているとまんざらではないと思ってしまう。
残りの日程は、あの時以来初めてのホテル暮らしを堪能した。正直、初めて紅龍と番った時は、慧斗はあまり記憶に残っていない。ただただ快感の渦に呑まれて、何度も紅龍の熱と体液の熱さを胎の中に感じていたくらい。あとは、契約の時に噛まれた燃え溶けそうなほどの熱さと絶頂感。
だから素面で高級ホテルの時間をゆっくりと過ごした。その間、紅龍は紅音を引き連れ、ホテルのアクティビティに参加をしたようだ。
たった五日でずいぶんと焼けた息子は、始終笑顔だった。
正直、世界的に有名な独身俳優である紅龍が、子持ちオメガと一緒ということで、周囲から騒がれるのではと心配した。だが、そういったことを見越していたのか、沢から戻る時に紅龍はパーコレーターやマグカップが入ったトートバッグから薄茶のカツラを取り出し、目には黒いコンタクトレンズで変装したのだ。慧斗的にはいくら見た目を変えても高位アルファ然が消えてないと言いたかったものの、意外とホテルの客層が上流階級メインだったからか、あまり追求されることなく周囲に受け入れられていた。
多分、周囲の配慮だと思うが……
ホテルには玲司の兄弟子シェフがいるとのことで、三人でそのレストランで食事もした。どこか玲司の味を彷彿させる料理は、どれも美味しく、いつもより胃の中に収めた気がする。体重計に乗るのが怖いと言ったら、紅龍はもっと太るべきだと返す。
桔梗も玲司がことあるごとに太らせようとすると悩み事を言っていたから、どこのアルファもそうなのだろうか。いつか桔梗に聞いてみたい。
「そういえば、慧斗。結構な量の土産を買っていたようだが……」
「あ、あぁ。玲司さんたちにお遣い頼まれたけど、それ以外も土産渡したかったから。他にも秋槻理事と、秘書の結城さんと白糸教授のところはお子さんたちの分も。あとは友人たちにもかな」
「友人? それはアルファとかじゃないよな」
紅龍がハンドルを握りながら、整った眉をピクリと震わせる。
「もちろんだよ。友人たちは俺と同じオメガのシングルさんだから。ひとりは会ってるはずだけど?」
「そうか?」
「紅音と同じ保育園に行ってる子。構内のカフェで働いてる人なんだけど、子供同士が誕生日も近くて、同じシングルでオメガだから仲良くしてるんだ」
峯浦の件の前から、アルファとの付き合いなんて、仕事上か玲司たちくらいしかない。下手に峯浦のことを紅音に聞かせたくない慧斗は、視線だけで紅龍に言い聞かせた。
紅音には峯浦のことについては、お休みしてる間におうちの都合で辞めたとだけ伝えてある。峯浦に懐いていた紅音は寂しそうにしていたものの、数日も経てば楽しそうに過ごしていた。
「紅龍は、撮影スタッフたちに買わなかったのか?」
「あ? あぁ。一応茶菓子くらいは何種類かは買ってるが。個別はないな。面倒だし」
「面倒?」
「昔、とある撮影の時にバレンタインが重なってな、それでスタッフに個別でチョコレートや菓子を渡したんだ。そしたら、何を勘違いしたのか、ストーカー事件に発展してな。以降、差し入れはするが、個別対応はしなくなった」
慧斗は淡々と話す紅龍の話に、思わず唇の端がヒクリと引きつる。有名イケメンアルファ俳優は大変そうだ。物ひとつとってもトラブルに発展するのだから。
「なんというか、大変だったんだな」
「それよりも慧斗につきまとってる輩のほうが気になるけどな」
同情したのに、紅龍から逆に心配されてしまった。だが、紅龍の言葉にも一理ある。
ずいぶんロングショットになったものの、相変わらず慧斗を撮影した写真が送られてきている。
切手もなく、おそらく手で投函された白い封筒。秋槻学園内と『La maison』での姿は撮られてないものの、自宅の庭で洗濯を干したり庭の世話をしたり、商店街で買い物をしたりする姿が何枚も撮られていた。
