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20 作戦
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ディアン様と騎士たちが部屋から去った後。
「シア、大丈夫か?」
「はい、アルフ様。ありがとうございました……!」
「奥様、ご無事で何よりです……!」
彼が来ていなかったら私はあそこで死んでいただろう。
また彼に助けられてしまった。
(何はともあれ良かった……)
未だに身体の震えが収まらない。
アルフ様はそんな私の肩を優しく抱いた。
「ハァ……」
そして部屋にいた侍女を下がらせると、私をソファに座らせて防音魔法を発動させた。
「これは一大事だな……」
「そうですね……誰かが私を貶めようとしているということでしょうか……」
考えたくはないが、そのようなことをする人間は一人しかいないだろう。
(きっとこれを計画したのはドロシー様ね……)
――この放火事件の真犯人である彼女しかいない。
「そうだな、あの女は危険だ……この先もう一度何かを仕掛けてくるかもしれない」
「はい、完全に狙われてしまったようですね」
かなり面倒なことになってしまった。
(ドロシー様が何を考えているか全く分からないわね……)
私やアルフ様は現在放火事件に関する証拠を集めているものの、まだまだ時間がかかりそうだ。
「調べてもなかなかあの女が関与しているという証拠は出てこない。これだけ徹底的に証拠隠滅がされているということは、おそらくあの女一人の仕業ではないだろうな」
「そうですね……」
彼女を断罪するのは長い道のりになりそうだ。
そう思ってため息をついたとき、アルフ様がフッと笑った。
「シア、そんなに深刻にならないでいい」
「……?」
「俺に作戦がある」
「作戦……?」
言葉の意味が分からず彼の方を見ると、彼は不敵な笑みを浮かべていた。
(アルフ様……一体何をするつもり……?)
***
「例の放火事件で公爵夫人が犯人に仕立て上げられたのを知っているか?」
「ええ、その件で今実家である侯爵家や親しくしている貴族家も調査に当たっているそうね」
「愛する一人娘が貶められたんだもの。絶対に犯人を逃がさないでしょうよ」
「……」
聞こえてくる言葉に焦りと苛立ちを感じた俺は、急いでその場を後にした。
(クソッ……!こんなの聞いてねえぞ……!)
公爵夫人を犯人に仕立て上げれば全て上手くいくはずではなかったのか。
何故このようなことになっているのか。
(公爵家に加え、実家の侯爵家、さらには仲良くしてる貴族までもが調査に当たっているだと?)
これは予期せぬ事態だ。
こんなことになるのならあの女の依頼を受けなければよかった。
後悔したところで遅すぎた。
(チッ……アイツのことは捨てて俺だけでも遠くへ逃げるか……)
そう思って路地裏を出ようとしたそのときだった――
「だ、誰だ!」
「……」
ローブを深くかぶった男が目の前に立ちはだかったのだ。
(同業者か……?)
警戒を強めていると、男は淡々と用件を口にした。
「――お前に用がある、俺と共に来てもらおう」
「……何?」
(俺をどこへ連れて行く気だ……)
俺はすぐに懐から短剣を取り出して男に向けた。
「誰が行くか!どこの組織の者か知らないが、ここで死ね!」
俺は短剣を手に素早く男に突進した。
俺は裏社会ではかなり名の通った暗殺者だった。
一対一の戦いでなら負けたことなんて一度もない。
が、しかし――
「……!どこへ行った!?」
男は一瞬で姿を消したかと思うと、俺の背後に立っていた。
「抵抗するというのなら仕方が無い」
耳元でそっと囁くと、目の前に魔法陣が広がった。
(魔法……!?)
男はどうやら魔法使いのようだった。
「あ……」
魔法に気を取られていた俺は、男の攻撃を避けることが出来なかった。
物凄い勢いで放たれた稲妻が俺の腹を貫いた。
「ぐああっ!!!」
床に倒れ込んだ俺は、朦朧とする意識の中でこちらをじっと見下ろしている男の姿が目に入った。
「――気絶させてでも連れて行くまでだ」
最後のその言葉が、俺の耳に届くことはなかった。
「シア、大丈夫か?」
「はい、アルフ様。ありがとうございました……!」
「奥様、ご無事で何よりです……!」
彼が来ていなかったら私はあそこで死んでいただろう。
また彼に助けられてしまった。
(何はともあれ良かった……)
未だに身体の震えが収まらない。
アルフ様はそんな私の肩を優しく抱いた。
「ハァ……」
そして部屋にいた侍女を下がらせると、私をソファに座らせて防音魔法を発動させた。
「これは一大事だな……」
「そうですね……誰かが私を貶めようとしているということでしょうか……」
考えたくはないが、そのようなことをする人間は一人しかいないだろう。
(きっとこれを計画したのはドロシー様ね……)
――この放火事件の真犯人である彼女しかいない。
「そうだな、あの女は危険だ……この先もう一度何かを仕掛けてくるかもしれない」
「はい、完全に狙われてしまったようですね」
かなり面倒なことになってしまった。
(ドロシー様が何を考えているか全く分からないわね……)
私やアルフ様は現在放火事件に関する証拠を集めているものの、まだまだ時間がかかりそうだ。
「調べてもなかなかあの女が関与しているという証拠は出てこない。これだけ徹底的に証拠隠滅がされているということは、おそらくあの女一人の仕業ではないだろうな」
「そうですね……」
彼女を断罪するのは長い道のりになりそうだ。
そう思ってため息をついたとき、アルフ様がフッと笑った。
「シア、そんなに深刻にならないでいい」
「……?」
「俺に作戦がある」
「作戦……?」
言葉の意味が分からず彼の方を見ると、彼は不敵な笑みを浮かべていた。
(アルフ様……一体何をするつもり……?)
***
「例の放火事件で公爵夫人が犯人に仕立て上げられたのを知っているか?」
「ええ、その件で今実家である侯爵家や親しくしている貴族家も調査に当たっているそうね」
「愛する一人娘が貶められたんだもの。絶対に犯人を逃がさないでしょうよ」
「……」
聞こえてくる言葉に焦りと苛立ちを感じた俺は、急いでその場を後にした。
(クソッ……!こんなの聞いてねえぞ……!)
公爵夫人を犯人に仕立て上げれば全て上手くいくはずではなかったのか。
何故このようなことになっているのか。
(公爵家に加え、実家の侯爵家、さらには仲良くしてる貴族までもが調査に当たっているだと?)
これは予期せぬ事態だ。
こんなことになるのならあの女の依頼を受けなければよかった。
後悔したところで遅すぎた。
(チッ……アイツのことは捨てて俺だけでも遠くへ逃げるか……)
そう思って路地裏を出ようとしたそのときだった――
「だ、誰だ!」
「……」
ローブを深くかぶった男が目の前に立ちはだかったのだ。
(同業者か……?)
警戒を強めていると、男は淡々と用件を口にした。
「――お前に用がある、俺と共に来てもらおう」
「……何?」
(俺をどこへ連れて行く気だ……)
俺はすぐに懐から短剣を取り出して男に向けた。
「誰が行くか!どこの組織の者か知らないが、ここで死ね!」
俺は短剣を手に素早く男に突進した。
俺は裏社会ではかなり名の通った暗殺者だった。
一対一の戦いでなら負けたことなんて一度もない。
が、しかし――
「……!どこへ行った!?」
男は一瞬で姿を消したかと思うと、俺の背後に立っていた。
「抵抗するというのなら仕方が無い」
耳元でそっと囁くと、目の前に魔法陣が広がった。
(魔法……!?)
男はどうやら魔法使いのようだった。
「あ……」
魔法に気を取られていた俺は、男の攻撃を避けることが出来なかった。
物凄い勢いで放たれた稲妻が俺の腹を貫いた。
「ぐああっ!!!」
床に倒れ込んだ俺は、朦朧とする意識の中でこちらをじっと見下ろしている男の姿が目に入った。
「――気絶させてでも連れて行くまでだ」
最後のその言葉が、俺の耳に届くことはなかった。
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