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第一章 虐げられる妻、からの公爵様との契約です!
20 最近妻が変だ ルース視点
「フルールはどこにいる?何故いつものように出迎えに来ない?」
「も、もうすぐいらっしゃるのではないかと……」
フルールが部屋でデザイン画を描いていた頃、ルースはエントランスで彼女が来るのをを待ち続けていた。
しかし、フルールは彼を出迎えに行くつもりはない。ルースはそのことを当然知らなかった。
(こんなにも待たせるのは初めてだな……いつもは俺が帰ってすぐに上から駆け下りてくるというのに……)
これまでフルールは帰宅したルースを必ず出迎えていた。それも彼が邸へ入ってから一分以内に。
『旦那様!お帰りなさいませ!』
そのときのフルールはいつだって嬉しそうな顔で彼の元へ駆け寄ってきた。
ルースはフルールが自分を心から愛していることをよく知っていた。
気付かないはずがない、彼女の全ての行動には彼への愛情が感じられたから。
そんな彼女が、今日に限って彼の元へ来なかった。
ルースは妙な胸騒ぎを覚えた。
(……何だ、俺が最近本邸に帰らないから拗ねているのか?)
ルースは昨日もその前もアリアの家で過ごした。アリアは彼の秘書で、彼の仕事とプライベート両方において必要不可欠な存在だった。
彼女は平民ではあるものの、貴族令嬢顔負けの美しい容姿をしているうえに、仕事面においても有能だった。
(アリアは地味なフルールと違って美人だしな……横に連れて歩くならアリアの方がいいんだよな)
しかし、アリアを伯爵夫人にはできなかった。
彼女は頭は良いが教養が無いし、平民が伯爵家の本妻になどなれるわけがない。
その点、フルールは彼にとって都合のいい女だった。
実家である伯爵家から疎まれ、愛を知らずに育った可哀相な令嬢。貴族令嬢特有の傲慢さもなく、慎ましい性格をしている彼女はルースが望んでいたお飾りの妻にピッタリだった。
常に三歩下がって夫のやることなすことに一切の口出しをせず、ただ黙ってついてくる女。
おまけに実家は資産家で、彼女と結婚したことで得たメリットは大きかった。
(今俺がこうやって会社を維持できているのも彼女の実家のおかげだしな……)
ルースの愛はフルールよりもアリアにあったが、フルールと離婚するわけにはいかない。
――彼女は彼にとって、大事な資金源だったから。
「拗ねている奥さんのご機嫌を取るのも、夫の役目か……」
こんなことなら、今日もアリアの元へ帰ればよかった。
ため息を吐きながらルースはフルールの部屋へと向かった。
フルールの暮らす部屋は、彼女と結婚したときにルースが与えた伯爵夫人の部屋だった。
それは決して、彼が彼女を伯爵夫人として扱うという意味ではなかった。
(フルールは俺にとって都合のいい駒でいてもらわなければならない。そのために彼女に一番良いものを与えるのは当然のこと)
ルースは打算的で、ずる賢い男だった。
周囲から見たら不幸な境遇で育った可哀相な男。しかし、彼はその不幸な境遇の中でどんな手を使ってでも、周囲の誰を利用してでも生き残るという歪んだ考えを持つようになった。
ルースはフルールの部屋の扉をノックした。
「――フルール、中にいるか?」
しばらくすると、扉が開き、侍女長が顔を出した。
「旦那様、何の御用でしょうか?」
「フルールに会いに来たんだ。中にいるんだろう?通してくれ」
このときのルースは心の中で、下劣なことを考えていた。
愛しているとか適当なことを言ってご機嫌を取り、久々に抱いてやろう。
フルールは顔は地味だが、スタイルはよかった。アリアを抱くときとはまた別の快感を得られる。
夜のお楽しみのことを考えると、彼の口元がニヤけた。
侍女長は気味の悪いルースの笑顔に若干引きながらも、フルールの言葉を代弁した。
「……奥様は誰が来ても通すなとおっしゃっております」
「な、何だと!?」
深夜、ルースの声が邸宅内に響いた。
「だ、旦那様!何かありましたか!?」
「今の声は一体!?侵入者か!?」
彼の声を聞いた騎士や執事たちが、フルールの部屋の前に集まった。
「い、いや……何でもないんだ……下がってくれ……」
「……」
ルースは駆け付けた騎士たちを下がらせると、再び侍女長に向き直った。
「どういうことだ?具合でも悪いのか?」
「い、いえ……そういうわけではありませんが……」
「なら通せ、俺はフルールの夫だぞ。部屋に入ったところで何の問題もないだろう」
侍女長はルースとフルールの間で板挟みになっていた。
彼女はルースを一番に思っているが、フルールが彼女の弱みを握っている以上、逆らうわけにもいかない。
黙り込む侍女長に痺れを切らしたのか、ルースは荒々しく髪をかき上げた。
「ああ、もう!どうしても中に入れない気なんだな!後悔するぞとフルールに伝えておけ!」
「だ、旦那様……!」
ルースはそれだけ言うと、部屋の前から立ち去った。
「旦那様、どちらへ行かれる気ですか!?」
「アリアの家だ、今日はそこに泊まる」
「い、今からですか!?せっかく本邸へ帰ってきたというのに……!」
執事の制止の声も聞かずに、ルースは再び馬車に乗り込んでアリアの家へと向かった。
(たかが数日帰らなかっただけで拗ねるだなんて……俺がアリアの元へ行ったと知ったら泣くくせに!)
