旦那様、彼は仕事において必要不可欠なパートナーなのです

ましゅぺちーの

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第一章 虐げられる妻、からの公爵様との契約です!

14 ドレスをリメイクします

「ホンット、良いものが無いわね……」
「お、奥様!」


フルールがやってきたのは、伯爵邸にある彼女のためのドレスルームだった。
彼女は中にあったドレスたちを、腕を組んで眺めた。


全てこの五年間でルースからプレゼントされたドレスだった。
少し前の彼女からしたら、大切で大切で着るのも勿体ないと思っていたくらいのものたちだ。


しかし、今は違う。
フルールはその中の一着を手に取ると、自身の体の前で広げた。


「ねぇ、このドレスは私にはちょっと派手すぎると思わない?」
「え、そ、それは……」


彼女が取ったのはレースやフリルがふんだんに使われている赤いドレスだった。
アリアのような華やかな美人が着たら似合うだろうが、お世辞にもフルールには似合うとは言えなかった。


「ルースは一体どんな気持ちでこのドレスを私に贈ったのかしらね……」
「だ、旦那様はそういうのに疎いですからね……」


侍女長は気まずそうに目を逸らした。
あまりにも似合ってなさすぎるドレスを、見ていられないのだろう。


(ルースって、本当に私に興味が無かったのね……)


フルールのような平凡な容姿の女には、こういう華美たドレスは合わない。
以前の彼女はそんなこと気にも留めず、彼から贈られたものだと喜んで着ていたが。


「こっちのドレスは幼すぎるわ。二十を過ぎた女がこんなにもリボンをたくさん使ったドレスを着たら社交界で笑い者になるわ。このドレスはせいぜい十八歳までね」
「そ、そうでしょうか……よくお似合いになると思いますが……」


侍女長の顔が引きつっている。
彼女なりに、何とかルースをフォローしようとしているのだろう。


「じゃあ、あなたにあげるわ。次のパーティーに着て行きなさい」
「そ、それは勘弁してください!いくら何でも残酷すぎますよ、奥様!」


よほど嫌なのか、侍女長は涙目になった。
フルールはそんな彼女を気に留めることなく、ドレスルームの中から数着のドレスを手に取り、部屋を出て行った。
侍女長は慌ててついて行き、前を歩くフルールに尋ねた。


「あの、奥様……何をなさるおつもりですか……?」


振り返ったフルールは、ニッコリと笑った。


「――ドレスのリメイクよ」



***



自室へ戻ったフルールは、ドレスを机に置いた。
最初に彼女が手に取ったのは、先ほど侍女長が着たくないと喚いていたリボンだらけのドレスだった。


「そうね、このリボンは取っちゃいましょう」
「ぜ、全部ですか……?」
「ええ、腰回りのものだけを残してあとは全部取るわ」


フルールは手慣れた様子で、ドレスのリメイクを始めた。
その姿はまるでプロの縫製職人のようだった。


「奥様、そのような技術をいつの間に手に入れたのですか?」
「実家の伯爵家でよくやっていたのよ」


グロリア伯爵家では、フルールは令嬢であるにもかかわらず、自由にドレスを買うことができなかった。
買ってもらえるのは舞踏会などのパーティーに出席するときのみで、彼女は服すら十分に用意されていなかった。


(舞踏会で着たドレスをよくリメイクして普段着にしていたっけ……)


その技術が今になって役に立つとは。
前世の記憶を取り戻す前は、ルースが贈ってくれたドレスに手を加えるだなんて!とあえてリメイクをしなかった。
しかし、こんなにも高そうなドレスたちを着ないというのは勿体ない。


「ちょっとスカートがモコモコしすぎだわ。もっと落ち着いた雰囲気のものにしましょう」
「……」


侍女長はフルールのドレスリメイクをただ黙って見つめていた。
ルースにとって何の役にも立たない無能な伯爵夫人だと思っていたが、こんなことができたのか。


「――よし、こんなものでいいかしら」
「奥様……」


数時間後、フルールはドレスのリメイクを終えた。
ドレスに使われていたリボンはほとんどが取り除かれ、プリンセスラインのスカートはAラインへと変わっていた。
可愛らしい大きなパフスリーブは上品なオフショルダーに変更し、ピンク一色だったドレスには色味を入れた。
結果、ドレスはどの年代でも着れるような落ち着いたものへと変貌した。


「あの……奥様……」
「どうかした?」


ずっと見守っているだけだった侍女長が、フルールに恐る恐る声をかけた。


「失礼なことを聞きますが……一体何故突然このようなことをなさったのですか……?」
「ふふ、良いことを聞いてくれたわ!それはね……」


フルールはニッコリと笑い、彼女に言葉を返した。


「――私ね、ブティックを開こうと思うの!」



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