他に愛する人のいる彼の元を去ったら、何故か彼が追いかけてきます

ましゅぺちーの

文字の大きさ
23 / 39

23 婚約者候補

それから数日経った頃、フィオナは四枚あった釣書のうちの一人とお茶をしていた。


「セレナイト公女はとてもお美しいですね」
「まぁ……ありがとうございます」


彼女が最初に選んだのはリリアーン侯爵家の令息カイルだった。
長男ではなく次男だが、騎士としての頭角を現していて、将来有望なようだ。
見た目もよく、フィオナより一つ上なのだという。


何故、こんなにも優良物件な彼がこの歳になっても未婚なのか。
それは彼がある事情を抱えていたからだった。


「私の前の婚約者は他に愛する人ができたようでして……一年前に婚約が破談となってしまったのです」
「そ、それは……何という……」


フィオナは思わず言葉に詰まった。


リリアーン侯爵令息カイルには、幼い頃から婚約していた令嬢がいた。
しかし、つい最近婚約破棄となった。


理由は彼女の不貞。
令息に内緒で十年以上付き合っていた秘密の恋人がいたのだという。


「まぁ、私も多忙を理由に式を延期していましたし……お互い様かもしれませんね」


カイルは切なそうに呟いた。
彼が前の婚約者を愛していたのは有名で、その溺愛っぷりは近隣諸国にまで知れ渡っていたほどだ。


(リリアーン侯爵令息は私と違って婚約までしていたんだもの……そりゃあなかなか立ち直れないわよね)


カイルの元婚約者は、半年前にその相手と結婚した。
彼との婚約を破棄してから一ヵ月で婚約を結び直し、その五か月後には籍を入れるというとんでもないことを平然とやってのけたのだ。


フィオナはカイルの気持ちが痛いほど理解できた。
同じような傷を、彼女も持っているからだろうか。


「侯爵令息、私でよければいくらでも話をお聞きしますよ」
「……ありがとうございます、令嬢」


カイルは未だに元婚約者を忘れられないようだった。
フィオナはそんな彼の姿に、以前の自分を重ねた。


(落ち込んでいる人を放っておけないのは、昔と変わっていないのね……)


フィオナにとって初めてのお見合いは、相手の元婚約者についての話で終わるという異例の展開となった。




***


「あー、楽しかった!」
「お嬢様……お相手の前の婚約者様の話がそんなに面白かったですか?」


一時間ほどで見合いは終わり、フィオナは茶会をしていた庭から公爵邸へと戻った。


「そりゃあそうよ!まるで恋愛小説を読んでいるようでとっても素敵だったわ!彼と令嬢の初めての出会いから、好きになった瞬間、胸キュンエピソードまで。思わず前のめりになって聞き入っちゃったわ」
「……理解できません」


侍女が引いたような顔をした。


「私は、お嬢様を愛してくださる方と結婚してほしいと思っています」
「ええ、私も愛に溢れた結婚がしたいわ」
「なら、リリアーン侯爵令息はお断りするべきです。未だに前の婚約者様を想っているではありませんか」
「そうね……」


フィオナは部屋に備え付けられていた窓から外を眺めた。


「でもね……何だか彼とは良い関係を築いていけそうな気がするの……似たような傷を抱えているからかな……」
「お嬢様……」


カイルは前の婚約者が十年以上も浮気をしていることをまるで知らなかった。


『彼女は……最初から私のことを愛していなかったようです……婚約破棄の場では罵詈雑言を浴びせられました……彼女が好きだったのはずっとあの男だけだったのだと、そのときになって知りました』


愛する人から愛されなかったことの辛さは、フィオナもよく知っていた。
だからこそ、彼のことが気になったのだ。




あなたにおすすめの小説

片思いの貴方に何度も告白したけど断られ続けてきた

アリス
恋愛
幼馴染で学生の頃から、ずっと好きだった人。 高校生くらいから何十回も告白した。 全て「好きなの」 「ごめん、断る」 その繰り返しだった。 だけど彼は優しいから、時々、ご飯を食べに行ったり、デートはしてくれる。 紛らわしいと思う。 彼に好きな人がいるわけではない。 まだそれなら諦めがつく。 彼はカイル=クレシア23歳 イケメンでモテる。 私はアリア=ナターシャ20歳 普通で人には可愛い方だと言われた。 そんなある日 私が20歳になった時だった。 両親が見合い話を持ってきた。 最後の告白をしようと思った。 ダメなら見合いをすると言った。 その見合い相手に溺愛される。

