32 / 35
第二章 公爵様と共にお店を開きます!
7 王都へお出かけ
王妃のサロンに参加してから数日後。
平民に扮したフルールは、首都へ来ていた。
オルティエ王国の首都・リーテル。
大陸中に知れ渡るほどの有名店が立ち並び、オルティエの多くの貴族が本邸を構えている場所でもある。
遠くに見える大劇場や大聖堂などはオルティエ有数の観光地としても知られており、毎年他国から観光客が多く押し寄せている。
「あれって、一流パティシエが経営するパティスリーの本店よね!?開店前なのに超並んでる!あっちはマダムアベルが開いているブティックだわ!あそこに行けばマダムに会えるのかしら!?」
フルールは久々に首都の中心へ来たことでテンションが上がっていた。
彼女の暮らす伯爵邸はリーテルから離れたところにあったため、気軽に行ける場所ではなかった。
フルールは今日、ある目的のためにこの場所を訪れていた。
「やっぱり……トレンドをチェックするには王都が一番よね!」
オルティエ王国で最も人が集まるのが、まさに首都リーテルだ。
情報を集めるなら、ここは絶対に欠かせない場所だった。
(前世でも都会に住んでる人はオシャレで流行に敏感な人が多いイメージだったし……)
この間アレクシスに言われたことで、フルールは自分自身を見つめ直した。
そして、自分にはまだまだ勉強が足りないということに気が付いたのだ。
今日は彼に指摘されたことを踏まえ、学びを深めるために時間を作って首都へやってきた。
フルールは目の前に広がる鮮やかな街並みを見渡した。
いかにもファンタジー世界の風景に、見ているだけで冒険心がくすぐられる。
「よし、まずは……」
早速近くのブティックへ向かおうとしていたフルールだったが、急にお腹が物凄い音を立てて鳴った。
周囲を歩いていた人たちが振り返り、彼女は慌てて知らないフリをした。
穴があったら入りたいとはまさにこのことである。
彼女は真っ赤になった顔を隠しながら呟いた。
「まずは……そうね……腹ごしらえでもしようかしら……」
リーテルへ来て彼女が最初に入ったのは、小さなカフェだった。
***
「このワンピース、すごく可愛いですね!」
「そちらは人気商品なんですよ、あと一点で売り切れとなります」
「えー買っちゃおうかなぁ?」
昼食を終えたフルールは、リーテルで有名な平民用の衣料品店へ来ていた。
さすがは人気店というべきか、店内は多くの若い女性のお客さんで賑わっていた。
そのうちの一人だったフルールは、店にあった一着のワンピースに目を留めていた。
彼女の目を引いたのは、襟元にフリルが使われた上品な白のワンピースだった。
「ウエスト部分がかなり伸びる素材になっていて、食べ過ぎたときとかも苦しくないんです」
「あら、それは良いですね」
貴族令嬢が着るドレスはお腹がキツくてたまらない。
そのため、お茶会でも好きなだけ食べることができないのだ。
(せっかく無料でご飯を食べられるってのに、勿体ない!)