いや、それでいい。
彼はニヤッと口角を上げた。
寂しくて泣いてまた俺に縋りつけばいいんだ。
――どうせお前が帰るところなんてないんだから。
「も、もうすぐいらっしゃるのではないかと……」
フルールが部屋でデザイン画を描いていた頃、ルースはエントランスで彼女が来るのをを待ち続けていた。
しかし、フルールは彼を出迎えに行くつもりはない。ルースはそのことを当然知らなかった。
(こんなにも待たせるのは初めてだな……いつもは俺が帰ってすぐに上から駆け下りてくるというのに……)
これまでフルールは帰宅したルースを必ず出迎えていた。それも彼が邸へ入ってから一分以内に。
『旦那様!お帰りなさいませ!』
そのときのフルールはいつだって嬉しそうな顔で彼の元へ駆け寄ってきた。
ルースはフルールが自分を心から愛していることをよく知っていた。
気付かないはずがない、彼女の全ての行動には彼への愛情が感じられたから。
そんな彼女が、今日に限って彼の元へ来なかった。
ルースは妙な胸騒ぎを覚えた。
(……何だ、俺が最近本邸に帰らないから拗ねているのか?)
ルースは昨日もその前もアリアの家で過ごした。アリアは彼の秘書で、彼の仕事とプライベート両方において必要不可欠な存在だった。
彼女は平民ではあるものの、貴族令嬢顔負けの美しい容姿をしているうえに、仕事面においても有能だった。
(アリアは地味なフルールと違って美人だしな……横に連れて歩くならアリアの方がいいんだよな)
しかし、アリアを伯爵夫人にはできなかった。
彼女は頭は良いが教養が無いし、平民が伯爵家の本妻になどなれるわけがない。
その点、フルールは彼にとって都合のいい女だった。
実家である伯爵家から疎まれ、愛を知らずに育った可哀相な令嬢。貴族令嬢特有の傲慢さもなく、慎ましい性格をしている彼女はルースが望んでいたお飾りの妻にピッタリだった。
常に三歩下がって夫のやることなすことに一切の口出しをせず、ただ黙ってついてくる女。
おまけに実家は資産家で、彼女と結婚したことで得たメリットは大きかった。
(今俺がこうやって会社を維持できているのも彼女の実家のおかげだしな……)
ルースの愛はフルールよりもアリアにあったが、フルールと離婚するわけにはいかない。
――彼女は彼にとって、大事な資金源だったから。
「拗ねている奥さんのご機嫌を取るのも、夫の役目か……」
こんなことなら、今日もアリアの元へ帰ればよかった。
ため息を吐きながらルースはフルールの部屋へと向かった。
フルールの暮らす部屋は、彼女と結婚したときにルースが与えた伯爵夫人の部屋だった。
それは決して、彼が彼女を伯爵夫人として扱うという意味ではなかった。
(フルールは俺にとって都合のいい駒でいてもらわなければならない。そのために彼女に一番良いものを与えるのは当然のこと)
ルースは打算的で、ずる賢い男だった。
周囲から見たら不幸な境遇で育った可哀相な男。しかし、彼はその不幸な境遇の中でどんな手を使ってでも、周囲の誰を利用してでも生き残るという歪んだ考えを持つようになった。
ルースはフルールの部屋の扉をノックした。
「――フルール、中にいるか?」
しばらくすると、扉が開き、侍女長が顔を出した。
「旦那様、何の御用でしょうか?」
「フルールに会いに来たんだ。中にいるんだろう?通してくれ」
このときのルースは心の中で、下劣なことを考えていた。
愛しているとか適当なことを言ってご機嫌を取り、久々に抱いてやろう。
フルールは顔は地味だが、スタイルはよかった。アリアを抱くときとはまた別の快感を得られる。
夜のお楽しみのことを考えると、彼の口元がニヤけた。
侍女長は気味の悪いルースの笑顔に若干引きながらも、フルールの言葉を代弁した。
「……奥様は誰が来ても通すなとおっしゃっております」
「な、何だと!?」
深夜、ルースの声が邸宅内に響いた。
「だ、旦那様!何かありましたか!?」
「今の声は一体!?侵入者か!?」
彼の声を聞いた騎士や執事たちが、フルールの部屋の前に集まった。
「い、いや……何でもないんだ……下がってくれ……」
「……」
ルースは駆け付けた騎士たちを下がらせると、再び侍女長に向き直った。
「どういうことだ?具合でも悪いのか?」
「い、いえ……そういうわけではありませんが……」
「なら通せ、俺はフルールの夫だぞ。部屋に入ったところで何の問題もないだろう」
侍女長はルースとフルールの間で板挟みになっていた。
彼女はルースを一番に思っているが、フルールが彼女の弱みを握っている以上、逆らうわけにもいかない。
黙り込む侍女長に痺れを切らしたのか、ルースは荒々しく髪をかき上げた。
「ああ、もう!どうしても中に入れない気なんだな!後悔するぞとフルールに伝えておけ!」
「だ、旦那様……!」
ルースはそれだけ言うと、部屋の前から立ち去った。
「旦那様、どちらへ行かれる気ですか!?」
「アリアの家だ、今日はそこに泊まる」
「い、今からですか!?せっかく本邸へ帰ってきたというのに……!」
執事の制止の声も聞かずに、ルースは再び馬車に乗り込んでアリアの家へと向かった。
(たかが数日帰らなかっただけで拗ねるだなんて……俺がアリアの元へ行ったと知ったら泣くくせに!)
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