三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで

狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。 一度目は信じた。 二度目は耐えた。 三度目は――すべてを失った。 そして私は、屋上から身を投げた。 ……はずだった。 目を覚ますと、そこは過去。 すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。 ――四度目の人生。 これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、 同じように裏切られ、すべてを失ってきた。 だから今度は、もう決めている。 「もう、陸翔はいらない」 愛していた。 けれど、もう疲れた。 今度こそ―― 自分を守るために、家族を守るために、 私は、自分から手を放す。 これは、三度裏切られた女が、 四度目の人生で「選び直す」物語。

「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした

ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?  ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

「憎悪しか抱けない『お下がり令嬢』は、侍女の真似事でもやっていろ」と私を嫌う夫に言われましたので、素直に従った結果……

ぽんた
恋愛
「おれがおまえの姉ディアーヌといい仲だということは知っているよな?ディアーヌの離縁の決着がついた。だからやっと、彼女を妻に迎えられる。というわけで、おまえはもう用済みだ。そうだな。どうせだから、異母弟のところに行くといい。もともと、あいつはディアーヌと結婚するはずだったんだ。妹のおまえでもかまわないだろう」 この日、リン・オリヴィエは夫であるバロワン王国の第一王子マリユス・ノディエに告げられた。 選択肢のないリンは、「ひきこもり王子」と名高いクロード・ノディエのいる辺境の地へ向かう。 そこで彼女が会ったのは、噂の「ひきこもり王子」とはまったく違う気性が荒く傲慢な将軍だった。 クロードは、幼少の頃から自分や弟を守る為に「ひきこもり王子」を演じていたのである。その彼は、以前リンの姉ディアーヌに手痛い目にあったことがあった。その為、人間不信、とくに女性を敵視している。彼は、ディアーヌの妹であるリンを憎み、侍女扱いする。 しかし、あることがきっかけで二人の距離が急激に狭まる。が、それも束の間、王都が隣国のスパイの工作により、壊滅状態になっているいう報が入る。しかも、そのスパイの正体は、リンの知る人だった。 ※全三十九話。ハッピーエンドっぽく完結します。ゆるゆる設定です。ご容赦ください。

夫と息子に捨てられたので、全部置いて出て行きます。明日から、タオルがなくても知りません。

夢窓(ゆめまど)
恋愛
夫と息子に裏切られ、すべてを奪われた女は、何も言わずに家を出た。 「どうせ戻ってくる」 そう思っていた男たちの生活は、あっけなく崩壊する。 食事も、金も、信用も失い、 やがて男は罪に落ち、息子は孤独の中で知る。 ――母がいた日常は、当たり前ではなかった。 後悔しても、もう遅い。

婚約者が妹に心変わり?では一刺しして家を捨てましょう。皆様、あとはご自由に。

さんけい
恋愛
婚約者が妹に心変わりした。 しかも家族は、傷ついた私を慰めるどころか、「長女なら分別を」と静かに飲み込ませようとする。 ――でしたら、私ももう都合のいい娘ではいません。 商家の長女セリーヌは、置き手紙ひとつを残して家を出た。 今まで自分が黙って支えていたものごとに、最後の一刺しだけを残して。 教会町で偽名を名乗り、小さな仕事を得て、自分の居場所を作り始めるセリーヌ。 一方、彼女を失った実家では、婚約者と妹の熱に振り回されるうち、家の綻びが少しずつ表に出始める。 これは、婚約者を妹に奪われた令嬢が、家族への復讐のために生きるのではなく、自分の人生を取り戻していく物語。 静かに家を捨てた長女の不在は、やがて残された者たちにじわじわと効いていく…… ※初日以外は12時と22時に更新予定です。

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

忖度令嬢、忖度やめて最強になる

ハートリオ
恋愛
エクアは13才の伯爵令嬢。 5才年上の婚約者アーテル侯爵令息とは上手くいっていない。 週末のお茶会を頑張ろうとは思うもののアーテルの態度はいつも上の空。 そんなある週末、エクアは自分が裏切られていることを知り―― 忖度ばかりして来たエクアは忖度をやめ、思いをぶちまける。 そんなエクアをキラキラした瞳で見る人がいた。 中世風異世界でのお話です。 2話ずつ投稿していきたいですが途切れたらネット環境まごついていると思ってください。