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二章
正反対なあの子 王妃エリザベスside
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王太子が国王として即位し、私は王妃になった。
いつ殺されるか分からないという恐怖におびえていた私だったが、国王は私を虐げたりはしなかった。
望みは何だって叶えてくれたし、側妃や愛妾を迎えることもなかった。
(私が……隣国の王女だからかしら……)
王女という肩書きはこういうときに役立つのか。
ひとまず安心だ。
私が隣国の王女である以上、夫は私にむやみに手を出すことは出来ない。
王宮の使用人たちも私を王妃として扱ってくれたし、思っていたよりずっとマシな暮らしだった。
一つだけ不満を言うのであれば――
(マークに……会いたいわ……)
嫁いでから、彼の顔が頭に浮かばない日は無かった。
私はそれほどにマークを恋しく思っているらしい。
(……だけど、この生活も案外悪くはないわ。これ以上何かを望むのはやめましょう)
***
オルレリアン王国に来てから一年が経った。
その日に開催された舞踏会で、私は初めて夫の想い人の姿を見た。
「フルール公爵夫人よ!」
「いつ見てもお美しいわね……」
「……」
波打つブロンドに、美しいグリーンの瞳を持ったとても美しい人だった。
横にいた王の視線は、人々の中心で笑う彼女に固定されていた。
(随分と人気者なのね……私とは大違い……)
社交界の華であり、絶世の美女でもあるリーナ・フルール公爵夫人。
夫であるフルール公爵が夫人を溺愛しているのは有名な話で、夫婦仲も良好らしい。
(どこまでも私と正反対の人生なのね)
自分の夫にも愛され、他人の夫にも愛されている。
ただただ羨ましいと思った。
あのような朗らかな笑みは自分にはとても出来なかったから。
皆が公爵夫人に羨望の眼差しを向け、結婚した身だというのに頬を赤らめている者までいる。
高い身分、美しい容姿、完璧な教養。
(……どうして?私と何が違うの?)
高い身分や教養なら、私だって持っているはずなのに。
「公爵夫人は本当に人当たりの良い方ですね」
「はい、夫人に恩を感じている貴婦人も多いようです」
「――本当に、あの方が王妃になれば良かったのに」
「その通りですわ、国王陛下の寵愛を受けていらっしゃるのは今でも公爵夫人ただ一人ですから」
「……」
オルレリアン王国の貴族たちが放った心無い言葉が私を傷付けた。
(私は……王妃に相応しくないと言いたいの……?)
王女としてのプライドをズタズタに傷付けられたような気分になった。
最初はリーナに対する羨望だけだったが、次第に嫉妬心まで芽生えてくるようになった。
その日から、私は舞踏会でリーナの姿を見るたびに自分に対する嫌悪感を抱くようになった。
勝てる要素なんて一つも無いのに、くだらない嫉妬の炎を燃やしている自分に対してだ。
(本当にどうしようもない女なのね、私って……)
それからしばらくして、私はようやく王の子を懐妊した。
それと同時に、リーナも妊娠し一時的に社交界から姿を消した。
巨大な苦痛に耐え、私は無事に男の子を生んだ。
生まれた子の顔を見た瞬間、とても安心したのを今でもよく覚えている。
(可愛いわ……)
黒い髪に青い瞳を持った可愛い可愛い私の子。
容姿は夫に似ていたけれど、それでも私と血の繋がった子供だから。
可愛くないはずが無い。
夫は相変わらず無関心だったけれど、それなら私が代わりに愛をたくさん注いであげればいい。
そう思って、私は子育てに専念した。
――リーナ・フルール公爵夫人の訃報を聞いたのはそれからすぐのことだった。
いつ殺されるか分からないという恐怖におびえていた私だったが、国王は私を虐げたりはしなかった。
望みは何だって叶えてくれたし、側妃や愛妾を迎えることもなかった。
(私が……隣国の王女だからかしら……)
王女という肩書きはこういうときに役立つのか。
ひとまず安心だ。
私が隣国の王女である以上、夫は私にむやみに手を出すことは出来ない。
王宮の使用人たちも私を王妃として扱ってくれたし、思っていたよりずっとマシな暮らしだった。
一つだけ不満を言うのであれば――
(マークに……会いたいわ……)
嫁いでから、彼の顔が頭に浮かばない日は無かった。
私はそれほどにマークを恋しく思っているらしい。
(……だけど、この生活も案外悪くはないわ。これ以上何かを望むのはやめましょう)
***
オルレリアン王国に来てから一年が経った。
その日に開催された舞踏会で、私は初めて夫の想い人の姿を見た。
「フルール公爵夫人よ!」
「いつ見てもお美しいわね……」
「……」
波打つブロンドに、美しいグリーンの瞳を持ったとても美しい人だった。
横にいた王の視線は、人々の中心で笑う彼女に固定されていた。
(随分と人気者なのね……私とは大違い……)
社交界の華であり、絶世の美女でもあるリーナ・フルール公爵夫人。
夫であるフルール公爵が夫人を溺愛しているのは有名な話で、夫婦仲も良好らしい。
(どこまでも私と正反対の人生なのね)
自分の夫にも愛され、他人の夫にも愛されている。
ただただ羨ましいと思った。
あのような朗らかな笑みは自分にはとても出来なかったから。
皆が公爵夫人に羨望の眼差しを向け、結婚した身だというのに頬を赤らめている者までいる。
高い身分、美しい容姿、完璧な教養。
(……どうして?私と何が違うの?)
高い身分や教養なら、私だって持っているはずなのに。
「公爵夫人は本当に人当たりの良い方ですね」
「はい、夫人に恩を感じている貴婦人も多いようです」
「――本当に、あの方が王妃になれば良かったのに」
「その通りですわ、国王陛下の寵愛を受けていらっしゃるのは今でも公爵夫人ただ一人ですから」
「……」
オルレリアン王国の貴族たちが放った心無い言葉が私を傷付けた。
(私は……王妃に相応しくないと言いたいの……?)
王女としてのプライドをズタズタに傷付けられたような気分になった。
最初はリーナに対する羨望だけだったが、次第に嫉妬心まで芽生えてくるようになった。
その日から、私は舞踏会でリーナの姿を見るたびに自分に対する嫌悪感を抱くようになった。
勝てる要素なんて一つも無いのに、くだらない嫉妬の炎を燃やしている自分に対してだ。
(本当にどうしようもない女なのね、私って……)
それからしばらくして、私はようやく王の子を懐妊した。
それと同時に、リーナも妊娠し一時的に社交界から姿を消した。
巨大な苦痛に耐え、私は無事に男の子を生んだ。
生まれた子の顔を見た瞬間、とても安心したのを今でもよく覚えている。
(可愛いわ……)
黒い髪に青い瞳を持った可愛い可愛い私の子。
容姿は夫に似ていたけれど、それでも私と血の繋がった子供だから。
可愛くないはずが無い。
夫は相変わらず無関心だったけれど、それなら私が代わりに愛をたくさん注いであげればいい。
そう思って、私は子育てに専念した。
――リーナ・フルール公爵夫人の訃報を聞いたのはそれからすぐのことだった。
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2024.07.05
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