19 / 32
シルフィーラの失踪
しおりを挟む
「ふあ~……よく寝た……」
しばらくして、リデルは馬車の中で目を覚ました。
「起きたか」
「お父様……!」
馬車の中ではオズワルドが足を組んでリデルの向かい側に座っていた。
久しぶりのお出かけで余程疲れていたようで、歩いている途中で居眠りをしてしまったらしい。
「私、どれくらい寝てたんですか?」
「二十分ほどだ」
(結構寝たと思ったのに……それだけしか経ってなかったんだ……)
馬車の中から外の景色を見てみると、既に街からは離れており公爵邸の近辺を走っていた。
(楽しい時間はあっという間なんだなぁ……)
そう思いながら、リデルは今日一日を振り返ってみた。
父親との初めてのお出かけ。
王都の街は驚くほど煌びやかな場所だった。
シルフィーラと海辺の街へ行ったときと同じく、見たことの無い景色をたくさん見ることが出来た。
そして、それに加えて父との交流も深められたような気がした。
そのことを考えると、何だか嬉しくなった。
「着いたぞ」
「あ、はい!」
二人は馬車から降りて、公爵邸へと入った。
(早くお義母様に会いたいな!)
シルフィーラがきっとエントランスで出迎えをしてくれているはずだ。
そのことを思うと自然と足取りが軽くなった。
「お義母様!」
しかし、シルフィーラの姿はどこにも無かった。
(あれ……?何だろう……?)
中に入ると、公爵邸が騒がしいことにリデルは気が付いた。
「何だ……?」
オズワルドもリデルと同じく異変を感じ取ったようで、真っ直ぐな眉をピクリと上げた。
彼はすぐに落ち着きの無い様子で走り回っていた一人の使用人を捕まえた。
「おい、何をそんなに慌てている」
「そ、それが奥様が突然いなくなってしまわれたのです!」
「…………何?」
オズワルドの顔が一瞬にして険しいものとなった。
彼は強張った表情で他の使用人たちを問い詰めた。
「おい、シルフィーラがいないとは一体どういうことだ!?」
「だ、旦那様……!」
「それは私たちにもよく……」
「クソッ……!」
オズワルドは苛ついた様子で髪の毛を手でかき上げた。
「お義母様がいなくなった……?」
「リデルお嬢様……」
呆然とするリデルを、使用人たちが心配そうに見つめた。
彼らはリデルがどれほどシルフィーラに懐いていたかをよく知っていたからだ。
「屋敷の中は捜したのか」
「はい、どこにもいらっしゃいませんでした」
「何だと……?」
シルフィーラがいなくなったことを聞いた彼はグッと拳を握り締めた。
「お父様……!」
「すぐに探せ!どんな手を使ってでも構わない!」
「は、はい!旦那様!」
それからオズワルドは公爵家の騎士団を動かして突如失踪したシルフィーラの捜索を開始した。
公爵邸の中はもちろん、その周辺、公爵家の領地などシルフィーラがいる可能性のある場所を隅々まで捜させた。
しかし、捜索を始めてから数時間が経っても未だ見つかったという報告は無い。
「シルフィーラが突然いなくなったなんて……一体どこに行ったんだ……俺はお前がいないと……」
オズワルドは今にも泣きそうな顔で部屋の中を歩き回った。
(お義母様が急にいなくなるだなんて……)
不測の事態に、リデルも動揺を隠せなかった。
それでもオズワルドに比べたらだいぶ落ち着いている方だが。
「シルフィーラ……ああ……どこにいるんだ……まさか俺を見限ったのか……?」
オズワルドが人生に絶望したかのように顔を手で覆って座り込んだ。
(す、すぐに解決しないと……!)
これはまずいと思ったリデルは、シルフィーラ捜索のため一人部屋を飛び出した。
***
「お義母様!」
公爵邸の中でシルフィーラが好きだった場所を手当たり次第に捜したが、やはり彼女の姿はどこにも無かった。
(やっぱり外なのかなぁ……?お義母様、どこ行っちゃったんだろう……)
まだ誘拐だと確定しているわけではないが、リデルもまたオズワルドと同じく内心落ち着かなかった。
(お父様もいくらお義母様がいなくなったからってあんなに情けなくなるだなんて!)
