愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの

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二章

間違った愛 王妃エリザベスside

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息子のことはとても大切だ。
しかし、それ以上に夫の当たりが強くなることへの恐怖の方が勝った。


(こうするしかないのよ……ごめんね……)


私の唯一の息子をあの男から守るためには、これしかなかった。
息子に対する罪悪感で胸がいっぱいだったが、悲惨な死を遂げるよりかはマシだ。


そして私は、息子の婚約者となったリーナの娘にさえキツく当たった。


「王妃様!こんにちは!」
「……」


歩み寄ろうとするリーナの娘――セシリアに徹底的に冷たく接した。
理由は……おそらく後ろめたさがあったからだろう。
セシリアの母親を殺した人物は、他でもない私の夫だったから。


そんなことを知らず、母親を殺した男を義父として慕う彼女を見ると酷く同情した。
そしてもう一つ、私はあの男に関する衝撃的な事実を知った。


(まさかあの人、リーナの娘を一人の女として見ているの……?)


夫に対する気持ち悪さと嫌悪感で心が埋め尽くされた。
まだ幼いリーナの娘、セシリア。
成長前ではあるが、周囲の人間は口々に母親であるリーナに瓜二つだと言った。


国王はリーナを愛している。
愛しすぎて、最後は自分の手で殺害してしまった。


今度は娘を標的にしたのか。
本当に何て男なんだ。


このときばかりはセシリアを不憫に思った。
夫の考えていることは私にも分かった。


おそらくセシリアと自分の息子を結婚させ、永遠に自分の手元に置いておくつもりなのだろう。
絶世の美女・リーナにそっくりな容姿に、王国屈指の名門フルール公爵家の令嬢という高い地位。
セシリアを手に入れれば父親であるフルール公爵さえも配下に置くことが出来るのだ。


(本当に、ずる賢い男ね……)


彼の両親である先代の国王陛下と王妃陛下はあれほど優しい人だったのに。
何故このような怪物が生まれてしまったんだろう。


(私の息子は絶対にこの男のようにはならないわ)


必要以上に厳しくするという私の教育方針は変わることはなかった。
いや、そんな男の姿を見て私の決心はより強固なものになった。


――今思えば、それが間違っていたのかもしれない。
厳しすぎる教育により、息子は笑わなくなった。


そして私は、そんな息子に負い目を感じて親子の交流を最低限に抑えるようになった。





(私は……母親として、人として失格だったんだわ……)


ついさっき見たセシリアの姿が頭に浮かんだ。
リーナによく似ていて、心優しい女の子だった。


おとぎ話の中なら、私は間違いなく意地悪な継母という役柄になるだろう。
それほどに私の仕打ちは酷いものだった。


「セシリア……」


久しぶりに見た愛する息子の笑顔。
もしかすると、あの子なら息子を幸せにしてくれるかもしれない。


そんな思いが、私の中で芽生え始めた。


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