まだ自分だけなら我慢できなくても沈黙していた。しかし、そこに最愛の紅音や慧斗が大切にしている人たちが入り込めば話は別だった。
ただ平和に、静かに暮らしたいだけなのに、どうしてオメガというだけで平穏を壊そうとするのだろう。
アルファが嫌いだ。なんでも自分の思いとおりにしようとするアルファが大嫌いだ。
だけど……
「どうかしたか? 疲れたなら、少し寝たほうがいい」
紅龍にそう言われて慧斗は目を閉じる。いつの間にか後部座席では紅音が悠々自適にくうくう寝息を立てて寝ている。静かだと思ったら。
車のモーター音と走行音が車内に流れていく中、慧斗は心の中で呟いていた。
(だけど、紅龍が嫌いになれないのはどうしてなんだろう)
眠りに落ちるまで、何度も否定と疑問を繰り返しながら、紅龍の甘く苦い香りに包まれていた。
今日はもうお互い夕飯を作る気力はないと諦め、車を返すついでにと三人で『La maison』に直接向かった。お遣い物とお土産を渡したかったからだ。
寒川家の自宅側にある駐車場に車を入れ、紅龍はまだうとうとしている紅音を片腕で縦抱きにし、反対の手で保冷バッグをキャリーバッグの持ち手に引っ掛けて引っ張っている。慧斗はその後ろを、せめて持たせてと言って手にしたお土産の入った紙バッグを持ってついていく。
楽をしたければ、自宅側から店の方に行けばでショートカットになる。しかし、そんなことをすれば、警備会社の警備員がすぐさま駆けてくると聞いて、遠回りして店の入口に向かう。
寒川家及び店舗には厳重なセキュリティが施してある。というのも、玲司の出自もあるが、桔梗を守るためもあるらしい。
アルファの囲い込みだ、と説明してくれたのは紅龍だった。番のいるアルファというのは、堅牢な巣にオメガを入れて閉じ込めたい性質のようだ。だから紅龍も何度も今の家のセキュリティ設備を設置したいと言っていたのか、と慧斗は納得した。
だが、あの家にそういったものを必要としてるかと問われれば、疑問がわく。
「でも、住んでる俺が言うのもアレだけど、あの家にセキュリティ機器とか置いても意味あるの?」
「ないよりはマシって程度だな。本当はふたりをあの場所から連れ出したいんだ。だけど、あの家は慧斗にとって大切な姥姥の家なんだろう? 思い出もたくさんあるだろうし、突然割って入った俺が手を入れるべきじゃない。……とは詭弁だがな。本音はあの家を取り壊して新しく家を建てて、玲司の家並のセキュリティをすぐにでも取り入れたい」
「ぶっちゃけすぎるよ」
思わず慧斗はぷっ、と吹き出す。自分でも紅龍がいてくれるから、ずっと張っていた肩の力を抜くことを覚えた。
紅龍の言葉は本心の言葉だろう。慧斗ですら、あの家は限界間近だと理解している。
補修しても基礎がゆがんでいるのか、すき間風が常に入ってくるし、地震が来ると不安に襲われる。台風の時なんかは雨漏りも至る場所で発生する。
たまにメンテナンスをお願いしている、祖母の頃からの知り合いの工務店の店主からは「そろそろ建て替えを検討したほうがいいかもしれないな」と、慧斗に進言してくれた。
それでも固執しているのは、家族にも捨てられた自分を温かく受け入れて守ってくれた祖母の家だからだ。
壊してしまえば、家のあちこちに染み付いた思い出も失くなってしまう。だが紅龍の言葉も拒否できない。
少しずつ紅龍の存在を近隣の人に知られつつある。この町の人たちは吹聴するようなことはしないものの、いずれどこからか漏れる可能性だってある。実際、以前にも玲司の店にマスコミが来たこともあるのだ。
玲司が寒川系列の警備員を呼んだのか、すぐに来なくなったけども。
(紅龍の写真をネットにあげられたら言い訳もできない)
ずっと続いている写真だけを詰めた封筒の投函。あの中にどこから撮ったのか、紅龍と紅音が庭で遊んでいる光景を写したものがあった。それは何も知らない他人が見たら、仲の良い親子に感じるだろう。実際、慧斗の目に映る紅音を抱く紅龍の姿は、息子を抱く父親にしか見えないのだから。