貴族の女性にとっては当たり前のことなのだろうが、かつて別の国で生きたフルールにとってはあまりにも窮屈だった。
そこで彼女は気が付いた。
もしかすると、前世の記憶を取り戻した今の私は平民的な思考を持っているのかもしれないと。
「平民の間では、やっぱりこういうのが人気なんですか?」
「そうですねぇ……デザインが良く、動きやすいものが人気ですね」
貴族と違って、平民の女性たちは立ち仕事で生計を立てていることが多い。
居酒屋やカフェの店員、どこかのお屋敷で侍女として働いたり……職種は様々だが、ほとんどの平民女性たちはデスクワークなんてしないだろう。
(そういえば、侍女の服もこんな感じのスカートを使っているわね)
貴族令嬢のように床につくタイプのものではなく、少し短めで、動くたびにふわりと広がるようなスカート。
常に動く侍女にはピッタリな服だ。
きっちりとしたマーメイドスカートなどは平民が着る服には向いていない。
可愛さを重視するなら、フレアスカートが良いかもしれない。
可愛いものが好きなのは、どの世界の女の子も同じだろう。
「あら、こっちのワンピースもなかなか素敵!」
「お客様はお目が高いですね!そちらも人気商品なんですよ」
次にフルールが目を引かれたのは、デコルテの部分が透けたワンピースだった。
「こちらは最近流行りのシースルーを使っているんです!」
「シースルー……?」
不思議そうに首をかしげたフルールに、店員は説明を加えた。
「シースルーは透けるという意味で……最近服の一部に取り入れるのが流行っているんですよ!」
「へぇ、そうだったのね」
これは良い情報を得られたかもしれない。
フルールは丁寧に教えてくれた店員さんへのお礼にワンピースを一着購入し、店を出た。
平民に扮したフルールは、首都へ来ていた。
オルティエ王国の首都・リーテル。
大陸中に知れ渡るほどの有名店が立ち並び、オルティエの多くの貴族が本邸を構えている場所でもある。
遠くに見える大劇場や大聖堂などはオルティエ有数の観光地としても知られており、毎年他国から観光客が多く押し寄せている。
「あれって、一流パティシエが経営するパティスリーの本店よね!?開店前なのに超並んでる!あっちはマダムアベルが開いているブティックだわ!あそこに行けばマダムに会えるのかしら!?」
フルールは久々に首都の中心へ来たことでテンションが上がっていた。
彼女の暮らす伯爵邸はリーテルから離れたところにあったため、気軽に行ける場所ではなかった。
フルールは今日、ある目的のためにこの場所を訪れていた。
「やっぱり……トレンドをチェックするには王都が一番よね!」
オルティエ王国で最も人が集まるのが、まさに首都リーテルだ。
情報を集めるなら、ここは絶対に欠かせない場所だった。
(前世でも都会に住んでる人はオシャレで流行に敏感な人が多いイメージだったし……)
この間アレクシスに言われたことで、フルールは自分自身を見つめ直した。
そして、自分にはまだまだ勉強が足りないということに気が付いたのだ。
今日は彼に指摘されたことを踏まえ、学びを深めるために時間を作って首都へやってきた。
フルールは目の前に広がる鮮やかな街並みを見渡した。
いかにもファンタジー世界の風景に、見ているだけで冒険心がくすぐられる。
「よし、まずは……」
早速近くのブティックへ向かおうとしていたフルールだったが、急にお腹が物凄い音を立てて鳴った。
周囲を歩いていた人たちが振り返り、彼女は慌てて知らないフリをした。
穴があったら入りたいとはまさにこのことである。
彼女は真っ赤になった顔を隠しながら呟いた。
「まずは……そうね……腹ごしらえでもしようかしら……」
リーテルへ来て彼女が最初に入ったのは、小さなカフェだった。
***
「このワンピース、すごく可愛いですね!」
「そちらは人気商品なんですよ、あと一点で売り切れとなります」
「えー買っちゃおうかなぁ?」
昼食を終えたフルールは、リーテルで有名な平民用の衣料品店へ来ていた。
さすがは人気店というべきか、店内は多くの若い女性のお客さんで賑わっていた。
そのうちの一人だったフルールは、店にあった一着のワンピースに目を留めていた。
彼女の目を引いたのは、襟元にフリルが使われた上品な白のワンピースだった。
「ウエスト部分がかなり伸びる素材になっていて、食べ過ぎたときとかも苦しくないんです」
「あら、それは良いですね」
貴族令嬢が着るドレスはお腹がキツくてたまらない。
そのため、お茶会でも好きなだけ食べることができないのだ。
(せっかく無料でご飯を食べられるってのに、勿体ない!)
