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14 妊娠発覚
数週間が経ち、今の生活にもだいぶ慣れた頃、私の体にある変化が訪れた。
「奥様、大丈夫ですか……?」
「今日も体調が優れないわ……」
「どうして急に……前まではこんなこと無かったのに……」
私はよく体調を崩すようになった。
原因は分からない。
(生活に大きな変化が現れてストレスが溜まっていたのかしら……)
変わったことと言えば、私とアランの関係だ。
彼は日常の大半を愛人宅で過ごすようになり、本邸へ帰ってくることはほとんど無い。
「奥様、旦那様にお伝えしておきましょうか?」
「…………いいえ、このことは旦那様には言わないでちょうだい。平気よ、ただちょっと疲れが溜まっていただけだから」
アランに報告したところでブリアナに夢中になっている彼は何とも思わないだろう。
それが分かっているからか、彼には内緒にしておきたかった。
きっと大したことは無いはずだ。
このときはそう結論付けて、放置した。
――後にあんなことになるとも知らずに。
***
数日経っても体調が回復することは無く、とうとう執務の途中に倒れてしまった。
慌てふためく使用人たちの姿が見えたを最後に、私の意識は途切れた。
「……」
目が覚めたのは夜だった。
「奥様!」
ベッドの横には医者と私が最も信頼を置く数人の使用人たちが立っていた。
そこに夫であるアランの姿は無い。
「……ねぇ、旦那様は……?」
「……ブリアナ様がお倒れになられたようで、ここへは来られないと……」
――あぁ、やっぱり彼は来ないのね。
ブリアナは元々身体が弱いようで、ここへ来てからも頻繁に体調を崩していた。
そのたびにアランは血相を変えて本邸を飛び出して行った。
毎回のように体調を崩すブリアナに付き添っているせいで本邸で過ごす時間はほとんど無くなっていたのだ。
「心配かけてしまったみたいね……」
「奥様がご無事で何よりです」
目が覚めた私を見て、侍女たちが安心したように微笑んだ。
しかし、そんな彼女たちとは対照的に医者は険しい顔をしていた。
(……何か良くないことがあるのかしら?)
不安がどっと押し寄せてくる。
大きな病気にでもかかってしまったのだろうか。
侍女の一人が声を上げた。
「奥様はご病気になられたのですか……!」
「……」
「何とか言ってください!」
しばしの沈黙の後、医者はゆっくりと口を開いた。
「――ご懐妊です」
「……………………え?」
その一言で、時が止まったかのように部屋がシンと静まり返った。
私だけではなく、使用人たちも驚きを隠せないようだ。
(懐妊……?私に、子が出来たということ……?)
アランとの子だ。
嬉しくないはずがない。
私がどれだけこの日を待ち望んでいたか。
言葉に出来ないほどの喜びが沸き上がってくる。
しかし、神は本当に意地悪だ。
(どうしてこのタイミングで……)
「奥様、大丈夫ですか……?」
「今日も体調が優れないわ……」
「どうして急に……前まではこんなこと無かったのに……」
私はよく体調を崩すようになった。
原因は分からない。
(生活に大きな変化が現れてストレスが溜まっていたのかしら……)
変わったことと言えば、私とアランの関係だ。
彼は日常の大半を愛人宅で過ごすようになり、本邸へ帰ってくることはほとんど無い。
「奥様、旦那様にお伝えしておきましょうか?」
「…………いいえ、このことは旦那様には言わないでちょうだい。平気よ、ただちょっと疲れが溜まっていただけだから」
アランに報告したところでブリアナに夢中になっている彼は何とも思わないだろう。
それが分かっているからか、彼には内緒にしておきたかった。
きっと大したことは無いはずだ。
このときはそう結論付けて、放置した。
――後にあんなことになるとも知らずに。
***
数日経っても体調が回復することは無く、とうとう執務の途中に倒れてしまった。
慌てふためく使用人たちの姿が見えたを最後に、私の意識は途切れた。
「……」
目が覚めたのは夜だった。
「奥様!」
ベッドの横には医者と私が最も信頼を置く数人の使用人たちが立っていた。
そこに夫であるアランの姿は無い。
「……ねぇ、旦那様は……?」
「……ブリアナ様がお倒れになられたようで、ここへは来られないと……」
――あぁ、やっぱり彼は来ないのね。
ブリアナは元々身体が弱いようで、ここへ来てからも頻繁に体調を崩していた。
そのたびにアランは血相を変えて本邸を飛び出して行った。
毎回のように体調を崩すブリアナに付き添っているせいで本邸で過ごす時間はほとんど無くなっていたのだ。
「心配かけてしまったみたいね……」
「奥様がご無事で何よりです」
目が覚めた私を見て、侍女たちが安心したように微笑んだ。
しかし、そんな彼女たちとは対照的に医者は険しい顔をしていた。
(……何か良くないことがあるのかしら?)
不安がどっと押し寄せてくる。
大きな病気にでもかかってしまったのだろうか。
侍女の一人が声を上げた。
「奥様はご病気になられたのですか……!」
「……」
「何とか言ってください!」
しばしの沈黙の後、医者はゆっくりと口を開いた。
「――ご懐妊です」
「……………………え?」
その一言で、時が止まったかのように部屋がシンと静まり返った。
私だけではなく、使用人たちも驚きを隠せないようだ。
(懐妊……?私に、子が出来たということ……?)
アランとの子だ。
嬉しくないはずがない。
私がどれだけこの日を待ち望んでいたか。
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しかし、神は本当に意地悪だ。
(どうしてこのタイミングで……)
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