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15 今さら、何の用ですか?
「フィオナ、おかえり。茶会は楽しかった?」
「うん、まぁまぁかな。ちょっとだけやらかしちゃったけど……」
落ち込んだ様子を見せるフィオナに、父である公爵は優しく声をかけた。
「落ち込む必要はない、最初は誰しも失敗するものだ。これから学んでいけばいい」
「……そうだよね、ありがとう、お父様!」
「もうそんな年齢でもないけどな」
ちょうど同じ部屋にいたキースが口を挟んだ。
(お兄様ったら、相変わらず私にだけ厳しいのね!)
昔は反論していたが、今はもうそんなことはしない。
彼女はもう立派な大人だったからだ。
実際の年齢は今のキースより、前世で五十年以上生きたフィオナのほうがずっと上だった。
「お兄様の言いたいことはわかっているわ。私はまだまだ経験が浅いのよ。お父様の言う通り、これから学んで身に着けていくつもりよ」
「……お前が言い返さないなんて」
キースは驚いたように目を見張った。
彼はいつも自由奔放な妹に手を焼かされていた。
(今世では兄妹仲も良くするつもりなんだから)
前世では最後までできなかった贈り物のお礼もしたいし。
「言ったでしょう、もう二度と愚かな真似はしないって」
「……本当に変わったっていうのか?お前が?」
「もちろんよ!」
キースは訝しげにフィオナを見つめた。
人間の本質はなかなか変わらない。
そのことをよく知っている彼は、妹の変化をそう簡単に信じられなかった。
彼はフィオナを試すかのように、ニヤリと笑いながら問いを投げかけた。
「じゃあ、もし今アロイスが家まで来たらどうする?」
「アロイスが……?ウチに……?」
フィオナはアロイスが家に来るということを頭の中で想像した。
「ああそうだ、やっぱり俺にはお前が必要だ、戻ってきてくれってお前に言ったとしたら?」
「……」
完全に黙り込んでしまったフィオナを見たキースが、呆れたようにため息をついた。
「やっぱりお前、まだアロイスのこと――」
「――今さら、何の用ですか?って冷たく言うわ」
「フィオナ……?」
そう口にした彼女は、キースが見たことないくらい凍えきった目をしていた。
その瞳からは、憎しみ、諦念、嫌悪など様々な感情が渦巻いており、キースはぞっとした。
いつものほほんとしていたフィオナからは想像もつかないような顔だった。
彼女はすぐに表情を戻し、にっこりと笑った。
「お兄様ったら、急にそんなことを言いだして。そんなことあるわけないじゃない。アロイスは私を愛していないんだから」
「そ、そうだな……」
キースは妹の変わり身を恐ろしく思うと同時に、アロイスへの未練は無いと知り、安心した。
報われることのない一方通行の恋は、早く断ち切ったほうがお互いのためになるからだ。
「アロイスがここへ来るなんてありえないわ。セレナイト公爵家に来るくらいなら、皇家のセレシア側妃の元へ行っているでしょうに」
フィオナは面白そうに笑った。
しかし彼女は知らなかった。
この数時間後にアロイスが本当に邸宅へやってくることを。
「うん、まぁまぁかな。ちょっとだけやらかしちゃったけど……」
落ち込んだ様子を見せるフィオナに、父である公爵は優しく声をかけた。
「落ち込む必要はない、最初は誰しも失敗するものだ。これから学んでいけばいい」
「……そうだよね、ありがとう、お父様!」
「もうそんな年齢でもないけどな」
ちょうど同じ部屋にいたキースが口を挟んだ。
(お兄様ったら、相変わらず私にだけ厳しいのね!)
昔は反論していたが、今はもうそんなことはしない。
彼女はもう立派な大人だったからだ。
実際の年齢は今のキースより、前世で五十年以上生きたフィオナのほうがずっと上だった。
「お兄様の言いたいことはわかっているわ。私はまだまだ経験が浅いのよ。お父様の言う通り、これから学んで身に着けていくつもりよ」
「……お前が言い返さないなんて」
キースは驚いたように目を見張った。
彼はいつも自由奔放な妹に手を焼かされていた。
(今世では兄妹仲も良くするつもりなんだから)
前世では最後までできなかった贈り物のお礼もしたいし。
「言ったでしょう、もう二度と愚かな真似はしないって」
「……本当に変わったっていうのか?お前が?」
「もちろんよ!」
キースは訝しげにフィオナを見つめた。
人間の本質はなかなか変わらない。
そのことをよく知っている彼は、妹の変化をそう簡単に信じられなかった。
彼はフィオナを試すかのように、ニヤリと笑いながら問いを投げかけた。
「じゃあ、もし今アロイスが家まで来たらどうする?」
「アロイスが……?ウチに……?」
フィオナはアロイスが家に来るということを頭の中で想像した。
「ああそうだ、やっぱり俺にはお前が必要だ、戻ってきてくれってお前に言ったとしたら?」
「……」
完全に黙り込んでしまったフィオナを見たキースが、呆れたようにため息をついた。
「やっぱりお前、まだアロイスのこと――」
「――今さら、何の用ですか?って冷たく言うわ」
「フィオナ……?」
そう口にした彼女は、キースが見たことないくらい凍えきった目をしていた。
その瞳からは、憎しみ、諦念、嫌悪など様々な感情が渦巻いており、キースはぞっとした。
いつものほほんとしていたフィオナからは想像もつかないような顔だった。
彼女はすぐに表情を戻し、にっこりと笑った。
「お兄様ったら、急にそんなことを言いだして。そんなことあるわけないじゃない。アロイスは私を愛していないんだから」
「そ、そうだな……」
キースは妹の変わり身を恐ろしく思うと同時に、アロイスへの未練は無いと知り、安心した。
報われることのない一方通行の恋は、早く断ち切ったほうがお互いのためになるからだ。
「アロイスがここへ来るなんてありえないわ。セレナイト公爵家に来るくらいなら、皇家のセレシア側妃の元へ行っているでしょうに」
フィオナは面白そうに笑った。
しかし彼女は知らなかった。
この数時間後にアロイスが本当に邸宅へやってくることを。
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