オズワルドは普段は優秀な公爵閣下だが、シルフィーラのこととなると途端に情けなくなってしまうのだ。
『あれ、リデルだ!』
「………ルー?」
そのとき、庭園の茂みから飛び出したのはルーだった。
『どうしたの?ものすごく暗い顔をしているね』
「ルー……それがね……」
リデルはルーに事情を説明した。
『ええ!?シルフィーラがいなくなったの!?』
それを聞いたルーは途端に不安げな顔になった。
「うん……本当にどこ行っちゃったんだろう」
『屋敷の中は全て捜したのかい?』
「多分……使用人たちが既に捜してると思う」
『そっか……』
そこでルーは何かを考え込むような素振りを見せた。
『シルフィーラがいなくなるだなんて……』
オズワルドに比べたらだいぶマシだが、ルーも少しだけ顔色が悪くなっている。
彼はシルフィーラにかなり懐いていたようだから無理もないだろう。
『リデル、みんなに協力してもらうのが一番良いと思う』
「それは良い提案ね!ありがとう、ルー!」
ルーは公爵邸の庭園に住んでいる精霊を全員呼び寄せた。
『みんなに聞いてほしいことがある。実はシルフィーラがいなくなったそうなんだ」
それを聞いた精霊たちの間にどよめきが広がった。
『シルフィーラがいなくなった!?』
『そんなこと今まで一度も無かったのに!』
『まさか、誰かに連れていかれちゃったのかな……?』
広がるざわめきの中で、ルーが全員にしっかりと聞こえるように声を張り上げた。
『みんな落ち着いて。そこで、みんなにシルフィーラを捜す手伝いをしてほしいんだ』
『もちろんだよ!』
『僕とリデルは公爵邸の中の痕跡を辿るからみんなは外を捜してほしい』
『『『『『了解!』』』』』
それからすぐに精霊たちはそれぞれ飛び立っていった。
『リデル、僕たちは邸の中を捜そう」
「うん、そうだね!」
そしてリデルもルーと共に公爵邸に戻り、シルフィーラの捜索を再開した。
しばらくして、リデルは馬車の中で目を覚ました。
「起きたか」
「お父様……!」
馬車の中ではオズワルドが足を組んでリデルの向かい側に座っていた。
久しぶりのお出かけで余程疲れていたようで、歩いている途中で居眠りをしてしまったらしい。
「私、どれくらい寝てたんですか?」
「二十分ほどだ」
(結構寝たと思ったのに……それだけしか経ってなかったんだ……)
馬車の中から外の景色を見てみると、既に街からは離れており公爵邸の近辺を走っていた。
(楽しい時間はあっという間なんだなぁ……)
そう思いながら、リデルは今日一日を振り返ってみた。
父親との初めてのお出かけ。
王都の街は驚くほど煌びやかな場所だった。
シルフィーラと海辺の街へ行ったときと同じく、見たことの無い景色をたくさん見ることが出来た。
そして、それに加えて父との交流も深められたような気がした。
そのことを考えると、何だか嬉しくなった。
「着いたぞ」
「あ、はい!」
二人は馬車から降りて、公爵邸へと入った。
(早くお義母様に会いたいな!)
シルフィーラがきっとエントランスで出迎えをしてくれているはずだ。
そのことを思うと自然と足取りが軽くなった。
「お義母様!」
しかし、シルフィーラの姿はどこにも無かった。
(あれ……?何だろう……?)
中に入ると、公爵邸が騒がしいことにリデルは気が付いた。
「何だ……?」
オズワルドもリデルと同じく異変を感じ取ったようで、真っ直ぐな眉をピクリと上げた。
彼はすぐに落ち着きの無い様子で走り回っていた一人の使用人を捕まえた。
「おい、何をそんなに慌てている」
「そ、それが奥様が突然いなくなってしまわれたのです!」
「…………何?」
オズワルドの顔が一瞬にして険しいものとなった。
彼は強張った表情で他の使用人たちを問い詰めた。
「おい、シルフィーラがいないとは一体どういうことだ!?」
「だ、旦那様……!」
「それは私たちにもよく……」
「クソッ……!」
オズワルドは苛ついた様子で髪の毛を手でかき上げた。
「お義母様がいなくなった……?」
「リデルお嬢様……」
呆然とするリデルを、使用人たちが心配そうに見つめた。
彼らはリデルがどれほどシルフィーラに懐いていたかをよく知っていたからだ。
「屋敷の中は捜したのか」
「はい、どこにもいらっしゃいませんでした」
「何だと……?」
シルフィーラがいなくなったことを聞いた彼はグッと拳を握り締めた。
「お父様……!」
「すぐに探せ!どんな手を使ってでも構わない!」
「は、はい!旦那様!」
それからオズワルドは公爵家の騎士団を動かして突如失踪したシルフィーラの捜索を開始した。
公爵邸の中はもちろん、その周辺、公爵家の領地などシルフィーラがいる可能性のある場所を隅々まで捜させた。
しかし、捜索を始めてから数時間が経っても未だ見つかったという報告は無い。
「シルフィーラが突然いなくなったなんて……一体どこに行ったんだ……俺はお前がいないと……」
オズワルドは今にも泣きそうな顔で部屋の中を歩き回った。
(お義母様が急にいなくなるだなんて……)
不測の事態に、リデルも動揺を隠せなかった。
それでもオズワルドに比べたらだいぶ落ち着いている方だが。
「シルフィーラ……ああ……どこにいるんだ……まさか俺を見限ったのか……?」
オズワルドが人生に絶望したかのように顔を手で覆って座り込んだ。
(す、すぐに解決しないと……!)