貴族の女性にとっては当たり前のことなのだろうが、かつて別の国で生きたフルールにとってはあまりにも窮屈だった。
そこで彼女は気が付いた。
もしかすると、前世の記憶を取り戻した今の私は平民的な思考を持っているのかもしれないと。
「平民の間では、やっぱりこういうのが人気なんですか?」
「そうですねぇ……デザインが良く、動きやすいものが人気ですね」
貴族と違って、平民の女性たちは立ち仕事で生計を立てていることが多い。
居酒屋やカフェの店員、どこかのお屋敷で侍女として働いたり……職種は様々だが、ほとんどの平民女性たちはデスクワークなんてしないだろう。
(そういえば、侍女の服もこんな感じのスカートを使っているわね)
貴族令嬢のように床につくタイプのものではなく、少し短めで、動くたびにふわりと広がるようなスカート。
常に動く侍女にはピッタリな服だ。
きっちりとしたマーメイドスカートなどは平民が着る服には向いていない。
可愛さを重視するなら、フレアスカートが良いかもしれない。
可愛いものが好きなのは、どの世界の女の子も同じだろう。
「あら、こっちのワンピースもなかなか素敵!」
「お客様はお目が高いですね!そちらも人気商品なんですよ」
次にフルールが目を引かれたのは、デコルテの部分が透けたワンピースだった。
「こちらは最近流行りのシースルーを使っているんです!」
「シースルー……?」
不思議そうに首をかしげたフルールに、店員は説明を加えた。
「シースルーは透けるという意味で……最近服の一部に取り入れるのが流行っているんですよ!」
「へぇ、そうだったのね」
これは良い情報を得られたかもしれない。
フルールは丁寧に教えてくれた店員さんへのお礼にワンピースを一着購入し、店を出た。
あなたにおすすめの小説
初恋の人を思い出して辛いから、俺の前で声を出すなと言われました
柚木ゆず
恋愛
「俺の前で声を出すな!!」
マトート子爵令嬢シャルリーの婚約者であるレロッズ伯爵令息エタンには、隣国に嫁いでしまった初恋の人がいました。
シャルリーの声はその女性とそっくりで、聞いていると恋人になれなかったその人のことを思い出してしまう――。そんな理由でエタンは立場を利用してマトート家に圧力をかけ、自分の前はもちろんのこと不自然にならないよう人前で声を出すことさえも禁じてしまったのです。
自分の都合で好き放題するエタン、そんな彼はまだ知りません。
その傍若無人な振る舞いと自己中心的な性格が、あまりにも大きな災難をもたらしてしまうことを。
※11月18日、本編完結。時期は未定ではありますが、シャルリーのその後などの番外編の投稿を予定しております。
※体調の影響により一時的に、最新作以外の感想欄を閉じさせていただいております。
三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで
狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。
一度目は信じた。
二度目は耐えた。
三度目は――すべてを失った。
そして私は、屋上から身を投げた。
……はずだった。
目を覚ますと、そこは過去。
すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。
――四度目の人生。
これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、
同じように裏切られ、すべてを失ってきた。
だから今度は、もう決めている。
「もう、陸翔はいらない」
愛していた。
けれど、もう疲れた。
今度こそ――
自分を守るために、家族を守るために、
私は、自分から手を放す。
これは、三度裏切られた女が、
四度目の人生で「選び直す」物語。
「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした
ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
婚約者に突き飛ばされて前世を思い出しました
天宮有
恋愛
伯爵令嬢のミレナは、双子の妹キサラより劣っていると思われていた。
婚約者のルドノスも同じ考えのようで、ミレナよりキサラと婚約したくなったらしい。
排除しようとルドノスが突き飛ばした時に、ミレナは前世の記憶を思い出し危機を回避した。
今までミレナが支えていたから、妹の方が優秀と思われている。
前世の記憶を思い出したミレナは、キサラのために何かすることはなかった。
誰からも必要とされていないから出て行ったのに、どうして皆追いかけてくるんですか?
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢ミリーシャは、自身が誰からも必要とされていないことを悟った。
故に彼女は、家から出て行くことを決めた。新天地にて、ミリーシャは改めて人生をやり直そうと考えたのである。
しかし彼女の周囲の人々が、それを許さなかった。ミリーシャは気付いていなかったのだ。自身の存在の大きさを。
私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。
待鳥園子
恋愛
伯爵令嬢アイリーンの婚約者であるセシルの隣には『妹のような幼馴染み』愛らしい容姿のデイジーが居て、身分差で結婚出来ない二人が結ばれるためのお飾り妻にされてしまうことが耐えられなかった。
そして、二人がふざけて婚姻届を書いている光景を見て、アイリーンは自分の我慢が限界に達そうとしているのを感じていた……のだけど!?
美人な姉と『じゃない方』の私
LIN
恋愛
私には美人な姉がいる。優しくて自慢の姉だ。
そんな姉の事は大好きなのに、偶に嫌になってしまう時がある。
みんな姉を好きになる…
どうして私は『じゃない方』って呼ばれるの…?
私なんか、姉には遠く及ばない…