「あのさ、紅音重いだろう? 俺が抱くから」
なし崩し的に始まった同居生活だが、だからといって紅龍を自分の問題に巻き込みたくなかった。慧斗は紅龍に声をかけて紅音を受け取ろうとした。しかし、紅龍はやんわりと慧斗の言葉に首を左右に振って断ってくる。
「大丈夫だ。たまには俺にも親らしいことをさせてくれないか? それに、慧斗はこれまでたくさん頑張ってきたんだ。今まで何もできなかった分、俺も手伝わせて欲しい」
「あ……うん。ありがとう」
別に紅音を抱っこして荷物を持つなんて、今までしてきたことなので慣れている。だが、こうしてさりげなく慧斗の努力を認めた上で肩代わりしてくれることに戸惑いが生まれる。
それでも、いや、だからこそ紅龍にこれ以上迷惑をかけるわけにはいかないのだ。
「そうだ、慧斗。先に大きな荷物だけでも家に置いてから、玲司の店に行かないか?」
「そうだね。玲司さんたちに渡す物だけでも結構な量があるから……」
事前に頼まれていた牧場で購入した加工品やバターだけでなく、織田がこれも一緒にと、慧斗たちの家の分と玲司たちの分の収穫した野菜を渡されたのだ。薄給ではないものの、紅音のために貯蓄していた慧斗にとっては高騰しつつある野菜を沢山いただいたことは嬉しい。が、量が量なだけにため息がこぼれる。
だったら、車を戻す前に自分と紅音だけでも自宅前で降ろしてくれればよかったのに、と告げれば。
「さっき玲司に連絡したら、今来客中で忙しいと言われて切られたんだ」
確かに車を置いて、紅龍や慧斗の匂いを消すために消臭スプレーを撒きながら、紅龍は誰かに電話をしていた。
「そ、そう」
思い出したのか、紅龍の整った眉が逆立つ姿に、慧斗は苦笑して同意するしかなかった。
玲司の家から慧斗の家までは徒歩数分といった距離だ。玲司の店とは駐車場を挟み、車が一台通るだけでいっぱいいっぱいな道を渡った先にある。このあたりは住宅街で、基本一方通行のため車を運転する人には面倒な場所だった。おかげで閑静ではあるが、逆に待ち伏せをするとかなり目立つ。
投函事件も、何度か同じ人物が慧斗の家の前をうろうろしていたと情報が集まっている。
統合すると、やはり峯浦が一連の犯人のようだ。巧妙な位置にいるらしく、目撃はされるも、近隣の監視カメラなどに写っておらず、峯浦の家のこともあって正式な被害届が出せずにいた。
だけど、いくつかの話で、峯浦らしき人物と一緒に別の男性の目撃証言もあった。
黒のスーツをまとった、身なりの良い紅龍と同年代らしき人物。隣の家の主婦が、何度か男性ふたりが慧斗の家でなにか話しているのを見かけ、どうかしたのかと声をかけたそうだ。
彼らは「いえ」と言って、そそくさと駅の方に向かったそうだが、それから数回彼らの姿を見たと教えてくれた。
峯浦だけでも怖いというのに、新たな人物の登場にひたりひたりと慧斗を不安に飲み込もうと這い寄ってくる。
「慧斗、どうした。ぼんやりして」
「あ、ごめん。なんでもない」
きっと紅龍には慧斗が強がっているのに気づいているのだろう。ひとこと「無理はするなよ」と言った。
道を渡れば自宅というところで、慧斗だけでなく紅龍も異変に気づいた。家の前に車が一台停まっており、紺色の制服を着た警察官数名、それから隣人の女性が何やら話しているようだった。
「あのっ、どうかしたんですか?」
「あ、慧斗君! この子がこの家のかたですよ」
ベータの中年女性が、前半を慧斗に向けて、後半を警察官に向けて言っている。
警察官は女性の言葉に頷き、駆け寄ってきた慧斗に「こちらに」と促し、慧斗は目の前に広がる光景に茫然自失となった。
「な……に、これ……」
石塀の中は日常とはかけ離れた姿が晒されていた。