これはまずいと思ったリデルは、シルフィーラ捜索のため一人部屋を飛び出した。
***
「お義母様!」
公爵邸の中でシルフィーラが好きだった場所を手当たり次第に捜したが、やはり彼女の姿はどこにも無かった。
(やっぱり外なのかなぁ……?お義母様、どこ行っちゃったんだろう……)
まだ誘拐だと確定しているわけではないが、リデルもまたオズワルドと同じく内心落ち着かなかった。
(お父様もいくらお義母様がいなくなったからってあんなに情けなくなるだなんて!)
オズワルドは普段は優秀な公爵閣下だが、シルフィーラのこととなると途端に情けなくなってしまうのだ。
『あれ、リデルだ!』
「………ルー?」
そのとき、庭園の茂みから飛び出したのはルーだった。
『どうしたの?ものすごく暗い顔をしているね』
「ルー……それがね……」
リデルはルーに事情を説明した。
『ええ!?シルフィーラがいなくなったの!?』
それを聞いたルーは途端に不安げな顔になった。
「うん……本当にどこ行っちゃったんだろう」
『屋敷の中は全て捜したのかい?』
「多分……使用人たちが既に捜してると思う」
『そっか……』
そこでルーは何かを考え込むような素振りを見せた。
『シルフィーラがいなくなるだなんて……』
オズワルドに比べたらだいぶマシだが、ルーも少しだけ顔色が悪くなっている。
彼はシルフィーラにかなり懐いていたようだから無理もないだろう。
『リデル、みんなに協力してもらうのが一番良いと思う』
「それは良い提案ね!ありがとう、ルー!」
ルーは公爵邸の庭園に住んでいる精霊を全員呼び寄せた。
『みんなに聞いてほしいことがある。実はシルフィーラがいなくなったそうなんだ」
それを聞いた精霊たちの間にどよめきが広がった。
『シルフィーラがいなくなった!?』
『そんなこと今まで一度も無かったのに!』
『まさか、誰かに連れていかれちゃったのかな……?』
広がるざわめきの中で、ルーが全員にしっかりと聞こえるように声を張り上げた。
『みんな落ち着いて。そこで、みんなにシルフィーラを捜す手伝いをしてほしいんだ』
『もちろんだよ!』
『僕とリデルは公爵邸の中の痕跡を辿るからみんなは外を捜してほしい』
『『『『『了解!』』』』』
それからすぐに精霊たちはそれぞれ飛び立っていった。
『リデル、僕たちは邸の中を捜そう」
「うん、そうだね!」
そしてリデルもルーと共に公爵邸に戻り、シルフィーラの捜索を再開した。
231
あなたにおすすめの小説
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
妹に婚約者を取られてしまい、家を追い出されました。しかしそれは幸せの始まりだったようです
hikari
恋愛
姉妹3人と弟1人の4人きょうだい。しかし、3番目の妹リサに婚約者である王太子を取られてしまう。二番目の妹アイーダだけは味方であるものの、次期公爵になる弟のヨハンがリサの味方。両親は無関心。ヨハンによってローサは追い出されてしまう。
自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。
裏切られた氷の聖女は、その後、幸せな夢を見続ける
しげむろ ゆうき
恋愛
2022年4月27日修正
セシリア・シルフィードは氷の聖女として勇者パーティーに入り仲間と共に魔王と戦い勝利する。
だが、帰ってきたセシリアをパーティーメンバーは残酷な仕打で……
因果応報ストーリー
両親に溺愛されて育った妹の顛末
葉柚
恋愛
皇太子妃になるためにと厳しく育てられた私、エミリアとは違い、本来私に与えられるはずだった両親からの愛までも注ぎ込まれて溺愛され育てられた妹のオフィーリア。
オフィーリアは両親からの過剰な愛を受けて愛らしく育ったが、過剰な愛を受けて育ったために次第に世界は自分のためにあると勘違いするようになってしまい……。
「お姉さまはずるいわ。皇太子妃になっていずれはこの国の妃になるのでしょう?」
「私も、この国の頂点に立つ女性になりたいわ。」
「ねえ、お姉さま。私の方が皇太子妃に相応しいと思うの。代わってくださらない?」
妹の要求は徐々にエスカレートしていき、最後には……。
二度目の人生は離脱を目指します
橋本彩里(Ayari)
恋愛
エレナは一度死に戻り、二度目の人生を生きることになった。
一度目は親友のマリアンヌにあらゆるものを奪われ、はめられた人生。
今回は関わらずにいこうと、マリアンヌとの初めての顔合わせで倒れたのを機に病弱と偽り王都から身を遠ざけることにする。
人生二度目だから自身が快適に過ごすために、マリアンヌと距離を取りながらあちこちに顔を出していたら、なぜかマリアンヌの取り巻き男性、死に戻り前は髪色で呼んでいた五人、特に黒いのがしつこっ、……男たちが懐いてきて。
一度目の人生は何が起っていたのか。
今度こそ平穏にいきたいエレナだがいつの間にか渦中に巻き込まれ――。
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる