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三章
禁忌
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「ダリウス様……よろしくお願いします……どうか父をお助けください……」
「……あぁ」
殿下が連れて来た魔術師のダリウス様は素っ気なく返事をすると眠っているお父様の元へと近付いた。
私のことなど眼中にもないと言ったような態度だ。
(そ、素っ気ないな……!私これでも一応公爵家の令嬢なんだけど……!)
そのような態度を取られたのは久しぶりで、何だか落ち込む。
そんな私に気付いた殿下がそっと声をかけた。
「セシリア、アイツは誰にでもああいう態度だからな。あまり気にしないでいい」
「そ、そうだったんですね……殿下はあの方とどのような関係なのですか?」
「ダリウスは俺の専属の魔術師で……幼い頃から長い時間を共にしてきた。歳も近いし、話も合うんだ」
どうやらあの魔術師様はいわゆる殿下の幼馴染というものらしい。
驚くことに、私よりも前からの知り合いのようだ。
「仲が良いのですね。お友達……みたいな感じでしょうか?」
「友達か……まぁそんなものかもしれないな」
二人の出会いがどうであれ、殿下はかなりあの魔術師様に信頼を置いているらしい。
殿下の信頼する人なら、お父様を治せるかもしれない。
それに気付いたことで、ようやく希望の光が差し込んだような気分になった。
(それにしても、彼と長い時間一緒にいたのにそんな存在の人がいただなんて初めて知ったわ)
昔から殿下はあまり自分のことを話すような人では無かったから、仕方が無いことなのかもしれないが何だか悔しい。
「ダリウス、公爵の容体はどうだ?」
お父様を診ていたダリウス様がこちらを振り向いた。
「……ハッキリ言ってかなりマズい状態だ。もしかするとこのまま一生目覚めないかもしれない」
「ええッ!?!?」
ダリウス様の言葉を聞いた私は、二人の前だというのについ大声を上げてしまった。
「お父様……ずっとこのままなのですか……?」
「……アンタ、グレイの婚約者の公爵令嬢か」
「はい、セシリアと申します……」
そこでようやくダリウス様は私を視界に入れた。
「ダリウス、公爵はそれほどまでに深刻な状態なのか?説明してくれ」
「ああ。この男、精神魔法をかけられた痕跡がある。それも十年以上も前からだ。魔法が身体をジワジワと蝕んで苦しかっただろうに、よく耐えたな」
「……精神……魔法……!?」
――精神魔法。
タブーとされている禁断の魔法だ。
人の精神に干渉するものであり、術をかけられた相手は苦しみ抜いて死ぬというもの。
存在自体は知っていたものの、まさかお父様が精神魔法をかけられていただなんて。
衝撃すぎて言葉を発することが出来なかった。
その事実を知った殿下は怒りを露わにした。
「何だって!?一体誰がそんなことを!!!」
「……公爵に魔法をかけた魔術師は何となく見当が付いている。この魔力の流れには少々心当たりがあるからな」
「…………一体、誰なんだ?」
殿下が怪訝そうな表情で尋ねた。
そしてこの後ダリウス様が放った言葉に、私たちはさらなる衝撃を受けることとなる。
「――シュナイゼル・ローレル。多分この男の仕業だ」
「「……!!!」」
その名を聞いた途端、私と殿下はハッと息を呑んだ。
二人して、聞き覚えのある名前だったからだ。
いや、王国民ならおそらく知らない人間はいないだろう。
――シュナイゼル・ローレル。
それはオルレリアン王国最高権力者である国王陛下の最側近の男の名前だ。
「……あぁ」
殿下が連れて来た魔術師のダリウス様は素っ気なく返事をすると眠っているお父様の元へと近付いた。
私のことなど眼中にもないと言ったような態度だ。
(そ、素っ気ないな……!私これでも一応公爵家の令嬢なんだけど……!)
そのような態度を取られたのは久しぶりで、何だか落ち込む。
そんな私に気付いた殿下がそっと声をかけた。
「セシリア、アイツは誰にでもああいう態度だからな。あまり気にしないでいい」
「そ、そうだったんですね……殿下はあの方とどのような関係なのですか?」
「ダリウスは俺の専属の魔術師で……幼い頃から長い時間を共にしてきた。歳も近いし、話も合うんだ」
どうやらあの魔術師様はいわゆる殿下の幼馴染というものらしい。
驚くことに、私よりも前からの知り合いのようだ。
「仲が良いのですね。お友達……みたいな感じでしょうか?」
「友達か……まぁそんなものかもしれないな」
二人の出会いがどうであれ、殿下はかなりあの魔術師様に信頼を置いているらしい。
殿下の信頼する人なら、お父様を治せるかもしれない。
それに気付いたことで、ようやく希望の光が差し込んだような気分になった。
(それにしても、彼と長い時間一緒にいたのにそんな存在の人がいただなんて初めて知ったわ)
昔から殿下はあまり自分のことを話すような人では無かったから、仕方が無いことなのかもしれないが何だか悔しい。
「ダリウス、公爵の容体はどうだ?」
お父様を診ていたダリウス様がこちらを振り向いた。
「……ハッキリ言ってかなりマズい状態だ。もしかするとこのまま一生目覚めないかもしれない」
「ええッ!?!?」
ダリウス様の言葉を聞いた私は、二人の前だというのについ大声を上げてしまった。
「お父様……ずっとこのままなのですか……?」
「……アンタ、グレイの婚約者の公爵令嬢か」
「はい、セシリアと申します……」
そこでようやくダリウス様は私を視界に入れた。
「ダリウス、公爵はそれほどまでに深刻な状態なのか?説明してくれ」
「ああ。この男、精神魔法をかけられた痕跡がある。それも十年以上も前からだ。魔法が身体をジワジワと蝕んで苦しかっただろうに、よく耐えたな」
「……精神……魔法……!?」
――精神魔法。
タブーとされている禁断の魔法だ。
人の精神に干渉するものであり、術をかけられた相手は苦しみ抜いて死ぬというもの。
存在自体は知っていたものの、まさかお父様が精神魔法をかけられていただなんて。
衝撃すぎて言葉を発することが出来なかった。
その事実を知った殿下は怒りを露わにした。
「何だって!?一体誰がそんなことを!!!」
「……公爵に魔法をかけた魔術師は何となく見当が付いている。この魔力の流れには少々心当たりがあるからな」
「…………一体、誰なんだ?」
殿下が怪訝そうな表情で尋ねた。
そしてこの後ダリウス様が放った言葉に、私たちはさらなる衝撃を受けることとなる。
「――シュナイゼル・ローレル。多分この男の仕業だ」
「「……!!!」」
その名を聞いた途端、私と殿下はハッと息を呑んだ。
二人して、聞き覚えのある名前だったからだ。
いや、王国民ならおそらく知らない人間はいないだろう。
――シュナイゼル・ローレル。
それはオルレリアン王国最高権力者である国王陛下の最側近の男の名前だ。
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