紅音と一緒に手入れした花壇は踏み荒らされ、木造の平屋の壁には赤色のペンキがぶちまけられている。まるで火のようにも血のようにも見え、慧斗は自立できず膝から崩れていった。しかも破壊の跡もあちこちにあった。
だからこそ、地面に散らばる真新しい写真が目に飛び込んだ。
「ッ!」
悲鳴を飲み込んだのはプライドではない。写った紙片のどれもが、午前中にチェックアウトしたばかりのホテルの風景の中、楽しげに笑い合う三人の姿や紅龍に抱きしめられている慧斗の姿などが歪んであった。
「慧斗っ」
「ほ……紅龍……どうしよ……」
駆け寄ってきた紅龍の腕を強く掴み、慧斗は涙目で縋る。
「これは……」
紅龍の目にも写真が入ったのだろう。赤い目を驚きで見開いている。
慧斗は悪意に満ちた光景に、紅龍にしがみついたまま、カタカタと震えるしかできなかった。
60
あなたにおすすめの小説
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。
オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!
をち。「もう我慢なんて」書籍発売中
BL
これは、あざと可愛い悪役令息の義弟VS.あざと主人公のおはなし。
ボクの名前は、クリストファー。
突然だけど、ボクには前世の記憶がある。
ジルベスターお義兄さまと初めて会ったとき、そのご尊顔を見て
「あああ!《《この人》》、知ってるう!悪役令息っ!」
と思い出したのだ。
あ、この人ゲームの悪役じゃん、って。
そう、俺が今いるこの世界は、ゲームの中の世界だったの!
そして、ボクは悪役令息ジルベスターの義弟に転生していたのだ!
しかも、モブ。
繰り返します。ボクはモブ!!「完全なるモブ」なのだ!
ゲームの中のボクには、モブすぎて名前もキャラデザもなかった。
どおりで今まで毎日自分の顔をみてもなんにも思い出さなかったわけだ!
ちなみに、ジルベスターお義兄さまは悪役ながら非常に人気があった。
その理由の第一は、ビジュアル!
夜空に輝く月みたいにキラキラした銀髪。夜の闇を思わせる深い紺碧の瞳。
涼やかに切れ上がった眦はサイコーにクール!!
イケメンではなく美形!ビューティフル!ワンダフォー!
ありとあらゆる美辞麗句を並び立てたくなるくらいに美しい姿かたちなのだ!
当然ながらボクもそのビジュアルにノックアウトされた。
ネップリももちろんコンプリートしたし、アクスタももちろん手に入れた!
そんなボクの推しジルベスターは、その無表情のせいで「人を馬鹿にしている」「心がない」「冷酷」といわれ、悪役令息と呼ばれていた。
でもボクにはわかっていた。全部誤解なんだって。
ジルベスターは優しい人なんだって。
あの無表情の下には確かに温かなものが隠れてるはずなの!
なのに誰もそれを理解しようとしなかった。
そして最後に断罪されてしまうのだ!あのピンク頭に惑わされたあんぽんたんたちのせいで!!
ジルベスターが断罪されたときには悔し涙にぬれた。
なんとかジルベスターを救おうとすべてのルートを試し、ゲームをやり込みまくった。
でも何をしてもジルベスターは断罪された。
ボクはこの世界で大声で叫ぶ。
ボクのお義兄様はカッコよくて優しい最高のお義兄様なんだからっ!
ゲームの世界ならいざしらず、このボクがついてるからには断罪なんてさせないっ!
最高に可愛いハイスぺモブ令息に転生したボクは、可愛さと前世の知識を武器にお義兄さまを守りますっ!
⭐︎⭐︎⭐︎
ご拝読頂きありがとうございます!
コメント、エール、いいねお待ちしております♡
「もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!」書籍発売中!
連載続いておりますので、そちらもぜひ♡
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる